この間にお気に入りが80突破、評価バーも空き3になりました。
お気に入り登録&評価ありがとうございます!
私のせいだと思ったのには、もちろん根拠がある。
ケントゥリオは私を「目標」と呼んだ。それはつまり、あの二体に私の破壊を命じた何者かがいるということだ。そして、フォドラで私が接した人間はコーネルさんを除けばただ一人、エメロードしかいない。
そこに思い至った時点で、私は自責の念にかられずにはいられなかった。
ラムダを消し去るために作り出したヒューマノイドが裏切り、さらにあろうことかコーネルさんをも連れ去ってしまった。エメロードが私に対してどういう感情を抱いたかは考えるまでもない。
彼女がどういった行動に出るか、予測することは容易だった。にも関わらず、私はプロトス
後悔がとめどなく押し寄せ、ああしていれば、こうしていればと思考がループしてしまう。
「シータ君、大丈夫かね?」
「……!」
名前を呼ばれ、ハッと我に返る。見れば、いつの間にかコーネルさんがすぐそばまで来ていた。それにも気づけないほど動揺していたようだ。
……過ぎたことを悔やんでいても仕方ない。それに、ラムダとソフィの消滅という最悪の事態は避けられたのだ。少し悲観的になり過ぎていた。
心配するコーネルさんに大丈夫だと告げ、少し落ち着くのを待ってからここまでの経緯を話した。こうなってしまった原因が、私にあることも含めて。
だが、コーネルさんは私を責めたりはしなかった。
「エメロード君の暴走を招いたのは私の責任でもある。君一人で背負いこむことはない」
「……ありがとうございます」
落ち着いたとはいえ、私のせいだという思いがなくなったわけではない。なので全面的に受け入れることはできなかったが、その言葉が私の心を軽くしてくれたのは確かだ。
私としては、エメロードの行動に関してコーネルさんに非はないと思っている。しかし、それを言うことにあまり意味はない。私がそうであるように、彼もそれを認めようとはしないだろう。きっと堂々巡りに陥るだけだ。
今度はコーネルさんから、ラムダとプロトス
とても戦いと呼べるものではなかった、とコーネルさんは悲しげに語る。その内容は、私の想像とそう変わらないものだった。
ラムダはプロトス
改めて周りを見回すと、すぐ近くにヒューマノイドが倒れているのが見えた。近づくまでもなく、酷く損傷しているのがわかる。コーネルさんの方へ振り返ると、彼はゆっくりと首を横に振った。修復は困難、ということだろう。
プロトス
ラムダを守るため。そう思って彼を戦いから遠ざけていたが、結果はこの有様だ。この先もこういったことが起こることは十分あり得る。考えを改める必要があるだろう。
ラムダを見つめる。このまま消えてしまうのではないかという錯覚すら覚えるほど、放つ光は弱々しいものだった。
ラムダはいずれ回復するはずだが、いつになるのかはわからない。それこそ、原作通り1000年近くかかるかもしれない。
そうなれば、コーネルさんとラムダは二度と話すこともできなくなる。それはなんとしても避けたいところだ。
まず思いついたのはファーストエイドを使うこと。しかし、プロトス
次はアップルグミだが、ヒューマノイドに入った状態ならともかくこの状態のラムダに使えるとは思えなかった。
試すだけ試してみようと漂うラムダに取り出したグミを当ててみたが、やはり変化はなかった。もちろんコーネルさんには見せていない。
こうなると残る手段は一つ。それは、私がラムダの宿主になること。原作でラムダがリチャードに憑依した場面から着想を得たものだ。
1000年の眠りから目覚めたラムダは再び
消耗が少なかった等、他の要因も考えられる。だが、宿主の存在が無関係とは思えなかった。
「ラムダを私の中に受け入れようと思います」
「……なに?」
私の提案にコーネルさんが面食らう。
以前記憶のことを説明した際は細かいところまで話していなかったので、先ほどの内容を改めて話し、その上で私の目的についても説明した。
その間、コーネルさんはずっと難しい表情をしていた。
「……君の考えはわかった。私としても、ラムダをこのままにしておきたくはない。だが、そんなことをして君は大丈夫なのか? 下手をすれば人格が消滅してしまうかもしれないのだぞ」
コーネルさんの懸念はもっともだ。
今までラムダが使っていたヒューマノイドの身体は、言わば空っぽの器。
