コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした 作:八神刹那24
ついにカレンから呼び出しを受け、一緒に租界の端まで来ていた。
右を見れば華やかで整備された租界の街並み。
左を見れば無残に破壊され、風雨にさらされるまま瓦礫の山とかしたビル群。
勝者と敗者の境界線。
俺とカレンはゲットーへと足を踏み入れた。
日本はブリタニアに負け、名前を奪われブリタニアの属領『エリア11』となった。光と影。めざましい発展をみせる租界に対して、戦争の爪痕を引きずったまま、放置されるゲットー。
太陽パネルの潤沢なエネルギー、清潔な上下水、世界中から海を越えて集まる物資。全てはブリタニアのため、日本を統治するブリタニアのためだけに全て費やされる。
当然と言えば当然だろう。ブリタニアが欲しかったのは、日本という国ではない。日本独自の文化。民族しての風習。そんなものは必要なかった。欲しかったのは『サクラダイト』だけだ。
富士山。世界屈指のサクラダイト鉱脈。そのための侵攻。そのための占領。そのための支配。そのほかはどうでも良かった。
日本人に残された道はブリタニアの為の労働力だけだった。はっきりいえば命令をきくだけの奴隷だ。
カレンは名誉ブリタニア人制度など、今までに抱え込んだ怒りが爆発したようだった。普段のおしとやかなお嬢様からは決して想像もできない姿だった。
「ごめんなさい。興奮しすぎたみたい。格好悪いところみせちゃったわね」
「気にする必要はないさ。誰にでもそういったときはある。むしろ本当の君を垣間見えたことが嬉しいよ。学校での君も素敵だけど、さっきみたいな君も魅力的だ」
「なっ!?あなたはすぐそうやって!私は真面目な話をしているの!」
「俺だって真面目だよ。好きな人のことをしれたら嬉しいのは当然のことだろう?」
「……もういいわ。真面目に相手するのが馬鹿みたい」
カレンはため息をはくと、そっぽを見てしまった。別にからかっているつもりはないのだが。
「それにしても君は日本と日本人にやたら同情的だな。ブリタニア人としては珍しい。その理由がゼロと一緒にいた理由かな?」
「あなたはイレブンではなく、日本人と呼ぶのね」
「俺の場合、相手によるかな。君が日本贔屓だからそう呼んだだけ。俺としては呼び方なんて別に気にしていない。性別、国、人種、宗教。それら全てをいちいち区別するのが面倒なだけだよ。人間は人間。俺にとって大事なのは敵か味方かどうでもいい。これだけだ」
「随分とたんぱくな考え方なのね」
「同じ国の国民同士だって殺しや差別は日常的に行われている。他の国という外部の敵を作る方が馬鹿を誘導できるからそういった仕組みが作られただけだ」
俺の言葉にカレンがどう答えるべきか迷っていると、突如、地面が揺れた。廃墟の向こう、いくつか離れた通りの方で、赤黒い煙が立ち上った。爆発だ。
「我々は黒の騎士団である!」
拡声器を通じたがなりごえが響き渡る。声の主は自分の正義に酔っているとしか思えない、妄言を叫ぶ。
爆煙を割って数機のKMFが姿をみせる。日本解放戦線などの反ブリタニア抵抗組織によく使われる『無頼』と呼ばれる日本の手で改造された機体。
無頼の周囲には武器を携えた人間達もいる。いずれも一般人と見分けがつかない格好をしている。おおかた、やばくなったら民間人に紛れて逃げる考えなのだろう。
くそがっ!お前達が勝手に馬鹿をやって、勝手に死ぬのは好きにすればいい。だが周りの関係ない人間まで巻き込むな。区別がつかなかったら、ブリタニアが攻撃しないとでも思っているのか。皆殺しにあうだけだ。
黒の騎士団を名乗る男は民衆をあおるように叫び続ける。
連中はブリタニアのパトロール隊を襲撃したようだが、明らかに周囲の住民も巻き込んでいた。爆発で倒壊した廃墟の瓦礫が通りに降り注ぎ、誰彼構わず押しつぶす。
無頼の進行方向にいる住民もお構いなしに跳ね飛ばすのが見えた。
「あんなの、黒の騎士団じゃない!黒の騎士団は弱い者の味方だ!ブリタニア人でも日本人でも、無差別に巻き込んだりしない!絶対にしないっ!」
「同感だな。ゼロは正義の味方として民衆の支持を得ようとしている。こんな愚かなことは絶対にやらないだろう」
「そうよ!大方、黒の騎士団の活躍と名声に便乗したはぐれ者の小組織でしょうね。自分達じゃろくな成果も挙げられなかったような連中よ。単なるテロリストだわ!」
相手がKMF数機だけあって、警察だけではなく、軍も出てきているようだ。
「怒るのは分かるが、今は逃げることが先決だ」
「そうね。避難しましょう」
ブリタニア軍は周囲など構わずに、テロリスト目掛けて射撃を始めた。テロリストも同様に打ち返している。
迅速に戦力を投入したブリタニア軍の動きによって、テロリスト達は包囲されかかっている。
逃げ惑う住民達がその包囲網から逃れ出ようとしていた。逃げ惑う人々にブリタニア軍は容赦なく銃弾を浴びせる。老若男女構わず、殺されていく。
