コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした 作:八神刹那24
カレンは新しいクラスメイトの男を眺めていた。
クレイ・ロペス。現在自分の周りでもっとも話題になっている男だ。中途半端な時期に転校してきたうえに、もと軍人という異色の経歴をもつ。これだけで十分注目されたが成績優秀、身体能力抜群、人当たりの良い性格。男女ともに人気者である。
おまけに学園で人気を誇るルルーシュとは幼馴染みで親友だという。一部の女性には変な方向で話題になっている。私には興味がない世界だ。
クレイは生徒会にも所属することになり、一緒に仕事をすることもあった。生徒会の仕事もすぐに覚え、即戦力として歓迎されている。
しかしカレンのクレイに対する印象はあまり良くないものだった。
毎日毎日楽しそうに良く笑っている。こんな学校の何処がそんなに楽しいのかカレンには分からなかった。子供のように無邪気に笑うクレイをみて、若干の苛立ちもあった。
ああいう奴には辛いことや、もがき苦しむ経験なんてないんだろう。自分勝手なことわかっていても思わず思ってしまう。
気に入らないことはもう一つある。クレイがたまに自分のことをまるで観察しているような目で見ていることがある。目が合うとにこりと笑い、何事もなかったように流す。実際何もないのだが、あまり気分のいいものではない。特に自分のように隠し事のあるものにとっては。
放課後、偶然クレイと生徒会室で二人っきりになった。
「ねぇ、カレン。前から聞きたいことがあったんだけどいいかな?」
そういいながら彼は私の右手首をつかんだ。いきなりのことで驚く。彼の目は鋭く、息をのむ。
「病弱って嘘だよね。そんな設定にして学校じゃ疲れるでしょ」
突然の言葉にまたしても驚く。私の演技は今まで誰にもばれたことがなったのに。あって数日の奴に見抜かれた!?
「正解みたいだね。俺の父親ってさ、生前は要人警護を仕事にしていたんだ。だから見た目で相手の力量をはかることの重要性と方法を教わっているんだよね。
俺が見るに君は病弱にしては体つきが良すぎる。どうみても健康だし、むしろある程度鍛錬もしている。無駄のないしなやかな筋肉だ。反射神経もかなり良い。いいからこそ普段の動きがぎこちない。わざとらしいとも言える」
「ちょ、ちょっとまって。さっきから何を言っているの?私は嘘なんてついていないわよ」
「最初はただのお嬢様のお遊びかと思ったけど、もっと何かある気がする。なんていうか覚悟をもっている?そんな気がする」
なんなのこいつ。いったい何処まで私のことを感づいているの?ただの当てずっぽう?それにしては的確すぎる。
「ところでなんで俺が君の手首を掴んでいるのかわかっている?」
「え?」
「君の脈を測っている。さっきから脈が速くなっている。焦っている?あと相手の表情を読み取る訓練も受けているんだけど、君は分かりやすくて、可愛いね。さっきまで特に確信してるわけでもなかったんだけ、どうやらあたりっぽいかな」
「ば、馬鹿にしているの!?」
「怒らせてしまったのなら素直に謝るよ。別に怒らせる気はなかった」
クレイは降参とばかりに両手を挙げて後ろに下がる。こいつは危険かもしれない。なんでこんなことをしてきたのかは分からないが、このままではいずれ私がレジスタンスだということもばれてしまうかもしれない。
ここで始末するか?そっとナイフが仕込んであるポーチを手に取る。
「本当にごめんって。唯君のことが気になっただけなんだよ。詮索するつもりはないからさ。その凶器が仕込んであるポーチはしまってくれる?」
「っ!なんで知っているの?」
「そんな怖い顔して取り出したんだ、なにか危ないのが仕込んであると思うのは当たり前だと思うけど」
「……なんなのあなた。私にどうしろっていうの?」
「別に何かしてほしい訳じゃないんだよね。さっきも言ったけど君の隠し事を詮索するつもりはない。でもなぜか君のことが気になったんだ。気がついたら君のことを見ていた。だけどさっき怒った君の顔をみて分かったことがある」
「……なに?」
「どうやら俺は君に〝恋〟しているようだ」
「……は?」
突然の告白に頭が追いつかない。こいつは今なんて言った?私に恋している?あの流れからどうして愛の告白になるのか理解できない。
「ふざけないで!くだらない冗談に付き合うつもりはないわ!」
「ふざけてなんていないさ。俺はいたって真面目だ。俺は君のことが好きだ。今まで余裕がなかったせいかこんな気持ちは初めてで、分からなかったが、今なら自信をもって言える。俺はカレン・シュタットフェルトが好きだ。返事はいつでも良いから、それじゃ俺は失礼するよ」
言いたいことだけを一方的に言って去って行った。
な、なんなのよ、あいつは。真顔で好き、好きって何度も言うんじゃないわよ。
これだからブリタニアは!