起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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つまり筆が進む(人これを現実逃避という)


第六十六話:0079/09/20 マ・クベ(偽)と大地に立つ-Ⅴ-

アムロ達の連れて行かれた先は、未だ煙の燻る工業区だった。大音量でゲームをやっていたアムロとカイは知らなかったが、昨夜自宅での待機命令がサイド7行政区から出ていたそうだ。もっとも、実情が全く異なることを残された弾痕や、起立するグレーのMSから察した。

 

「ええ、ええはい。お嬢さんの安全は間違い無く私が保証します。お二人もなるべく早くシェルターへ、いえ、簡易のものでは無く災害用の方へ…」

 

「とう…親父!」

 

何やら話しながら近づいてくるテムに対してアムロはつい声を上げてしまう。その声に気付いたテムが複雑な表情で近づいてきた。

 

「アムロ、お前が私のPCで何をしていたかは大凡知っている。だから私は今からお前に親としてでは無く、軍人として接する。アムロ・レイ、君は軍の秘匿していた情報を私的に閲覧、利用していた。本来であればスパイ容疑で拘禁となるのだが、軍には君と取引をする用意がある」

 

「と、父さん!?」

 

「良いから聞け!お前が軍属として今後連邦軍に参加し、責務を果たせばこの件については不問になる。そこの友人二人も同じだ。どうするね?」

 

「あ、あのー。アムロのお父さん?その、責務って…」

 

おずおずと手を挙げながらそう聞くハヤトにテムが黙ってMSを指さした。つまり、自分たちにアレに乗れと言っているんだろう。何しろアムロ達はテムのPCに残っていたMSのシミュレーターをリアルなゲームとして玩具にしていたからだ。

 

「無茶だ!僕らは子供だよ!?MSなんて操縦できる訳が無いじゃないか!」

 

そう言えば顔を強ばらせたテムが突然胸ぐらを掴み、頬を張ってきた。記憶にある限り初めて父に手を上げられた事への混乱や、自身に起きたことへの理不尽に混乱しながら涙目でにらみ返せば、そこには怒気を発した父の顔があった。

 

「良いかアムロ、私は出来るかどうかなど聞いていない。乗るか、捕まるか選べと言っている。解らなければいい、お前を拘禁するだけだ」

 

そう言って控えていたサカタ曹長を呼ぼうとする前に成り行きを見ていたカイが声を発した。

 

「お、俺、軍に入る!入ります!」

 

「カイさん!?」

 

思わず叫んだアムロにカイは涙目で応える。

 

「軍で拘禁されるって何年だ?一年?二年か?犯罪者になったら学校は退学だし、シャバに出たら前科者のジュニアハイなんて働く場所だってねえ!な、なら軍人になった方がまだマシだ!」

 

「戦争なんですよ!?死ぬかもしれないんですよ!?」

 

悲鳴のような声音で反論するが、今度は隣から静かに紡がれた言葉に制される。

 

「ぼ、僕も入ります!」

 

「ハヤト!?」

 

「僕が犯罪者になったら、父さん達にも迷惑がかかる。そ、それは出来ない」

 

拳を振るわせながら俯く友人を見て、アムロはもう一度テムを睨み付けた。

 

「解った、解ったよ!乗るよ僕が乗る!だから二人は良いだろう!?」

 

だが返ってきたのは無慈悲な言葉だった。

 

「残念だがアレを見ている以上二人をそのまま帰す訳にはいかん。だが、お前が頑張れば後方任務に就けるくらいは出来るかもしれん」

 

どうせ員数外の人間だしな、などとテムは耳元で付け足す。その言葉に思わず奥歯を噛みしめるが、残念ながらアムロに選択の余地は無かった。

 

「…解ったよ。それで何をすれば良いの?」

 

「助かる。まずは2号機…あっちのトレーラーに積んである青い機体だ、アレを立ち上げてくれ。その後はダニエル兵長の指示に従え、私はまだやらねばならんことがある。曹長!」

 

そう言って持っていたファイルを押しつけてくると、親父は周囲を警戒していたサカタ曹長に声を掛けた。

 

「すまんがそこの二人の面倒を頼む、適当に雑用をさせて構わん」

 

「了解しました!二人ともこっちだ。運び出さなきゃならんファイルが山ほどあるぞ!」

 

呼ばれて慌てて走って行く二人の背中から視線を移してファイルを開く。あのシミュレーターでは大凡ザクの倍程度の性能に設定されていたが、そこに書かれている数値はそれらを圧倒的に凌駕していた。

 

「すごい…親父が夢中になるわけだ…」

 

『アムロ君だったね?悪いが早めに手伝って欲しいんだが』

 

渡されたマニュアルを読み込んでいると、ダニエル兵長が申し訳なさそうにそう言ってきた。

 

「あ、はい。すみません!」

 

やっぱり親子だな、という呟きに見送られながら教えられたトレーラーへ向かうと、そこにはカラフルに塗装されたダニエル兵長の機体と同じMSが載せられていた。既に開いていたコックピットへ潜り込み、コックピットの中を見回す。レイアウトなどはPCにあったシミュレーターとほぼ同じであったため淀みなく起動できた。

 

「凄い、動きが滑らかだ。それにトルクも…」

 

搭載されている推進剤やジェネレーターのエネルギー容量に至ってはザクの5倍近くある。これなら補給なしでも1~2ヶ月は動けるだろう。

 

