想定の倍くらいの文量になってしまいました。少し冗長かもしれません。
都合が良すぎる場面、及び神様チート満載です。
気がつくと、私は見知らぬ空間にいた。早くも二回目である。
とりあえず、ぐるりと周囲を見渡してみる。誰もいないし何もない。天井や壁は存在しないが、外というわけでもない不思議な場所だった。
またよくわからないことになってしまった。そんなことを思っていると、突然目の前に白く光る球体が現れた。同時に、どこからともなく声が聞こえてくる。
「こんにちは、シータさん」
再び周りを見回してみるが、相変わらず誰もいない。ということは、この球体から聞こえたのだろう。
「なんで、私の名前を知ってるんですか?」
謎の声は、私をシータと呼んだ。
それは確かに
「貴女のこれまでの行動を、全て観測していましたので」
「観測って……一体どこから?」
「世界の外からです」
「……はい?」
話の飛躍ぶりについていけず、つい間の抜けた返事をしてしまった。
さっきまでは自分が逆の立場だったが、コーネルさんはよく私の話を真剣に聞いてくれたものだと、改めて思う。
しかし、世界の外から、か。そんなことができるのは、それこそ神様とかそういう——。
「え、まさか神様……?」
「はい」
つい口に出してしまった疑問は、あっさりと肯定された。
普通なら信じないだろうが、私がこの世界にいることや身体がヒューマノイドの物になってしまったこと、そしてこの空間のことなど、既に普通ではないことがいくつも起こっている。神様くらいいても不思議ではなかった。
おそらく、この空間に私を招いたのは神様なのだろう。ということはつまり。
「私がこの世界にいるのも、あなたが関係しているんですか?」
「その通りです。私が貴女を、ヒューマノイドの人格としてこの世界へ送り込みました」
やはり、思った通りだった。相手が神様だと知った時から薄々そんな気はしていたが、これで目覚めた時からの疑問は解消された。
しかし、まだ理由がわからない。それを知ったからどうするというわけでもないが、せっかく目の前に(厳密には別の場所にいるようだが)私を連れてきた張本人がいるのだ。この機会を逃す手はない。
「どうして私が選ばれたのか、お聞きしてもいいですか?」
「もちろんです。まず貴女は、『テイルズオブグレイセス』という物語の悲劇。それを改変したいという願いを抱いていたと思います」
「随分と大げさな気がしますが……まあ、確かにそうですね」
原作における悲劇——主人公アスベルの父アストンを始めとする登場人物の死。家族・友人とのすれ違いや諍い。それらをなんとかしたいという思いは、プレイしていた当時から持っていた。
もちろんそれは妄想の域を出るものではなかったが、今では私が掲げているもう一つの目標になっている。コーネルさんの死を回避できたことで、その思いはより強くなったと言っていい。
しかし、それが今の状況とどう関係するんだろうか。
「私も同じ願いを抱いていたんです。それが貴女を選んだ大きな理由でした」
「え? というと、神様もグレイセスを知ってるんですか?」
「ええ。作品によって作られた世界を観測する、という形ですが」
神様によると、人間が生み出した物語によって新たに世界が作られるらしい。私たちがそういった作品を楽しむように、神々もその世界を見て楽しむんだとか。
「そういう世界って、改変なんかして大丈夫なんですか?」
「問題ありません。改変した時点で元の世界から切り離され、また新たな世界が生まれます。皆さんが行う『二次創作』のようなもので、神々の間でも盛んなんですよ」
「……なるほど」
正直その表現はどうなんだろうと思ったが、口には出さなかった。スケールが大きいんだか小さいんだかわからない。
自らの手で改変することはできないのか、と聞いてみると、世界に入ると力を失ってしまうので不可能、という答えが返ってきた。神様といえど、なんでもできるというわけではないらしい。
「他者に恩恵を与えることは可能なので、自分と同じ思いを抱いている人間を探して、代わりに実行してもらうんです」
「それで、私が選ばれたと」
「はい。ただ、貴女が最初というわけではありませんでした。初めは、私と同じ願いを抱いている方に『私の願いを聞いてほしい』と頼みました。ですが、『本当にやりたいとは思っていない』と断られてしまったんです。何度も繰り返しましたが、結果は同じでした」
