起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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一話目:お、変な電波受信したぞ、書いたろ!
~十話前後:結構人気だわ、頑張っちゃうぞ!
~三十話前後:うん、そろそろネタ切れてきたな。
~五十話前後:結構書いたな、まあ八十話行く前に終わるだろ!
今:はて、書いても書いても終わらないぞ?



第八十五話:0079/10/03 マ・クベ(偽)とソロモン

グラナダからソロモンってさ、地球と全然違う方向なんだよ。それなのにさ、なんか気軽に帰る前に顔出していけよ!とか、良い笑顔で言われても困るんだよ。特に拒否権の無い俺とかはな!

 

「これは、随分様変わりしたようだ」

 

宙域に入って驚いたのは、ソロモン周辺に幾つものコロニーが浮かんでいたことだ。どれも継ぎ接ぎだったり、半分くらいしか無いのを無理矢理塞いだりと一見残骸にしか見えないが、どれもしっかりと稼働しているようだ。

 

「はい、大佐。以前ガルマ様が提案していたコロニー移送計画の副産物です。民間の居住用には使えなくても、ちょっとした生産拠点になるような物を運んできて再生しています」

 

あー、ハゲ艦隊が戦後に造ってた茨の園みたいなもんか。資材も人員も段違いだから、かなり短時間で整備できたんだな。

 

「生鮮食品のプラントなども動いていますから、夕食も期待できますよ」

 

「それは素晴らしい。良い食生活は心も豊かにしてくれる」

 

俺の言葉に管制担当の中尉は力強く頷く。

 

「来週には新型MSの生産ラインも稼働するそうです。完全稼働すればこの先10年は戦える計算だそうですよ」

 

何処かで聞いたことのあるセリフに思わず苦笑してしまう。

 

「それは勘弁して欲しいな。そんなに戦っていたらおちおち骨董市にも行けん」

 

そう返せば中尉は笑顔になり口を開いた。

 

「では、手早く勝たねばなりませんね。チェック完了しました、大佐殿。6番ゲートへお進み下さい」

 

その言葉に横に居る艦長へ視線を送れば、彼は静かに頷いて艦を進める。ちなみに今回乗せて貰っているのは改パゾク級大型輸送艦。前後に付いたカーゴスペースを二段重ねにして中央に連絡通路とトラス構造の補強を増設したという、実にやっつけな仕事である。ぶっちゃけ制宙権取れてるから速度なんてそれなりで輸送量多い方が使いやすいよね!という発想らしい。これを考えた奴とは話が合いそうだ。ちなみに正式名称はまだ無いんだって。

 

「では、世話になりました艦長。機会があればまた頼みます」

 

艦が接岸したのを確認してそう礼を言うと、渋いおじさまな客船上がりの艦長は帽子を脱いでイケボで応えてくれた。

 

「次のご利用を楽しみにお待ちしています、大佐。では良い旅を」

 

 

地球へ戻るならどうせだから借りてたザンジバル取りに来いよ。そんな理由で呼ばれるとは思いませんでした。まあ、ゲルググとかも持っていくから安全面を考えればこれの方が良いんだけどね、HLVとか割と怖いし。

 

「お疲れ様です大佐!」

 

運んできたオデッサへのお土産をザンジバルに移しているのを眺めていたら、そんな風に後ろから声を掛けられた。

 

「やあ、アナベル少佐。息災そうだね」

 

「はい、御陰様で。その、大佐の方は随分と楽しんでいらっしゃったとお伺いしておりますが」

 

うん、ちょっと今回はやりすぎたね。マ、反省。

 

「言い訳のしようも無い。むしろこの程度で済ませてくれた軍には感謝しているくらいだよ。まあ、暫くは反省して大人しくしているさ」

 

そうキメ顔で言った矢先に目の前を通り抜けていく黒いゲルググ。ちょ、空気読めよ!

 

「…大人しく?」

 

「ちゃうねん」

 

いきさつを丁寧に説明したんだけどアナベル少佐は疑いの半眼を止めない。

 

「解りました、そういうことにしておきます。さ、大佐。中将がお待ちです。こちらへ」

 

絶対解っていない返事をして案内を始めるアナベル少佐に弁明を続けるが、結局ドズル中将の執務室まで態度が変わることは無かった。うん、日頃の行いって大事だね!

 

 

「相変わらず貴様は退屈させん男だな!だが多少は手加減してやれ。あれでキシリアは繊細だからな!」

 

豪快を絵に描いたようなドズル中将が、部屋が震えそうな程の大笑いをしながらそんなことを言ってくる。俺も繊細さなら負けてねえんだけどその辺少し斟酌して頂けませんかね?

 

「今後留意致します。閣下申し訳ありません。まったくの別件なのですがお伺いしたいことが」

 

「おう、なんだ?」

 

そう言ってそれジョッキじゃね?というサイズのマグカップを口に運ぶドズル閣下。中身は俺と同じなら紅茶の筈だが、入れていた砂糖の量が尋常では無かった。多分砂糖の味しかしねえんじゃねぇかな?

