コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした 作:八神刹那24
生徒会メンバーによる慰安旅行ということで現在河口湖行きの列車の中だ。参加者はミレイさん、シャーリー、ニーナそして俺の四人だ。
最初ルルーシュ、ナナリー、カレンの三人がそろって不参加だったので、俺も行くつもりはなかったのだが、ミレイさんに男がいた方が色々と安心できるから来てほしいと頼まれてしまった。
ミレイさんにそう言われてしまっては行くしかないだろう。しかし女性の中に男が一人と言うのはあまり良いとは言えない。ハーレムみたいだと喜ぶやつもいるだろうが、実際はいづらいだけだ。せめてもう一人男がいれば良かったのだが。
列車の窓から富士山が見えた。日本が世界に誇っていた立派な山も今ではすっかり悲惨なものになってしまっていた。サクラダイトの埋蔵量が多いとのことで採掘が進んでいる。採掘が始まる前の富士山を見てみたかったな。
河口湖の駅に着くとまずはホテルに荷物を置いていくことになった。俺はともかく女性陣は大荷物ゆえ、持ち歩くのは不便だからだ。
ホテルに着くとすぐに異変に気がつく。日本人が複数いた。いること自体は問題ないのだが、動きからして唯の民間人ではなさそうだ。
周りを気付かれないように注意しながら確認している。なにより目だ。名誉ブリタニア人の多くは敗者の目だが、奴らにはそれがない。
立ち振る舞いからして唯のチンピラテロリストではなさそうだ。おそらく元軍人だろう。噂に聞く日本解放戦線か?
不自然にならないようにミレイの側により、耳打ちする。
「ミレイさん。あまり良くない状況かもしれません」
「え?どうしたの?」
「元軍人と思われるイレブンが複数います。なにか行動を起こすかもしれません。残念ですが逃げた方が良いと思います」
「あなたがそう言うのならそうした方が良さそうね」
ミレイさんは俺のことを信じてくれ、すぐにシャーリーとニーナを側に呼んだ。すぐにこの場を離れると言うと俺とミレイさんの真剣な表情から非常事態だと、二人とも察してくれた。すぐに出入り口に向かうがすでに遅かった。
何台もの車が押し寄せ、中から軍服を着たもの達が雪崩込んできた。この状況で動くのはまずいすぎるので大人しく捕虜になるしかない。
「どうしよう、クレイ」
「今は大人しく相手の指示に従いましょう。大丈夫です。俺が必ず三人共まもってみせます」
人質は全員ホテル一室に集められて見張られている。手足を拘束されていないのがせめてもの救いか。敵のリーダーは草壁中佐といい、日本解放戦線だと言う。
元とはいえ軍人が民間人を捕虜にしてのテロ行為とは落ちたものだな。こんなやり方では民衆の支持は得られないだろうに。そんなことも分からないのか。
まずい状況としか言い様がない。人質になっているのは勿論、相手が悪すぎる。日本解放戦線ではない、コーネリアの方だ。
奴は絶対にテロリストに弱みを見せない。いかなる要求も意味がない。人質など無視して殲滅しにくるだろう。
だがテロが起きて数時間立つが未だにブリタニア軍が動いた雰囲気はない。おかしい。コーネリアの性格からしたらとっくに鎮圧しているだろう。その時は俺達全員こいつらに殺されているだろうから、助かってはいるが。
コーネリアが人質など気にするはずがない。政治や大衆の支持を気にする奴でもない。唯一気にするものと言えば……ユーフェミアか。この人質の中に彼女がいるとしたら納得できる。もしユーフェミアがいるのなら無茶なことはしない。わずかな希望が出てきたか。
「イ、 イレブン」
「今なんと言った!!我々は日本人だ!!」
緊張に耐え得きれなくなって、ニーナが思わず小さな声でこの場で絶対に言ってはならない禁句を言ってしまった。くそっ!状況的にニーナを責められないが、まずいことをしてくれた。
ミレイさんがニーナを庇うように抱きしる。熱くなる男にミレイさんとシャーリーが訂正するが恐怖と焦りで対応が悪い。頭に血が上っている相手に強く言い返すのは、相手を余計に興奮させるだけだ。
「落ち着いてください。女の子が思わず言ってしまっただけです。許してあげてください」
「なんだ貴様は!子供がナイト気取りか!」
彼女たちの前に出て謝罪する俺に男は持っていた銃の柄で殴りかかってくる。よけようと思えばよけられるが、受けるしかない。
頭を打たれて膝をつく。頭から血が流れ出てくるのがわかる。覚悟はしていたが痛いものは痛い。
「クレイ!大丈夫!?」
「大変!血が出ている!」
「きゃーーー!」
「……っ、大丈夫です。それより落ち着いて。彼らを刺激しないようにしてください」
心配してくれるのは有り難いが騒いで相手を刺激してほしくない。特にニーナ。気持ちは分かるが落ち着いてくれ。いっそのこと気絶させるか?
