起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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たまぎれー


第六十八話:0079/09/22 マ・クベ(偽)と追撃

「こうも早く汚名返上の機会が頂けるとは思いませんでした」

 

大急ぎで補給が行なわれているファルメルを見ながらシャアはそうコンスコン少将に告げた。コロニー脱出後、機体は放棄したがパイロットは無事だったラル大尉の部隊に無傷だったシャアとスレンダーのS型と予備のR型を渡し、ラル隊は新造艦の監視に残り他の隊は全速でソロモンへ戻ったのだ。

 

「新兵の質の低下はお前さんだけのせいでは無いからな。ドズル閣下も強くは言えんさ。それに今回の作戦指揮官は俺だからな。責任があるとすればジーン伍長を外さなかった俺にもある」

 

これ以上は不毛な謝罪合戦になると察したシャアは話題を変えるべくもう一度ファルメルに視線を戻した。

 

「しかしとんでもない事を思いついてくれるものです。大気圏突入のタイミングで攻撃を掛けろとは」

 

そう口に出せば、コンスコン少将は鼻を鳴らした。

 

「サイド7の偵察情報からすればルナツー内の工廠はまだ十分に揃っていないのだろう。だとすれば開発者達がジャブローに逃げ込む可能性は大いにある。そして現状最もたどり着ける可能性が高いのがMSを搭載したあの新型艦だ。だからあの艦が出港するのをみすみす見逃す訳にはいかんよ。まあ我々からすればルナツーに引き籠もられるのが一番厄介だがね。少佐もそう思うからR型を強請ったんだろう?」

 

そう言う少将にシャアは肩をすくめて見せた。

 

「生憎R型は頂けませんでしたが」

 

「ルナツーの動きに釣られたのが痛かったな。予備機が全て出払うほどとは…しかしあれは大丈夫なのか?」

 

あれとは今まさに積み込もうとしている試作機の事だろう。最悪地上に降りる必要があることから汎用機、それもR型以上の機体をとドズル中将が用意してくれたのだが。

 

「カタログスペックは間違い無くR型より上ですし、何よりビームに対応しているとのことですから。まあ、以前の醜聞が払拭されていることを祈ります。それに地上でR型が厳しいのも事実ですから」

 

現状のR型は宇宙専用機として制御プログラムも専用の物になっている。このため重力下では満足に動けない。かといってS型では重力にひかれながらの軌道上での戦闘はリスクが高すぎる。推力不足が否めないからだ。当然だがF型に至っては論外だ。

 

「まあ、乗る本人が納得しているなら俺から言うことは無い。だが無理はしてくれるなよ?少佐にはまだまだ働いて貰わにゃならんことが幾らでもあるんだ」

 

そう少将が溜息交じりに言う。今回の作戦は試作機のテストパイロット達が参加してくれるが、その後に補充が予定されている兵士達はジーンより若い上に技量も低いらしい。配属前に貰ったプロフィールを見たドレンが思わず唸ったほどだから正直頭が痛いことになりそうだ。

 

「失礼します。ジャン・リュック・デュバル少佐であります。着任の挨拶に参りました」

 

そんなことを考えているとドアがノックされ、金髪をオールバックにした何処か几帳面さを感じさせる少佐が入室してきた。

 

「うん。この臨編艦隊を預かっているコンスコン・バルツァ少将だ。貴官の働きに期待する」

 

「シャア・アズナブル少佐であります。宜しくお願いします」

 

「おお、あの赤い彗星と轡を並べられるとは光栄です。こちらこそ宜しく」

 

ジャン少佐はそう笑って答礼の後握手を求めてきた。悪い人物では無さそうだと思いつつシャアは手を握り返す。

 

「早速で申し訳ないのですがデュバル少佐、機体についてご教示頂けますか?マニュアルだけではどうにも限界がある」

 

「問題ありません。バルツァ少将、宜しいでしょうか?」

 

「ああ、構わんよ。時間が無くて悪いが出来る限り頼む」

 

「承知しました、最善を尽くします」

 

コンスコンの言葉にシャアも敬礼をしジャン少佐と共に部屋を出る。

 

「せめて部下の敵くらいはとらせて貰うぞ。連邦のMS」

 

 

 

 

アプサラスでジャブローをノックしてもしもし作戦をガルマ様に伝えたら、お前は一体なにを言ってるんだって顔された。

いや考えてるんだって。端的に言ってしまえばコムサイがジャブロー上空に落下してしまった場合の保険にしたいのだ。無論コムサイには大気圏飛行能力があるから普通に行けば問題無いが、予想外のことは起きるものとシーマ様も言っていた。

流石にこちらから提案した作戦である以上、尻持ちくらいしなければ寝覚めが悪い。

 

「何事も無ければ飛ばさずに置けば良い訳です。まあ、準備してくれる兵には苦労を掛けますが」

 

「その位なら問題無いだろう。元々アプサラス1号機の運用はオデッサに任せる方針だったしね」

 

そう言えば普通にギニアス君にアゲルヨーって言われたからモラウヨーってしたけど、こんな戦略級の兵器基地司令同士の口約束で動かして良いもんじゃないよな。え、でも上で話ついてるとか初耳だし、他の方面の人達嫌な顔しなかったの?

