起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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今週分です。


第四十二話:0079/07/22 マ・クベ(偽)と新しい力

「こんな事もあろうかと!既に用意してありますぜ大佐ぁ!」

 

ニムバス大尉の件から格闘装備を保持しつつ射撃できたら良いよねって技術部に話したら、待ってましたとばかりに鼻息荒くゲンザブロウ氏が声を上げた。絶対それ言いたかっただけだろ。デニスさん早く帰ってきて、このままじゃ技術部がロマン研究会にジョブチェンジしちゃう。そっちは間に合ってるんだ、ジオン的な意味で。

 

「とは言え別に俺たちのオリジナルって訳じゃ無いんですがね」

 

そう言って見せてくれたのは、いつの間にか大型のバックパックと可動式のハードポイントを追加された俺専用ドムだった。最近格納庫で目にしていなかったから奥にでも仕舞われたのかなって思ってたら新装備のテストベッドになってたでござる。それぞれ別々に研究用として予算申請されてたから全然気付かんかった。

 

「ゲンザブロウ氏、お願いですから次からは一声掛けて下さい」

 

さすがにMSは軍の資産なんで勝手に弄られると困る。一時期エースが機体のリミッターを甘くして使うというのが流行って、それを真似する兵が続出。結果信頼性はかなり高いはずなのにザクⅡの稼働率が6割くらいまで落ち込んだことがある。あれのせいでチューニングまで一々申請が必要になったし、それどころかS型作るって事になったんだよなぁ。通達されたジオニックの設計部が頭を抱えていたのをよく覚えている。そんな訳で、部品が変わるくらいの改造まで来ると、上にちゃんと申請せんといかんのだ。大体は事後報告でも許してくれるけど。

 

「それでこれがお話しした内容への対策ですか。成程」

 

そう言って実機を見つつ、渡された資料に目を通す。うんうん、大体想定してたのと一緒だ。こんなのを仕事の片手間で思いついて作ってみたりしちゃうあたり、やはりジオン脅威のメカニズムである。

 

「作業機時代に使用していた補助アームとFCSを連動させ、保持した火器を運用する。さしずめ背面装備とでも言った所ですか」

 

俺がそう言えば笑いながら返事をするゲンザブロウ氏。

 

「まったく折角驚かせようと思ったのに。甲斐が無いですな、大佐」

 

そいつは失敬。

 

「十分驚いていますよ。ドムの実用化段階で私も提案しようとしたが無理だと諦めたのですから」

 

なんせ元になった補助アームはちょっとした固定の補助とか、材料の運搬とか簡単かつ負荷の掛からない作業にしか使えなかった。無理も無い、元々ザクのモーションは人間の動作をサンプリングして作っているのだ。つまり、ジオンのMSは基本的に人間に無い部位は動かせるように作られていないのである。それに補助アームを主腕並みに使おうとすれば、強度確保のために質量の増加は避けられない。AMBACの都合上複数の四肢を持てば、それだけ計算が複雑になる点もこれらの発展を阻害した要因だろう。

 

「しかし良く実機を組めるだけのデータが準備できましたね?」

 

なにせ重量バランスが完全に変わっているからザクのデータを弄ってと言う訳にはいかないだろう。恐らく一から構築し直しているはずだ。しかもFCSと連動させるなら、作業機時代のデータも使えない。あれ補助アームも完全にマニュアル制御してたからなぁ。

 

「そこは人海戦術で。本気でやりましたからむしろミオンの時より自信作ですわ」

 

声を掛けたら整備班のメンバーがノリノリで廃材から人が背負うダミーを用意して、手空きの海兵隊員やら基地パイロットやらが暇さえあれば背負ってサンプリングしてたそうな。え、俺一回も見てないんだけど。

 

「びっくりさせようと隠れてやっていましたからなぁ、エイミー少尉を味方に出来たのが大きかったですな」

 

最近ウラガンと一緒に秘書の真似事しててくれたからね!そら俺の行動筒抜けだわ。実際の動作チェックはシーマ少佐が入念にチェックしてくれたから、この世で一番完成度の高い制御OSだと自慢するゲンザブロウ氏。スイッチ入っちゃうと何処までも突っ走ってしまうのは技術屋の悪い癖だと思う。

 

「頼もしい事です。ちなみに現行機の改修は出来ますか?」

 

ワンオフですとか言われたらもういっそシーマ少佐にプレゼントしちゃおう。皆には悪いけど、どうせならよく使う人が良い機体に乗った方がこの機体のためでもあるだろう。

 

「そこは問題ありません。背中のパネルと推進器を引っぺがしてコイツに換えるだけです。ああ、後OSの入れ替えは必要ですが現行のコンピューターで全く問題無いそうです。チバ中尉が太鼓判押してましたよ」

 

まじか。

 

「ゲンザブロウ氏。このユニット組んで欲しいと言ったら、どのくらいで幾つ用意出来ますか?」

 

そう聞けばゲンザブロウ氏は悪い笑みを浮かべて端末を取り出した。

 

「製造ライン無しなら日に2~3が限度ですな、それも組むだけで取り付けは別になります…で、ここに製造ラインの図面と工期の試算がありますが、どうしますかね?」

 

このおっさんやっぱりチートだわ。

 

「素晴らしい。すぐに施工を始めて下さい。上の方には私が上手く言っておきましょう」

 