気の毒だが、それは無理もないことだ。
先ほども言ったように、そういった願望はあくまで妄想であり、実現できると思っている人はまずいない。それは私も例外ではなく、もし彼らと同じ立場だったなら、きっと同じことを言っただろう。
断られ続ける様を想像して、少し可哀想だな、なんて思っていたのだが。
「そして、私は悩んだ末に決断しました。先に送り込んでしまってから、説明して納得してもらおうと」
「……随分と乱暴なやり方ですね」
少し強い口調になってしまう。状況から察するに、私がその強引な方法で連れてこられたのは間違いない。
既にこの世界で生きていく決心はついているので、それが揺らぐことはない。とはいえ、そんな横暴を「はいそうですか」と流す気にはなれなかった。
「……返す言葉もありません。ただ、安心してください。元の貴女は、日本で平和に暮らしていますので」
「……え?」
私が日本で暮らしている? というか、「元の」とはどういう意味だろう。
「貴女の記憶と人格は、オリジナルの貴女を元に忠実に再現したものなんです」
「……それは、いわゆるクローンみたいなものですか?」
「そう捉えて頂いて構いません。本人を送り込むわけにはいきませんので」
なんと、私は神様によって作られた存在だったらしい。
フィクションにおいて、自分がそういう存在だと知った人物は大抵の場合悲観的になる。グレイセス本編でも、自身がヒューマノイドだと判明したソフィの反応はそういうものだった。
しかし、悲しみだとか怒りだとか、そういった感情は特に湧いてこない。
先ほど少し怒ってしまったのはあくまでやり方に問題があったからで、むしろ「元の私」が健在なのがわかって安心したくらいだ。もしかすると、名前を自分のものと思えなかった時点で、無意識のうちに勘付いていたのかもしれない。
そこでふと、それならなぜ今までお願いされた人たちは全員断ったのだろう、という疑問が湧いてきた。戦うのが嫌だとか理由はあるかもしれないが、一人も承諾してくれないということはないはずだ。
そうして考えているうちに、一つの仮説が浮かび上がった。まさかな、と思いながらたずねてみる。
「そういうことなら安心なんですが、今までお願いしてきた人たちにもこのことは伝えたんですか?」
「いえ。承諾してもらってからお伝えしようと思っていました」
……なんとまあ。そのまさかだった。
もしかしたら神様が改変の仕組みについて説明していなかったのでは、と思ったのだが、見事的中してしまった。
「あの、先に伝えていれば、おそらく承諾してくれる人は居たと思いますよ? その説明がないと、『今の人生を捨てて新しい世界で頑張れ』ということになってしまいますから」
「……あっ」
私の指摘を受けて、神様もようやくそのことに気づいたらしい。
「うう、こんな初歩的なことに気づかないなんて……本当に申し訳ありません……」
しょんぼりとうなだれているのが目に浮かぶようだった。私を問答無用で送り込んでしまったことといい、どうやらこの神様は少々ドジっ子の気があるようだ。
巻き込まれた側としては堪ったものではない、と言いたいところだったが、一周回ってなんだか微笑ましく思えてきた。失礼ながら、脳内イメージは幼い子供である。
「ふふ、大丈夫ですよ。おかげでこうして、私がチャンスを得られたんですから。むしろ感謝してます」
「……そう言って頂けて、幾らか救われました。ありがとうございます」
これで、私がこの世界にいる理由については全てわかった。それでは、話の続きを聞くとしよう。
「確か、私には恩恵が与えられてるんですよね?」
「ああ、そうでした。これからそのことについてお話しします。ヒューマノイドに関する説明も併せて行いますので、ご安心ください」
こうして長い前置きが終わり、神様による説明が始まった。
まず、この身体は
攻撃を受ける等して損傷した場合は、自動で修復する機能が備わっている。
ただ、
しかし、その心配は杞憂だったようだ。
「特殊な機能がありますので、問題ありません。シータさん、左のこめかみを指で押してもらえますか?」
「こめかみ……こうですか?」
言われた通りに、左手でこめかみを押してみた。すると、前方にモニターのようなものが浮かびあがってくる。
