起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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いよいよ本編始動です。


第六十二話:0079/09/20 マ・クベ(偽)と大地に立つ-Ⅰ-

「なあ、准将。グフとかもう要らないんじゃないか?」

 

真剣な顔でそう聞いてくるガルマ様に思わず固まってしまう俺。え、いきなりなんぞ?

 

「前々から話したいと思っていたんだ。前回はV作戦の件で言えずじまいだったがね」

 

重力戦線が安定してきている中、発展性に乏しいグフは生産数を絞っていくべきでは無いかという事らしい。

 

「例の機体のロールアウトも間近だろう?いっそグフのパイロットはそちらに移したらどうかと考えている」

 

例の機体というのはゲルググの事だ。正直劣勢になっていないからゲルググはもっと後になるか、最悪生まれてこないかと思っていた。ところがそれどころか一ヶ月近く早くロールアウトする見込みだ。不思議に思ってジオニックの技術者に聞いたら、ゴッグの一件以降3社の業務提携が進んで、結果史実では開発の遅延していたMS-11が順調に完成したらしい。この機体は既に多くの機種が投入されている現状を鑑みて設計されており、特に推進器関係や駆動関係の多くを既存の機体と共有しているのが特徴だ。しかも多くの部品をユニット化しているため、汎用機でありながら、地上・宇宙専用機と同様の構成に短時間で換装出来る。正に戦場の優等生、どっかのちょび髭伍長に見せれば、これだ!これが欲しかったんだ!と叫ぶこと請け合いのMSに仕上がっている。

 

「確かに、アレと入れ替えならばジオニックもそれ程煩くならないでしょう。ただ時期の見極めが重要ですな」

 

何せ地球全土にめっちゃ配備されてるからな、グフ。欧州と東アジアはウチのせいでドムが主力だけど他の地域はグフの方が多い。それにザクだってまだまだ元気に動いている。その点で見ると、補給の多くを宇宙に頼っているオーストラリアやアフリカなんかでは、ザクと部品が共用できるグフの方がゲルググより維持しやすかったりするのだ。

 

「さしあたって北米から順次入れ替え、余剰機体は暫くオーストラリアやアフリカへ回そうと思う。キリマンジャロの戦力化はまだかかりそうだしね」

 

何せ最後に自爆しやがったからなぁ、キリマンジャロ。ノイエン少将が半泣きでユーリ少将に工兵隊貸してくれって頼んでたし。おかげでキリマンジャロでは空前のアッグブームが起きているとかいないとか。

 

「まだ時間はこちらの味方です、焦らずに行きましょう」

 

先日の捕虜交換でレイスの皆も送り込んだしね。上手くいけば向こうのオデッサ作戦より先にジャブロー殴れるかもしれん。俺はこの時、まだそんな感じで悠長に構えていた。そう、正に慢心していたんだ。

 

 

 

 

漆黒の中を光一つ発さずにザクが泳いでいく。サイド7のある宙域はルナツーに近く、そのため頻繁にミノフスキー粒子による電波障害が起きる。それでも可能な限り発見されないよう母艦どころか僚機との無線すら封止されている。加えて発熱を限界まで押さえる為にジェネレーターも最低限まで絞っているため、コックピットの中も暗く、温度は氷点付近まで下がっている。パイロットスーツが無ければ皆凍えているだろう。既に最低限の航行システムのみで1時間。何もやることがない…出来ないコックピットの中でジーン伍長は溜息を吐いた。

 

「ったく、お偉いさんは何を考えているのかね?あんなコロニーさっさと吹き飛ばしちまえば早ええのに」

 

ジーンが不満を漏らすのは退屈なだけでなく、出撃前のブリーフィングの一件も含めてだ。

 

「今回の潜入は以上の通り変則であるがロッテで行なう。ラル大尉にはスレンダー、貴様が付いていけ」

 

そう言い渡され、デニム曹長とシャア少佐がロッテを組む事になる。つまりジーンは退路の確保という名の留守番だ。

 

「冗談じゃねえよ、敵を倒さなきゃ功績も何もあったもんじゃねえ」

 

エースであるシャア少佐の隊に配属されるだけあり、ジーンは新兵ながら腕が立つ方だ。しかし彼は兵士としてはあまりにも視野が狭かった。故に伍長でくすぶっているのだが、本人はそれを功績を挙げるチャンスがなかったからだと思い込んでいた。

陰鬱な環境に置かれ続けると人間はネガティブな方へと思考が偏る。モニターに映る代わり映えの無い宇宙空間、最低限の光源だけのコックピット、誰の声も聞こえず、発する声に返事は無い。否定も肯定も無い中で自らの口から発せられる言葉は、何処か呪詛のように暗くジーンの精神を苛んで行く。

 