 

「むしろ准将のところを経由しないで来る新型の方が嫌がられると思うぞ?」

 

そりゃ随分な高評価。

 

「有り難うございます。これも優秀なスタッフを集めて頂いたおかげです」

 

そう俺が言うとガルマ様は変な顔をした後、何故か苦笑した。

 

「君はそう言う奴だったな。そうそう、話は変るがMS-11、正式に名前が決まったな。ゲルググだそうだ」

 

「開発中のペットネームをそのままですか。ジオニックの自信が窺えますな」

 

「本国の生産はこちらへ全てシフトするそうだ。姉上からキャリフォルニアでも生産ライン立ち上げ準備に入るよう打診があった。そちらには来ていないか?」

 

オデッサは抱え込んでるからなぁ。

 

「まだ来ておりません。ですがそう言う事なら時間の問題でしょう。またスペースを確保しなければなりませんな」

 

今の内にジオニックの技術者経由で組立マニュアル入手してグフとザクのラインあたりに配布しとこう。どうせどっちか閉じなきゃ作業者確保できん。そうなるとスペースもそこでいいのかなぁ?ああ、でもゲルググってザクよりでかいんだっけ?ダメだ、情報が足らん。

 

「こちらでも行うが、恐らくゲルググの重力下仕様のフィッティングは准将のところがメインになるだろう。ああ、もしかしてあの件も込みで通達があるのかもしれないな?」

 

あの件?

 

「おっといかん。まだ軍機だった、忘れてくれ准将。はあ、私もまだまだだな」

 

すっげえ気になるんですけど!?しかし軍機と言われれば逆らえぬ、哀しきは宮仕えよ。その後2~3適当な世間話をした後通信を終える。エッシェンバッハ氏からの婚約発表まだですかオーラが凄まじいとかガルマ様の恋路は順調のようだ。幸せになって欲しいものである。そんなことを考えつつ、その一方でどうにも拭えない不安を俺は感じていた。

サイド7の偵察から始まった一連の物語。それと報告書に書かれた、新兵の暴走による偵察の失敗と新型艦のサイド7脱出。日付も装備も変ったというのに何故こうも同じ事象が起きるのか。歴史の修正力?冗談じゃない、ここは良く似た別の世界だろう?そう自分に言い聞かせても不安は拭い去れない。だったらするべき事は決まっている。

 

「不安を拭う方法はただ一つ。対策し行動する、それだけだ」

 

 

 

 

「殺人的な加速だな!これは!」

 

出航直前に、一度くらい実機を動かしてみるべきだというコンスコン少将の忠告に従いソロモンの演習宙域で模擬戦をする事になったのだが、機体を加速させたシャアの最初の感想はそれだった。ルナチタニウムを惜しみなく使い強度を引き上げつつ軽量化を果たしたヅダの加速は正しく規格外であり、何時もの調子でパイロットスーツを着ずに出たシャアはその事を若干後悔した。しかし相手はそんなことはお構いなしにこちらへ照準してくる。

 

「ちぃっ!」

 

機体をバレルロールさせ射線から逃れるが、今度はその回転Gで視界がブラックアウトしかける。そしてそのせいで動きが直線的になり、バレルロールからほんの数秒でシャアは撃墜されるという不名誉を賜った。

 

『ですからパイロットスーツを着るべきだと言いました』

 

「申し訳ありません。デュバル少佐」

 

若干呆れを含んだ声音がスピーカー越しに流れる。その声にシャアは何故か懐かしさを感じ、疑問に思った。ジャン少佐とは今回が初めての出会いであるし、彼の声が誰かに似ていると感じた訳では無かったからだ。

 

『とにかく一旦戻りましょう。これでは訓練にならない』

 

「はい、お手数をお掛けします」

 

そう言って戻るジャン少佐のヅダの背中を見てシャアは得心した。

ああ、そうか。誰かに注意されるなど、何時以来の事だろう。

元々何においても優秀な部類だったシャアは注意を受ける事が幼少期から少なかった。それが地球に亡命してからはより顕著だったように思う。義理の両親は逃れてきた幼子を温かく迎えてくれたが、あまり怒るという事は無かったし、自称後見人だったあの歪な妄念に駆られた老人の叱責はシャアの心に何ら響くことは無かったからだ。身分を偽って軍に入った後も成績優秀な自分は称賛こそ受けたが、誰かにその身を案じて注意を受けるという事には終ぞ会わなかった。そうしてみると、自身が反省し注意を真摯に受け止めるべきだと感じたのは何時かと思い返せば、幼少の頃庭の木に登り見事に落ちて危うく怪我をする所だったのを、ラル家の青年に助けられ思い切り怒られた時しか思い出せず、思わずシャアは吹き出してしまった。

 

『アズナブル少佐?』

 

「ああ、いえ、申し訳ありません。少しむせてしまいまして」

 

『体調が優れないなら一度医師の診察を受けた方が良いのでは?』

 

「有り難うございます。ですが問題ありません、パイロットスーツを着たら直ぐ再開して下さい」

 

そう言ってシートに身を沈めると、シャアはゆっくりと息を吐いた。我ながら随分と歪に育ったものだ。こんな自分を母も妹も許さないだろうし、間違っても人の上に立つべき存在ではないだろう。誰からも教えられず、導かれなかった者が、どうして人を導けるというのだ。

だがそれでいい、自分はただ自分の思いを遂げられればそれでいい。それで人類がどうなろうが知ったことではないからだ。

 

「愚かな復讐者、私にはその位がお似合いだ」

 

格納庫は目前に迫っていた。




嘘みたいだろ?この数話で2日しか進んでないんだぜ?

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