驚いて思わず飛び退るが、それは追従するように付いてきた。覗き込んでみると、そこには見覚えのある画面が映っていた。
「これは……グレイセスのメニュー画面?」
「はい。正確には、それを模したものです。現在の
「えっと……はい、確かに」
原作でパーティメンバーが表示されていたところに、私の名前があった。その横にはレベル表記がない代わりに「強化ポイント 1」と書かれている。名前からして何か強化する際に使うのだろう。
そして肝心の
「他の項目も貴女専用のものになっていますので、確認してみてください」
画面上部には、術、アイテム、装備、マップ、ショップという風に項目が並んでいた。ショップというのがやたらと気になるが、左から順に確認していく。
術のページは原作のようにセットするわけではなく、取得済みと未習得の欄に分けて一覧表示するという形だった。
取得済み欄にはファーストエイドのみ。未習得欄には膨大な量の術名が並んでおり、属性ごとにソートすることも可能なようだ。技は存在しないようだが、装備から考えて私は後衛なので問題はない。
試しに火属性のものを表示させ、一番上に出てきた「フォトンブレイズ」を選んでみる。すると、術の説明とともに「取得する」と書かれたボタンが現れた。どうやら術の取得はここで行えるらしい。
ボタンを押すと「取得しますか? 消費ポイント 1」というメッセージが表示された。ここでさっきの強化ポイントとやらが使えるのだろう。
「あの、強化ポイントっていうのはどうやって貯めるんですか?」
「敵を倒すことで手に入ります。基本的には一体倒すごとに1ポイントですね」
つまり、先ほどヒューマノイドを倒したことで手に入ったということか。
せっかくなので、そのまま「はい」を選択してフォトンブレイズを取得する。私にとって、初めての攻撃術だ。
「試してみますか?」
「え、いいんですか? それなら、やってみたいです」
「わかりました。では、的をご用意しますね。術名を唱えるだけで発動できますので、詠唱は必要ありません」
無詠唱でいいとは、なかなかのアドバンテージではないだろうか。そんなことを思っていると、少し離れた場所に別の球体が現れる。これが的ということか。
では、早速試してみよう。球体をしっかり見据え、狙いを定める。心臓はないはずだが、鼓動が早くなるような錯覚を覚えた。
「フォトンブレイズ!」
叫ぶと同時に球体の周囲を火球が包み、やがて炸裂する。火球が消滅すると、黒焦げになった球体が現れた。それを自分が為したという事実に、興奮が湧き上がってくる。
「すごい……」
「お見事です。ただ、注意してください。術を発動すると
「……そうですね。術を撃ちすぎて消滅とか洒落になりませんし」
他のテイルズ作品で例えるなら、HPとTPが同じゲージにまとめられていて、そこから消費されるといった感じだろうか。
技を出しすぎてTPがなくなってしまう、なんてことはしょっちゅうだったが、それを今やるとそのまま死んでしまうということになる。笑い話にもならない。
なので、今の術でどれくらい消費したのか早速確認してみた。
「80%……? 今ので10%も?」
フォトンブレイズは初級の術だったような気がするが、これは燃費が悪すぎるような……。
「初めはそんなものです。術は何度も使うことで
その辺りは、ゲームと変わりないらしい。
幸い、時間はたっぷりある。プロトス1の襲撃がいつ頃なのかわからないのが不安要素だが、それさえ何とかすればその後は1000年後だ。じっくり仕上げていけばいい。
次にアイテムのページ。
どうやらアップルグミを一つ持っているらしい。選択してみると、「取り出しますか?」というメッセージが表示された。「使用しますか?」ではないことを疑問に思いつつ、とりあえず「はい」を選んでみる。すると、私の手の中にアップルグミが現れた。それを画面に当ててみると、手の中から消えて再びアイテム一覧に表示される。
なるほど、これは便利だ。ただ、何もないところから物を取り出す形になるので、誰かに見られないように注意する必要があるだろう。
装備のページも似たようなものだった。
武器に光線銃、固有に仮面が装備されており、それぞれ外すと実際に私の姿が変化した。外した装備はアイテム欄に送られるようだ。仮面はともかく、光線銃は普段の生活で明らかに邪魔になると思っていたので、外せることがわかってよかった。
