インフィニット・ストラトス ~太陽の操者~   作:神駆

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お久しぶりです。遅くなって誠に申し訳ありません。

卒論と就活のダブルパンチ……


12:「一夏、きっちり決めなさいよ!」

 

 

 イサベルと楯無がシャワーを浴びているまさにその時、アリーナは混乱に包まれていた。

 

 原因は、アリーナの客席を保護するためのシールドを破って現れた正体不明のISだ。

 

 そのISは突然現れた。そもそもIS学園はその特殊性から敷地に対する警戒レベルは一国の元首に対するものよりも高い。しかし、今回はその警戒網に引っかかることはなかった。現に今も肉眼でこそ確認できるが、学園中に張り巡らされた警戒網にはそのISは反応していない。

 

 そして、客席の生徒たちは隔壁が下ろされたことによって逃げ出すこともできない。

 

 今は千冬が生徒を落ち着かせているが、アリーナ全体が緊張感に包まれている。

 

 当然、カミラたちのいるピットも例外ではない。とはいえ、カミラは操縦者というよりは技術者だ。現状を認識し、即座に隔壁の解除に取り掛かった。

 

「……なにこれ。パスの変化が速すぎて追いつけない!」

 

 カミラの技量が足りないわけではない。ただ、あまりにも相手の力量が高すぎた。

 

 カミラは通常のアクセス方法だけでなく、クラッキング紛いのやり方もしている。しかし、まるで意思があるかのようにその悉くが防がれてしまう。

 

 イサベルに連絡を取ろうにも、通信系も遮断されているのか電話は通じず、ISによる通信もなぜか出来ない。

 

 今はまだ正体不明のISがアリーナ中央で停止しているからいいものの、あれが動き始め客席に向かって先程のシールドを破った攻撃をされてしまえば死人が出る。

 

「鈴ちゃん! 隔壁破って!」

 

「破るって言ってもこれって対ISを想定してるのよね?」

 

「龍砲で隔壁に圧力かけて少しでも歪ませれば大丈夫!」

 

「そんな使い方したことないけど……まあいいわ」

 

 鈴はISを展開しカミラに言われたとおりに隔壁に圧力を掛ける。一回では歪まなかったが、何回か繰り返しているうちに歪み始め、遂に破壊に成功する。

 

「開けたわよ!」

 

「じゃあ、足止めお願い! まだ動き出してないけど、いつあの砲撃が客席に向くかわからないから気を付けて!」

 

「OK!」

 

「織斑さんとオルコットさんもお願いします。3対1なら完全に抑えられるはずですから」

 

 そう言われた一夏とセシリアもISを展開して鈴のあとに続いてアリーナに出る。

 

 未だ沈黙を続けるISは不気味の一言に尽きる。

 

 いきなり近づくのは無謀なため、セシリアがブルー・ティアーズを使い脚部を狙う。

 

 しかしそれが当たることはなかった。ブルー・ティアーズが動き始めてすぐにそのISも動き始めたのだ。移動速度はそれほど早くはない。それに何故か向こうから攻撃を仕掛けてくる気配はなかった。

 

「セシリア! どうする!?」

 

「カミラさんからは時間稼ぎと言われてますけど……」

 

「その通りにしたほうがいいわよ。下手に暴走でもされて客席を狙われたら意味ないもの」

 

「そっか。……というか、なんであいつは攻撃してこないんだ?今だってただそこにいるだけって感じだし……」

 

 一夏の言う通り、なぜかISは動きを止めていた。こちらの出方を窺っているようにも見えるが、印象としては「待て」をされている犬に近い。

 

 どうすべきか悩んでいるその時、カミラからの通信が入った。

 

『皆! ロックされてる! 第二射が来る!』

 

 その通信を聞いて一夏たちが一斉にその場を離れた瞬間、二機目のISが上空から姿を現し、レーザー砲撃を始めた。

 

 それは誰にも当たることはなかったが、アリーナのシールドをまるで紙であるかのように容易く引き裂いた。

 

『さっきの砲撃より威力が高い!? あれじゃあまるで……』

 

