起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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第三十一話:0079/06/28 マ・クベ(偽)とジオンの娘さん達

イベリア半島は強敵でしたね。ん、これ前も言ったかな?こんにちは、ご機嫌如何ですか?マです。

自分で立案しておいてなんだが、本当に20日間もかからずイベリアまで落とすとかジオン軍まじぱないな!と実感させてくれた。なんでこんなスピード解決したかと言えば、どうも連邦の皆さん高射砲依存症に罹っていたらしく、アッザムで片端から吹き飛ばしたら、みるみる士気ががた落ちし、抵抗らしい抵抗も出来ずに壊走するか降伏しちゃったらしい。

まあ、それよりも要衝のジブラルタルが海兵隊のせいで、僅か1日で陥落したのが最大の原因だと思う。あそこ落とされちゃうとイベリアを死守する価値が激減しちゃうからなぁ。

更に追撃を行なったので、散りぢりになった歩兵はともかくヨーロッパ奪還のために温存していた機甲戦力は文字通りの壊滅的打撃を被ったようだ。先に上がってきた報告書を見たけど海兵隊だけでも200輌近く撃破してる。こんなんされたらドム相手にPTSDになるぞ、いいぞもっとやれ。

さて、帰ってきたシーマ少佐に指揮官として軽挙妄動は慎むべきとか云々すっげえ怒られた翌日。トライデント作戦も残りは残敵掃討のみとなり、俺は比較的緩い時間を送っていた。ところがザクレロの進捗書類を読みながら心地よい陽気と戦っていたら、何かまたユーリ少将から連絡が入った。んだよ、鳥の巣頭、また厄介事か?すっごい嫌だけど階級は絶対である。諦めて通信に出たらなんか気まずげに用事を告げてきた。

 

「はあ、新兵の受け入れですか?」

 

「一応、そうなる」

 

何処か落ち着かない様子で、ユーリ少将が歯切れ悪く答えた。なんだよ、気になるじゃねえか。

 

「態度だけで厄介事だと解るのは良いですな。で、今回はどのような案件なのです?」

 

そう言えば、急に明るい笑顔になるユーリ少将。こんなに解りやすいのに、この人なんでこんなに高い地位になれたんだろう?

 

「受けてくれるか!いやあ、実はな?受け入れる新兵が曲者でな」

 

「何度も言いますが、納得しているとは思わないで頂きたい。それで、曲者とは?」

 

言われてぱっと思いつくのは懲罰部隊とかだけど、そう言うのならこんな風に言いよどんだりしないだろう。なんだかんだで兵士からの人望が厚いユーリ少将は、そう言う連中の扱いも心得ているからだ。

 

「うん、そのだな。その新兵なんだが…皆若い女性士官なんだ」

 

「はあ」

 

え、なに中年課長みたいな事言ってんの?いや、若い女性の部下が扱いにくいって、あんな秘書官連れててなに言ってんのこいつ。

 

「なんだ、その顔は。俺が若い女で困ったら可笑しいとでも言いたいか」

 

「自分の胸に手を当ててみれば宜しい。それで、その女性士官がどう問題なのです?」

 

近くに居ると手を出しちゃいそうなんて言ったら通信切るからな。

 

「簡単に言えば、彼女たちは人質なんだよ。元ダイクン派や新参のザビ派連中が忠誠の証にと差し出してきた訳さ」

 

「本国の連中は気楽で羨ましい。で、それがまた何故欧州戦線に?」

 

人質なら突撃機動軍の中核辺りで飼い殺せばいいだろうに。

 

「理由は2つだ。1つは彼女たちが勤勉でこの戦争へ積極的に貢献したがっていること。もう1つは、彼女たちに人質の自覚がないことだ」

 

それでも最初は主計課とか広報とかに回そうとしていたらしいが、志が無駄に高い若者特有の潔癖症なのか、自分たちが安全な所に置かれていると感じて無闇矢鱈と噛みついてくるらしい。ついでに言えば箱入りのお嬢様だけあって事務能力は壊滅的なため、仕事もろくに与えられなかったのが余計態度を硬化させた原因になったそうな。

そんなに前線が良いなら宇宙攻撃軍に送ってやればどうか?という意見も出たのだが、そこは箱入り(略)。体力も順当に低いため、あんな体育会系に放り込んだら動く的になるか、最悪自殺しかねないと言う訳で、戦線も落ち着いてきた欧州の司令部付きMS隊とかなら良いんじゃないかとユーリ少将に確認取らずに送られてきたらしい。まあ、確認したら確実に拒否するからね!

 

「実際の所、どの程度のものなのです?」

 

「やる気だけは、貴様のところの海兵隊並みだぞ」

 

やる気とか聞いてねえよ、大体その物言いはなにも誤魔化せてないからな?半眼で睨めば視線を逸らしながらユーリ少将は口を開く。

 

「あれならゲームセンター辺りでVRゲームでもやってる学生の方が役に立つな」

 

ああ、MS用シミュレーター作る隠れ蓑にジオニックがそんなん販売してたな。あれってMSじゃなくて戦闘機じゃなかった?え、つまりそう言う事?