「大体、何でスレンダーの野郎が選ばれるんだよ。あのチキンじゃ偵察どころか敵の近くに行っただけで動けなくなるに決まってる。シャア少佐はそんなことも解ってないのかよ?」

 

吐き出される不平不満がとうとうドズル中将にまで行ったところで機体に小さな接触音が響いた。

 

「全機聞こえているな?突入前に最終確認をしておく。何度も言うが今回の作戦目的は偵察だ。敵との交戦は避け情報収集に徹しろ」

 

少佐の物言いに先ほどまでの自身の思考を否定されたように思えて、ジーンは小さく舌打ちした。幸い少佐には聞こえておらず説明を続けている。

 

(やれやれ、この少佐殿は同じ話を何度すれば気が済むのかね?)

 

そう言えば少佐は良く三倍の速度で機体を操ると言われている。事実模擬戦では同じ機体とは思えない速度で動き回っていた。もしかしたらその速度に肉体がついて行けず脳に何か障害が出ているのかもしれない。俺とそう変わらない歳だろうに可哀想に、などと本人に聞かれたら殴られそうな事を考えている内に有り難い説明は終わったらしく、通信終了が告げられモニターに目標のコロニーがしっかりと視認できる位置まで近づいていた。

 

(要するに戦果を上げる。シンプルな理屈だ)

 

そして戦果は目の前に迫っていた。

 

 

 

 

鈍い眠気を感じ、テム・レイは時計を見た。

 

「ああ、こんな時間か…」

 

時刻は既に深夜と言って良い時間であり、部屋に居るのはテムだけだ。固まった肩をほぐすために伸びをすると目の前にマグカップが差し出された。

 

「少し休まれたらどうです?大尉」

 

眉間に皺を寄せながらそう言うのはモスク・ハン博士だ。確か少し前に帰っていたと思ったが。

 

「有り難う博士。だが今が正念場なんだ。おいそれと休んでは居られないよ」

 

「正念場ですか。…大尉、我々の機体は連邦を救えるでしょうか?」

 

各サイドが壊滅し、月面都市やサイド6は中立を表明しているため宇宙の拠点と呼べるのはルナツーのみ。地上も北米に続きハワイ、欧州、東アジア、アフリカが陥落、辛うじてブリテン島とスカンジナビア半島が残っているがこちらも海上封鎖が本格化したことで先行きは暗い。残存している拠点はインド亜大陸、南米、東南アジアと中央ロシア、そしてオーストラリアだが、南米とインド亜大陸以外は単独で拠点を維持できない所まですり減らされている。とても楽観できる状況では無いが、未だに連邦議会も軍も足並みが揃えられていない。不安になるのは無理からぬ事であるが、関わった以上やり遂げて貰わねば困る。

 

「救わねばならん。だから君達にはジャブローへアレと一緒に戻って貰う」

 

アレとは昨日入港した軍の新型艦のことだ。あれを無事にたどり着かせるためにルナツーの戦力の大半を使い派手に陽動を掛けたというのだから宇宙軍の本気具合がうかがえる。ハン博士を含む開発スタッフは一緒にジャブローへ戻らせて新型機の改善に従事して貰う予定だ。

 

「それに悲観しすぎることは無い。確かに我が軍の方が領土は少ないが、生産能力で言えばまだまだ互角だ」

 

開戦初頭のコロニー落としで太平洋沿岸は大きな被害を受けているし、欧州は元々製造拠点を持っていない。唯一ブリテン島が例外だが、あそこはこちらの勢力圏だ。北米の失陥は痛いが、こちらのゲリラやスパイを考えればキャリフォルニア以外で軍需物資の生産は難しいだろう。それらを考慮すればジャブローの生産能力だけでもまだまだやり合えるだけの力がある。何より今回開発した新型機は現存するどの拠点でも生産可能なように設計されている。性能を維持するためジムに比べれば倍以上の高コストになってしまったが、それでもカタログスペックだけはガンダム並みの機体を一割程度の調達価格に抑えたのだから上出来だろう。

 

「既に設計データは各拠点に送っているから、早晩量産が開始される。そうなればこの劣勢も覆るだろう」

 

間違っても容易になどとは言えないが、そう胸中で付け加えながら。

 

「そして戦力が均衡した後、如何に早く次の一手が打てるかが重要だ」

 

そう言って書き上がったデータを保存すると、送信の準備に入る。書き上げたのは高機動化と重火力化の設計案だ。更に入手していたアナハイム製のフィールドモーターの図面データもついでに送付する。

 

「さて、そういう訳で博士はもう寝た方が良い。明日はハードになるからね。コーヒーありがとう」

 

そう言って博士を部屋の外へ送り出すと、テムは再び机へと向かった。




宇宙の話になると主人公が全然絡んできませんね!
ごめんなさい暫くこんな話が続きます。

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