起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない 作:Reppu
アレは嘘だ(今更)
昨日は結局あの後、色々な原作技術について仄めかしつつ俺の妄想を技術者に話してみた所、幾つかは実際に機体に盛り込んでみようかという話になった。技術界隈はすごいもんで、話してみれば、そう言えばそんな研究してた奴がいたとか、その技術会社で試作してるよ、なんて話が出るわ出るわ。まあ、技術なんて唐突に生まれるもんじゃ無いから、そら原作でこの後数年で形になった技術が研究中でも何ら不思議じゃ無いよな。
ただ想定外だったのは、殆どが会社の極秘研究だったもんだから、え、なにこの大佐産業スパイ?みたいな疑惑のまなざしを浴びまくった。正に雉も鳴かずばである。
さしあたってゴッグの改良計画と言うことで予算を計上するのと、生産設備を巻き込むためにツィマッド社へ連絡したら、ハルバさんから是非にと改良をお願いされた。ああ、そろそろ水中用MS第二次採用のお知らせが来てる頃だっけ。下手するとズゴックの情報とかも耳に入ってるだろうから、気が気じゃ無いんだろう。でもごめん、多分期待には添えないと思うよ?
技術と言えば、そろそろ連邦の白い奴が開発最終段階に入っている頃だったか。確か7月にビーム兵器の開発完了とプロトタイプが出来てた筈だから、もうちょっとしたらガルマ様に例の研究所をチクろう。上手くいけばV作戦への対応が根っこから変わるかもしれん。
ついでに被験者とか確保出来たら僥倖、なんて考えていたのが悪かったのか、何故かフラナガン博士から連絡が来た。なんだよ、オールドタイプな基地司令に何かご用ですかぁ?
「お久しぶりです大佐。その節はご迷惑をおかけしました」
モニターに映る博士を見て、危うく誰だお前って言いそうになった。以前会ったときは如何にもマッドサイエンティストと言った視線と仕草だったのに。今日の彼は、どう見ても近所の気の良いおじさんである。トレードマークのスーツや白衣も着ておらず、乳白色のカーディガンを着込み豊かなジェスチャーを交える姿は、以前を知っている俺には質の悪い冗談にしか見えない。
「は、博士も息災そうで。その、随分と印象が変わりましたな?」
そう言えば、博士は朗らかに笑い、手元にあったマグカップに口を付けた。マグカップにでかでかと可愛らしいキャラクタープリントがある事は、必死で見なかったことにする。
「以前、大佐がいらした時に仰ったでしょう?皆が協力的になる環境を作るべきだと。いやはや、我がことながらあの時はお恥ずかしいものをお見せしました」
ああ、言ったね、それがどうなると現状にたどり着くのさ?
「皆が協力的な環境。その為にまず皆に快適な環境を提供するべきでは無いかと考えたのです。そこで施設内で不満な点はどのようなところかを聞き取りまして」
ヒアリングをしてみたところ、もうこれでもかと不満が出たらしい。そら、モルモット扱いされてりゃ不満も溜まるわな。特に噛みついてたハマーンちゃんの要望は多岐にわたったそうな。研究員の格好が怖い、食事が無機質すぎて栄養補給以外の意味が見出せない。他にも沢山人が居るはずなのに会って話す場所や一緒に遊べるスペースどころか、そもそも他の人と会わせてすら貰えない。などなどなど。
そんな訳で思い切った改革に乗り出したらしい。まず、必要な場所以外で白衣を着ない。服装もスーツ限定だったのを私服も問題無いとし、中庭や図書室、更にまだ使っていなかった部屋を談話室に改造し職員、被験者の区別無く利用可能とした。食事も栄養重視のレーションではなく、一般に食べられているようなものに変更した。
