起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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夏休み!


第五十九話:0079/09/04 マ・クベ(偽)とネヴィル

「これはこれは、誰かと思えばあのオデッサ基地司令殿ですか。随分と多忙と聞き及んでおりましたが、態々私ごときに時間を割いて頂けるとは光栄の極みであります」

 

通信に出たと思ったら何か早口で皮肉られたでござる。え、そもそもアポイントメント取ったの俺だよね?3回も拒否られたけど。

 

「初めましてネヴィル大佐。本日はお忙しい所を…」

 

「ええ全くです。時間は非常に貴重だ。大佐も同意見とはとても喜ばしいことです」

 

そう言って態々こちらの言葉を遮ってくるネヴィルさん。はっはっは、そっちがその気ならおいちゃんも考えがあるぞう?

 

「では、率直に。使い道の無い駄作はもう結構なので使える装備を送って頂きたい。ああ、あれこれ考えて頂かなくて結構ですよ。欲しいものはこちらで纏めてお送りしますから。あなた方は私たちが欲しいと言うものを黙って造っていれば宜しい」

 

俺の言葉に余裕たっぷりといった姿勢でカップを口に運んでいたネヴィル大佐が固まり、表情の抜け落ちた顔でこちらを見てくる。何だよ、そっちに合わせてやったんだぜ?煽り合いはここからだろうが。

 

「駄作…ですか。我々の作品が無ければ戦えもしないくせに大きく出る」

 

「確かに武器無しで戦えなどとは将として言えませんな。しかしまさか貴方のアレが武器だと仰るので?これは驚いた。是非とも前線で使い方を教示して頂きたい。何分前衛的すぎて誰も理解できませんでな。ところでド・ダイ以外は何をお造りになられたのです?」

 

因みにネヴィルさんの代表作はキュイだ。正直あれもどうかと思う、あとマゼラアタック。加えてあのアッグシリーズも手がけたらしいのでこのおっさんの脳味噌は絶対変色していると思う。

 

「おやおや、自身の無能を兵器のせいにするとは。流石は戦争屋ですなあ?道具の使い方も知らんとは」

 

余裕の笑みを浮かべているが残念、目が笑えてないよ。

 

「おや、ご存じないのですか?誰も使えないものは道具では無くガラクタと呼ぶのですよ。ああ、誰が使っても駄目なものも同じように呼ぶようですが。そう言えば先日正式にマゼラアタックの生産が中止になりましたな」

 

俺の言葉に口元に運んでいたカップをゆっくりとソーサーに戻すネヴィルさん。感情が抑えきれていないのか、はたまたそう言ったご病気なのか手が震えてカップとソーサーがガチガチと不協和音を奏でている。うんうん、こうかはばつぐんだ!

 

「…話がそれてしまっていましたな。それで、今日はどう言った御用向きですかな?」

 

二度ほど紅茶を一気飲みしたネヴィルさんがそう笑顔で聞いてきた。先ほどまでの会話は無かったことにするらしい。中々に紳士である。

 

「実はゲシュペンストに関する開発依頼なのですが」

 

俺も倣って笑顔でそう切り出すとネヴィルさんは眉間にしわを寄せた。

 

「アレでしたら先日対応する兵器をお送りしたかと。お気に召されなかったようですが」

 

お気に召さなかったと言うか。

 

「我々としてはまずMSの生残性を確保したいと考えております。ネヴィル大佐のおっしゃる通りでしたら、ビーム兵器さえ無力化できればMSで十分対処可能でしょう」

 

俺の言葉に考え込むネヴィルさん。流石技術将校、そっち方面の話になった途端表情が変わった。俺が黙ってみていると、考えがまとまったのか重々しい口調で確認してきた。

 

「つまり、MSに搭載可能なIフィールドジェネレーターを造れという事ですな?」

 

ちげえよ!いや、違くねえけど!

 

「出来るのですか?」

 

「MSのサイズが現在の3倍程度に出来れば可能です」

 

一瞬期待して聞き返してみたけど、やっぱり愉快な回答が返ってきた。3倍とかビグ・ザム並みじゃねえか!

 

「我々が欲しいのは現在運用しているMSに搭載可能な対ビーム装備です。安価で改造が容易であれば尚よい」

 

「…つまり、安価で取り付けやすい小型Iフィールドジェネレーターですか」

 

「出来るのですか?」

 

「今から研究すれば恐らく…10年後くらいには」

 

戦争終わってるよ!つうかそんなに戦ってたら人類滅ぶわ!

