起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない 作:Reppu
その一報が入ったのは、夕食が終わりウラガンの紅茶を楽しんでいる時だった。慌てた様子で当直の少尉が部屋に駆け込んで来たのだ。ノックも何も無かったから、ウラガンが眉を顰めたが、少尉の態度から咎めるより先に話を聞くことにした。
「どうした少尉。何かトラブルか?」
はっきり言って悪い話だと全身からビシビシ伝わってくるから全然聞きたくないんだけどね!
「ほ、報告致します!先ほど北米大陸にて大規模な戦闘が発生!味方MS部隊に甚大な被害が出た模様です!」
その報告に思わず眉を顰める。いや、早い報告は大事だけど肝心なことが何も解らん。
「少尉落ち着きたまえ。その連絡はどこから来た?誰からだ?」
「は、はい。地球方面軍司令部のガルマ・ザビ大佐からであります!至急マ大佐に繋いで欲しいと」
そっちの方が大事な用件じゃねぇか。うーん、うちの連中勝ちに慣れすぎてるのかちょっと打たれ弱いのかなぁ。このくらいで動揺してたら、オデッサ作戦とか起きたら半分くらい失神しちゃうんじゃないか?
「解った。ウラガン、少尉を食堂にでも連れて行ってやれ」
そう言って早速通信室に向かうと、モニターには完全に落ち込んだガルマ様が映っていた。今にも失意体前屈を決行しそうな顔つきだ。
「やあ、大佐。呼び立ててすまないな」
「いえ、問題ありません。先ほどかなりの損害を受けたと聞きましたが」
そう言えば苦しそうな顔になるガルマ様。こりゃ結構な被害っぽいな。
「完全に私の落ち度だ。グフⅡを二個中隊、マゼラアタックも1個大隊失った」
「場所はオーガスタですか?一体何が?」
事前に高射砲の存在は確認していたはずだから、それでは無いと思うのだが。
「実に古典的だが効果的な方法をとられた。障害物だ」
曰く、航空写真などでは解らないように巧妙に配置された巨大なコンクリート塊によってホバー機の行動が著しく制限され、動きが鈍ったところをこれまた隠蔽されていたトーチカや塹壕からの集中砲火で撃破されたそうだ。機動力を過信して突入した部隊の殆どが盾を携帯していなかったのも被害が拡大した要因だという。
「マゼラアタック隊が決死の覚悟で支援砲撃を行なっていなければ、投入した攻略部隊全てを失っていたかもしれん。完全に私の慢心だ」
マゼラアタック隊は175ミリの榴弾では障害物の破壊が困難だったため、経路開設のためにAPHEによる進路上のトーチカへの直接照準を試みたそうだ。幸いマゼラアタックの分離機能のおかげで、搭乗員の多くは生還したものの矢面に立った中隊は全員が戦死、残る中隊も殆どが重傷という有様だそうだ。ちなみにグフ部隊はもっと酷くて実に10名も戦死してる。グフに乗っているのはベテランが多いから、これは数字以上に重い損害だ。
「敵は既にホバーMSに対する対策を取ってきた訳ですか。厄介ですな」
「だが、収穫もあった。まず、オーガスタ基地は制圧した。おかげで何を開発していたかも解ったぞ。大佐の読み通り、連中MTとMSを投入してきた」
「両方とも開発ですか。呆れる国力ですな」
まだまだ全然余裕なのかよ、洒落にならんな。
「だが、まだ両方とも熟成されていないと言うのが戦った兵達の感想だ。MSの方はザクやグフならともかく、グフⅡの相手にはならないそうだ。MTの方も中途半端にMSと掛け合わせたせいで防御力も運動性もどちらも半端すぎると言っていた。尤も搭載火砲の威力だけは侮れないとのことだが」
「つまり、装備面では我々の方が優越していると?」
「MS、MTに関してはな。事実今回の損害も敵が防御施設を十分に整えていたからこそだ。しかし楽観も出来ん、これを見てくれ」
そう言って大佐は幾つかの写真をモニターに映す。
「現物も回収したが損壊が酷くてな、解析には少々時間は掛かりそうだが」
「ガルマ様、これは」
解っては居たけど、もう実戦に投入してきているのかよ。
「ああ、連中はMSに搭載可能なビーム兵器を既に完成させている。これが量産されれば我が方のMSの優位は一気に崩れかねん」
「確かに。ここで手に入れられたのは僥倖でしたな」
ビーム兵器の前には現状のMSでは装甲の意味が無い。加えて軽視されがちだが、弾速の速さと反動の低さも無視できないメリットだ。弾数こそ少ないと思われがちだが、同程度の威力の兵器がバズーカである事を考えれば、サイズ的にもサブウェポンとして携帯しやすいビームライフルの方が優秀だ。
それに、原作で連邦がメインウェポンとして採用したことも納得出来る。なぜなら高濃度ミノフスキー粒子下では余程訓練をしていても連携は難しく、更に三次元戦闘となる宇宙空間では確実に乱戦になる。そうなるとそもそも射撃の機会自体が少なく、あってもその時間は極めて短い。すると必然高弾速かつ高威力の兵器が好まれるようになる。加えてMSは歩兵のように痛みで動きが鈍ったり、止まったりしてくれないし、装甲化された目標だからマシンガンの弾一発では余程運の悪い所にでも当たらない限り損害すら与えられない。しかも補給は潤沢な上に戦力でも上回っているから弾切れになったら後退すれば良いのだ。
