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初めてのエフィネア
神様との邂逅を経て、私は再び目覚めた。
装備を外したままになっていたことを忘れていたため、コーネルさんに不思議がられて慌てることになってしまった。
仮面は外したで済むが、銃はそうもいかないので、実は粒子化できるのだと説明してなんとか誤魔化した。あながち嘘というわけでもない。
銃は必要に応じて装備すればいいとして、仮面は見るからに怪しいのでこれからはつけない方向でいこう。どうでもいいことかもしれないが、素顔は割と可愛いと思う。
シャトルは現在エフィネア上空を飛行しており、あとは着陸を待つのみとなっていた。
「ラムダ、シータ君。もうすぐシャトルを着陸させる。シートに座ってじっとしていてくれ」
「……」
「わかりました」
着陸の方法などを聞いてみたいと思っていたが、今は時間がなさそうだった。
ちなみに、普段の移動にシャトルを使う気はない。空を飛ぶ機械など目立って仕方ないからだ。操縦方法を知りたいのは、緊急時の移動手段として使えるようにしておきたいためである。
1000年後を迎えるまで、できるだけ世界に影響を与えるべきではないと考えている。もしかしたら、ほんの少しのことで未来が変わってしまうかもしれないのだ。そうなってしまっては元も子もない。なるべく目立つことは避けようと思う。
そんなことを考えている間も、シャトルは徐々に高度を下げていく。
ふと横を見てみると、ラムダが不安そうに座席にしがみついていた。私の視線に気がついたのか、こちらに振り向く。笑顔を向けると、ぎこちないながらも笑い返してくれた。些細なことだが、嬉しく思う。
そうこうしているうちに、シャトルが着陸態勢に入ったらしい。元の世界の飛行機とは違い垂直に降下しているようだ。
原作で初めてフォドラを訪れた際、シャトルは制御不能に陥り墜落した。そのため少し心配だったのだが、杞憂だったようだ。
今思えば、あのシャトルは何百年も放置されていたものだったのだろう。いかにパスカルやポアソンが天才とはいえ、限られた時間では完全に整備することができなかったのかもしれない。
数秒後、軽い衝撃と共にシャトルは静止した。無事着陸に成功したようだ。
搭乗口を開き、外に出る。記念すべきエフィネアでの最初の一歩だ。
シャトルの周囲には青々とした緑が広がっている。
この時代のことはよくわからないが、ウィンドル・ストラタ・フェンデルの三国は既に存在していたはずだ。景色や気候から考えて、ここはウィンドルの領土と考えて問題ないだろう。
まずは、ウィンドルのどのあたりなのかを把握しておく必要がある。コーネルさんに「周辺を探ってきます」と告げ、緑が生い茂る森へと足を踏み入れた。
マップを開いて、二人の位置が表示されていることを確認する。これでシャトルが見えないところまで行っても、これを目印に戻って来られるはずだ。
次にマップを縮小し、エフィネア全体を表示する。陸地の形が辛うじてわかる程度で、薄暗い闇に覆われているような状態だった。
私の周りだけがスポットライトで照らされたように明るくなっており、移動するとその範囲が広がっていく。「一度行った場所は確認できる」というのはこういうことらしい。
微かに見える地形から、ウィンドルの東にいることはわかった。原作のワールドマップを完璧に覚えているわけではないが、北に進めばラント周辺に行けるはずだ。とりあえず真っ直ぐ北上してみよう。
こんな見通しの悪い場所ではどこに何がいるのかも分からないので、レーダーを起動しておくのを忘れない。
「……ん?」
そこで、私から少し離れた位置に赤い点があることに気づく。次の瞬間、木陰から小型の狼のような
思わぬ形で、エフィネアでの初めての戦闘が始まる。
「グルル……」
ならばこちらから仕掛けようと銃を装備する。念のため
右腕を突き出して狙いを定める。そこで初めて、腕が震えていることに気づいた。
「ギャンッ!?」
光線は見事胴体に命中した。タイニーウルフは痛みにのたうち回る。その様に少し罪悪感を覚えるが、やらなければやられるのだと自分に言い聞かせる。
とどめを刺すべく再び意識を集中し、唯一の攻撃術を発動させる。
「フォトンブレイズ!」
火球がタイニーウルフを包み込み、炸裂する。黒焦げになったタイニーウルフは、倒れたままピクリとも動かない。なんとか倒せたようだ。
「ふう……」
レーダーで付近に何もいないことを確認し、気持ちを落ち着けるために大きく息を吐く。
ごく普通の日本人だった私には、当然ながら戦いの経験など全くない。一匹だけだったから良かったものの、もし相手が複数だったなら……と想像してゾッとする。
これからは必ず周囲に気を配るように心がけよう。
気を取り直して北上を開始する。なるべく音を立てず、
