インフィニット・ストラトス ~太陽の操者~   作:神駆

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今回の話から原作とは少しづつ離れていきます。


5:「んー、えいっ」

 

 

 

 一夏に専用機が届いたのはクラス代表決定戦の前日だった。まずは初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)をしなければならないので整備室に置いてあるらしい。一夏は授業が終わると教師に見とがめられない程度の速度で走ってすぐに整備室に向かった。

 

 整備室にたどりつくと、そこには重厚なISがあった。待機形態になっていないISを見たのはこれで三度目だが、明らかに打鉄よりも大きいように見える。

 

 そして初期化(フォーマット)を始めようとしたところで、一夏は自分にその知識がないことに気付いた。そこでISに一番詳しいだろうイサベルとカミラに手伝ってもらうことにした。

 

 電話で用件を伝えてから10分。イサベルは整備室に姿を現した。一夏を探しているのかキョロキョロと辺りを見回している。よく考えれば、整備室の奥の方にいるので見えていないのかもしれないと、一夏は声を掛けた。

 

 

「おーい、こっちこっち!」

 

 

 その声に反応してイサベルが一夏のところにやってくる。

 

 

「ふーん。これが一夏くんのISねえ。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)すればいいんだっけ?」

 

「ああ頼むよ。俺じゃ分かんなくてさ。あれ? そういえばカミラは?」

 

「ちょっとね。じつは私たち今日の夜には国に一旦帰らなくちゃいけなくて。その準備してる」

 

「そうだったのか。なんか手伝ってもらって悪いな」

 

「いいのいいの。さ、準備できたからISに乗り込んじゃって」

 

 

 一夏と会話をしている間にイサベルは準備を終わらせていた。現在イサベルの周囲にはいくつもの空間投影型ディスプレイか展開されている。一夏はそれに感心しながら、ISに乗り込む。

 

 

「背中をISに預ける感じでね。大体10分くらいで初期化(フォーマット)は終わるから。で、そのあとは最適化(フィッティング)、つまり一次移行(ファースト・シフト)するまで慣らし操縦かな。そこまでは手伝ってあげられると思う。ま、模擬戦って形だけど」

 

 

 模擬戦という言葉に少し表情が引き攣る一夏。

 

 

「……ありがとう。助かるよ」

 

 

 そして10分後、初期化(フォーマット)が完了し、二人はアリーナにいた。

 

 一夏は今は慣らし飛行をして感触を確かめている。一次形態にもなっていないにも関わらず、その航行速度は第三世代機に匹敵するほどだ。おそらく一次形態になれば第三世代最速になるだろう。

 

 その間、イサベルは暇なので学園の遠距離攻撃練習プログラムをしていた。タイミングも速度もバラバラなターゲットを撃ち抜くプログラムではあるが、イサベルは一つも撃ち漏らすことなくターゲットの中心を撃ち抜いていく。プログラムの難度は上から2番目なのでかなり難しいはずなのだが、最終的にパーフェクトをたたき出した。

 

 その頃には一夏も大体感覚は掴めたようで、イサベルを見ていた。

 

「あ、もう大丈夫?」

 

「おう。それにしても凄いな。パーフェクトなんて」

 

「そうでもないよ。この位だったら出来る人は一杯いるから。ま、国家代表で、だけど。……さて、準備はいいかな?」

 

 

 そう言ってイサベルはレーザーライフル『トルエノ』を構える。

 

 対する一夏は近接用ブレードを構えた。

 

 

「ライフルに対してブレードでいいの?」

 

「何か知らないけど、武装がこれしかないんだよ」

 

「ふーん。じゃあ、私も剣でいくよ」

 

 

 そう言ってイサベルはライフルを量子化し、新たに武装を展開する。現れたのは、盾にもなりそうな程大きな剣だった。よく見ると、二つのパーツからできているように見える。

 

 

「『アルバ』大剣モード?」

 

 

 ISのディスプレイに表示されたその名前を見て一夏は疑問に思った。それが口に出ていたからか、イサベルが説明する。

 

 

「『アルバ』はね、レーザー砲搭載型可変式スラスターと、レーザー砲搭載型可変式ブレードとか色々種類があって、名前も同じ『アルバ』だから……」

 

「……俺じゃ違いが分からねえ」

 

「大丈夫。ウチのIS工廠でもわからないって言われたから。おじいちゃんも結構ぶっ飛んでるよね。……さて、お喋りはここまで。さ、かかって来なさい!」

 

「行くぜ!」

 

 

 一夏がISのスピードを生かして剣の間合いに入りブレードで上から切り下ろす。イサベルはそれに打ち合うことをせず、機体を時計回りに回転させそれを避ける。そして、その回転の勢いのまま横なぎで後ろから斬りかかる。

 

 一夏は辛うじて前に進むことでダメージを和らげたが吹き飛ばされてしまう。距離が離れてしまったため、一夏は再び接近しようとするが、イサベルは『アルバ』の可変機能を使い、剣の芯の部分に隠された砲口を露出させる。中央にレーザー砲、その左右に剣が付いている形になった『アルバ』を使い、一夏を近づかせない。

 

 右に左に避ける一夏だが、接近することを諦めてはいなかった。一夏が狙っているのはレーザーが飛来するまでの僅かな時間での瞬時加速(イグニッション・ブースト)。やったこともなく、ただ見たことがあるだけだが、原理は知っている。一夏が頭に思い描くのは姉の姿。近接用ブレード一本で頂点に立ったその戦い方。

