コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした 作:八神刹那24
はぁ……。最高だ。昨夜のオレンジ事件が嘘だったかのように俺の心は穏やかだ。
枢木を連行したことによって、なんとか最悪のケースは逃れた。まさかあいつが証拠不十分で釈放とは驚いた。てっきりゼロはいかれたホラ吹きってことにして、枢木を処罰するのかと思っていたんだが……。
お偉いさんが物申したらしいが、軍事法廷の判決を変えるほどだ。相当な地位の奴だろう。物好きもいたもんだ。
俺にはあの馬鹿は自ら罰を欲しているように感じたんだが。まぁ、いいか。あいつのことなんか考えるだけ無駄だ。
「……おいっ!きいているのか?クレイ」
「……なんですか、ヴィレッタさん。騒々しいですよ。俺は今あなたの暖かくて柔らかい太ももを堪能しているんです。静かにしてください」
そう!俺は今、ヴィレッタさんに膝枕をしてもらってします!枢木スザクの連行のご褒美なんです。暖かい太陽の日差しに、子供達の笑い声。公園の芝生に寝っ転がり、美人の膝枕。最高じゃないですか?
「こんなんことをしている場合じゃないだろ。ジェレミア卿は昨夜の件で信頼を失い。純血派はぼろぼろだ。いつ内部分裂をしてもおかしくない」
そうなんです。ジェレミアさんがピンチなのです。ジェレミア卿も汚名返上、名誉挽回と頑張ってはいるのですが、ぶっちゃけ、もう無駄な気がします。
ここで俺がかんがえないといけないのは、純血のまとめ方ではなく、ジェレミアさんを切り捨てるかどうかだ。現状あの人はもうお仕舞いだろう。なんとか重い処罰は逃れられても、降格は間違いない。
次の総督が甘ちゃんなら、なんとかなったかもしれないがコーネリア様なんだよね。聞いた話だと自分にも他人にもめちゃくちゃ厳しいらしい。お情けは通用しないだろう。二つか三つ降格かな。出世コースからは完全にリタイヤだ。
切るのは簡単だけど、できればそうはしたくない。マリアンヌ様と父さんが死んだとき、周りの連中の手のひら返しは、怒りを通りこし呆れるほどだった。ついこの間までごますりにおべっかを使っていたくせに、非難の嵐だった。そんな中ジェレミア卿は変わらずに父さんの死に敬意を表してくれた。俺のことも気にかけてくれた。
なんとか力になってあげたいんだけど……どうするかなぁ。俺みたいな若造の新兵に何ができるか。
「ヴィレッタさんはこれからどうするの?はっきり言って、純血派はもうお仕舞いだよ」
「まだ決まった訳ではない。と言いたいが難しいだろうな」
「ヴィレッタさんって貴族になりたい口でしょ?純血派は唯の踏み台。没落貴族の俺が言うのもなんだけど、貴族って別に良いものじゃないよ。いつでもどこでも見栄の張り合い。小さい世界での順位づけ。息苦しいだけだよ。」
……貴族なんて面倒なだけだ。父さんも貴族の規則や慣習なんて息苦しいって、かなり自由にやっていたな。
「ヴィレッタさんは美人でスタイルがいい。おまけに料理上手と完璧だ。男が放っておくわけがない。この機会に軍人なんてやめて普通の幸せを探してみるのも良いと思うよ。地位と名誉がなくても手に入れられる幸せだってある」
「……普通の幸せか。そんな姿は想像できないな」
「できないんじゃなくて、する気がないだけでしょ。まだ若いんだから自分で視野を狭めるなんてもったいないよ」
「年寄りかお前は。……だがそうだな。まだ決めつけるには早いな。そういうお前はどうなんだ?自分の幸せとやらは考えているのか?」
自分の幸せか。……考えられないな。ルルーシュ様とナナリー様が今もなお、異国の地で苦労していると思うと、自分のことなんて考えられない。
「今の俺に、自分のことを考えている余裕なんてないですよ」
「お父上の事件のことか?私が言うのもおせっかいだとは思うが、もう忘れることはできないのか?そこまでして突き止めた先に何があるんだ?」
「何があるのか、ですか。……何もないのかもしれません。でもこれだけが、過去だけが俺の生きる支えなんですよ」
俺の時はあの時間から進んでいないのかもしれない。
さてと、休憩は終わり。俺もそろそろ行動を開始しますか。せっかちなキューエルあたりが粛正として、ジェレミア卿の命を狙うはずだ。
