起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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今週分です。


第七十三話:0079/09/24 マ・クベ(偽)と荒野

『連邦軍将兵に告ぐ、諸君らの勇戦は敬意に値する。しかし既に諸君らは我が軍によって包囲されている。救援の望みは無い。速やかに武装解除し…』

 

大音量で流される放送をモーニングコールに、ゆっくりと目を開ける。うん、すっげえ五月蠅ぇ。

 

「お早う、何時かな?」

 

「0500ですよ、もう一眠りしますか?」

 

そう言ってマグカップを差し出してくれるシーマ中佐。うん、テキサスのコーヒーは苦いな、早く帰ってウラガンの紅茶が飲みたい。

 

「いや、止めておこう。状況は?」

 

「木馬に動きはありませんね、静かなものです」

 

「夜の内に逃げ出しましたかね?そしたら今頃ミンチでしょうから楽になるんですが」

 

起き抜けに中々ブラックな台詞を聞かせてくれるデメジエール中佐に笑って返す。

 

「夜間に何度か通信を試みていたからな、残念ながらその線は低いだろう。味方はどうか?」

 

ミノフスキー粒子撒きまくりながらそんなことをしている辺り、あちらさん相当混乱しているようだ。

 

「アプサラスは補修が間に合いませんでした、飛べんそうです。それからヅダのデュバル少佐とスレンダー軍曹の両名が是非との事でガルマ大佐の指揮下に組み込まれています」

 

仕様とはいえまた分解しちゃったからね。ここらで手柄を立てておきたいのだろう。

 

「赤い彗星は?間に合わなかったのか?」

 

「それが回復はしたようなのですが、搭乗機が無いと揉めているようでして」

 

ヅダぶっ壊しちゃったからね。しかも地上の機体はほぼホバー機だ。流石に転換訓練無しに乗りこなすのは難しい。そうなると残りはザクかグフだが、こっちはもうライン閉じる気満々だからOS以外殆どアップグレードしてないんだよね。はっきり言って今の戦力なら足手まといだ。…なのでここでカードを切ろう。

 

「無駄にならんで済んだようだな。運んできたR-2をシャア少佐にお貸しすると伝えてくれ。あれならホバーよりはマシだろう」

 

「宜しいんで?あれはジオニックからの預かりものでしょう?」

 

「どうせ量産もせん試作機だ。壊れたらすまんと謝るさ。それよりも今は少しでも戦力が欲しい」

 

正直北米の戦力を片っ端から突っ込んで欲しいのだが、そんなことしたらガルマ様の言う通りまた北米大陸が混乱してしまうだろう。なので参加可能な戦力は可能な限りかき集めたい。

 

「…それに、前線に居てくれる方が都合が良いしな」

 

「…?今何と?」

 

「いや、何でも無い。とにかくガルマ大佐に連絡を、それと私のドムの起動準備も頼む」

 

「は?いやいや、何言ってんです大佐!?」

 

慌て出すシーマ中佐に訳が解らないよ?って首をかしげ返すと、デメジエール中佐が頭を掻きながら続ける。

 

「総大将が前線に出てどうするんです。大佐は、ここで、どっかり構えてて下さいよ」

 

そう言って床を指さすデメジエール中佐。だがそのりくつはおかしい。

 

「今回の総指揮はガルマ大佐が執られる。故事曰く船頭多くして船山に上ると言う。つまり指揮系統の一元化の意味でも私がMS隊に参加する方が望ましい」

 

どうよ、この完璧な理論。

 

「ガルマ様の横で補佐でもしてて下さいよ…」

 

「訓練じゃないんです、危険すぎます」

 

ほーん。

 

「つまり君達は、私が死ぬかもしれないから後ろに居ろ、と言うのだね?」

 

俺の質問に無言で肯定を返す二人。おいおい、そりゃ無いぜ。

 

「笑えん冗談だ。私の曖昧な情報でその危険に君達を送り込んでおいて、私は後ろで眺めている?それでは筋が通らんだろう」

 

「ご自身の立場を考えて下さい!アンタはあたしらと違って替えの利かない人間なんだ」

 

バカ言うなよ。

 

「デメジエール中佐。今からMSに乗って海兵隊を指揮出来るか?」

 

シーマ中佐の言葉に頷くデメシエール中佐にそう聞いてやる。

 

「…出来ません」

 

「シーマ中佐。ヒルドルブに搭乗しデメジエール中佐と同じく支援を行なえ、出来るか?」

 

「それは!」

 

はっはっは、どうせ反対されるなんて想定済みだよ。だからウラガン置いてきたしな!