そう言った所で更に笑みを深めたゲンザブロウ氏が最後の爆弾を投げてきた。

 

「承知しました。それと大佐、ドムなんですがね。今の改修をすると内部容積が大分空きましてね。それでMIPの連中と検討したんですが…、MIPが試作している水陸両用のジェネレーターが載るんですわ」

 

え、それって。

 

「ジェネレーターと接続せにゃならんとか、まあ色々制約はあるんですが…積めますぜ、ビーム兵器」

 

とんでもねぇ事をさらっと言ってくれたゲンザブロウ氏に、直ぐに報告書を纏めるようお願いして、俺は慌てて報告の準備に入った。

まず背面装備の件はすぐに伝えなければならない。何せ既存の機体を改修可能だから、安価に戦力を強化できる。加えて今現在もドムは増産中だから、許可を得るのは早ければ早いほど後で楽になる。

一方ビーム兵装については幾つか問題がある。取り敢えず最大の課題はジェネレーターの確保だ。何せズゴックに使用予定のジェネレーターは最近開発が完了したばかりの大出力のものだ。で、問題なのはジェネレーターの生産性だ。何せ出力はドムの倍近いのにサイズはほぼ変わらないという奇跡の一品なのだが、おかげで複雑化しており従来のものに比べると価格も上がるし、工数もかかる。そうなれば当然ドムの生産性も下がるので、それを許容するかどうかは俺の一存では決められない。

ただ、総司令部の連中こういう事に疎いからなぁ。性能上がるなら良いじゃんくらいのノリで簡単に承認しそうだ。もしそうなったらMIPに頼み込んでウチかキャリフォルニアにジェネレーターの製造ラインも降ろして貰おう。出来れば両方だと尚よいが。

そうこうしている内にゲンザブロウ氏が改造計画の概要と大体の数字を纏めた報告書を持ってきた。ジェネレーターに直接接続する方式をとる必要があるから仮にビーム兵器対応にするならバックパックにビーム砲を装備した専用のパッケージになるとのこと。

 

「つまり背面装備とは選択式になると?」

 

「ですな。まあジェネレーターを載せ替えた機体に関してはですが」

 

既存の機体だとそもそもビーム兵器ドライブできんからね。しかしこう考えるとエネルギーCAPって偉大な発明だよな、ドムと同程度の出力でビーム兵器使えちゃうんだもん。

 

「加えてユニットコストは現行機の…2倍。2倍ですか」

 

「ジェネレーターとビーム砲の価格は現在の試算ですから、量産すれば多少はマシになるでしょう、それでも良くて2割ですかね?」

 

なんか、一部のエース向けとか言って少数生産される未来が見えるわ。

 

「エネルギーCAPが実用化するまでの繋ぎにはなりそうですかな」

 

正直総合的に見ればあまり良い機体とは言いがたいが、今このタイミングでビーム兵器を使用できるMSが存在すると言うことが重要だ。

 

「あちらさんはもう実用化しているんでしたか」

 

「ええ。ですからこちらも用意せねばなりません」

 

武装で優位に立てていないと錯覚させられれば、まだ戦力として十分な数のMSを用意出来ていない連邦は消耗を避けようとするだろう。そうなれば大規模な攻勢では無く小規模なゲリラ活動に変えるか、基地に引き籠もって防備を厚くするかのどちらかだ。そしてそのどちらを取られても今のジオンにはメリットになる。文字通り地球の半分近くを勢力下において居る現状、時間はこちらの味方だ。

 

「連邦に時間を浪費させる。今の我が軍にとってこれ程価値のあるものは無い」

 

 

 

 

「なあ、良い知らせと悪い知らせがあるんだが聞きたいか?」

 

食堂の窓側の席で食事を取っていた少尉に同僚が声を掛けてきた。双方共に基地では古参のMSパイロットであり、ホバーへの最後発の転換組だ。

 

「なんだ?レビルが死んで戦争が終わるのか?」

 

「はっはっは、それなら今頃基地を挙げてのお祭り騒ぎだろ。んで、どっちから聞きたい?」

 

聞かないという選択肢は無いんだな。鳥肉のソテーをつつきながら溜息交じりに応える。

 

「なら良い方から」

 

「おう、例のサブアーム付きがシミュレーターで解禁になるってさ」

 

「もうか、早いな」

 

確か検証が始まって一月も経っていない。試験をやっている連中以外にも使わせるという事は、今後はあちらが標準機として生産されると言うことだろう。

 

「海兵隊の連中から聞いた話だからな。間違いないだろう」

 

「やれやれ、俺たちの機種転換が終わる頃には連邦軍が居なくなっちまいそうだ。んで、悪い方はなんなんだよ?」

 

今の話からメリットしか感じられない少尉が首をかしげると、話題を振ってきた同僚は溜息交じりで口を開いた。

 

「悪い方はな、サブアーム付きにもう大佐が乗ってる」

 

「まだ強くなるのかよあの人!?」

 

次辺りチーム戦なら撃墜できそうだと考えていた少尉は思わず叫び、そして深々とため息を吐いた。賞金獲得はまだ随分先になりそうである。




日系技術者の言いたい台詞No1はこれだと確信しています(偏見)
サブアームはサンボル版リックドムを見て貰えば解りやすいかなと思います。

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