 

「一旦Iフィールドから離れましょう。対策は早急に行いたいのです。残念ながら10年は待てません。…そうですな、熱吸収率の高い物質を機体表面に塗布するとか、そう言った手軽な方法はありませんか?」

 

確かゲルググのシールドに耐ビームコーティング技術が使われてるとかいないとか、どっかで読んだ気がする。

 

「確かMIP社がそのような技術を開発していましたな。しかしアレは時間稼ぎにもならんでしょう」

 

曰く、先日鹵獲したビーム兵器と同等の出力のビームが直撃した場合、現状塗布されている塗料と同程度ではほぼ効果が無いとのこと。んじゃ、どんくらい塗れば良いの?って聞いたら。

 

「照射時間にもよりますが、最低でも20ミリ。複数回の射撃に耐えたいならその倍は必要でしょう」

 

そしてゲシュペンストに耐えるだけなら20ミリでも大丈夫かもしれないが、実機の数値が解らない以上確約は出来ないと言うのがネヴィルさんの意見だ。

 

「ついでに言えば現地での塗布処理もペンキを塗るようにはいきませんからな。専用の設備が必要です。簡単にはいきません」

 

異物が入っちゃうと途端に性能が下がるらしい。だもんで、企業側も使う場合は予め塗布して被弾したら丸ごと取り替える、あるいは最初から使い捨てる前提の盾に塗布する事を考えているのだそうな。ぬう、そう上手くはいかないか。

 

「難しいですな…、やはりミサイルの時のようにはいきませんか」

 

ミノフスキー粒子みたいなチートアイテムほいほい出て来たら苦労しないか。

 

「…今なんと言った?」

 

俺の言葉に、いきなりネヴィルさんが身を乗り出してきた。え、なになに、なにさ。

 

「いや、簡単にいけば苦労しないと」

 

「その前だ、なんと言った?」

 

ええと。

 

「ミサイルの時のようにはいかない。…でしたかな?」

 

そう俺が言うと、何故か考える人のポーズになって何やらブツブツ始めるネヴィルさん。おいおい、どうした。

 

「…大佐。急用が出来たから失礼させて頂く。ああ、先ほど言った対ビーム用の防御装置の件はこちらに上げておいてくれますかな?では」

 

そう言って席を立つや通信を切ってしまうネヴィルさん。多分何かを思いついたんだろう。大学の頃世話になった研究の教授がろくでもないことし始める時と同じ雰囲気だったし。

…出来れば今度はまともなのが良いなあ。

 

 

 

 

大佐の放った何気ない言葉にネヴィルは正に天啓を感じた。言った本人はそこに何も感じられていなかったようだが仕方が無い。口は多少回るようだし、戦争屋にしてみれば勉強している方ではあるが、それでもやはり天才である自分とは違うのだから。

 

「ふふん、だが素直に懇願してくるだけの可愛げはある」

 

そう、結局の所幾ら噛みつこうとも最終的にはこのネヴィルを頼らざるを得ないのだ。そう思えばあの態度も反抗期の子供のようなものに思えてなんとなし、微笑ましくも思えてくるから不思議なものだ。

 

「安価な対ビーム用装備、あるじゃないか」

 

そう言ってネヴィルはほくそ笑む。ミサイル、そしてそれを無力化したミノフスキー粒子。そのキーワードから彼の頭に浮かんでいたのは艦艇用の装備として配備されているビーム攪乱幕の存在だった。一定濃度さえ保てれば要塞砲クラスのメガ粒子砲すら減衰可能なこの装備を転用すればゲシュペンストの無力化など容易いことではないか。

従来のものは宇宙空間という360度、しかも防御目標が艦艇と巨大であるため相応の範囲をカバーする必要性から大型弾頭に搭載されているが、防衛対象がMSサイズ、それも防ぐのが艦砲より威力が低いビームなのだから散布濃度も大幅に下げることが出来る。つまり装置の小型化、ペイロードの確保も容易と言うことだ。後は撃たれたらそれを感知して適正な方向へ散布するシステムさえ組み込めば良く、そんなものはセンサーを機体に追加するだけでどうとでもなる。つまり対ビーム用のAPSを搭載してしまえば良いのだ。

 

「さあ、忙しくなるぞ」

 

ネヴィルは力強くオフィスへ向かう。さあ、今日も祖国に貢献だ。そしてこの戦いが終わった後には自伝を書こう。この戦争を勝利へと導いた英雄の記録を人々が記憶しないなど、人類にとっての損失に他ならないのだから。

 

 

後日、完成した防御装備を送りつけたところ、現地ではビーム攪乱幕を封入した増加装甲を独自に開発、配備していたため、

 

「は?撃たれたら即散布?こっちのビーム兵器も無力化されるじゃねえか」

 

とか、

 

「増加装甲じゃ関節保護できんだろ、アホか」

 

と言った意見で両大佐の意図しないところで代理戦争が勃発することになるのだが、それはまた別の話である。




今回はマーマイト少なめです。
じゃ、遊びに行ってきます!(投稿しない言い訳

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