 

「誰かの代わりになるような人間など一人も居ない。それにな、私の勘が告げているのだよ、ここが命の懸け時だとね」

 

ヨーロッパ方面軍のお偉いさん達に啖呵を切ったのが随分前に思える。

 

死なせるならば、死ぬならば有効に。

 

無論死ぬつもりも死なせるつもりも毛頭無いが、なればこそ、ここで俺が出ない訳にはいくまい。何故ならこれは俺のフラグなのだから。

 

「…解りました。ただ、あたしが危険だと感じたら殴ってでも下がらせます。覚えておいて下さい」

 

「そんときゃ俺が殿をします。忘れんで下さい」

 

「覚えておこう」

 

そう言って俺たちは出撃準備に入った。

 

 

 

 

「ジャブローからの返答はまだなのか!?モグラどもは何故早く本艦に援軍を寄こさないのか!」

 

被弾時の破片で傷ついたキャプテンシートに座りながら、アンドリュー大尉は苛立たしげに爪をかんだ。敵の追撃を振り切り、何とか北米の丘陵地帯まで逃げ込んだが、そこでホワイトベースが力尽きてしまった。8基あるエンジンの内まともに動くのは僅か1基。機関長は大気圏突入時に戦死しており、代理となった副長は、進捗を聞いても全力で復旧中としか返してこない。MS部隊も同じようなものだが、数字と時間を言ってくるだけまだマシだ。それでも現状を鑑みれば到底許容出来ない報告を挙げてくる。

 

「どいつもこいつも役に立たん」

 

おまけに昨日の日暮れ頃から始まった敵の砲撃で、艦外に偵察を出すのすらままならない。更にアンドリューを苛立たせるのは、この状況に至っても北米市民やゲリラから何の接触も無いどころか、後方攪乱のために動いている兆しすらない事だ。

 

「連邦軍の艦が苦境に陥っているというのに、奴らは何をしているのか。こういう時こそ崇高な使命のために命を投げ出し、連邦政府の恩顧に報いようとするはずでは無いのか!?」

 

静まりかえった艦橋にアンドリューの声が響く。視線を合わせないようにしていたオペレーターが、意を決した表情で口を開いた。

 

「副長」

 

その言葉にアンドリューはオペレーターを睨め付ける。

 

「発言は正確にしたまえ。パオロ中佐が指揮能力を喪失した現在、私が艦長だ」

 

「…申し訳ありませんでした。艦長、敵軍が先ほどより降伏勧告を行なっております」

 

オペレーターの言わんとしている事を察しアンドリューは溜息を吐いた。どうもこのオペレーターは連邦士官としての自覚に欠けているらしい。

 

「降伏などありえん。それよりも全チャンネルを通して北米に呼びかけろ、敵の情報封鎖で我々のことが民衆に伝わっていない可能性がある。解放者である私の存在を認識すれば必ずや民衆は大義のために立ち上がり、脱出のチャンスが訪れるだろう」

 

思わず立ち上がりそう熱弁を振るうと、気圧されたのかオペレーターは敬礼を返し席へと戻った。この程度の事は言わずとも理解するべきだとアンドリューは考えたが、士気の維持のため今は言うべきでは無いと口を噤む。ただ、ジャブローについたのなら艦からは降ろそうと考えながら。

 

「それより砲撃がやんだなら偵察隊を組織して周囲を確認しろ。情報が欲しい」

 

「敵が展開を終えているとすれば、偵察隊が危険すぎるのでは?」

 

臨時の副長となったブライト・ノア少尉がそう質問してくる。パオロ中佐のお気に入りだったようだが、何時までも自分が特別扱いと思われては困る。

 

「リスクばかりに気をとられるな。それに展開を終えていると言うのは君の憶測に過ぎない。敵を過大評価し必要以上に恐れるのは武人として恥ずべき行為だ。しかもその結果が味方に不利益を与えるならば敵に利する行為だと言わざるを得ない。私の言うことは何か間違っているかね?」

 

「…しかし」

 

なお言いつのる少尉にアンドリューは自らの策を伝える。

 

「いいかね少尉、偵察はMS部隊にやらせる。それならばたとえ敵が展開しているにしても即座にやられるような事は無い」

 

「それでは本艦の防御が手薄になるのでは?」

 

「何故そのように考えるのか私には理解しかねる。MS隊を無視して我が艦を攻撃すれば敵はその後背をMS隊に晒すこととなる。さすれば敵は前後から挟まれ集中砲火を浴び悉く屍をさらすことは疑いない。貴官の言う事は取るに足らない危険だと解ったかね?さあ、MS隊に偵察に出るよう伝えてきたまえ」

 

そう言ってブリッジから送り出すとアンドリューはシートに深く座り直す。前任者の血がこびりついたヘッドレストが些か不快ではあるが贅沢は言えない。何故ならアンドリュー以外にこの席に座る資格を持つものがこの艦には居ないのだから。

 

「私が、私こそが連邦に勝利をもたらす英雄なのだ。このようなところで足止めされる訳には・・・、ジオンめ・・・」

 

戦いは目前に迫っていた。




見切り発車過ぎて話の着地点が迷走中。

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