『起動できたみたいだな。大したもんだ、俺たちだって下手な奴なら3分はかかるんだが』

 

「あ、いえ、その…有り難うございます?」

 

『そんなに畏まるなよ。今からお前さんも戦友なんだ、よろしく頼むぜ…といっても、俺は臨時だから、この任務が終わった後はコイツに乗れるか解らんのだけどな』

 

そう言って笑うダニエル兵長にアムロは緊張感が薄れるのを感じた。軍人と言えば父かその近くに居た人間しか見ていなかったアムロにとって、高圧的でも威圧するでも無い軍人というのは酷く新鮮に見えた。

 

「あの、僕は何をしたら?」

 

『ああ、取り敢えずトレーラーに物資を積んでくれ、壊れていないコンテナがあるだろ?それを片っ端から積めばいい』

 

「解りました、やってみます」

 

慎重にペダルを踏み機体を前へ進める。そう言えば親父は何をしているのだろう?

 

 

 

 

「我々を見捨てるのですか!?」

 

行政区から来た事務官がパオロへ食って掛かるのを左右に居た警備兵が慌てて止める。彼の言いたいことも解るしパオロとしても何とかしたい思いはあるが、現実問題としてホワイトベースの収容能力でサイド7の住人全てを避難させるのは現実的では無い。仮に積み荷を全て放棄したとしても乗れて1万人が精々だろう。当然食料も施設も整っていない状況でそんなことをすれば悲惨な航海になることは火を見るより明らかだ。

 

「そうは言っておりません。直ぐにルナツーから支援が来ます」

 

「地球に逃げられないのですか?我々は今現在も連邦へ忠節を果たしているというのに、この扱いはあんまりではないですか!」

 

「無茶を言わないで頂きたい。500万近い人間を運ぶなどこの艦にはとても出来ません。先ほども申し上げたがルナツーから迎えの艦が来ます。それで月かサイド6へ避難するのが現実的です」

 

その言葉に事務官は苦虫をかみ潰した顔になり、俯きながら声を絞りだす。

 

「…せめて迎えの船が来るまで留まって頂く訳にはいきませんか?」

 

それで座してジオンになぶり殺しにされろというのか?その言葉が喉まで出かかるが、理性で押しとどめる。

 

「残念に思います。しかし今の我々にジオンを止める力が無い以上、ここに残っていても意味がありません。それにまだ時間はあるのです、出来る限りの私財を持ち出せるよう取り計らいます。どうかご容赦願いたい」

 

パオロの言葉に事務官は力なく笑うとゆっくりと踵を返した。その落ち込んだ背中にどう声を掛けるか迷っている間に、事務官は扉にたどり着き、振り返りながら口を開く。

 

「…連邦軍は、連邦市民の生命と財産を守るべく存在しているらしいですな。どうやら我々は連邦市民では無いようだ」

 

パオロが返事をする前に事務官は扉をくぐってしまう。何も言葉を返せずパオロは大きく溜息を吐くと、背もたれへ身を預けた。

 

「何のための連邦軍、否定出来んな」

 

守るべき国民を守れず、どころか彼らを置いて自分たちは逃げ出すのだ。無論それが任務である事は理解できている。だが、理解と納得は別の問題だ。

 

「中佐…」

 

「すまんな、年寄りのセンチメンタルだ。物資の搬入状況と兵の収容はどうなっている?」

 

パオロの言葉に顔を歪ませる真面目な少尉に詫びながら確認する。

 

「はい、中佐。港湾区に残っていました無事なMSのパーツは全て搬入が終わりました。残念ながら積み込み準備中であった6機は全て大破とのことです。兵士については緊急処置の必要な者は全員行政区にある中央病院へ搬送済みです。しかし負傷者が多く衛生兵のみでは対応出来ないため、現在行政区より派遣されております医療スタッフを加えて基地内に野戦病院を設置、治療に当たっています」

 

「無事な人員はどの程度かね?」

 

「ホワイトベースのクルーについては艦内待機であったため、ほぼ被害は出ておりません。パイロットについては、第三小隊メンバー全員の死亡が確認されました。第四小隊は全員の生存が確認されております。候補生は3名が生存を確認、14名が戦死、8名がMIAです。…基地守備隊に関してはまだ詳細が上がってきていませんが、大凡6割が戦死あるいはMIAとのことです」

 

目を覆いたくなるとは正にこの事だとパオロは思わず唸ってしまう。サイド7守備隊は800名の増強大隊ではあったが、あくまで歩兵が主体だった。しかも宇宙軍ではMSに注力した分他の装備は遅れており、陸軍のラーティのようなMSに対抗出来る装備も無かった。

 

「慢心のツケだな。無事な人員と負傷兵の収容を急がせてくれ。大尉の予想が正しければあまり時間は無い」

 

生産設備は惜しいがここに軍が留まればコロニーが再び戦場になってしまう。そして先ほどの事務官の態度からすれば最悪民間人が敵になりかねない。負傷兵も動かせないような者以外は出来る限り収容しルナツーへ預けるのが良いだろう。

 

「急ごう、敵は待ってくれはせんだろうからな」




サイド7の人数について。
一応建設中のコロニーなので定数以下かつ軍の人間が入り込んでも溶け込めるだけの経済基盤及び施設が運営出来る人数と言うことでかなり盛っています。
普通にホワイトベースに乗るきるような人数(それが全住民の数%としても)で社会が十全に回せるとは考えられないからです。

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