対して、私にはこうして思考している「私」という人格がある。それが上書きされてしまうのではないか、とコーネルさんは危惧しているのだろう。
しかし、私はその点に関しては心配していなかった。責任を感じているというのはもちろんだが、何も自己犠牲の精神からこの結論に至ったわけではない。
「私の記憶にあるラムダと共存した人間は、人格を失ってはいませんでした。それだけで判断するのは危険かもしれませんが、私は大丈夫だと信じてます」
アスベルにしろリチャードにしろ、本人の意識ははっきりしていた。
リチャードが意識を乗っ取られかけていたのは、ラムダの憎悪に強く共感していたことが大きな要因だ。
今ここにいるラムダにその憎悪は存在しない。人間に対するトラウマも、ラントの住人たちとの交流のおかげで、ほぼ解消されたと言っていいだろう。
また違った不安はあるのだが、それは今考えても仕方ないので流しておく。
「……わかった、君を信じよう。ラムダを頼む」
「はい、任せてください」
どうにか納得してもらえたようだ。
それでは、早速実行に移すとしよう。方法は正直よくわからないが、とりあえず思いつくままにやってみることにした。
弱々しく漂うラムダを胸に抱くようにして、「おいで」と呼びかける。
すると、ラムダは応えるようにゆっくりと動き出し、私の中へと入っていく。見た目とは裏腹に何も感じないので、なんとも不思議な気分だ。やがて、ラムダの姿は完全に見えなくなった。
身体を軽く動かしてみても特に違和感はない。
まるでパーティメンバーのように、ラムダの情報が表示されていたのだ。私と同じように
この嬉しい誤算は、ラムダを回復させるのにきっと役立つはずだ。後で色々と試してみることにしよう。
それから私はコーネルさんと共にシャトルに戻り、改めて今後のことを話し合った。
まず初めに、拠点をグレルサイドに移すことを決めた。ラントに戻らないのは、裏山で眠っているプロトス
また、ソフィが「ラムダの動きを感知して目覚めた」と言っていた記憶がある。ラムダの意識が戻った時、同時に彼女も動き出すかも知れない。もしそうなった場合、ラントでは距離が近すぎる。
私というイレギュラーがいる以上、原作通りに進む保証はない。つい先ほどそれを身を以て痛感したばかりだ。いくら警戒してもし足りないと思っておくべきだろう。
私はラントに滞在していた時と同じように、
コーネルさんには宿屋で待機してもらうことにした。シャトルの点検は継続するとのことなので、その時は私も護衛を兼ねて同行する。いずれは動かせるようになりたいものだ。
話し合いが終わる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
いくら
そういうわけなので、今日のところはシャトルで一夜を明かすことになった。
コーネルさんが眠ったのを確認し、起き上がってメニューを開く。先延ばしにしていた検証を行うためだ。
ファーストエイドは……ダメか。術を選択しても「使用する」という表示が現れない。残念ながらこの方法は使えないようだ。
次にアップルグミ。まず一つ食べてみたが、私は回復したもののラムダは変化なしだった。私が優先されるのか、あるいはラムダには効果がないのか。これだけでは判断できない。
もしかしたら、私の
これで残りは二つ。一気に使い切ろうかとも思ったが、念のため一つ残しておくことにする。さて、どうなるか。
「……おお」
思わず声が漏れた。ラムダの
回復量が30%から3%にまで減少したのは、私とラムダの容量の違いによるものだろうか。単純に計算すれば十倍。三つの
逆に、私の容量が割と大きいのかもしれない。そうなると燃費の悪さが余計に際立つが、一応辻褄は合う。
とにかく、アイテムの効果があることがわかったのは大きな収穫と言える。ガルドを稼ぐことが、そのままラムダの回復につながるからだ。実にわかりやすい。
翌日、私たちは早速行動を開始した。
森を抜けた先の街道。ここをラント方面とは逆の方向に進めば、グレルサイドへ行くことができる。
時折飛び出してくる
ラントを初めて訪れた時のように、やり取りはコーネルさんにお願いする。ここでも特に警戒されるということはなく、すんなりと話が進んだ。
グレルサイドに入ってすぐ左手にある宿屋。そこが私たちの新たな拠点だ。ここから、ラムダを復活させるための日々が始まることになる。