起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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今月分です


第四十四話:0079/07/28 マ・クベ(偽)の采配

「大分形になってきましたな」

 

ツィマッド社のMS製造工場で仮組みの終わったゴッグを見上げながら、隣に居るエリー・タカハシ技師に話しかけた。一瞬子供かと思う程小柄な女性であるが、ヅダの頃からMSの開発に関わっていたり、ホバーMSの開発を提案したりとツィマッド社の秘蔵っ子である。

オデッサにはドムの生産ライン立ち上げの頃から居るのだが、実はあまり接触を持っていなかった。と言うより俺が避けてた。

 

「組み上がってからが本番です。何処かの素人さんが適当を言ってくれたのをここまで形に出来るのですから、流石は我が社ですね」

 

肩まで伸ばしたさらさらの銀髪を揺らしながらニコニコと毒を吐くエリー女史。うん、やっぱりまだ根に持たれてるな。

 

「頂いた報告書ですと既に3号機まで組み始めて居るんでしたかな?パイロットは海兵隊を使いたいと聞き及んでいますが」

 

「ええ、キャリフォルニアの連中がへそを曲げてまして。まあ、自分が作った機体をここまでいじり回されたら拗ねる気持ちも解らないでは無いですが」

 

水中用だって大目に見られてたコックピット周りもザクに合わせたからなぁ。最終的に共有出来る部品モノアイだけだったっけ?

 

「どうせMIPの新型が出来ればお払い箱になる機体ですからね。名前が残るだけマシでしょう」

 

昨日、正式に水中用MSの次期主力としてズゴックが発表された。ウチで造っているこいつが間に合わなかったハルバさんは涙目になってたし、本格的にフロッガーが要らない子になったからジオニックの営業さんもちょっと残念そうな顔してた。ただ、ジオニックはアッガイの採用が決まって居るからそこまで辛く無さそうだった。

 

「そう言えばジオニックの水陸両用にも口出ししたとか。どうせならアッグみたいに開発中止に追い込んでくれればこの子の未来も明るいと思いませんか大佐?」

 

とんでもねえ事言いやがるなこの娘っ子は。

 

「無茶を言わないでください。そもそもアレとこれではコンセプトが全く違います。あちらは隠蔽重視の偵察機、こちらは精鋭向けの高性能機ですよ?」

 

「ならジェネレーターとかアクチュエーターとか専用にさせてくださいよー。そうしたら性能が後10%は向上する筈なんですよー」

 

裾ひっぱんな、子供か。

 

「おい、今子供かとか思っただろう?」

 

何故ばれたし。

 

「思っていません。重ねて申し上げますが無茶を言わないで頂きたい。貴方の言葉を借りるなら造ってからが本番でしょう。部品調達が難しくてメンテナンス性が悪い機体など問題外です」

 

「ちっ!」

 

早くデニスさん帰ってこないかなぁ、この子と直接やりとりするのきっついんだよなぁ。ゲンザブロウ氏はドムにかかりっきりでこっちは嬢ちゃんに聞いてくんな!って丸投げだし。

 

「調整も含めて起動試験は明後日辺りに出来る予定です。それじゃパイロットお願いしますねー」

 

そう言って手をひらひらさせると何処かへ消えてしまうエリー女史。本当に早くデニスさん帰ってこないかな。

 

 

 

 

「またあいつか!?」

 

総司令部経由で送られてきた開発中止命令を床に叩き付け、ネヴィル技術大佐は絶叫した。そもそものケチのつきはじめは彼が担当していた地球侵攻用兵器について、件の大佐からクレームが来たことだ。その後彼の関わった開発計画に口出しをすること数件、挙げ句の果てにはこちらがキャリフォルニアにて進めていた地上用MSの生産へちょっかいを出し、その結果大口の契約になるはずだったグフの調達数が大幅に削られてしまった。

幸いにして改良と平行で進めていた飛行型の有用性が認められたため、ジオニックとの関係もそこまでこじれなかったが、それについて口添えし、更には調整まで手伝ったのがあの男だと思うとネヴィルは実に苦々しい気持ちになる。

よくその事で厭味を言っていた宇宙軍の装備を担当している同期の大佐が、話も通されずに新装備の調達と運用が決まったと落ち込んでいた時は、久し振りに良い知らせだと気持ちが上向いたが、それを行なったのがあの男かと思うと癪に障る。

 

「なんなんだあいつは!?俺たちに何か恨みでもあるのか!ああっ!?」

 

飾ってあった観葉植物の鉢を蹴り倒し大人げなく暴れた後、応接用のソファへ身を投げ出し深々と息を吐く。この所、あの男のせいで技術本部の評価は下がる一方だ。肝心の本部長であるシャハトはいつもの日和見を遺憾なく発揮していて、幾らこちらが訴えても聞こうとしない。挙句、

 

「前線での評判は良い。つまり兵が欲しいと思っている兵器が届いて居るのだ。結構な事じゃ無いか」

 

などと言い出す始末だ。これだから政治の解らない技術屋は困る。

 

「ふん、だがアッグシリーズを中止したところで代替を用意出来まい。結局の所、我々技術本部が無くては話にならんのだ」

 

