起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない 作:Reppu
色々外伝的なものも妄想するんですが文章になりません。
ジャン少佐の物言いに、開示は別に構わんけど、他の企業にも開示するよ?ってツィマッド本社に言質を取ってデータ渡したらホクホク顔で帰って行った。リックドムよりマシな物を作ってくれることを期待しようと思う。それから中央アジア方面に展開していたマルコシアス隊をキシリア様にお強請りしたら、なんか色々諦めた顔で承知してくれた。元々無駄に多くなっている特別編成の部隊を統廃合しようという動きが出ていたので今回は有り難く乗らせて貰った。ちなみにマルコシアス隊の戦果競争方式はキシリア様が思いついた方法らしく、思いっきり失敗したことについて落ち込んでいた。
「ダグ・シュナイド大尉なら上手く手綱を握れると思ったのだが…」
切なそうにそんなことを仰っていたが、まあ無理よな。各隊で戦果を競争なんてすれば、ライバルが失敗して喜びこそすれど、フォローしてやろうなんて思う奴は少数だろう。その辺も考慮して他部隊のフォローなんかも査定する筈だったのだが、つまりそれは助けられたらライバルが得をする訳で、その結果作戦中助けない、関わらないなんていう暗黙の了解が部隊内で出来てしまっていたという。何それ馬鹿なの?死ぬの?
そんな連中なので基地に来ても非常に態度が悪い。いや、上官に逆らうとかはないんだけど、とにかく他の隊にけんか腰というか攻撃的な態度なのだ。どうしようかと悩んでいたら、デメジエール少佐とシーマ少佐があっけらかんと言ってきた。
「馬鹿に言っても無駄です。体に覚えさせるのが手っ取り早いでしょう」
「大佐が相手をしてやれば宜しい。その後に我々と大佐の訓練を見せれば嫌でも解るでしょうなぁ」
「アレを訓練と呼ぶのかね…」
シーマ少佐の言っている訓練とは、実機を使ったものなのだが、その内容が俺VSデメジエール少佐、シーマ少佐、シン大尉にアナベル大尉、そこにニムバス大尉とマリオン少尉が加わった1対6の変則マッチだ。はっきり言う、アレは訓練ではなくて良くて狩り、悪く言えばリンチだと思う。内容としては、大体少佐ズに泣きそうになるぐらい砲弾たたき込まれてる中、鬼みたいな速度で肉薄してくるシン大尉とニムバス大尉の斬撃に追い立てられ、息を吐く間もなく情け容赦ないアナベル大尉とマリオン少尉の狙撃を受ける。今のところ10分以上生き延びられたことはない。先日キリマンジャロを落として戻ってきたヴェルナー少尉が加わりたそうにこちらを見ていたが勘弁して欲しい。こちとらとっくにオーバーキルされてんだよ、なんで味方が増えないんですかね!?
「大佐は大事なお体です。つまり死ぬことは許されません。故にあらゆる状況から生還する技術を身につける義務があります」
断言するが、あの戦力から生還できるなら天パ付きの白い奴からでも生き延びられると思う。いや、断じてやるつもりはないが。
「しかし、それなら他のパイロットでも良いんじゃないか?」
いや別に訓練が嫌な訳じゃないんだ、MS乗るのも楽しいし。ただここの所実機訓練してるとウラガンが冷たい目で何かを訴えてくるんだよなあ。
そう言えば二人は良い笑顔で言い放った。
「やるなら徹底的にやるべきです」
「寝ぼけてる馬鹿を起こすには刺激は強ければ強いほど良いですからなぁ」
そんな訳でダグ大尉を呼び出したら、え、何言ってんのこの人達、正気?って顔された。うむ、然もありなん。
「機種転換に向けての実技指導を兼ねる…でありますか。いえ、それは問題ありませんが、指導者が大佐と言うのは?」
割と当たり前の反応なのだが、残念ながらこのオデッサでは通じない。
「レクリエーションの一環さね大尉。それに自分たちの指揮官がMSに通じているとなれば指揮にも信頼が置けるってもんさ」
そら、知らないより知ってた方が良いに決まってるけど。俺は見てしまった、少佐の目が笑っているのを。アレ、完全に玩具見つけた時の目だ。
「は、はあ。しかし恥ずかしながら我が隊の者は加減というものが解らん連中でして…万一にも大佐殿にお怪我などをさせてしまっては」
そうダグ大尉が言えば、ツボにはまったのかデメジエール少佐が吹き出す。
「大丈夫だ、大尉。大佐にその心配は不要だ、ここに居る全員が保証しよう。ああ、もしかしてとても見せられたものじゃない練度なのか?ならば仕方ない、他の連中を見繕うが」
その言葉に明らかに怒気を発するダグ大尉、そらそうだ。
「見せられないほどであるなら仕方ないなあ?そうだ、丁度今訓練中の新兵がいる。あれなら良い勝負になるかも知れません。ねえ大佐?」
そこで、何で俺に振る!?ほら、ダグ大尉完全におこじゃんか。
「二人とも、あまり挑発するな。すまないな大尉、ウチの連中はこの手の事が大好きでね。断ってくれても構わない、それで君達に不利益になるような事はしない。約束しよう」
二人をたしなめた後そう言えば、何やら腹の据わった、ついでに目も据わったダグ大尉が低い声で答えた。
「いいえ、問題ありません。ただ、先ほど申しましたとおりウチの者は加減の出来ん連中です。本当に宜しいのですね?」
あ、これは完全にやる気完了してますわ。
「ああ、構わないよ。内容は実機での演習で良いかな?」
「はい、構いません」
おお、即答。これは相当頭にきてますね。
「結構。では1300時より実施といこう」
俺の言葉に素早く敬礼し、承知した旨を口にするダグ大尉。それを見ていたデメジエール少佐が楽しそうに口を開いた。
「午後なら隊の連中にあまり飯を食わないように言っておいた方が良いぞ大尉。掃除も大変だからな」
だから挑発すんなって!