マップで現在地を確認する。どうやら、人間によって整備された街道のようだ。ここまでくれば街へ行くことは容易だろう。コーネルさんとラムダをいつまでも待たせるわけにはいかないので、一旦引き返すことにした。
シャトルの近くまで戻ってくると、私の姿を見つけたコーネルさんが近寄ってくる。その表情を見るに、やはり心配させてしまったらしい。
「無事だったか。帰りが遅いものだから心配したぞ」
「心配をおかけしてすみません。
「なんと。……うむ、どうやら怪我はないようだな」
「はい、なんとか。それから、付近に街道を見つけました。それを辿れば街へ行けるはずです」
それから、今後の方針について話し合うことになった。
森の中には
コーネルさんの死を回避したとはいえ、「ラムダがエフィネアに逃亡した」という結果は変わっていない。いつになるのかはわからないが、彼女はいずれやってくるだろう。その時、街に住んでいると無関係の人たちを巻き込んでしまうかもしれない。
そんな私の考えをコーネルさんに伝えるが、彼の考えは少し違っていたようだ。
「そのプロトス
「ヒューマノイドはどのくらいで出来上がるものなんですか?」
「新しく製作するとしても、汎用のものならば一ヶ月もかからない。だが君の話を聞く限り、プロトス
「つまり、その間は街にいても問題はないと」
「そういうことになるな」
他でもないヒューマノイド研究の第一人者の言葉だ。私が素人意見を挟む余地はない。
当面は近くの街に滞在し、プロトス
「ところで、シャトルはどうするんですか?」
「このままここに置いておくつもりだが、何かあるのかね?」
「ええと、私も操縦の仕方を知っておきたいと思ってるので、なくなると困るな、と」
「そういうことか。それなら心配は無用だ。なにも破棄するわけではないのだからな」
たまに点検にも来るつもりだそうだ。その時に整備の仕方や、操縦の方法も少しずつ教えてもらうことにしよう。いつかきっと役に立つはずだ。
方針が決まったので、早速出発することになった。私が先導する形で森の中を街道に向けて進んでいく。
私一人ならともかく、二人を守りながら戦うのは非常に困難……いや、私の経験の無さから考えて不可能と言っていい。万が一囲まれでもしたらひとたまりもないだろう。故に、
先ほど森を歩いた時とは全く違った緊張感が私を襲う。自分以外の命を背負っていると思うと、恐ろしくて仕方ない。タイニーウルフとの戦いの方がよほど楽だった。
ビクビクしながら全力で
「はあぁ……」
深いため息をつく。不思議がられるかもしれないが、そんなことを考えている余裕もなかった。
一旦休憩させてもらうことにして、木陰にへたり込む。そんな私の元へラムダが近づいてきた。なんだろうか?
「……」
頭を撫でられた。え、本当になんだこれ?
私が困惑していると、コーネルさんが可笑しそうに笑い出した。
「ははは。ラムダ、私の真似をしているのか?」
「真似?」
「ああ。よくそうして頭を撫でながら褒めてやっていたのでな。いつの間にか覚えたのだろう」
「ああ、なるほど……」
そういえば、そんな場面もあったかもしれない。
私がコーネルさんと話している最中も、ラムダはひたすら私の頭を撫で続けていた。くすぐったいが、どこか気持ち良くもある。
「ありがとうございます、ラムダ」
礼を言いながら、私もラムダの頭を撫でる。お互いの頭を撫で合うという妙な光景だが気にしない。
ラムダは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。気のせいかもしれないが、ぎこちなさが無くなっているような気がした。
休憩を終え、移動を再開する。
街道に出た後は道なりに進むだけだった。原作のように
その道すがら、コーネルさんにあるお願いをする。
「私に街の人間との会話を任せたい?」
「はい。私もラムダも子供にしか見えませんから、その方が不自然じゃないと思いまして」
初対面の相手に抱く印象は、やはり見た目によるところが大きい。私が表立って話すよりも、コーネルさんが話した方が与える印象が良いものになると考えたのだ。
「なるほど。わかった、そういうことなら任されよう」
「お願いします」
ここからは、コーネルさんに先導してもらうことにしよう。
街道をそのまま進んでいくと、左右に道が分かれていた。突き当たりに看板がある。
「ふむ……左に進めば『ラント』という街があるようだ」
「……! 行きましょう」
この時代においても、ラントという地名は存在していたようだ。アスベルやアストンの先祖が治めているということだろう。
私にとっても馴染み深い街なので、最初の拠点とするには申し分ない。後は、滞在できることを祈るのみである。
一旦区切ります。
マップの描写については、他作品ですが「真・三国無双8」を参考にしています。
ヒューマノイドの製作期間については原作で特に言及されていないので、大まかに設定させてもらいました。