少々調子に乗っているようだがそろそろ高転びするだろう。その時に無様に泣きついてくるであろう事を想像して、ネヴィルは意地の悪い笑顔を作った。

 

 

 

 

激しい掘削音をBGMにアホみたいな顔でモニターを眺める。部屋には俺以外にウラガン、エイミー少尉、シーマ少佐に試験を直接監督していたシン大尉とアナベル大尉がいる。

 

「やはりダメだろう、これ」

 

「ダメでしょうなぁ」

 

「ダメではないかと」

 

「MSは乗るのが専門ですが、これは…」

 

ウラガンとエイミー少尉は慣れたコンビネーションで紅茶を入れている。ちなみにデメジエール少佐も誘ったんだけど、

 

「MS?作業用?解らんからパスで」

 

と言って新たに送られてきた戦車兵の教練に行ってしまった。その行動、大正解です。

 

「報告書にも書きましたがとにかく騒音が激しいです。隣の坑道からクレームが出ました」

 

余程激しく文句を言われたのか、顔をしかめながら報告してくれるアナベル大尉。実際の作業映像を見ても確かに掘削音以外聞こえない。坑道戦術なんて中世から使われている古典的戦術だ。こんな馬鹿でかい音を出していたら速攻でアンダーグラウンドソナーに捕まるわ。更に横に居たシン大尉も続けて問題点を指摘した。

 

「ドリルも問題ですな。掘削量にもよりますが、かなりこまめに休ませませんと焼き付きます」

 

掘削ドリルと言えば冷却剤を掘削部に噴射して焼き付きを押さえるのが一般的なのだが、見る限りそんな機構は無い。そら休ませるしか無いわな。

 

「どのくらいかの目安はあるかね?」

 

俺の問いに顎をしごきながら困った表情になる大尉。

 

「穴掘りは専門外ですからなあ。お嬢さん方に聞いた限りだと完全に勘頼りのようですが」

 

「うん、後でゲンザブロウ氏にでも聞いてみよう。しかしどうにもならんな、これは」

 

「一応、掘削速度は従来の掘削機よりは早いですな。問題は排土が間に合わん事ですが」

 

そう、普通にウチで使っている掘削用の重機より掘るのは早い、けれど掘った土を排出するコンベアは既存のものなのですぐに土が堆積してしまう。あまり知られていないが掘削後は余計な隙間が増える分、掘る前より土の体積が増してしまうのだ。だから随時土を運び出さないと機体が生き埋めになってしまう。所で今はテストなので鉱山にある重機とコンベアで残土を運び出しているけれど、これジャブローではどうするつもりなんだろう?加えて突っ込むなら、粉塵が出まくる環境下でホバー移動なんてするもんだから、埃を巻き上げるわ、ホバーが強力で残土を吸い込むわで頻繁に吸排気機構のメンテナンスが必要になる。使用環境と仕様が全く合っていない。やっぱりコイツの設計者は酸素欠乏症なんじゃなかろうか?

 

「掘削は宇宙でもやっていただろうに、何故気付かん?」

 

「無重力の宇宙では掘り出した残土が勝手にある程度退いてしまいますからなあ。掘削現場でも採取した鉱物用の輸送コンテナはありましたが、排土用は無かったと記憶していますよ」

 

受け取った紅茶をかき混ぜながらそう言うのはシーマ少佐だ。ああ、幾つか小規模な採掘衛星とかの制圧してるから、それで知ったんかな?

 

「つまり、全く考えてなかったと。有り難う諸君、この話は上に上げておく」

 

「あー、それなんですが。大佐一つお願いしても?」

 

申し訳なさそうに手を挙げるシン大尉。何だい?言うてごらん?

 

「どうした、シン大尉」

 

「あの試作機、何機か都合出来ませんかね?」

 

なんですと?

 

「自分からもお願いしたいのですが。都合はつきませんでしょうか、大佐」

 

え、アナベル大尉も?

 

「待て待て、先ほどの話だと使えないという事では無かったか?」

 

その言葉に困った顔になる二人。

 

「地中侵攻には全く使えません。が、掘削用重機としては優秀でして」

 

「騒音を気にしなくて良いならドリルの冷却機構を追加すればいい訳ですから、露天掘りの鉱山などではかなり作業能率の向上が見込めます」

 

「でしたら足回りは履帯にした方が良いでしょうなぁ。ホバーはダメでしょう」

 

聞けば、操作感は戦前にリースしてた作業機械に近くて、そちらの操作経験がある作業員がかなりいるとのこと。搬入する際に見られて、あれ欲しい!って要望も出てるらしい。どうせ中止にするからって機密保持を徹底しなかったのが不味かったな。

 

「…解った、一応ガルマ様に問い合わせてみよう」

 

その後、ゲンザブロウ氏に見つかり、高性能重機として生まれ変わったアッグは採掘作業や陣地構築、更には戦後の復興にと大活躍する事になり。設計者と計画者は称賛されたものの、その話をすると途端に不機嫌になったという。




ガウのご意見、色々有り難うございます。
そちらもいずれ書こうと思います。まだ原作まで1月もあるしね!
…これいつガンダム出るんだろう?

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