「…っ!失礼致します!」
顔を真っ赤にして大尉が退出する。扉が閉まったところで俺は盛大に溜息を吐いた。
「二人ともからかいすぎだ。ダグ大尉まであれでは冷静さを失ってしまうぞ?」
そう言えば先ほどまでの雰囲気とは打って変わって冷静な顔になった二人が口を開く。
「ダグ大尉も少々難がありますな。あれでは指揮官ではなく親父です」
「ガキのお守りなら仕方ないとは思いますが、そのまま戦場に出て来ているのは頂けませんなぁ。あれはいずれ部下も味方も殺すタイプです」
これでまだ一般的な部隊なら大過なくやれるだろうが、兵士として半人前の連中が部下では確実に悪い方向に働くと言うのが二人の評価だ。曰く隊長ではなく親父として接しすぎているため、部下に甘えが生まれる。甘えは統制を緩め、独断や不服従の温床になる。特に精神的に未熟な若い兵士なら尚のことだ。
「おまけに例の評価方法ですからな。あんな方式は新兵に死ねと言っているのと変わりません」
実際原作だと統制しきれずに部下を戦死させているからなあ。
「死人が出ないうちに彼らがここにこられたのは僥倖です。ですからたっぷりと教育してやりましょう」
そう言って笑みを浮かべる二人を見て、じゃあ二人が教育したってよ、最近ウラガンがMSに乗ると冷たい目で見てきて怖いんだよ。なんて思いながら諦めの溜息を吐いた。
まあ、契約もある事だしここは必要経費と考えよう。
「では、歴戦の新兵君達の教育といこう」
「つまり、我々は完全になめられている。そう言う事ですか大尉?」
幾分悩んだが、ダグ・シュナイドは基地司令の執務室の会話を包み隠さず隊員に伝えることにした。挑発的な言葉だったため聞いた時点では随分と頭にきたが、少し時間が経ち冷静になり始めると少佐達の意図がおぼろげながら感じられるようになったのだ。
(あれは確実に試されていたな)
親子ほども年の離れた隊員に対し、自身は隊長として接してきたつもりではあるが、それが十全であったかと問われれば、返答に窮すると感じてもいた。
事実、ブリティッシュ作戦以降欠員こそ出してはいないが、幾度か危険な状況には陥ったし、地上侵攻に参加してからは隊員の突出を諫めることも多くなっていた。
「ふん!大佐だかなんだか知らないが、俺たち歴戦のベテランに新型に乗ったくらいで勝てると思っているのか?」
「だが、その大佐がオデッサデータの制作者だと言うぞ?」
オデッサデータとは2ヶ月ほど前から地球方面軍各地に配布されているエグザンプルデータだ。ホバー機が中心だが非常に有益なデータであり、その中でもMSの個人戦闘の最高難易度に設定されているドムは正に理不尽な強さで、勝つことよりどれだけ粘れるかが競われるほどだ。
「ここにはジブラルタルの英雄がいるんだぜ?あのデータはドムだし、大方手柄をその大佐が横取りしたんだろうさ」
そう言って鼻を鳴らすギー・ヘルムート軍曹を見てダグは少佐達の懸念が正しいことを実感すると同時に、取り返しがつかなくなる前にこのオデッサへ呼ばれたことを感謝した。
「相手にどのような意図があれ、俺たちのやることは変わらん。遠慮は要らん、大佐殿にお前達の実力を見せてやれ!」
故に、あえて煽るような台詞を吐く。今まで半端にしてきた事の清算をするために。
(これを機に俺も鍛え直そう。教え導くなど、俺にはまだまだ過ぎた領分だ)
密かにそう決意を固めつつ、息巻く部下達をダグは見回した。さて、この中で何人が心を折らずに兵士を続けられるだろう?
メインヒロイン脅威の2話連続出演!これでヒロイン人気もV字回復間違いなしですよ!