マップのページを開くと、中心に三角形が表示されていた。おそらく私の位置を表しているのだろう。
すぐ近くには青い点が表示されている。触ってみると、その上に『神様』と表示された。自分だけではなく周囲にいる人も表示されるようだ。あと、拡大と縮小もできるらしい。
「この空間は何もない場所なので、貴女と私の位置しか表示されていません。実際には地形も確認できますし、建物の中でも有効です。エフィネアに着いたら試してみてください。縮小すればエフィネア全土を見られますが、確認できるのは行ったことのある場所のみです。座標も表示されますので、シャトルでの移動にも活用できますよ」
そういうことだったのか。通りで何も表示されないわけだ。
シャトルに関しては私が扱えるのかどうかわからないので、落ち着いたらコーネルさんに聞いてみることにしよう。
「また、レーダー機能もあります。今度は右のこめかみを押してみてもらえますか?」
言われたように、右手でこめかみを押してみる。すると、視界の右上あたりに円形のレーダーが表示された。マップと同じように、三角形と青い点が表示されている。
「レーダーを表示させておくことで、戦闘中に敵を見失う心配がなくなります。また、敵意を持つ者は人間・
「なんか、色々便利すぎて逆に申し訳なくなってきますね」
「無理なお願いを聞いて頂いているんですから、これくらいの支援は当然ですよ。それに、これで終わりではありません」
そうだ、まだ「ショップ」という謎の項目があったのだった。
早速開いてみると、見慣れた画面が表示された。ただ、その内容に驚愕する。
「ア、アップルグミが30000ガルド……?」
価格があまりにも高い。細かい額までは覚えていないが、少なくとも3桁程度だったはずだ。
「それは、ゲームとの違いが関係しています。アップルグミなどの回復アイテムは、この世界に存在しません。しかし、このショップではそれが購入できる上、効果は『ゲームのまま』なんです」
「ということは、怪我をした人にアップルグミを食べさせたら、怪我が治ると?」
「そうですね。例えば、エリクシールなら瀕死の重傷だろうが瞬時に治ります。当然、その分お値段は跳ね上がっています」
そう言われてエリクシールの価格を確認すると、驚異の1000万ガルド。この世界の物価はわからないが、そうやすやすと買える額ではないのは間違いない。
「グミを貴女が食べれば、
最初に説明された「
「ガルドは
「はい。倒した時点で自動的に加算されます。あとは依頼ですね。こちらは強化ポイントも獲得できます」
「なるほど……」
当面は
ちなみに、貯めたガルドはアイテムと同じように取り出すことも可能らしい。ある意味では夢の機能と言えるかもしれない。
「以上で、私の説明は終了です。いかがでしたか?」
「正直まだ道筋は見えてませんが、これだけのお膳立てがあれば、きっと目標は達成できると思います」
不安がないといえば嘘になる。だが、それよりもこれからに対する期待の気持ちの方が強かった。
「そう言っていただけて安心しました。……最後に改めてお礼を。私の我儘に付き合って頂いて、本当にありがとうございます。これからも、貴女のことを見守っていますね」
「こちらこそ、こんなチャンスを与えてもらって感謝してます。死なないように頑張りますので、応援していてください」
「ええ、もちろんです」
そろそろ、神様ともお別れらしい。おそらくもう会うことはないのだろう。
正直に言うと少し困った
「健闘をお祈りしています。どうか、お元気で」
その言葉を聞いたのを最後に、私の意識は再び途切れた。
いよいよ、私の挑戦がスタートするのだ。
コーネル「おはよう、シータ君。おや、仮面と銃はどこに?」
シータ「あ、えっと、これは……」
目覚めたあとこんな一コマがあったとかなかったとか。
アイテムの価格は結構適当です。エクスカリバーのサブイベントにおいて、騎士学校の奨学金が1000ガルド、国宝級の剣が120万ガルドということなので、それを一応参考にはしています。
今回でプロローグが終わり、次回からようやく本編です。
5/3追記
ミニマップ→レーダーに変更
2020/5/15
あまりにも今更ですが、ライフボトルをエリクシールに変更しました。