起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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第二十六話:0079/06/09 マ・クベ(偽)のMS教室

イタリア半島攻略作戦、通称トライデント作戦発動まで3日となり、ここオデッサも緊張した空気が漂っている。ウチを拠点としている幾つかの部隊も参加するので、このあたりは仕方の無い事だろう。ところで、三方から攻め込むからトライデント作戦らしいんだけど、そんな名が体を表す作戦名で大丈夫なんだろうか。情報部の防諜に一抹の不安を感じている身としては、もうちょっと解りにくい名前にして欲しいものである。

 

「転換訓練が終わったばかりの205大隊も参加か、全員無事帰ってきて欲しいものだな」

 

確認用のリストを眺めながらそう言えば、エイミー少尉が驚いた顔をしていた。なんぞ?

 

「あ、いえ、その。大佐でもそのようなことを仰るんだなぁと…」

 

何気に失礼なこと言うね、この子。

 

「当然だろう。彼らを一人前にするのに幾ら掛かっていると思う?…と言うことにしておいてくれたまえ、指揮官が見知った兵の死が堪えるなどと知れたら士気に関わる」

 

ドズル中将くらい真っ直ぐな人柄なら素直に好感を抱いて貰えるかもしれんが、マさんはどう見ても陰謀家ムーブなので、気の弱いただの軟弱者としか捉えられないだろう。そんな奴に命を預けて戦うなんてのは、俺だったら嫌だ。

俺の言葉にウラガンとエイミー少尉が微妙な顔で見つめ合っていたが、なにが言いたかったんだろう。つうかなに、いつの間にそんな視線で通じ合う仲になってんの?オフィスラブなの?

なんか微妙な空気を感じたので執務を切り上げて、今日は早めに日課に移ることにした。

 

「今日の書類は終わったようだな、では私はハンガーに行ってくる。何かあったら直ぐ呼び出すように」

 

そう言えば、二人は敬礼で見送ってくれた。執務室を退出するまでは我慢したが、廊下に出たら我慢しきれず俺は早足でハンガーへ向かった。

 

「やあ、中尉。今日も使わせてもらうよ」

 

責任者であるシゲル・チバ中尉にそう声を掛け、いそいそとシミュレーターに併設された簡易更衣室に入った。あれね、パイロットスーツ着て戦場の絆出来るとかもう贅沢の極みだよね。

 

「今日もバッチリです、大佐。存分にお使い下さい」

 

「有り難う、中尉」

 

更衣室から出れば、チェックと立ち上げをしてくれたのだろう、シゲル中尉が良い笑顔でサムズアップしてくる。そういやウチの基地タカミ中尉といいゲンザブロウ氏といいなにげに東洋系が多いな。なんか怪しい力でも働いてるんじゃろか、ガンダムって結構オカルトだし。

そんなしょうも無い事を考えながら敬礼を返しシミュレーターに座れば、早速幾つかのチャンネルが出来ていた。そう、俺の最近の日課は、こうして現職のパイロット達に交じって戦場の絆を楽しむことなのだ。実は随分前からネットワークには繋げてもらっていたが、流石に遊び感覚の俺が居るのは拙いと考え自粛していたのだ。ところが、先日のシーマ少佐との一件以来、むしろ参加して欲しいとの要望が多く来たので、晴れてデビューした次第である。ちなみに現在の戦績はサシなら無敗記録更新中、集団戦はシーマ少佐の率いる海兵隊に3対4で負け越し中、鍛えねば。

 

『お疲れ様です、大佐。宜しければ一手ご指南ください』

 

何処に入ろうか悩んでいたら、向こうから声を掛けられた。ふふふ、私は一向に構わんっ!