キューエルとそのお仲間達はジェレミア卿をゼロ発見と偽り、新宿に誘い込んだ。ジェレミアを討ち身内の恥をすすぐと俺も誘われた。ジェレミア卿はかつてラウンズの候補になったこともあり、かなり強い。五対一で囲んで確実に討つ計画だ。
「ジェレミア。クロヴィス殿下殺害犯を取り逃した責、その身で味わってもらうぞ」
「卑怯なキューエル。ゼロ発見とは偽りか」
「コーネリア殿下着任の前に身内の恥はすすがなければならない。ジェレミア、これが粛正だ。いくぞクレイ卿」
「なっ!クレイ、お前もか」
「まぁ、そういうことなんで大人しくしておいてください。すぐに終わらせますんで」
俺は大型ランスを振りかぶり、投擲する。ランスは背後からジェレミア卿を襲おうとしたサザーランドを深々と貫いた。アクセルを踏み込み、隣のサザーランドにスタントンファを叩き込む。振り返りスラッシュハーケンをもう一機に叩き込み、撃破。
一瞬で三機の味方を潰されたことにキューエルは混乱し、動けなかった。
「ど、どういうつもりだ!?クレイ!貴様、私を裏切ったな!」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいですね。先にジェレミア卿を裏切ったのはあなたでしょう。だまし討ちだけでも卑怯だというのに、五対一なんてただの臆病者だ。あんた達は騎士の恥だ。よって俺があんた達を『粛正』した。大好きだろ、粛正って」
「若造がっ!お前は状況をわかっていない!ジェレミアを殺さなければ我らはお仕舞いだ」
「殺したければ、一騎打ちを申し込むべきだったな。そうすればもう少しお前のことを見直したんだが。どっちにしろお前は組織のトップに立つ器じゃない」
「……俺も殺すのか?」
「あんたを殺すんだったらとっくにやっている。キューエルのことはジェレミア卿にお任せします」
「クレイ、君のおかげで助かった。この恩は必ず返す。さて、キューエル。汝に一騎打ちを申し込む。己が正義をかけ、私と戦え!」
ジェレミア卿とキューエルが武器を構える。両者が動き出したそのとき、両者の間にスラッシュハーケンが打ち込まれる。
「やめてください!ブリタニア軍同士で!」
白いKMF、特派のランスロット。またしてもお前か、枢木スザク。一度ならず二度までも邪魔しやがって。
「特派が何のようだ。貴様には関係ないことだろうが」
「駄目です。意味のない戦いを見過ごすわけにはいきません」
「意味がない?こちらの事情も知らずに決めつけるな!上からもの言ってんじゃねぇ!」
「仲間同士で殺し合うのなんて間違っています」
「黙れ!お前は昨日もそうだったな。あいつのやり方を全否定した。自分と違う意見は全て否定しやがって。まるで独裁者だな。そんなにお前は偉いのか!」
「違う!間違ったやり方で得たものに価値がないんだ!」
気に入らない、気に入らない。俺とこいつは心底わかり合えない。こいつも同じだ。父さんや俺のことを否定していたやつらと同じだ。お前達に認められるためにやってきたんじゃない。
「ジェレミア卿、ご無事ですか?」
「ヴィレッタか、お前も来てくれたのか、すまん」
「ヴィレッタまで来てしまったか。……仕方がない。できればこれは使いたくなかったが」
キューエルが何かを上空に投げ捨てる。っあれはケイオス爆雷!
「ジェレミア卿!ヴィレッタさん、下がって!!」
敵対したとはいえ味方相手に使う武器じゃないだろうが。気が狂ったか、キューエルめ。だが二人とも十分な距離があるので、あの二人の力量なら軽傷で済むだろう。
「おやめなさーい!」
爆雷が弾けようとした時、一人の女性が走り込んできた。あれはまさかユーフェミア様!?なんでこんなところにユーフェミア様がいる?っ!まずい。このままでは爆雷に巻き込まれるぞ。
俺は横の煙を上げ、立ち尽くしていたサザーランドを盾にして、ユーフェミア様の前に駆け込んだ。ケイオス爆雷が機動し、無数の弾丸を撃ち始める。1,2,3。限界がきたサザーランドを爆発する寸前で投げ捨てる。未だやまない弾丸を自身の機体で防ぐ。ここでユーフェミア様まで万が一があれば極刑もありえる。頼む。持ってくれ!