するとどうだろう、今までおびえられるか嫌悪されるかしかなかった表情が笑顔になり、廊下ですれ違えば挨拶どころか寄ってきて会話をしようとする子まで現れた。人間好かれれば情も湧く。より親身に話すようになれば、どんな試験は辛いかとか、他の子の様子まで教えてくれる。更に言えば、今まで参加してもすぐ拒絶反応を示していたような試験でも頑張って受けるようになってくれた。それも遙かに成績は良好になるおまけ付きで。
「研究者以前に大人として恥ずかしい限りです。言われるまで子供にそんな窮屈な思いをさせて気にもしていなかったのですから」
いや、そんなん言われる前に気付けと言いたいが、無理だろうなぁ。今だって本当は子供に悪いとかじゃなくて、単純にこちらの方が研究に都合が良いからそうしているだけだと思う。
「それは良かった。博士の研究は我が国にとって重要ですからな」
まあ、現状誰も損をしていないので良いだろう。
「はい、更に面白い事も解りまして」
誰かに喋りたくて仕方ない顔をしているので黙って続きを促せば、どうもレクリエーションをしている被験者を見ていて妙なことに気付いたらしい。と言うのも、施設には比較用などという名目で、ザビ家の運営している孤児院からかなりの人数の子供がフラナガン機関に被検体として送られていた。ああ、なんか外伝に居た屍食鬼隊とかいう子達の事だな。確か他者との共感という事象を理解するために、まずその共感という機能を物理的に削除した人間を作ってみよう!なんてちょっとなに言ってるか解らない実験の被害者だったと思う。キシリアマジ外道!とか読んでて思ったけど、どうも聞いている限り今は行なわれていないっぽい。カマ掛けてみたらばつが悪そうに、そういう試験を行いたいと言う陳情は上がっていたが、却下したとのこと。ああ、つまり原作でもキシリア様は、何に使うか知らんで欲しいと言われた人間を都合良いところからほいほい送ったのね。もうちょっとマッド共の手綱をちゃんと握っておいて欲しい。
話を戻すと、その普通の子供達とニュータイプらしい子供達が交じってサッカーをしていたらしいのだが、あまり喋らず黙々とやっていたらしい。最初は気にもしなかったのだが、数回その光景を見た頃、妙だと気付いたのだそうだ。
「簡単に言ってしまえば、彼らは会話無しにコミュニケーションを成立させていたのです。ニュータイプ同士なら解りますが、そうで無い子同士でも、近くにニュータイプの子供が居るとそれが出来るようになるのです」
興奮した面持ちで告げるフラナガン博士。そらそうだ、今までの研究成果だと人工的にニュータイプを発現させることには成功していないし、そのアプローチも素養がある人間へ洗脳や薬物投与をして強引に引き出そうとする方法で、高確率で廃人、良くても情緒不安定な上に身体への負荷から寿命が短くなるといったデメリットが大きすぎる状況だ。これが仮に現状で発現しているニュータイプと長期間関われば能力が発現するとなれば、人工的にニュータイプを量産する事すら可能と言うことになる。多分違うと思うけど。
大方、無意識にニュータイプの子が他の子供の思考を読み取り、他の子に送り出しているんだろう。ただ、元々発現していなかった某赤いのとかがインド娘と一緒に居たら目覚めたくらいだから、現状高い能力を持つニュータイプに素養のある子を接触させていればそういう事も出来るかも知れない。
そうだとすれば、元になるニュータイプは多い方が良い訳で。研究のために使い潰すなんて論外だよね、と言う訳でフラナガン博士にちょっとチクっておこう。
「大変興味深い話でした博士。ところで、そちらの施設に居るクルスト博士でしたか?」
「はい、彼が何か?」
この頃はまだマッドな所あまり見せて無いんだっけ?だがこのマ、容赦せん!
