起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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第三十六話:0079/07/06 マ・クベ(偽)の密告

ゲンザブロウ氏の相談はやはりゴッグに関することだった。今の状況だと試作機でノウハウが得られるツィマッド社が、他社に比べ提供する技術に対し見返りが大きすぎるのではないか、と言うのがゲンザブロウ氏の懸念だった。簡単に言えば、今の状況だとジオニックやMIPがへそ曲げちゃうよ、最悪出向しているメンバーを引き上げられた上にそいつらクビにされちゃうかもなんて問題に発展しかねないそうな。

え、こんな貴重な経験積んでる技術者切るの?なんでって思うかも知れないが、今回はアッザムの時とは違い、各社の独占している技術をかなり踏み込んで公開しないといけない。ツィマッドは大推力エンジンやジェネレーター系とその制御プログラム。ジオニックは構造材関連にMSの制御系。MIPはメガ粒子砲関連の技術と、ちょっと協力程度で提供するのは難しいものばかりだ。

んで、それを見返りも無しにべらべら喋ると言うことは、その技術者は会社の利益を著しく損なう行為を働いた事になる訳で、会社からそんなコンプライアンス意識の欠如した人間なんて危なくて使えないと言われても確かに文句を言えない状況である。

当然クビになれば、仮に軍で再雇用しても今までのようには行かない。各社のデータベースにはアクセス出来なくなるし、横のつながりだって切れてしまう。もしかしたら会社の方からそれらの技師に自社機体への接触禁止なんて要求も出るかもしんない。それは困る、大いに困る。

 

「ではツィマッドには悪いが、今回の開発過程は各社に完全公開と言うことにしよう。無論提供できる技術に関しては、会社からの承認のあるもののみとする。どうだろうか?」

 

そう言えば、ゲンザブロウ氏もそれなら会社も納得するだろうと残念そうな顔で答えた。

 

「それだと残念ながら各社の技術の粋を集めて!とは行きませんな」

 

多分それはジオンが負けるとこまで行っても無理だと思うよ?

 

「会社が営利団体である以上それはどうしようもない事ですな。苦労をおかけします」

 

それにしても、このくらいのことなら通話で良かったんじゃない?何で呼んだの?って言ったら、突然狼狽し始めるゲンザブロウ氏。何、他に何隠してるの。

 

「ああ、その、いや。そ、そう!実はツィマッドの連中から相談を受けてまして!その内容について大佐の意見を聞きたかったんですよ!ほら、通話ですとちょっと解りづらいかと思いましてね?」

 

明らかに何か隠しているが、そこまで言えないなら無理に聞き出すのは控えよう。

 

「そう仰るなら真意は問いません。基地や兵達に害が無い範囲で、ですが」

 

「それは誓って無いのでご安心を」

 

そう安堵するゲンザブロウ氏に溜息で返す。

 

「…ゲンザブロウ氏、もう少し腹芸も覚えて下さい。その答えでは隠している事があると自白しているようなものです」

 

俺の言葉に、ばつの悪い顔になりながらゲンザブロウ氏は図面を端末に映した。ああ、言い訳って訳じゃ無く本当に相談したいこともあったのね。

 

「あー、ゴッグなんですが、今のレイアウトですと、どうしても排熱がクリア出来ません。大佐の言うセミモノコックで試算してみましたが、それでも容積が足らんのです」

 

そう言って見せてくれた図面は、なんだか一回りほど大きくなって、更にずんぐりと丸くなったゴッグだった。何か出来の悪いカプルみたい。

 

「地上での活動時間延長のために空冷機構を背面に追加しています。ただ、重量が増す分負荷も増しますから、思ったより効果が見込めません」

 

図面横の試算を見てみると、確かに微々たる変化しか見られない。そうだなぁ。

 

「いっその事水冷機構を削除してしまったらどうです?」

 

そんでその分空水両用式の冷却機構を積むとか。

 

「難しいですね。水冷機構で一番容積を食っている貯水ユニットはバラストタンクと兼用しているので外せません。両用ですとサイズがむしろ大型化してしまいます」

 

俺が思いつく位のことはもう試してるよねー。…ん?ちょっと待て。

 

「貯水ユニットとバラストタンクを兼用しているのですか?」

 

「ええ、そうですが」

 

待て待て待て。

 

「この機体はどう浮上するのです?」

 

「それは当然排水し…あ」

 

気まずい沈黙が流れる。それを打開するべく俺は口を開いた。

 

「どうも、この機体の冷却機構には根本的な問題がありそうですな。失礼」

 

そう言って図面を見れば、兼用されているせいでバラストタンクが耐圧殻の中に納められている。そりゃでかくなるし重くもなるわ。しかも肝心の上陸時に十分な水量を確保するため余計にでかくなっている。断言しよう、この機構を考えた奴は馬鹿だ。

 

「…兼用を止めればバラストタンクは小型化出来ますし、空水両用なら貯水タンクは要りません。そうなれば耐圧殻も要りませんからかなり容積が空きませんか?」

 

「た、確かにこれなら…ああ、ダメか」

 

すぐに再計算してくれたが、まだ駄目なようだ。見れば空冷にした分ラジエーターの位置に制限が出てしまい、それが内部機構、はっきり言えばメガ粒子砲と干渉している。

 

「では、レイアウトを根本から弄りましょう」

 

俺の言葉に疑問符を浮かべるゲンザブロウ氏。ふふふ、忘れて貰っては困る。俺は原作知識持ちのチート野郎なのだよ!

