コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした 作:八神刹那24
ゼロは草壁を値踏みしていた。彼らは自分が組むのに値するのかを。結果から言えば論外だった。民間人を人質にとる愚かな行為から始まり、要求が通らなければ、人質を突き落とす始末。
これでは民衆は納得しない。民衆の支持がない行動はただのテロ。先に続くことはない。民衆が後に続き、進んで協力する組織でなければブリタニア相手に戦争はできない。
ゼロはギアスを使い、草壁達を自害させた。草壁は日本刀で腹を刺したが、部下は拳銃でこめかみを撃った。銃声は当然、外にいる警備にも聞こえる。慌てて中に入ってくるはずだ。
銃をドアに向けて待つがこない。おかしい。自分たちのリーダーがいる部屋で銃声が聞こえれば飛んでくるはずだ。扇達が来るのはまだ先のはず。外でなにかがあったのか?
ゼロが困惑していると、ドアがゆっくりと開かれる。中に入って来たのは二人。一人は日本解放戦線の一員だが異様なことだ。後ろにぴったりとくっついている男に喉にナイフを突きつけられていた。
一目で後ろの男が誰なのか分かったが、混乱もした。ナイフを構えるのは間違いなくクレイだ。だがあいつは人質になっているはずだ。
「これはこれは、予想外の人物がいらっしゃる。お前以外全員死んでいるな。お前がやったのか?」
「いや、中佐達は自決した。行動の無意味さを悟ったのだ」
「……そうか。にわかには信じられないな。こいつらにそんな気概があるとは。まぁいい。ならこいつは用なしだな。他の連中の元にいけ」
クレイはためらいなくナイフを引き、男の首を切った。クレイの体は血だらけだった。焦る気持ちを抑え、至って平穏にクレイに問う。
「どうした、クレイ?何故君がここにいる?確か捕虜になっているのをテレビで確認したはずだが。それにその血はどうした?」
「あ?なんで俺の名前をお前が知っているんだ?あの時は名乗っていなかったはずだが」
自分のうかつさに舌打ちをしたくなった。クレイが血まみれで現れたことに、自分で思っている以上に焦っていたようだ。
「簡単なことだよ。私を二度も追い詰めた男だ。調べるのは当然だろう。対策も必要になる」
「ああ、なるほど。それならもう心配することはない。俺は軍をもう辞めた。お前を追う必要はもう無くなった。それとこの血はほとんど返り血だ。流石に二発、三発ほどくらったが弾は貫通しているし、一応止血もしてあるから大丈夫だろう」
「返り血?君ほどの男なら返り血を極力浴びないようにして殺すはずだ。いったい何人殺したんだ?」
「殺した数をいちいち数えるのは素人か快楽殺人者だ。軍人は目的達成のための排除に気になんかしない」
ゼロ、いやルルーシュは普段とはまるで別人のような表情のクレイに何も言えなかった。普段の明るさはみじんもなくなり、まるで氷のように冷たい表情だった。
「ゼロ、取引といこう」
「取引?」
「そうだ。俺はあんたをこの場で容易に殺せる」
「見逃すかわりに何を要求するのかね?」
「俺の友人三人の身の安全だ。傷一つ付けることなくここから連れ出せ。ああ、当然俺も逃がしてくれ」
「そのようなことなら取引をするまでもない。私は愚かものに鉄槌を下し、人質を全員無事に救う為に来たのだからな」
「なるほど、大衆へのアピールか。馬鹿な連中からブリタニア人の人質を助けるのはいい宣伝になるからな。ならお言葉に甘えるとしよう」
今回の行動の意図を読み切るとは流石だ。クレイ、やはりお前は優秀だな。
予定とは違ったが他のメンバーと合流する。彼らには人質の救出と爆弾の設置を命じておいた。カレンがクレイを見つけて駆け寄る。
「クレイ!どうしたのよ、血だらけじゃない!大丈夫なの?」
「カ、カレン?お前こそなんでテロリストと一緒にいるんだ?」
「そんなのは後よ!それより大丈夫なの?怪我はない?」
「そうだな。今はそれどころじゃないか。怪我はなんとか大丈夫だ。だが疲れた。少し……休ませてくれ」
倒れるクレイをカレンが慌てて抱き留める。どうやら眠ったようだ。
クレイはいくら疲労していても、信用していない相手に命を預けたりしない。カレンが何故テロリストと共にいるのか不明な状況にもかかわらず、彼女を信じ、身をゆだねた。
今はクレイにとって自分はルルーシュではなくゼロ。分かっているが……。ルルーシュはクレイを支えているのが自分ではなく、カレンなのが気に入らなかった。
ルルーシュは誰にも気づかれないように、深く深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。扇達の報告で生徒会メンバーをはじめ、人質だったものは全員無事に救出された。人質の中にはやはりユーフェミアがいた。
後は当初の予定通りに決行するだけだ。
『黒の騎士団』の行動開始だ。