 

「本日私は如何な用件で呼ばれたのでありましょう?正直に申し上げれば艦の受け渡し程度で閣下が動かれるとは思えませんので」

 

それなりに想像はつくんだけどさ。

 

「…なあ、大佐。今のソロモンをどう思う?」

 

やっぱりそこだよねぇ。

 

「本国やグラナダに比べればまだまだではありますが、既に前線要塞とは言いにくい状況ですな」

 

俺も紅茶を飲みながら返事をする。

 

「おう、そうだ。これだけ抱え込むともうここは防衛用の盾として使えん。だから早急に宇宙の安全を確保したい、が」

 

「ザクレロですか」

 

俺の言葉に黙って頷くドズル閣下。

 

「基地運営の官僚についてはギレン総帥がかなり融通してくれたからな。まだなんとかなるだろうが、問題はルナツーよ」

 

マグカップを覗きながらそう忌々しそうに言葉を紡ぐ。戦力が充足してきた今、さっさとルナツーを落としてしまいたい。そう思った矢先に連邦が送り出してきたガンダム。無論アレそのものは量産化されていないが、装備と量産機の方は別だ。少し目を離した隙に連中MSの量産を成し遂げていて、出撃してくる艦艇には常にMSが随伴している。しかもビーム兵器をひっさげてだ。

 

「ビーム兵器は正直厄介ですな」

 

「例の耐ビーム塗装を使っているが、あまり芳しくない。そもそもザクレロでは運動性が足りん。MSの交じっている防空網を突破するのは至難の業だ」

 

前面装甲へ限定的に施された耐ビームコーティングのおかげで1~2発は耐えられるが、損傷率が以前の比では無い。渡された資料を見る限りだと、MSが運用される前と比べ、拠点で修復出来る程度の軽微なものは凡そ10倍。メーカーへ送り返さねばならないくらいの損傷も4倍近くに膨れ上がっている。当然ながら修理待ちも出てしまうので、部隊の稼働率もかなり下がってしまっているようだ。

 

「保有機体の4割が修理待ちで稼働不可とは…頭の痛くなる数字ですな」

 

「何とかならんか?」

 

こちらに顔を近づけながらそんなことを仰るドズル閣下。いや、俺22世紀から来た青い狸じゃねえからね?

 

「元々ザクレロは対艦攻撃を主眼とした員数合わせですから、本格的な対MS戦闘は厳しいでしょう。いえ、言い方が悪いですね。今のザクレロで対処するのは不可能です」

 

そう言うとドズル閣下はふて腐れた顔になって背もたれへ思い切り体重をかけた。結構頑丈そうなソファが不協和音の抗議を上げる。

 

「言われんでもそれくらい解る。それをなんとかしろと言っているんだ」

 

おっと、相談から命令にクラスチェンジしましたよ?まあ、一応総司令部付だし、今回の顔つなぎである程度便宜を図っても構わないってお許しもあるし、ちょっと無茶してみようかね?

 

「では、申し訳ありませんが、レーザー通信を使わせて頂いても?」

 

 

 

 

「マ大佐から連絡?宜しい繋ぎたまえ」

 

ネヴィルの下へ火急の用事と通信が入ったのは午後のお茶を楽しんでいた時だった。折角のティータイムであるが、ネヴィルは分別のつく大人である。断腸の思いで3杯目を断念し通信室へと向かう。

 

「お忙しい所失礼します。ネヴィル大佐」

 

「失礼だなんてとんでもない。マ大佐の頼みなら直ぐにでも駆けつけますとも。それで、一体どうされたのです?」

 

少なくとも利益がある内は、心の中でそう付け加えながら続きを促す。こちらの友好的な態度に安心しきっているのだろう。緊張の和らいだ表情でマ大佐は口を開く。

 

「実は今ソロモンに居りまして」

 

「ああ、成程」

 

その言葉だけで大凡の見当がついたネヴィルは内心溜息を吐く。大方損害の増えているMAの対策について、ドズル中将あたりに泣き付かれたのだろう。

 

「私ではどうにも手に余る案件でして。ネヴィル大佐のお知恵をお貸し頂けたらと」

 

「ザクレロは良い機体だが、何でも詰め込むには少々設計が古い。私はMIPが進めている新型を早期配備するよう進言したのだがね」

 

「新型、確かビグロでしたか?」

 

その言葉にネヴィルは素直に感心する。やはりこの男は耳が良い。

 

「うん。アレならばザクレロと同じ加速性能を維持しながらペイロードは倍近い。運動性はさほど変わらんが、推進器と装甲を増設すればMSが携行できるサイズのビームなら倍近く耐える機体になるだろう」

 

そう言うとマ大佐は満面の笑みを浮かべて賛同の意思を示してきた。

 

「素晴らしい。ビグロの生産が始まれば我が軍の制宙権は確固たるものになりますな。そうなれば後はルナツーから連中を蹴り出すだけだ。それで、大佐。ビグロの配備はどれくらいになりそうなのでしょうか?」

 

「出来て直ぐという訳にもいかんから、それなりの数が揃うのは早くても来月末くらいかと」

 

そう答えればマ大佐は顎に手を当て思案顔になる。正直今答えた数字でもかなり厳しいスケジュールだ。ドズル中将など聞いた瞬間話にならないと怒鳴ったくらいだから、彼も似た意見なのだろう。

 

「であるならば、2ヶ月ほど時間を稼ぐ必要がありますな。大佐、実はちょっとした玩具をでっち上げて欲しいのですが」

 

やはりこの男は有益だ。ネヴィルはマ大佐の腹案を聞くと満足して頷いた。




教訓:物事は計画的にやりましょう。因みに作者は夏休みの計画をただの一度も成功させたことがありません。そう言うとこだぞ!

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