末期のジオンがビームライフルの配備に拘ったのも、この当てやすさで新兵の練度の低さを補おうとしていたのでは無いだろうか。まあ敵が採用した兵器を欲しがったという可能性も捨てきれないのだが。
とにかく現在ジオンが手間取っているエネルギーCAPの実物が手に入ったのは、ある意味で連邦のMSを手に入れたことより意味がある。どこぞの白い奴をぶっ壊すより重大な功績になるんじゃ無かろうか。
「こいつを装備した黒いMSにグフⅡ2個小隊が食われている。あの場で仕留めてくれたランス中佐には感謝しかないよ」
「黒いMSですか」
「うん。どうも指揮官用の高性能機ではないか、と言うのが中佐の意見だ。オーガスタにも配備されていたのは1機だけのようだったしな。ただ、量産機もそれ程性能で劣ってはいないし、何より量産機ですらビーム兵器を装備していたという報告が上がってきている」
「ぞっとしませんな」
大陸から叩き出せた欧州や、今回の作戦でほぼ制圧し終えた北米はまだしも、目下攻略中かつ後方拠点が十全でないアフリカや東南アジアはかなり辛い事になりそうだ。
「そこで、相談なんだが大佐。君の基地の戦力を少し引き抜きたい」
その言葉に俺は思わず唸ってしまう。
「既に205大隊がアフリカへ、207大隊が東南アジアへ配置転換予定ですが」
おかげで生産していたドムとグフⅡを予備機として根こそぎ持ってかれた。そのせいで基地の倉庫は久し振りに寂しい事になっている。つうか、これ以上ってもう基地守備隊しか残ってませんけど?
「いや、MSとは別口だ。先日総帥から漸く許可を貰ってな。キャリフォルニアでもMTの生産を始める。ついては君の所からMTの小隊を教導隊として借りたいんだ」
おお、マジか。
「それとアフリカ方面軍が拠点攻略に手間取っていてな。出来ればアッザムを貸して欲しい…2号機はまだ暫くかかるんだろう?」
ザクレロの大量生産のせいでMIPの本社が悲鳴上げてますからね。おかげで一回試作しただけのフレームなんて片手間ですら造ってる余裕無いわ!って切れられたらしい。デニスさんもソロモンで死んだ目してるらしいし、量産体制の確立はまだまだ先になりそうだ。
「欧州方面軍司令部が承知していれば私としては異存ありません。送るメンバーはこちらで選抜しても?」
「構わない。むしろその辺りについて私には知識が無いからね、こちらこそお願いしたい」
後でデメジエール少佐に相談しよう。そう思っているとガルマ様が何やら画面外に向かって叱責した。どうも連絡員かなんかがいきなり入ってきたようだ。うちも言えないけど、結構司令部とか指揮所付きの士官の質が悪い気がする。そんな事を考えながら紅茶を飲んでいたら、報告書を受け取ったガルマ様の顔がみるみる怒りの形相に歪んでいった。
「…大佐。オーガスタ基地の調査が終わった」
ああ、それでその顔か。
「おかしいと思ったんだ。制圧時にかなりの人数を捕虜にしたんだが、中に未成年が多く交じっていてな。念のため捕虜に尋問をしたら大当たりだ!」
そう言って資料を床に叩き付けるガルマ様。正直何処まで捕虜が喋ったか解らないが、聞いていて気分の良い類いの話は出てこないだろう。
「あそこは新兵器のパイロットを養成などしていない。連中、兵器としての人間を作る研究をしていたそうだ…あの子らはその実験体だと、人間をなんだと思っている!?」
良かったな、フラナガン博士。史実路線だったらガルマ様に人誅されてたかもしれんぞ。
「定石ではありますな。気分の良い話ではありませんが」
「大佐、君はこの行いが許容出来るのか!?」
「理解と許容は全く別ですよ、ガルマ様。単純に一軍人として連中の心中は理解できると言うだけです。人と兵器の違いはあれど、私も同じようなことをしていますから」
使えないものを使えるようにして戦場に送り出す。単純な話だ。まあ、俺個人として言わせて貰えば、不安定かつ運用出来る期間も恐ろしく短い強化人間なんてメリットが感じられないんだが。そんなことに将来の戦力を使い潰せる連邦は随分とお大尽様だ。
俺の言葉をどう解釈したか解らないが、暫し俯いた後ガルマ様は俺に宣言した。
「大佐、私は決めたぞ。この戦争は絶対に勝つ。そして地球連邦という組織を完全に破壊する。これからの人類のために、あの組織は不要だ」
ご心配掛けまして申し訳ありません。
取り敢えず、あちら様から何らかのアクションが無い限りこのまま公開させて頂こうと思います。
沢山の応援メッセージ有り難うございます。拙い文ですがこれからも頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します。