コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした   作:八神刹那24

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第二十四話 お前が導いてやれ

 ルルーシュは入団希望者のリストをみて満足だった。黒の騎士団を結成し、正義の味方として活動を続けて間もないが、入団希望者は後を絶たない。それだけ民衆からの支持を得ているということがわかる。

 

 ブリタニアは嫌いだがテロという行為を肯定できない人々にとって、『正義の味方』は人気を得た。『正義の味方』なんてものは大人が日々の生活で、言葉に出してしまえばチープなものだが、抑圧された人々の心を動かす存在として効果抜群だった。

 

 喜びと同時にルルーシュには不満もあった。団員が増えているのは喜ばしいことだが、これはと思う優秀なものがいないことだった。

 

 敗戦国の旧日本の民間人から集めているので当然だが、KMFの操縦に長けたものや優秀な指揮官もいない。戦闘で期待できるのがカレン一人だというのは心許ない。

 

 軍関係者は日本解放戦線に参加しているだろうから、これからの入団もあまり期待できない。集めたものを鍛えていくしかないが、時間も金もかかる。シンジョクやサイタマの時のように、ただ敵からKMFを奪って与えたら良いと言うわけではない。

 

 早急にシミュレーター機を入手したいが、指導できるものがいないのも問題だ。カレンはちゃんとした指導は受けたことがなく、感覚派のようなので教える方には向いていないだろう。

 

 自分一人で戦場を指揮するのは限界がある。最低でももう一人、有能な指揮官が必要だ。カレンは強いが指揮はできないだろう。

 

 「何を悩む必要がある。お前がもっとも欲しい役割を担える駒ならすぐ側にいるだろうが」

 「……C.Cか。お前が言っているのはクレイのことか?」

 「当然だろう。あいつは若いが全てのことで優秀だ。おまけに奴はお前に絶対の忠誠を誓っている。裏切ることなどまずない。有能で裏切らない。これ以上無い最高の『駒』ではないか」

 「あいつのこと『駒』なんていうな!!あいつは俺にとって最高の……『親友』なんだ」

 

 ルルーシュは拳を強くテーブルに叩き付け、強く握りしめた。

 

 「あいつのことは俺が誰よりも分かっている。あいつが優秀なのは俺が一番分かっている」

 「ならさっさと誘えば良いだろう。お前が誘えば奴が断るはずがない。何度か話をふってみたが奴は黒の騎士団を肯定している。ゼロの正体がお前で、ほれているカレンも参加している。奴にとっても悪い話ではない」

 「お前、俺に何も言わずにクレイを誘っていたのか!?」

 「当然だろう。私はお前に勝ってもらわなければならない。私との契約を果たすためにも。そのために協力はするさ。奴が参加すれば一気に戦力は増え、その後もやりやすいだろう。何を迷う必要がある?

それにブリタニアが先に奴に交渉してきたらどうする?ゼロを捕らえる、もしくは殺せばルルーシュとナナリーの安全は保証すると」

 

 C.Cの言葉にルルーシュは黙る。C.Cの言っていることは正論だ。クレイが加われば、数ある問題も一気に減らすことができる。だがある思いからルルーシュはクレイを巻き込むことができないでいた。

 

 クレイは今まで自分では想像もできないほどの苦労をしてきたのだろう。自分にはナナリーがいた。ナナリーの存在がどれほど自分を助けてくれたかわからない。

 

しかしクレイは一人だった。死んだと公表された自分とナナリーを諦めず、ずっと思っていてくれた。

 

あいつは幸せになって良いんだ。もう休んでも良いんだ。

 

「お前が考えていることはだいたい分かる。だがこのまま放っておくことが本当に奴のためになるのか?」

「どういうことだ?」

「今までの奴はひたすら暗闇でもがいていただけだ。そこにお前とナナリーという光を見つけた。初恋の相手のカレンに大恩あるミレイ。いくつもの光をようやく見つけられた。

あいつは私が今までにあった奴の中でもまれに見る真面目だ。忠義が服を歩いているような奴だ。受けた恩は必ず返す。

今の奴はようやく見つけたその光に必死に走っている。そこがどんなに険しい道であろうと、自分の身体が傷だらけになろうとお構いなくだ。

このままでは奴は自分で自分を壊すことになる」

「ならばどうしろと言うんだ?」

「……お前が導いてやれ。今の奴は掴んだ幸せを失いたくないともがく暴れ馬だ。お前が手綱をしっかり握って導いてやれ」

 

確かに……C.Cのいうことはもっともだ。守っていると思い込んでいたが、実際は愚直なまでに真っ直ぐなあいつの思いから逃げていたのかもしれない。

 

そうか、そうだよな。俺達は子供の頃いつも二人で乗り越えてきた。俺とあいつが力を合わせてれば怖いものはない。

 

ルルーシュが決意を固めると、C.Cが思い出したように言葉を続けた。

 

「お前がゼロだと明かすときは先にクレイを拘束でもしておくんだな」

「……は?何を言い出すんだ?そんな必要ないだろ。あいつが俺に襲いかかってくることなどない」

「お前にではない。さっきも言ったがあいつは真面目すぎる。知らなかったとはいえ、お前の作戦を妨害し、銃まで向けた。あの忠義馬鹿がそれを知ったら、『死んでわびる』とか言い出すだろうよ」

 

確かにクレイなら十分ありえることだった。

 

先程のことといい。なんだか自分よりクレイのことをわかっているようなC.Cに勝手なことと知りながらも気にくわないルルーシュだった。

 


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