 

「承知した、ではシチュエーションはそちらに任せよう。よろしく頼む、トップ少尉」

 

 

 

 

「よう、アス。お前今日も行くだろ?」

 

そうアス・レジネット伍長に声を掛けてきたのは、同時期にドムを受領した同僚の伍長だった。所属している小隊こそ違うが、階級が同じで年も近いこともあり、基地内では良くつるんでいる。女だてらに少尉の隊長と真面目が服を着たような年上の軍曹と、あまり上手くいっていなかった事も無関係ではないが。

 

「おお、今日こそ撃墜だ」

 

実は今基地内では密かにある賭け事が流行っていた。それは、ここの所毎日のようにシミュレーターに参加している基地司令を誰が撃墜するか、というものである。

集団戦の方は既に海兵隊が土を付けているが、その内容は殆どの場合2個小隊以上の戦闘で、制圧や防衛といったシチュエーションでの勝利であり、未だに基地司令は撃墜されていない。おかげで賭け金は随分と貯まっており、撃墜したパイロットにはちょっとしたボーナス並みの報酬が約束されている。そして、撃墜の最有力候補がアス達のようなホバー機への転換組なのであった。

 

(まあ、最近はそんなことどうでも良いんだがな)

 

嘯いては見せたが、少し前からアスは大佐の撃墜にこそ拘るものの、賭け自体はどうでも良くなっていた。その変化は、間違いなくあの初めての対戦以来だろう。

アスは実のところ、未だに実戦を経験していない新兵だ。

降下作戦後の拡張作戦で欠員の出た2083小隊へ補充されたのがアスだ。ルウムからのベテランであるデル軍曹や、降下作戦に従事したトップ少尉とはどこか壁を感じていた頃、あの大佐と少佐の模擬戦を見た。

 

「なんでぇ、海兵隊なんて言ってもだらしねえでやんの」

 

自分ならもっと上手くやれる。薄ら笑いを貼り付けながらそう嘯いていたら、それを証明する機会はすぐ翌日に訪れた。

結果は手も足も出ずに、正しく完敗。後でログを見てみればたった一発のバズーカで仕留められていたと解る。それは、今までアスが持っていたプライドをへし折るには十分すぎる内容だった。

その頃アスは本国でのパイロット課程において、優秀な成績を修めていた。だから重力戦線に配属されたし、回された先もザクⅠや宇宙用を転用したような数合わせではなくJ型を装備した主力だった。

間違いなく、増長していたのだとアスは苦笑交じりに思い返す。部隊で一番状態が良いザクが回されるのは自分が最も戦力として頼りになるからだと考えていたし、不足した分として自機をザクⅠにしたトップ少尉を腕に自信が無いのだと密かに馬鹿にしていた。その後直ぐに隊がホバー機へ転換された時も、自分が優秀だからだと信じていた。

実際には大間違いだった訳だが。

状態が良い機体を優先して回されたのは、自分が未熟で、機体に不具合が出たときにフォロー出来ないから。トップ少尉がザクⅠに乗ったのも連携すればその程度の機体性能差を埋められるという判断から。何のことはない、自分は期待されていたのではなく、お荷物だと認識されていたのだ。それは個人戦の戦闘時間という、言い訳のしようのない結果として表れた。もしあの時、大佐の言葉がなければ自分はどうなっていただろう。

 

「3番機が最もホバーを扱えているが、経験が足りないな」

 

それは対戦後の何気ない感想。

 

「それぞれが、それぞれの足りないところを持っている。良いチームになるな」

 

それを聞いたとき、ふて腐れ掛けていたアスは自分の視界が晴れ渡るような感覚を覚えた。

そうだ、俺は何と戦っているんだ。そう思えば行動は早かった。今までの態度を詫び、トップ少尉に、デル軍曹に教えを請う。自分でも虫の良いことを言っている自覚はあったが、それでも笑って許し、知識や技術を教えてくれる二人に感謝を覚えた。

そうしてみるとそれまで感じていた壁なんてものは自分が勝手に作り上げていた虚構だと解ったし、優秀な二人を素直に尊敬すると同時に、自然と敬意を払うようになった。

変化はそれだけではない。なぜなら今アスは二人にホバー機の動作について教えを請われ、持論を教えているからだ。斜に構えた態度も、虚勢も、まして誰彼構わず粗暴な行動を取る必要も無い。なぜならアスは素晴らしい仲間に恵まれ、そしてその仲間に確かに認められているのだから。

