コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした   作:八神刹那24

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第十九話 ブリタニアの黒獅子

 コーネリアは河口湖のホテルジャックの報告書に目を通していた。側にはギルフォードとダールトンが控えている。

 

人質は落とされたものを除いて全員無事に救出されていた。

 

ゼロが悪質な日本解放戦線を討ち、人質を無事に救出したことをテレビで中継したことによって、ゼロと奴が率いる黒の騎士団はイレブンはもちろん、一部のブリタニア人にまで評価される始末。

 

これ以上大きくなる前に手を打つ必要があるかもしれないが、最愛の妹を無事に助けてもらった恩もある。今は好きにさせておく。

 

コーネリアがむしろ注目したのはもう一つの報告だった。ホテルは爆破されたため、詳しいことは分からないが、瓦礫の中から見つかった敵は刺殺、斬殺、撲殺、銃殺、絞殺。ありとあらゆる手口で殺されていた。

 

確認できただけで二十一人。完全に瓦礫の下敷きになったものも少なくないので本当の数は不明だった。死体を確認したダールトンの話では間違いなくプロの仕業だと言う。急所を的確につき、最も効率の良い殺し方。

 

問題は誰がやったのかだ。ユーフェミアの証言によるクレイ・ロペスがやった可能性が高い。いや、ほぼ間違いないだろう。これは三人とも同じ意見だった。

 

軍学校の成績を調べても、奴のKMFの操縦技術も目を見張るものだが、白兵戦のスキルは他を圧倒していた。

 

 流石はレックス卿のご子息だ。この間会ったときはリップサービスも含まれていたが、今は心底そう思った。

 

 レックス・ロペス。普段は温厚で女性と遊んでばかりいる怠け者。だがひとたび戦闘モードに切り替わると、他を寄せ付けない圧倒的な力で相手を蹂躙する。

縛られるのを好まなかった故に、高い役職にはつかなかった。地位にも興味はまるで無かった。命令違反をなんども行ったが、その全てが現場の指揮官がだした指示より優れた結果を出したことにより、不問とされた。

 

 そんな彼は『ブリタニアの黒獅子』の異名で知られ、敵味方問わず、尊敬され同時に恐れられていた。

 

なぜ黒かというと、髪は金髪だったが、黒色が好きすぎるあまり、私服はもちろん、軍服、KMFまで全て黒を愛用していたためだ。

 

 その息子が、父の後を追うように力を付けてきている。あの時、もっと真剣に勧誘しておいた方が良かったか?……いや、無駄だったろう。無理矢理従わせても、気分屋の性格までにていたら役には立たなかっただろう。

 

 警戒しなくてはならないのは、奴が自らが仕える主を得たときだ。奴はただ暴れるだけの猛獣ではない。

 

 仮にレックス卿並の力をつけたクレイが自分たちに牙を剥いたとしたら、生半可なことではすまないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルジャック事件から一週間たった。目を覚ますと知らない天井だった。という展開をまたするとは思っていなかった。意識を失った俺は病院に運ばれ、五日入院し、この間クラブハウスに帰ってきた。

 

 ナナリーをまた泣かせてしまった。ナナリー、ルルーシュ、咲世子さんには会ったが、他の生徒会メンバーには会っていない。彼女たちの顔が見られなかった。

 

 カレンがなぜゼロ達と一緒にいたのかも気になるが、今は俺自身の気持ちの整理がついていない。

 

 人質達の俺を見るあの目が忘れられなかった。ミレイさん達までにあの目をされるのが怖かった。

 

 人を殺したことは実は初めてだった。あの時はとにかく無心に身体を動かした。自分とミレイさん達を守るために、『敵』を殺していった。

 

 あの時は何も感じなかった。だが時間が立つにつれ、その事実が重くのしかかる。目を閉じれば俺が殺した人たちが見えるような気がする。

 

 父さんはどうやって耐えていたのだろうか。戦場で数えられない程の敵を殺した後も、父さんはいつも笑っていた。俺の相手をしてくれていた。

 

 父さんのようになりたかった。ただ鍛錬するのではなく常に強い自分をイメージしろと父さんはよく言っていた。俺のイメージしていたものはいつも父さんだった。父さんこそが俺の『最強』だった。

 

 扉がゆっくり開けられる。こんな夜中に誰が来たのかとみると、C.Cだった。

 

「めずらしいな。あなたが俺のところに来るなんて。夜這いにでも来てくれたのか?」

「くだらないこという元気はあるみたいだな。と言いたいがいつもの切れがないな。適当に言われても女は嬉しくはないぞ」

 

 C.Cは呆れながら俺の横に腰掛ける。そっと俺の頭に手を置いて頭を撫でる。その手は暖かくて優しく、安心する。

 

 「初めて人を殺した気分はどうだ?自分が殺した奴らがみえるか?」

 「……なんでわかるんだ?」

 「私の知り合いが、昔そんなことを言っていたからな。それはいつまでもお前をむしばんでくるだろう。慣れることはない」

 「その人はどうやって耐えていたんだ?」

 「あの男は常に自分の戦いに誇りを持っていた。自分が戦うのは守るべき大切なものためだと。自分が敵を殺せば、味方が助かる。その家族を泣かすことがないと。お前も同じだ。常に自分に誇りを持て」

 「自分に誇り……」

 「今日はもう眠れ」

 

 あの事件以来は初めて安心して眠れた。

 


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