コードギアス 魔王の騎士は忠臣だけど、変態というなの紳士でした   作:八神刹那24

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第九話 運命の出会い・ミレイ

 ミレイ・アッシュフォードはルルーシュとナナリーの素性を知る数少ないものの一人だ。アッシュフォード学園理事長の孫娘であり、生徒会会長である。

 

 ただいま今度行われる生徒会企画のイベントに必要なものの買い出し中である。本来なら副会長のルルーシュと一緒にいく予定だったのだが、急な用事で来られなくなったため、一人で来ていた。リヴァルがバイトを休んでついて行くと、言ってきたがバイト先に迷惑なるから断っておいた。

 

 量じたいはたいしたことがないので一人でも問題なかったのだが、買い物を済ませ帰る途中で問題が起きた。ナンパである。

 

 いかにも遊んでいそうな若い男三人に絡まれてしまった。興味がないと何度も断るがしつこい。強引に腕を捕まれる。

 

 「ちょっといい加減にしてください!」

 「堅いこと言うなよ。俺達と楽しいことしようぜ。気持ちいいこと教えてあげるからさ」

 

 気持ち悪い言葉に悪寒が走る。なんとか腕を振りほどこうとするが、男と女。力の差でどうしようもできない。周りに人もいるが、期待できないだろう。相手は三人だ。見ず知らずの人を危険を承知で助けてくれる人がどれだけいるだろうか。

 

 「おい、くずども。嫌がっているだろうが。振られたようだから、とっとと手を離して消えろ」

 

 予想していなかった助けに驚く。振りかえると自分と同じくらいの金髪の男性がいた。大柄というわけではないが、鍛えているのが服の上からでもわかる。蒼い瞳は鋭く、男達を威圧している。

 

 「な、なんだよ。お前には関係ないだろうが」

 「男が三人がかりで女性にからんだ挙げ句、力尽くとは恥をしれ。確かにこれほどの美人だ。声をかけたくなる気持ちも分かる。一度振られた程度で諦めたくないのもわかる。……だがはっきり拒絶されたのは潔くひくのが男だろうが!」

 「さっきから何訳の分からないことほざいていやがる。痛い目みたくなかったらきえな」

 「……これだから脳みそがない奴としゃべるのは疲れる。相手の力量もわからんごみが、少し相手をしてやる」

 「なっ!三対一でかなうと」

 

 怒鳴っていた男が急に体をくの字に曲げる。腹部を押さえ悶絶している。え、なに?もしかして殴ったの?金髪の方が動いたのは見えたが、あまりにも自然な動きだったので、殴ったことが分からなかった。

 

 「ごちゃごちゃ五月蠅いんだよ、ごみが。そしてお前達はほうけ過ぎだ」

 

 今度は右腕で相手ののどを掴む。捕まれた男の顔が真っ青になっていく。

 

「それで……まだやるか?」

 

三人は必死の形相で逃げていった。 

 

「大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫です。ありがとうございました」

「いえ。男としてあなたのような美人な女性を助けるのは当然です。それでは俺はこれで失礼します」

 

軽く会釈をし、振りかえる横顔がどこか悩んでいるようだった。あの顔はよく知っている。自分のそばにいる一つ年下の男の子がたまにする顔だ。困っているのに一人で抱え込んでいる時の顔だ。

 

ミレイは放っておけず、思わず声をかけた。

 

「あ、あの。ちょっとまって!助けてもらったお礼にお茶をごちそうしたいんだけど、いいかしら?」

「ありがたいのですが、別に下心があったわけではないので……」

「私がお礼をしたいの。助けてもらって何もしないなんて私が嫌なの。また助けると思って付き合って」

 「え、ええ。俺なんかで良ければありがたく」

 

 なかば強引に彼をすいていた喫茶店に連れ込んだ。押しに弱いところもあいつに似ているとミレイは思わず笑ってしまった。

 

 男性の名前はクレイ・ロペスといい。年齢は自分の一つ下だった。軍に所属していたが、つい先程辞めたばかりだという。お節介とは思いつつ、もちまえの面倒見の良さでクレイの悩みの相談にのるつもりでいた。

 

 最初はあまり人に話せないと、難色を示していたがミレイの包容力または勢いによりクレイは少しずつ話し始めた。話すだけでも少しは楽になると。

 

 幼い頃に父親が殺された事件の真相を探ろうと、知っている可能性が高い高位の人物に接触をはかるため、軍で出世しようと努力し、先日接触に成功するもなんの成果も得られなかった。

 事件のことは一端あきらめ。親の命で幼い頃、日本にいってしまった親友の兄妹を探すことにしたが、公式には死んだことになっているし、手掛かりも何もないとのことだ。

 

 クレイは酷く思い詰めた表情で話していくうちに、涙を流した。

 

 これには流石のミレイも慌てた。自分を助けてくれた、勇ましい姿はなくなりどうしたら良いのか分からなくなって、泣いている子供にしか見えなかった。

 

「本当は俺だって分かっているんです。あの方々が生きている可能性なんてほとんどないって。敵国に人質で送られ、すぐに戦争が起きた。とっくに死んだって思うのが当たり前だ。でも俺は諦められない。あの方々に再び会う。それが、それだけが生きぬ希望だった。それを諦めてしまったら俺は……」

 

 最初は警戒し、濁していた部分を口に出してしまっているが、だれが責められようか。必死に押さえてきたものが砕けてしまったのだろう。クレイは涙を流し、肩を振るわせる。

 

 ミレイは少しでもクレイを落ち着かせようと、背中をさすりながら『大丈夫、大丈夫だからね』と声をかけ続ける。

 

 少しでも彼の力になってあげたかった。

 

 さらに詳しく聞くとクレイはぽつり、ぽつりと話し始める。兄の方はクレイと同い年で妹は三つした。妹の方は目が見えず、足も悪く車いすの生活とのことだ。二人の苦労を考えただけで胸が張り裂けそうになり、何もできない自分が許せないと。

 

 クレイの話を聞きミレイはあの兄弟のことだとほぼ確信した。だがここで自分が安易に彼らのことを話すことは許されることなのだろうか?

 

 クレイの様子からして演技だとは到底思えない。しかしクレイとの再会がルルーシュ達とって良いことかも判断できなかった。

 

 ミレイはクレイに用事で電話をしてくるから、絶対にここから動かないように言いルルーシュに電話した。

 

 「お願いだからでてよね!」

 




本作品ではスザクはアッシュフォード学園に入学しません。

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