 

 

 

 

そろそろ、1対3はいじめだと気付いて欲しい。

訓練は大抵1小隊単位か個人、多いとどっかの小隊同士の集団に交ぜてもらうのだが、ここの所のトレンドは個人戦だ。なのだが、何故かトップ少尉率いる2083小隊は小隊対俺の対戦を好み、自分たちの持ち分を全てこの形式で要求してくる。ちなみに何故か俺との対戦は人気があるらしく、対戦待ちまで現れ始めたので1小隊につき3回、個人であれば1日1回と限定している。それでも対戦出来ない面子が居るという現状に、少し俺は引いている。

なに、皆そんなに俺のこと撃ちたいの?

 

『ぬぁぁぁ!今日もダメだったぁ!』

 

モニター越しに絶叫しているのはアス伍長だ。トップ少尉の所に配属されている新兵さんだが、相性が良いのかドムの扱いが上手い。初見こそワンショットキルとかキメてやったんだが、ここの所どんどん動きが良くなっている。というか、どうもこの小隊、それぞれ意見交換しながら教え合っているらしく、どんどんクレバーさに磨きが掛かっているのだ。

最初はトップ少尉が指示を出して、アス伍長が好き勝手動いて、デル軍曹がフォローする、みたいなどこにでも居るような小隊だったのだが、最近では全員がトップ少尉並に地形を利用してくるし、アス伍長並にドムを扱っている、それでいて戦闘の駆け引きはデル軍曹のように手慣れてきていると中々始末に負えない。それでも最初は司令塔のトップ少尉を撃破すれば動きが乱れたのだが、ここ数日は指揮官をスイッチするということまでしだしたため、誰を倒しても連携が崩れない。これ、ケッテだけじゃなくロッテの訓練も相当してやがるな。

 

「欲をかいたな、アス伍長。あそこは味方の到着を待ったほうが確実だ」

 

単純な技量だけならそろそろ負けてもおかしくない奴がちらほら居るんだが、さすがはマさんの脳みそ。今回の模擬戦で言えば、バズーカが動作不良を起こしたように見せかけて、それに釣られて踏み込んできたアス機へバズーカを投げつけマシンガンでもろとも撃って爆風に巻き込み、カメラがホワイトアウトしている隙を突いてヒートサーベルで仕留めた。後は装備を奪って背後を取るために別れていたデル軍曹と二人をカバーできるよう高台に移動していたトップ少尉をそれぞれ各個撃破して勝利である。

 

「トップ少尉、気持ちは解らんでもないが狭い高台ではドムの機動性が殺されてしまう。ドムの速度ならギリギリまで待った方が賢明だったな」

 

『あの位置で狙撃し返されるなんて普通は想定しませんよ。と言うよりなんであの距離を初弾で当てられるんですか』

 

苦笑交じりにトップ少尉が反論してきた。ふふん、凄かろう、だが俺の腕ではないぞ。

 

「デル軍曹のマゼラトップ砲は調整が優秀だからな。私じゃなくてもあの砲なら誰でも当てられるだろう」

 

ちなみにマゼラトップ砲はマークスマンライフルの代わりに一部手直しをして運用している。最初は対艦ライフルを使おうと考えていたんだけど、既に地上にも弾薬の製造拠点があって、補充が容易な方が良かろうと思ってこちらにしている。重量があって反動を押さえやすいせいか、ドムパイロットの皆さんにはバズーカより便利と中々に好評である。

 

『お褒め頂き恐縮ですが、それで味方がやられては素直に喜べませんなぁ』

 

笑いながら帽子を脱いで頭をかくデル軍曹。そうね、ちょっとそのあたりは考えないとかも。

 

「うん、今後連邦がMSを投入してくれば、そうした事態も起こりうるな。何か対策できないか技術部に相談してみよう」

 

その後、一言二言交わした後、チャンネルを切ると、次の対戦待ちのコールが即座に鳴り響いた。俺、恨まれたりしてないよな?




何か記念の短いのとかも考えておきます。(書くとは言っていない)
今後ともよろしくお願いします。

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