コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした   作:八神刹那24

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第二話 初陣

 意気込んで出てきたのはいいが相手が強奪されたトレーラー一隻だとは拍子抜けもいいところだ。これでは捕縛できても手柄にはならないな。

 

 「どうするクレイ。君がいくかね?」

 「初陣ですので、まずはジェレミア卿の手腕をみせて頂きたいですね」

 「よかろう。このジェレミア・ゴットバルドの活躍をとくと見るがいい!ヴィレッタ、クレイのことは任せるぞ」

 「イエス、マイ・ロード」

 「申し訳ありません。ヴィレッタ卿。子守をさせてしまって」

 「気にするな。初陣は誰でも経験する。まずは場の空気に慣れておけ。」

 「それにしてもやっぱりブリタニアの女性パイロットスーツはすごいですよね。この事件が終わったらじっくり見せてくださいよ」

 「それはセクハラだぞ。殴られたいか?」

 「美人でスタイル抜群。男なら誰だって目を奪われてしまいますよ」

 「よし分かった。あとで殴ったあとに説教だ」

 「美人から愛ある説教。ご褒美です」

 

 

 ジェレミア卿が僚機をつれ先行していくと、なかからKMF(ナイト・メア・フレーム)のグラスゴーが飛び出してきた。KMFが出てきたことは少し驚いたが、旧式一機では結果は変わらないだろう。

 

 すぐに方が着くと思ったが、思いの外相手が手強い。旧式、しかも満足な整備もされていないであろう機体で上手く立ち回っている。操縦者の腕がいいのだろう。たかがテロリストと安易に考えたのは軽率だったな。

 

 ジェレミア卿が敵を討つのに手間取る、いや狩りを楽しんでいると、第三皇子クロヴィスの名で新宿の壊滅が命令される。このタイミングで何故急に掃討なんだ?民間人を虐殺してまで何がしたい?

 

……何か探しているのか?

 

だがなんだ?新宿一帯はそれなりのイレブンがいるはずだ。それら全てを排除してまで探すもの。上に聞いたとしても当然機密事項だろう。それどころか関心をもっただけでも排除の対象になるかもしれない。危ない橋は渡るべきではない。俺の目的には関係ないだろう。

 

「いくぞ、クレイ」

「気が進みませんよ、ヴィレッタ卿。イレブンとはいえ自国の民間人を撃つなんて。敵でもない、手柄にもならない相手殺してなにが楽しいんですか?自分は快楽殺人者じゃありませんよ」

「命令だ。軍人は命令を遂行するのが仕事だ。そこに個人の感情は必要ない。それぐらいわかっているだろう」

 

 分かっている。分かっているとも。目的の為にならなんでもやる。とっくの昔に自信の主義主張なんてものは捨てている。

 

 「とにかく撃ちたくないというのなら別にかまわん。私の後ろについてこい」

  「イエス、マイ・ロード」

 

 

 ヴィレッタ卿の後に続くとすぐにジェレミア卿とその僚機が敵に討たれた。幸い両者とも脱出したので無事のようだが、敵に純血派のサザーランドが強奪されたようだ。まったくどこの馬鹿だ。テロリストにKMFを奪われるなんて。

 

 そこから一気に流れが変わった。相手に勢いが出てきた。どうやって手に入れたからわかないが多くのKMFを手に入れたようで、味方が次々にやられていく。囮のグラスゴーで場をかき乱し、浮いた駒から確実にとっていく。

 

 優秀な指揮官が現れたか。

 

それにしてもこちらの指揮はだらしがないな。まるで素人だ。目の前の一手しかみていない。だから先を読んでいる相手に負け続けるんだ。こんな奴の指揮で死ぬのはごめんだな。

 

多くの味方が一点を囲み集まっていく。馬鹿が明らかに罠だろう。唯一場所が分かるグラスゴーは完全に囮。奴を追いかけて集まったところを一網打尽だ。外を囲んで殲滅する戦力は流石にないだろうならば地下か。集まったところを地下から攻撃して地盤沈下。多数の機体の重みが加わり大崩落を起こすだろう。

 