 

「腹部に装備している武装を全て移動します。メガ粒子砲は腕に、ミサイル発射管は背中に持って行きましょう」

 

大体何で腹にミサイル詰め込んだと小一時間問い詰めたいが今は良い。

 

「ミサイルは解りますが、メガ粒子砲を腕にですか?随分バランスが変わりますね。それにクローへの動力伝達も考えるとかなり肥大化しそうですが…」

 

「クローに関して言えば、むしろ何故可動させる必要があるか私は聞きたい。他機種同様に携行火器を持たせられるならともかく、相手を殴りつける鈍器を強度を落としてまで動かしたい理由は何でしょう?」

 

「…ものを掴むとかですかね?」

 

「掴むだけなら五本も必要ありません。精々2~3本あれば良い。ついでに大型化して強度を上げれば尚よい」

 

そう言いながら図面を指先でつつく。

 

「ついでですから、MIPが次の水陸両用機に採用する予定のメガ粒子砲を寄こすように言いましょう。腕にあれば射界は広がるはずですから、拡散式を積む必要性は薄い」

 

「それで空いたスペースに冷却系を追加ですか。面白い、ちょっと計算してみましょう」

 

興奮気味に端末を操作するゲンザブロウ氏を見て、俺は満足しながら席を立った。ちなみにシミュレーター室にも行ってみたが、入口に立っていた大尉にお礼を言われたあと、すぐに追い返された。中で乙女の秘密が行われているなんて言われたら退散せざるを得ないと思う。一体なにやってるんだろ?

 

 

そんなことがあったのが二日前、以来良く解らんがジュリア嬢は真面目に訓練に励んでいる。ただ、俺を見ると悲鳴を上げて逃げるようになった。ちょっと傷つく。ちなみに暇なときは訓練に支障が出ない範囲ならシミュレーター使っていいよって中隊のメンバーに伝えたら皆引きつった笑顔になったが、横で聞いていたシーマ少佐が良かったねぇ?って一言言ったらすっごい元気な声で感謝の言葉を述べられた。どうも彼女たちの忠誠心はシーマ少佐に掌握されているようである。

 

「やあ大佐、久し振りだ。活躍は聞いているよ、姉上に随分絞られたみたいじゃないか?」

 

それはさておき、7月に入っていよいよ連邦も色々出来上がっている頃なので、原作知識を使って色々とちょっかいだそうとガルマ様に連絡を取ってみた。開口一番からかわれたけど!

 

「自身の不出来を恥じるばかりです。搭乗員の選定もしておくべきでした」

 

「それでスクールを開いているのか?こちらまで聞こえてきているぞ?是非ウチにも来てやって貰いたいものだな」

 

「スクール?」

 

なんぞそれ?訳が分からないよって顔してたら、ガルマ様が笑いながら教えてくれた。

 

「ほら、大佐がシミュレーターで兵達と訓練しているだろう?あのデータは各方面軍に開示されていてな。先日なんてウチの教導隊の教官がオデッサで研修を受けさせてくれなんて頼んできたぞ?」

 

「受け入れは吝かではありません。むしろ人材交流は積極的にするべきでしょうし」

 

せめて、横の連帯くらい強めないとね。おっと話がそれてるな。

 

「受け入れの件はまた後ほど。本日はガルマ様にお聞かせしたい情報がありまして」

 

「…暗号強度の高い専用のレーザー回線を使ってまで大佐がしたい話か。随分面白い話になりそうだ」

 

バレるとチョット厄介だからね、先に処分されても困るし。

 

「実は、連邦の新兵器及びその運用研究についての情報を入手しました」

 

「なっ!?」

 

驚いた?驚いたでしょ?情報部すら得てない情報だもんねー。

 

「規模や装備の詳細は判明していませんが、どうやら北米の基地で新兵器とそれを運用する兵士の育成が行われているようです。状況からすれば恐らく新兵器はMTあるいはMSかもしれません」

 

「まて、まて大佐。そんな話は聞いたことがない。第一北米だと?連中は我々の目と鼻の先でそんなことをしていると?」

 

混乱しているのも無理はない。なにせ北米の主要な都市はほぼジオンの勢力圏だし、残存しているカリブ海沿岸だって攻められればいつ失陥してもおかしくない。普通に考えればそんなところで新兵器の研究なんぞしないわな。

 

「その盲点を突いたのでしょう。情報部もまさか最前線で新兵器の研究などしているとは考えていなかったのでしょうな。私自身、とある我々のシンパから情報がなければ調べようとも思いませんでしたから」

 

そう平然と嘯いてみせる。無論シンパなんて居ないし、あくまで原作知識ありきで幾つかの古美術商などの伝手を使って食料とかの移動量を確認して貰っただけだ。でも、それだけでも解る事ってあるんだよね。

 

「一ヵ所だけ随分と羽振りの良い基地がありましてね。規模は大したことがないのに食料などが明らかに他所より多く搬入されている」

 

つまり、それだけ多くの人員がそこに居ると言うことだ。隠蔽のために複数の業者を使うまでは良かったが、ちゃんと身元を洗わなかったのは失敗だったな連邦さん。世の中には金をくれればアースノイドもスペースノイドも関係ないなんて連中は山ほどいるぞ?

 

「…成程、成程だ、大佐。確かにこれは秘匿回線を使わねばなるまい。それで、場所は?」

 

「ジョージア州オーガスタ基地。リスクは高いですが、今落とす価値があると小官は愚考します」




原作開始まであと一ヶ月。
と、思ったら後二ヶ月もあるじゃねーか!

更に訂正。
よく考えたらとんでもねえ構造だと編集に突っ込まれたので加筆です。

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