テイルズオブグレイセスθ   作:町の人

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書いているうちに、前話の後半部分にまで修正が及んでしまいました。
そこから今話に繋がっているので、そちらから先に読んでいただけるとありがたいです。


私の目的

 あの場をなんとか切り抜け、私は無事シャトルに乗り込むことができた。

 シャトルはすでに発射しており、前方に見えるエフィネアへ向けて進んでいる。

 羅針帯(フォスリトス)はまだ存在していないため、以前テレビか何かで見た地球の姿によく似ていた。

 

 それにしても、まさか自分が「テイルズオブグレイセス」の世界にいるとは夢にも思わなかった。しかも、なぜかヒューマノイドになっているというおまけ付きで。衝撃のあまり固まってしまい、危うくコーネルさんを見殺しにしてしまうところだった。

 突然のお願いを聞き入れてくれたコーネルさんには、感謝してもしきれない。ということで、早速お礼として肩の怪我を治療させてもらった。

 原作のヒューマノイドが「ファーストエイド」を使っていたので、もしやと思い、手を当てながら術名を唱えてみたところ見事発動。私自身にとっても、貴重な回復手段があることがわかったので大収穫だ。

 

 しかし冷静になってみると、どうしてコーネルさんは私の同行を許してくれたのか、という疑問が湧いてきた。

 自分で言うのもなんだが、私はかなり怪しい存在だと言わざるを得ない。私のことを話す前に思い切って聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。

 

「君がヒューマノイドらしくないのが気になったのだよ。勿論、いい意味でな」

「ヒューマノイドらしくない、というと?」

「エメロード君の命令を無視して私を助けたこと。そして、まるで人間のような言動。長年ヒューマノイドを研究してきたが、君のように自我を持った個体は見たことがない。それに……」

 

 そこでコーネルさんは一度言葉を切ると、苦笑まじりにこう続けた。

 

「シャトルに乗せてくれと頼んできた姿が、あまりにも必死だったものでな」

「っ!?」

 

 思わず顔が熱くなる。ヒューマノイドなのにこんな機能ついてるのか、なんて場違いなことを思ってしまった。

 置いていかれてはまずいと、必死に頼み込んだのが功を奏したらしい。が、こう改めて自分の醜態を聞かされると、恥ずかしくてたまらない。

 そんな私の様子を、コーネルさんは温かく見守っていた。

 

 しばらくして落ち着いたところで、改めて話を切り出す。私のことを、そろそろ話しておかなければならない。

 

「……ええと、今度は私のことを説明しておきたいと思います。まず初めに、私にこうして自我が生まれた理由なんですが……残念ながら、私にもわかりません。信じられないかもしれませんが、気がついたらこうなっていた、としか言いようがないんです」

 

 これは紛れも無い事実だ。ここがゲームの世界だということは理解できたが、逆に言えばわかったのはそれだけだ。私がこんな状況に置かれている原因は、未だにさっぱりわからない。

 

「ふむ……。不可解だが、君がこうして私と話をしているのは確かだ。それは疑いようがない」

 

 どうやら、ある程度は納得してもらえたようだ。こちらとしても、これ以上の説明はできないので助かる。

 さて、いよいよここからが本題だ。

 

「次に、シャトルに乗せてもらった目的をお話しします。私は、ラムダの拠り所になりたいと思っています。ずっと先の未来まで、彼のそばに居てあげたい。そのために、私もエフィネアに行く必要があったんです」

 

 記憶がはっきりした時、私にはいくつか目標が生まれていた。そのうちの一つが、ラムダとともに生きていくことだ。

 全ての始まりとも言える、エメロードによるコーネルさんの射殺。それはなんとか回避することが出来た。

 だが彼にも寿命があり、いずれ別れの時は来る。その時、ラムダに寄り添える存在は私しかいない。自惚れかもしれないが、私はそう思っている。

 

「それは、願ってもないことだ。ヒューマノイドである君がラムダと共にあってくれれば、あの子に寂しい思いをさせずに済むだろう。しかし、君はラムダと会ったばかりのはずだ。それなのに、なぜそこまで……」

「それも、これから説明します」

 

 少し長くなると前置きして、私は原作におけるラムダの話を「目覚めた時頭に流れ込んできた映像」として話した。

 かなり無理があるとは思ったが、異世界のゲームで語られていた、と馬鹿正直に言うよりは幾分マシだろう。

 

 フォドラの星の核(ラスタリア)で発見された生命体。それはコーネル博士によって「ラムダ」という名を与えられ、人間として大切に育てられた。

 しかし研究を進める中で、ラムダの体組織が生物を凶暴な魔物(モンスター)に変化させ、さらにそれらを支配下に置くことができることが判明する。それを危険視したエメロードの進言により、ラムダは廃棄処分にされることとなった。

 だが、それは失敗に終わる。ラムダの生命力を見誤ったのだ。

 

「廃棄処分から逃れたラムダを追い、あなたはシャトル発着場へ向かった。後のことはご存知の通り、と言いたいところですが、私の見た結末は少し違っていました」

 

 そこで一旦言葉を切る。言うべきかどうか、迷ってしまった。だが、言わなければ話は進まない。

 

「……コーネルさん。あなたはヒューマノイドに撃たれ、亡くなったんです」

「……!」

 