 カミラが何を言ったのか最後まで聞き取れた者はいなかった。ISを使った秘匿通信(プライベートチャンネル)ではあるが、一夏たちにそれを聞く余裕がなかったのだ。

 

 バラバラに移動した三人であったが、未だISのモニターにはアラートの表示が消えていない。

 

 二機目のISは妙に長い腕を使い独楽のように回りながら砲撃を繰り返している。客席にこそ向けられてはいないが、その一撃一撃が先程の砲撃と同程度の威力だ。三人も避けることに注力を傾けていた。

 

 しかし、三人は新たに乱入してきた一機に気を取られるあまり、初めにいた一機を半ば忘れてしまっていた。

 

 そして、それは致命的であった。

 

「きゃっ!」

 

 鈴が悲鳴を上げる。一機に集中していたがために忘れていたもう一機に背後からの一撃を貰ったのだ。腕を使った打撃であり、ISに対しては特に問題となるほどのものではない。しかし操縦者にとってその衝撃は違う。

 

 不意を突かれた形となった鈴はバランスを崩してしまった。そして、二機目のISはその隙を見逃さなかった。長い腕を鈴に向け、砲撃を躊躇なく行った。

 

 

 

   ◆

 

 

 

「鈴!」

 

 一夏が叫んでもちょうど反対側にいる一夏は助けに入ることはできない。そもそももう一方の腕は一夏を狙っているのだ。

 

「あ……」

 

 鈴もあまりの状況に一歩も動くことができない中、無慈悲にその砲撃は鈴を襲ったかのように見えた。

 

「ふー、ギリギリだった。鈴ちゃん、大丈夫?」

 

 その一撃が鈴に届くことはなかった。今鈴の目の前にいるのは、イサベル。いつもは腰の部分を覆っているシールドビットが展開されエネルギーシールドを形成して砲撃を防いでいた。

 

「イサ、ベル……?」

 

「しっかりしなさい。私だってさっきまでので結構エネルギー使ってるからもう何回も出来ないんだから」

 

 砲撃を防ぎ切ったシールドビットはそのままイサベルの周囲を漂う。12基あったそれもすでに半数がさっきの砲撃で破壊されていた。

 

「大丈夫? ほら」

 

 イサベルは手を差し出し鈴を助け起こす。イサベルの背後では楯無がアクア・カーテンを使い砲撃を掻き消していた。

 

「さ、行きましょう。一夏君たちと協力して一機を落として。防御は楯ちゃんがやってくれるから」

 

「え、もう一機は?」

 

「私が落とすわ。あれぐらいなら問題ないし、まあ、いろいろとあるからね」

 

 どこか腑に落ちない部分はあったが、今は言われたとおりにするのがいいと考え、鈴は一夏たちと合流した。

 

「鈴! 大丈夫か!?」

 

「大丈夫よ。あっちの一機はイサベルが引き受けてくれるらしいから、こっちの一機を落としてくれだって」

 

「大丈夫ですの?」

 

「イサベルなら大丈夫よ。それよりも、三人とも。どうもあのISは無人機みたいだから遠慮する必要はないわよ」

 

 楯無が告げた言葉に三人は驚く。ISの無人化は現在どの国も開発に成功していない。それをそのまま信じることはできなかったが、そう考えれば何となく理解できることもあった。

 

 どこか機械的な動きも、常に最良の選択をするその行動も、無人であるのならばと納得できるものであった。

 

「信じていいんですね」

 

「ええ。一夏君、あなたが止めを刺しなさい。零落白夜なら一撃で落とせるはずよ。生憎私は客席の方を守らなきゃいけないから協力はできないけど、出来るわよね?」

 

「出来ます」

 

「そう。なら頑張りなさい。私のアクア・カーテンだって無尽蔵じゃないの」

 

 言うだけ言って楯無は離れて行ってしまった。彼女の言葉通り、時折流れ弾が客席にいくのを防いでいる。しかし、その動きはどこか鈍い。というのも、楯無もイサベルと同じく補給ができていないのだ。

 

 その中でも最善の働きをしているのは流石国家代表といったところだろうか。

 

「一夏さん、零落白夜の持続時間はどれくらいですか」

 