「生意気なガキが!そんなにナイトになりたいのならさせてやる。次に飛び降りるのはお前だ!さぁ立て!!」
男は怒鳴りながら俺の腕を掴もうとしてくる。
限界だな。これ以上待っていても状況が好転するとも思えない、なら自分で切り開くまでだ。
腕を伸ばす男の首を隠し持っていたナイフで切り裂く。立ち上がりながら、何が起きたか分からず膠着している隣の男の股間にナイフを突き立てる。ようやく俺が襲いかかったことを理解し、あとのひとりがアサルトライフルを構えるがもう遅い。俺が投げたナイフは男の胸の中心に深々とささった。
人質の中から悲鳴が上がる。勘弁してほしい。これで外に着いている二人が中の異変に気がついて入って来てしまう。急いでドアに駆け寄り入って来た男の顔面に掌底を叩き込む。もう一人が銃口をこちらに向ける。素人が!近接戦闘では銃よりナイフや拳が強いんだよ!男のみぞおちを殴り悶絶しているところに顔面を掴み、思いっきり壁に叩き付ける。
自分の呼吸が五月蠅い。銃を持っている相手を五人もやるには流石に生きた心地がしなかった。ナイフを回収し、掌底で倒した男をつかむ。
「仲間の配置場所と草壁の居場所を教えてもらおうか」
「くたばれ、侵略者どもが!」
「そうか、なら死ね」
俺は男の首を切った。捕虜をとっている余裕はない。
捕虜にされていた人たちを見ると、安堵しているものや、喜んでいるもは勿論いない。俺に対し、恐怖しているものが多い。いきなりこれだけのことをやったのだから当然だ。俺はミレイさん達の方をみることができなかった。
捕虜の中にやはりユーフェミアがいた。二人の護衛も横についていた。
「ユーフェミア様。このようなところで再会するとは。お見苦しいところをお見せしてしまって、申し訳ありません」
「いえ、気にしないでください。それよりこれからどうするつもりですか?」
「こうなってしまった以上しかたがありません。外部との連絡手段を探します。可能なら敵を排除しつつ草壁の首を取ります」
「いけません!あまりに危険な行為です!」
「ご安心ください。自分でいうのもなんですが白兵戦は得意です。幼い頃みた父の勇士は目に焼き付いています。父の名に恥じぬ戦いを誓います」
ユーフェミアの護衛に銃を渡し、あの部屋を任せた。後は時間との勝負だ。相手がこのことに気がつく前に少しでも敵を排除する。
ホテルの見取り図はあらかじめチェックしてある。非常事態の避難経路の確認は当たり前だろう。
草壁の居場所や敵兵の配置場所はおおよそ推測できる。自分ならどこに配置するかを考えれば良い。
前方に二人組の哨戒を発見。こちらに向かってくるのを角で待ち伏せる。足音からして他にはいない。横に来た瞬間、一人の胸にナイフを突き合って、もう一人の腕を掴み地面に一緒に倒れ込む。落ちるときに相手の喉に肘を叩き込む。
相手は完全に油断している。このホテルを完全に制圧していると。一人ずつ確実に殺していく。
覚悟しろ、誇りを失った敗残兵共。これからお前達を狩るのは、強国ブリタニアで生身での戦闘では最強と言われた男の息子だ。父の名にかけ、貴様らを刈り尽くす。