 自分の死を告げられ、コーネルさんが息を呑む。

 

「あなたは死の間際にシャトルを発射させ、ラムダをエフィネアに送り出しました。その後のラムダのことも、私の記憶にあります。……続けますか?」

「……聞かせてくれ」

 

 エフィネアにたどり着いたラムダを待っていたのは、人間からの迫害だった。化け物め。こっちに来るな。そんな言葉を浴びせられ続ける。

 ラムダを受け入れる者は誰もいない。彼の居場所は、エフィネアのどこにも存在しなかった。

 その後、ラムダを消し去るためにフォドラから送り込まれたヒューマノイド、「プロトス1(ヘイス)」との死闘の末、ラムダは長い眠りにつくことになる。

 それから1000年の時が流れ、ラムダは再び目覚めた。

 人間への憎悪に支配されたラムダは、エフィネアの要である3つの大煇石(バルキネスクリアス)から原素(エレス)を奪い、彼自らが星の核(ラスタリア)に成り代わろうとした。

 全ての人間を、世界から消し去るために。

 だが、それは一人の愚直な青年によって阻止された。青年との対話の末、人間の可能性を見たラムダは共存を受け入れ、再び眠りにつくことになった。

 

「以上が、私の見たラムダの全てです」

 

 長い話を終えて、コーネルさんの様子を伺う。その表情は辛そうに歪んでいた。話の中のラムダの境遇に心を痛めているのだろう。

 

「辛い思いをさせて、すみません」

「いや、気にしないでくれ。聞かせてくれと言ったのは私だ。それに、君はラムダがそうならないように、こうして付いてきてくれたのだろう? そんな君を責められるはずもない」

 

 その言葉から察するに、こんな荒唐無稽な話を信じてくれたようだ。

 一方的に話しておいて勝手なことだが、なぜ、と思わずにはいられなかった。

 

「……作り話だとは、思わなかったんですか?」

「ああ。君は大煇石(バルキネスクリアス)星の核(ラスタリア)の存在を知っていた。目覚めて間もない君の口から、偶然その言葉が出てくるとは考えにくい」

 

 コーネルさんによると、それらを知るのは研究に携わっている人間、アンマルチアだけなのだそうだ。

 言われてみれば、エフィネアの人々は大煇石(バルキネスクリアス)煇石(クリアス)の恩恵にあずかってはいても、その正体が人工物であることや、原素(エレス)の源である星の核(ラスタリア)が存在することは知らなかった。

 物語の中で当たり前のように話されていたので、誰もが知ることのように錯覚してしまったのかもしれない。

 

「信じてくれて、ありがとうございます」

「礼を言うのはこちらの方だ。君は私たちの命の恩人なのだからな。本当にありがとう。そして、これからよろしく頼む」

 

 笑みを浮かべながら、コーネルさんが手を差し出してくる。私もそれに手を重ね、にこやかに応えた。

 

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 そこで、コーネルさんがふと気づいたように尋ねてくる。

 

「ところで、君に名前はあるのかね?」

「名前、ですか?」

「ああ。これから共に生きていくのだ。いつまでも『君』では他人行儀すぎるだろう」

 

 私の名前、か。

 一応日本人だった頃の名前は覚えているが、どういうわけか、それを自分の名前だと思えなくなっている。身体が変わってしまった影響なのだろうか。正直よくわからない。

 とにかく、今の私に名前はないということになる。

 どうしたものかと思っていると、視線に気づいた。目を向けると、ラムダが心配そうにこちらを見つめていた。私と目があった途端、ばっと物陰に隠れてしまう。なんだか小動物みたいだな、なんて思ってしまった。

 そこで、ふと思いついた。ラムダという名は、ギリシア文字から取られたものだとどこかで見た記憶がある。それがヒントになった。

 

「私のことは、シータと呼んでください」

「シータ、か。いい名だ。ラムダ、こっちにおいで」

 

 コーネルさんに呼ばれたラムダが、とてとてとこちらに歩いてくる。

 そして、私に対する警戒を隠すことなく、コーネルさんにぴったりとくっついた。

 

「ラムダ、そう怖がることはない。彼女……シータ君は、私達の味方だ」

「すぐにとは言いません。少しずつ、仲良くなってください」

 

 そう言って手を差し出す。それを、ラムダはじっと見つめていた。やがて、彼はおずおずといった様子で私の手を取った。

 にっこりと笑いながら、声をかける。

 

「これからよろしくお願いします、ラムダ」

「……」

 

 返ってきたのは、ぎこちない笑顔。

 私とラムダの、最初の触れ合いだった。

 

 

 コーネルさんとの話し合いを終え、私はシャトルの座席にどっかり座りこんでいた。緊張が解けて一気に疲れが押し寄せてくる。

 ヒューマノイドが疲労を感じるのかはわからないが、少なくとも精神的には疲弊していた。

 ヒューマノイドも眠ることがあるんだろうか、そういえばソフィも寝ていたような。そんなことを考えているうちに、私の意識は途切れていた。




主人公の名前はラムダ繋がりでギリシア文字から選びました。
特に深い意味はありません。

想定より長くなってしまったので、主人公の能力説明は次回に持ち越します。おそらくテンプレになります。
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