「今のシールドエネルギーじゃ10秒が限界だな」

 

「わかりました。鳳さん、私たちであれの動きを止めますわよ」

 

「一夏、きっちり決めなさいよ!」

 

 セシリアと鈴は一夏から離れて、ブルー・ティアーズと龍砲による遠距離攻撃で敵の動きを阻害する。しかし、一夏が零落白夜を決められるような隙は中々生まれない。

 

 一夏の瞬時加速(イグニッション・ブースト)からの一撃は確かに強力ではあるが、直線的であるため読まれやすい。ましてや相手が無人機であるならばそういった直線的な動きでは仕留められない可能性が高い。

 

 かと言って一夏自身が仕掛けに行って敵を落とせるような技量はない。

 

 一夏は一瞬の隙も見逃さないようにただ我慢していた。

 

 

 

 

 

 

 代わってイサベルは相手の動きを観察するように躱すことに集中していた。もちろん客席や一夏たちのほうに砲撃がいかないように立ち位置も考えながらである。

 

 しかし、チラッと見た限りでは、どうやら一夏たちは苦戦しているようだった。

 

『カミラ、あれを使う』

 

『大丈夫なの?』

 

『大丈夫。私を信じなさい』

 

 何をするのかは分からないがどうやらそれなりにリスクを伴うものであるらしく、カミラがイサベルを心配している。

 

 その気持ちを理解したうえでイサベルは大丈夫と言ったのだ。カミラはそれを信じた。

 

「……行くよ、Ortlinde」

 

 イサベルが何かを呟く。それを聞いて意味を理解できたのは千冬とカミラだけだった。

 

「フアレス、アルベルダはもしや……」

 

「そうですよ。織斑先生と同じです」

 

「そうか……」

 

 それ以降千冬は口を閉ざした。二人の会話の意味が分からない真耶は首をかしげていたが、二人とも説明する気はないようだった。

 

 そして、アリーナではイサベルが反撃に出ていた。先程まで観察していたためなのか、不自然なほど敵の攻撃は掠りもしない。寧ろ砲撃の方から避けているようにも見える。

 

 そして、決着は一瞬だった。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)よりも遥かに速く動いたイサベルはアルバを敵に密着させ躊躇なくレーザーを照射した。

 

 照射による熱で装甲は溶け、ISは跡形もなく消し飛ばされた。使われていたであろうコアの影も形もない。

 

「ふう。さて、向こうはどうなったかな?」

 

 一息ついたイサベルは見定めるかのような目で一夏たちを見る。

 

 

 

   ◆

 

 

 

 一夏たちは未だ隙を見つけられずにいた。敵のISはセシリアと鈴の攻撃を完全に避け、しかも反撃まで加えていた。

 

「何ですの、あれは!? エネルギー切れもないとでも言うのですか!」

 

「ホント、どこからあれだけのエネルギー捻出してるんだろ」

 

 二人が疑問に思うのも無理はない。もう既に何十射もしているのに一向にエネルギーが切れる気配がしないのだ。対してこちらは徐々にエネルギーが消費され、今では全快時の5割を切っている。

 

 もうそろそろ決めなければならないと三人が思ったころ、三人を不思議な感覚が襲った。一瞬ではあったが、視界がクリアになり、相手の動きが手に取るように分かった。

 

 その理由は分からなかったが、その感覚を忘れてしまう前に無意識でセシリアと鈴は攻撃をしていた。

 

 そして、その攻撃は敵ISに決定的な隙を生み出した。一夏もそれを見逃さなかった。

 

「行けーー!!」

 

 手に持つ雪片弐型から零落白夜の赤いエネルギーを迸らせ、一夏は脇目もふらず一直線に突っ込みISを両断した。

 

 二機のISが倒されたことにより隔壁も解除され、IS学園の機能は完全復旧を果たした。

 

 教師陣が生徒を先導し寮へ向かう。こうしたことがあった以上、今日の授業は当然中止であり、生徒たちは寮から出ることを禁止された。

 

 一夏たちはピットに戻っていた。誰もがすぐに休みたい状況であったが、当事者であるためすぐには出来なかった。

 