 

「やる気はある、あるが自分で運転なぞ何一つしたことがないような子達なんだ、正直何がどうしてMSパイロットを志望しているのかすら俺には解らん」

 

奇遇だね、俺も解んないよ。

 

「それで、比較的安全かつMSにも触れるウチですか。妥当な判断ですな、全力で断りたいですが」

 

そう返せば、子供のような笑顔になるユーリ少将。こういう感情に裏表が無さそうな所とかが兵に人気なんだろうなぁ、人誑しめ。

 

「大佐ならそう言ってくれると信じていた。では明日にでもそちらに送る、頼んだぞ」

 

そう言って通信が切られる。俺は盛大にため息を吐いた。

 

 

それが、昨日の話。午前も早い時間からウラガンに連れられて早速着任の挨拶に来た娘さん達を見て、俺は動揺を隠せずに居る。

 

「お久しぶりです、大佐」

 

「ち、中尉!?君が何故ここに居る!?」

 

おもわず、げえ!中尉!?とか言いそうになった。すんでの所で堪えられた自分を褒めてやりたい。目の前に立っているのは欧州方面軍司令部のコーカサス系死神中尉だった。警戒して後ろに視線を送るが、今日はあのスキンヘッドスマイリー共は連れていないらしい。

 

「この度大尉に昇進致しまして。彼女たちを預かる中隊長として本日よりご厄介になりますわ」

 

そう言ってまぶしい笑顔を向けてくれる中尉改め大尉。やだ、帰れって言えたらどれだけ心の安寧がえられるだろう?

しかし現実は非情である。既に受け入れは了承してしまっているし、単純に俺の好き嫌いで中隊長の交換をするなんて、上に立つ者としての資質を疑われても文句を言えない。ただでさえ頼りないと思われている俺だから、ここで公正さも無いなんて認識されたら、それこそ誰も付いてこなくなってしまう。どっかのカエル型宇宙人も言っていた、隊長殺すに武器要らぬ、部下が全員辞めりゃ良いと。

 

「りょ、了解した。イグナチェフ大尉、よろしく頼む」

 

「嫌ですわ、大佐。エリオラとお呼び下さいな」

 

距離おきたいんだよ、解れよ!俺の周りに来る女性はこんなんばっかだな!

 

「承知した、エリオラ大尉。早速君達に任務を与える」

 

その言葉に大尉の後ろに並んだお嬢さん方は興奮した面持ちになるが、大尉は笑ったままだ。こいつ完全に解ってますね?やりづらいなぁ、なんて思いが顔に出るのを懸命に堪えながら、俺は窓の外を指さした。

 

「取り敢えず、良いと言うまで走りたまえ」

 

 

 

 

「まったくっ、あの、大佐はっ。見る目がありませんわね!」

 

隣を走っているジュリア・レイバーグ少尉が不機嫌を隠さないままそう吐き捨てた。尤もその速度は既に歩いている指導教官の伍長よりも遅かったが。

 

「思っていても、口にしない方が良い時もあると思うわよ?ジュリアちゃん」

 

そうのんびりした口調で咎めたのは、やはり同じ速度でよたよたと歩いているアリス・ノックス少尉だ。何でもそつなくこなす印象だったが、体力は人並みであったらしい。

 

「おう、元気があって宜しいな!ご褒美にもう一周追加だ。ほれ、走れ走れお嬢さん方!」

 

当然のように聞いていた教官が手を叩きながらノルマの追加を言い渡してくる。

勘弁して欲しい。セルマ・シェーレはうんざりとした気持ちで内心ため息を吐いた。教官の声が聞こえていたのだろう、先行していたB班のメンバーから恨みがましい視線が送られてくる。無理もない、既に運動場を5周、距離にすれば4キロ近く走っている。それなりに運動をしていれば少し長い程度の距離かも知れないが、半年前までエレカでの移動が当たり前だった身としては少々厳しい距離だ。おまけに班のメンバーと一緒に走る事を求められるため、自分のペースで動けないから疲労も大きい。

 

「納得いきませんわ!私たちMSパイロットでしてよ!?なんでこんなに走る必要があるのです!?」

 

そんなことを考えているうちにジュリア少尉が再び口を開き教官に食って掛かる。開き直って呼吸を整えていたら、教官が面白そうに口を開いた。

 

「何でって、そりゃ大佐に命令されたからだろう?良いと言うまで走れって」

 

その言葉に絶句してしまうジュリア少尉。

 

「知らなかったか?お嬢さん。軍じゃ命令は絶対だぞ?解ったらもう2周、頑張ろうな?」

 

その言葉に全員が無言の悲鳴を上げたのは、無理からぬ事だとセルマは思った。




新兵の訓練と行ったらやっぱり爽やかクソ兵隊さんマラソンですよね!

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