「そんなっ!なんで!?ひどい!」
「疑わしきは罰せよ。ブリタニアにはテロリストもイレブンも同じなんだよ。早く逃げるぞ、ここは危険だ」
目の前の惨劇に呆然とするカレンの腕を強引に引っ張る。
だが、遅かった。あろうことか、苦し紛れに包囲網から強行突破を図った一機の無頼が俺達の方へ突っ込んで来た。
流れ弾が近くの廃屋を吹き飛ばした。同時に、頭部に被弾した無頼が仰向けに倒れ込んでくる。巨大な背中が俺達に迫る。
俺は咄嗟にカレンを両腕の間に抱きかかえて無頼に背中を向けた。無頼が倒れる衝撃と爆風は俺達を襲う。
「大丈夫!?ねぇ、平気!?怪我はない?」
「……ああ。たいしたことない。ちょっと打っただけだ。それよりお前は大丈夫か?」
「ええ。あなたのおかげで怪我ないわ。もう、無茶して……」
「良かった。お前が無事で。好きな女の子のためなら身体ぐらい、いくらでもはるさ」
「……こんなときに、何いっているのよ」
目の前に転がった無頼に乗り込み、損害を確認する。頭部が損傷している以外はまだ十分に動きそうだ。
「カレン!こいつで脱出を図る。すぐに乗り込め!ハッチが閉まらない。このまま目視操縦でいく。しっかり捕まっていろ!」
「う、うん……」
俺の首に回したカレンの両腕に力がこもる。
ちっ!本来なら大喜びしたいところだが、流石にそんな余裕はない。正常なサザーランドならともかく、世代遅れの故障品。さすがにきついか。
いや、そんなことは関係ない。レックス・ロペスの息子であるこの俺が、惚れた女一人、守ることもできないなんてあるわけがない。
この無頼を追ってきたサザーランドが迫る。手負いの相手にとどめをさそうと、ランスを構え、ただ真っ直ぐに突っ込んでくる。
雑魚が!!例え相手がどんな相手であろうと、どんな状態であろうとも、決して油断するなと教わらなかったのか!!
ランスを左手ではじき、右腕のスタントンファで相手の胸元を叩きつぶす。
今の馬鹿が追撃に出たので、包囲網の一角が崩れた。そこに向かって無頼を進ませる。だが一応は正規軍。すぐに前方にサザーランドが二機立ちふさがった。
「このまま突っ込んで食い破る!しっかり捕まっておけ!」
「む、無茶よ!」
「無茶?……そんな道理、俺の無理でこじ開ける!!」
瓦礫を掴み右の奴に投げつける。まさか瓦礫を投げつけてくるとは思わず、二機の動きが止まる。ペダルを踏み込み、機体が悲鳴を上げるがお構いなしに、突っ込んでいく!
勢いそのままに左腕のスタントンファを右の奴に叩き込む、勢いを殺すことなく、左足を軸にして裏拳を左の奴に叩き込む。
二機とも煙を上げ、沈黙する。
「……す、凄い」
流石に今の動きは機体に無理をさせすぎたみたいだ。機体からアラームが鳴るがもう少しだけ持ってくれ。
前方に新たに三機のサザーランドが集まってきた。この状態で三機を相手にするのは流石に厳しいか。
「カレン。お前は降りて走って逃げろ。俺が囮になる」
「な、何言っているのよ!こんな機体で三機相手に勝てるわけないじゃない!」
「安心しろ、カレン。俺はこんなところでは絶対に死なん!そして真の男はほれた女のためになら不可能を可能にする!」
「っ!だから今はそんな冗談言っている場合じゃ」
「俺はいつだって本気だ!」
敵がこちらに動き始めると、いきなり三機とも爆発した。どうやら後ろから撃たれたようだ。爆炎の背後には数機の無頼がいた。
新手の無頼は、軍とテロリストの両方に攻撃をしかけ、討ち取っていく。同時に逃げ遅れた住民の避難も行っていた。
先程までとまるで違う、統率された動き。さっきのテロリストの無頼ではない。
「黒の騎士団よ!彼らこそ本当の黒の騎士団よ。間違いないわ!」
「ああ。どうやらそのようだな」
カレンが立ち上がり、自分が乗っていることを示す。黒の騎士団のおかげで無事に脱出することができた。
ゲットーと租界の境界近くで無頼を乗り捨て、急いでその場を離れた。そして少し離れた公園でかれんに膝枕してもらって現在休憩中です。
俺って今回かなり頑張ったってことで、だめもとでご褒美としてカレンに膝枕をしてほしいと頼んだら見事成功!頑張った甲斐がありました。
「ねえ、クレイ。あなたさっきは本当に勝てると思ったの?」
「勝つという定義によるが、カレンを逃がして、俺も逃げ切る自信はあった」
「……そう。あなたは強いのね。ナイトメアの操縦だけではなく、心の持ちようも」
「言っただろ。真の男は惚れた女の為になら不可能を可能にすると。これは父からの受け売りだけどな」
「あなたも、あなたのお父さんも素敵ね。今日はありがとうね」
「気にすることはないさ。好きな女の子を守っただけだ。黒の騎士団のことは心配することないぞ。誰にも言う気はないし、詮索する気もない。なに、良い女ってのは秘密の一つや二つあるもんだ」
「ふふ……なによそれ」
「困ったことがあれば言ってくれ。なんでもはできないが、俺にできることなら助けてやれる」
「……そうね。そのときはお願いしようかしら」