 鈴はイサベルを見つけお礼を言ったが、その際に、イサベルが異常に汗をかいていることに気づいた。

 

「イサベル、大丈夫? すごい汗よ?」

 

「ん、ああ、大丈夫。すぐ収まるから」

 

 少し辛そうな表情であったが、目が詳しいことは聞くなと雄弁に語っていたので鈴は何があったのかは聞かずにタオルを差し出した。

 

「ありがと」

 

 イサベルはタオルを受け取ると、携帯を取り出し、どこかへと電話を掛けるためにピットを出て行った。

 

 それをカミラは横目でみていた。

 

 

 

   ◆

 

 

 

 ピットを出たところでイサベルは千冬に声を掛けられた。

 

「アルベルダ、アレは使うな。壊れるぞ」

 

「大丈夫ですよ。今回はちょっと想定してなかった形だったからこんなになっただけです」

 

「そうだとしても、だ。……いつから使えた」

 

「初めて私がコアに触れたときからですよ。織斑先生もそうでしょう?」

 

 千冬はそれに答えずに先程イサベルが出てきたピットに向かっていった。

 

 ようやく一人になったイサベルは17桁の番号を打ち誰かに電話を掛けた。数回のコール音の後、機械的な音声がパスワードを求める。それに答え、ようやく目的の人物に電話がつながる。

 

「一体今日のは何だったんですか?」

 

『少なくとも私じゃないよ。私はあの()()()()を使っていない』

 

「そうですか。では、質問を変えましょう。誰に()()()ました?」

 

『……鋭いね。確かに私はアレを使って織斑一夏を襲撃するつもりだった。だが、その際には一機で、対人制限を掛ける予定だった。そもそも対人制限は元から掛かっていたはずなのだが』

 

「何者かに奪われ、外された、と」

 

『そうだろう。但し日本国内ではない。これを奪う力量があるのは国内に二人。影の更識と蒼の玖渚にこれをする必要性は皆無であるし、そもそも蒼の玖渚はその力量の殆んどを失っているからな』

 

「そうですか。ではやっぱり……」

 

『恐らくは』

 

亡国機業(ファントムタスク)……か」

 

『学園付近に配置したゴーレムは既に奪われている。今後もこう言ったことが起こる可能性もあると考えておいたほうがいい』

 

「分かりました。本国にも私の専用機を早急に開発してもらいます」

 

『それがいい。それでは』

 

「はい。アリスさん」

 

 電話を切ったイサベルは次にスペインのIS工廠に電話を掛けた。

 

『隊長、どうかしましたか?』

 

「S-03の開発状況は」

 

『現在の進捗は……およそ7割といったところでしょうか。ミーアさんのデータがあるおかげで大分進みましたよ』

 

「そう。じゃあ、IS学園の臨海学校の際のテスト運用には間に合いそう?」

 

『間に合わせて見せますよ』

 

「よろしくね」

 

 イサベルは大きく息を吐く。その行為に、今日のイサベルの疲労が表れているようだった。

 

 

 

 




次回は本編に全く関係ない()番外編予定です。





以下、番外編予告。


楯無「そんな……アメリカのIS運用空母が3分で……」

イサベル「あ、うちの戦艦が……」

その日、世界が変わった。




束「GISOUを作ってみたよ^^」

箒「これが……GISOU……」

イサベル「これが、YAMATO……」

そして、戦いが始まる。




利根「カタパルトが不調だと?」

熊野「とぉぉ↑おう↓」

一夏「俺、居る意味あんのかなあ?」

優勢を誇る人類。しかし、ついに深海棲艦の最大戦力がその姿を現す。




戦艦棲姫「ナンドデモ…シズメテ…アゲル」

港湾棲姫「クルナ…ト……イッテイル…ノニ……」

レ級flag「ボクニ……カテルトデモ……オモッテルノ?」

イロハニホヘトチリヌルヲ改ワカヨタソflag「…………」



イサベル「嘘でしょ…………」

大和「それでも……やるしかないわね!」

ビスマルク「さあ、かかってらっしゃい!」

人類の明日はどっちだ!




※多分に嘘が含まれている可能性があります。

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