「どうも彼はニュータイプに対し、少々過剰な危機感を持っているようだ。彼の行動には十分注意を払った方が良い」
その言葉に先ほどまでの緩い雰囲気は消え、真剣な表情になったフラナガン博士が聞き返してきた。
「それは、興味深いご忠告ですな」
「恐らく近いうちにニュータイプの能力について彼が幾つかの報告と、何らかの機材の開発を申請してくるでしょう。その内容には特にご注意下さい。最悪施設にとって大きな損失を生むことになりかねません」
この大佐は本当にニュータイプではないのか?フラナガン・ロムは、モニターの向こうで何食わぬ顔をして紅茶を飲む男を注意深く観察した。以前検査をした時には確かにニュータイプの兆候は見られなかった。だが、あの時の忠告や今回の件を考えると、ただ勘が良いとか、知識が豊富だとかでは説明の付かない結果をこの大佐は起こしている。そう、まるで予め知っているかのように。そもそも行う事全てが良い結果を出すなど、たとえ天才でも不可能だろう。
今の言動だって奇妙な点は多い。施設の改革の際クルスト博士とも話したが、大佐と面識があるようではなかったし、大佐自身も以前訪れたときにそんなそぶりは見せなかった。
では、大佐はどうやって今日彼が提出してきた実験についての情報を得たというのか?一見緩く見えるが、ズムシティの首相官邸より厳重な警備とスタッフの身元が保証されているこの施設に、スパイはおろか盗聴器の類いだって設置することは不可能だ。おまけに今日報告書が上がるまで、クルスト博士はニュータイプの危険性について述べた論文や報告を一切出していない。にもかかわらずそれを言い当てるなど、最早超能力といったオカルトの世界だろう。
なぜならそれは、フラナガン自身が研究しているニュータイプ達でも出来ないことなのだから。
(少々の危機感、ですか。確かに、貴方に比べれば我々の研究対象など赤子のようなものかもしれませんな)
思わず信じても居ない神に感謝する程度には、目の前の男が味方である事の幸運を噛みしめるフラナガンだった。
前回の忠告が効いているらしく、クルスト博士への監視を付けることをフラナガン博士は約束してくれた。よしよし、EXAMとか微妙な装置のために貴重なニュータイプを消費できんからね。大体アレ機体性能上がるなんて言ってるけど、要はリミッター外してるだけじゃねえか。機体もオーバーヒートするわ、パイロットが死んじゃう動きするわって、兵器として欠陥品にも程がある。あんなのに関わらなきゃジオンの騎士マニアももうちょっとましな人生を送れたかもしれん。
博士との通信を終えてそんなことを考えていたら、急に部屋の外が騒がしくなった。そんで何事と聞く前に扉が開き、金髪のお嬢さんがずかずかと入ってくる。再三にわたって言うが俺は基地司令、この場所で一番偉い筈なんだけど。
「納得出来ません!待遇の改善を要求します!」
走らせ始めて三日目で怒鳴り込んできたか。お嬢さんにしては持った方と評価すべきか、軍人として根性足らんと叱るべきかチョット迷うな…なんて俺が甘い人間だと思うなよ?
「私は止めて良いなどと一言も言っていないが。何故走っていないのかね、少尉」
「ですから!納得が出来ないと!」
「君は一々納得しないと上官命令が聞けないのか。なあ少尉、私には我慢出来んものが3つある。壺をぞんざいに扱う者。ヒステリックに叫ぶ者。そして何より我慢ならないのは命令を聞かない部下だ」
睨め付けてやれば、短い悲鳴を上げて後ずさる少尉。惜しい、チョット遅かったね。
「そんなに納得したいなら教えてやる。お嬢さん方のような兵士と呼ぶのも烏滸がましい半人前以下のヒヨコに貴重なMSなぞ預けられん。せめてその軽い頭に被さっている殻が取れてから口を利きたまえ。大尉!」
部屋の外で控えていたエリオラ大尉に声を掛ける。この人いつ見ても笑顔だな、心に深い闇を抱えていそうで怖い。
「監督不行き届きに止められなかった連帯責任だ。隊の全員で第二駐機場を10周。終わるまで許さん、日が暮れてでも走れ」
ちなみに駐機場は一周5キロくらいだから大体フルマラソンくらいの距離だ、まだ昼だし今日中には終わるだろう。
「罰を受けるのは私だけで良いでしょう!?」
悲鳴に近い声で口を挟む少尉にもう一度解りやすく教えてやる。
「ここは軍隊なのだよお嬢さん。一人の勝手が皆の不利益に繋がる実に素敵な職場だ。解ったのなら駐機場を11周、とっとと走れ」
駐機場は一周五キロ。割と狭い!