予想通り地下が崩され集合していた味方は全滅だ。くそが。指揮官が無能だと部下が無駄死にだ。

 

 ルルーシュ。お前ならこんな無様なことにはならないだろうな。

 

 だがここが俺にとって千載一遇のチャンスだ。敵の指揮官を一気に叩く。完全に組織された軍ではないはずだ。あとから現れた指揮官さえ叩けば、有象無象の雑魚だ。

 

「ヴィレッタ卿、俺一人で行きます。識別信号はカットします。相手はこちらの信号を見て動いていますから。単機突入により一気に敵の指揮官を潰します。」

「まて、クレイ。危険だ。第一敵の指揮官の場所がわかるのか?」

 「これまでの敵の動きで見当は付けました。自信はあります。当たっていたらご褒美くださいね。膝枕を希望します」

 

 

 雑魚は無視だ。後からいくらでも処理できる。相手はすでに勝った気でいるだろう。レーダー頼りなら信号なしの相手がいるとは思ってもいないだろう。味方からの誤射の危険も伴うが、その味方がお前のおかげで今はこっち側にはろくにいないからな。

 

 目的の場所まで一気に進みKMFの熱源をこちらのレーダーが感知した。

 

 ビンゴ!

 

 信頼できる部下ならそばに置くだろうが、そうでないのなら単機のはず。という俺の予想は当たり、敵は単機だ。ならばあとは一騎討ちでやつをとれば終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 ルルーシュ・ランペルージは自身が出した結果に歓喜していた。自分の采配でただのテロリストがブリタニアの正規軍に圧勝したのだから無理もない。他者を操る強力な力であるギアスを手に入れ、自分の指揮能力も証明された。

 

 あとは残った敵をたたき、クロヴィスまでの道を確保すればチェックだ。ルルーシュがレーダーを確認していると何かが当たる音と衝撃がした。ふと顔を上げると一機のサザーランドが上がってきた。

 

 レーダーに反応は無かった。なぜ? 識別信号を切っていた?

 それよりなぜこの場所がわかった?

いくら味方が減ったとはいえ、識別信号を切っての探索は危険なはずだ。

こちらの居場所が分かった上での強行策のはずだ。

 

混乱し、思考がまとまらないルルーシュにサザーランドは突っ込んでくる。敵のスタントンファの一撃をかろうじて防ぐが、連続で攻撃を受け機体が悲鳴を上げる。同じ機体でまるで違う動き。相手は明らかに自分よりKMFの腕前は格上だ。敵が次のアクションをおこす前に床に向けスラッシュハーケンを撃ち、床を崩す。崩落により地上に着いたルルーシュは脱出をはかろうとするが、相手は信じられない動きで落下ではなく、着地をしてすぐさま攻撃に転じてきた。

 

やられるっ!と思った瞬間。敵のサザーランドに例のグラスゴーが襲いかかる。

 

 「おい!借りは返すぞ!」

 

 声と共にグラスゴーがスラッシュハーケンを放つが、相手は何でも無いようにはじき返す。敵が攻撃してくるのを察知し、グラスゴーのパイロットは脱出した。

 

 その隙にルルーシュはその場から逃げ出していた。実戦の要は人だと改め、己の課題を考えていると、警報が鳴った。

 

 敵のサザーランドが追ってきていた。本来なら同じ機体。唯の直線なら追いつけないはずだったが、こちらは無様な落下により足にダメージあり、相手は華麗な着地により損傷はない。しだいに距離は縮まっていく。

 

 ルルーシュは持っていたアサルトライフルを撃つが難なくかわされる。ならばと横のビルを撃ち瓦礫で潰そうとするが、ハーケンとトンファでくぐり抜けてくる。

 

腕がたつなんてレベルではなかった。瞬く間に距離を詰められる。

 

敵に追われ、無様に逃げながらルルーシュはある男と言葉を思い出していた。

 

 『俺はお前を、お前とナナリーを守る騎士になる。それも最強の騎士だ。お前達のことは俺が守るよ。命に代えても』

 

 クレイ……お前がいてくれたら。

 

もう会うことはない友の顔と誓いの言葉を思い出し、ルルーシュの目に涙が浮かんだ。

 


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