 

 そして、レーザーの間隔が掴めてきたところで一夏は賭けに出た。

 

 飛来してきたレーザーを最小限の動きで避け、放出されたエネルギーを再びスラスターで取り込む。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)特有の破裂音が鳴り、一夏はイサベルに迫る。

 

 一方のイサベルは一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ったことに驚きはすれどその動きに乱れはない。直線的な動きしか出来ない瞬時加速(イグニッション・ブースト)に対し、スラスターの方の『アルバ』4翼を起動し即座に迎え撃つ。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)を仕掛けるには少々間合いが離れていたため、『アルバ』の射出は間に合い一夏に直撃する。

 

 何とか体勢を立て直した一夏はモニターを見る。そしてシールドエネルギーの残量を見ると、26と表示されていた。その隣には、最適化(フィッティング)完了の文字。躊躇わずにそれを押すと、機体の一次移行(ファースト・シフト)が始まった。

 

 重厚だったその装甲はスマートになり、機体が軽くなったように一夏には感じられた。近接用ブレードも形を変え、名前も『雪片弐型(ゆきひらにのかた)』へと変わる。

 

 覚えのあるその名を心に刻みつけ、何回か素振りをする。

 

 

「さっきより体に馴染む……」

 

「そりゃそうだよ。最適化(フィッティング)が終わったことで、真にそのISは一夏くん専用のものになったんだから。……さーて、一次移行(ファースト・シフト)も終わったことだし、私もちょっぴり本気で戦おうかな」

 

「……マジか。ちなみに今までのってどれくらいだったんだ?」

 

「んー、1割弱ってとこかな。ま、オルコットちゃんとやる時に狼狽えないように苛m……じゃなくて教えてあげる」

 

 

 そう言った途端に、急加速で一夏に迫るイサベル。その手にはいつのまにか大剣モードに戻った『アルバ』が握られている。大きく振りかぶっているので隙だらけに見えるのだが、一夏は先ほどのスラスターからビーム砲への切り替え速度を知っているため、一度距離を取ることにした。

 

 一次移行(ファースト・シフト)する前よりも早くなった白式は一夏の反応速度を超えるスピードで右に大きく移動した。しかし、イサベルの方が一枚上手だった。

 

 一夏から見て右、つまりイサベルから見て左に避けたのだが、スラスターのうち両側の1翼ずつは使用しておらず、いつでもレーザー砲が撃てる状態にあった。イサベル一夏が避けるのを見た瞬間、左の『アルバ』からレーザー砲を放った。

 

 放たれたレーザー砲は吸い込まれるかのように命中した。

 

 しかし、イサベルはまだ構えを解いていない。エネルギー残量から考えれば確実に終わっているはずなのだが、イサベルにはまだ落ちていないという確信があった。

 

 一瞬だけ見えた赤い光。それは、一夏の持つ剣『雪片弐型』から出ているエネルギーの光。

 

 

「『零落白夜』……」

 

 

 その現象をイサベルはよく知っている。ワンオフ・アビリティ『零落白夜』。かつて織斑千冬が使った一撃必殺の技。同じワンオフ・アビリティは同一機体でしか発現しないとされているが、その論は違ったようである。

 

 

「…………あの人の仕業かな」

 

「うおっ! 何だ! シールドエネルギーが減っていってる!」

 

 

 一夏は殆ど無意識で発動したらしい。今になってシールドエネルギーが減少していることに気付いた。そのゲージは既に一桁を示している。

 

 

「んー、えいっ」

 

 

 可愛らしい掛け声とは裏腹に、8翼全てを使った『アルバ』を使い、一夏を狙うイサベル。

 

 一夏が気づいた時には、視界いっぱいにオレンジ色が広がっていた。

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

「さて、一次移行(ファースト・シフト)もしたし、これでOKかな?」

 

「ああ、ありがとな。助かったよ。俺だけじゃ初期化(フォーマット)すら怪しかったから」

 

 

 気づいた時にはオレンジ色という悪夢を経験してから30分。一夏はイサベルに教えてもらいながら機体の整備をし、ちょうどそれが終わったところだ。

 

 

「で、最後のアレだけど」

 

「ああ、何かレーザー切り払ったやつか?」

 

「そうそう。あれは多分『零落白夜』。モニターにはそう表示されてたと思うけど?」

 

「その時見てなかったんだよなあ……って『零落白夜』!? 千冬姉が使ってたアレか!?」

 

 

 今さらになって気づいたのか少々オーバーなリアクションをする一夏。それを意にも介さずイサベルは続ける。

 

 

「正解。でもあれって、シールドエネルギーを変換してるから発現させてるだけでどんどんシールドエネルギーが減っていくよ。だから、運用には注意が必要」

 

「あー、だからシールドエネルギー減ってたのか」

 

「そ。で、私から一つアドバイス。アレを使うなら、織斑先生を参考にするといいよ」

 

「千冬姉を?」

 

「私が言うのはここまで。あとは自分で考えてね。あ、そうそう。あの『雪片弐型』には可変機能が付いてるみたいだからよく調べといたほうがいいよ。じゃ! 飛行機間に合わなくなっちゃうから!」

 

「ありがとなー」

 

 

 イサベルは一夏に別れを告げると、ISを部分展開して駆けていった。もちろん見つかれば厳罰である。

 

 そんな慌ただしいイサベルを見送った一夏は、一人戦術について頭を悩ますのだった。

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

「ベル、ギリギリだよ」

 

「ごめんごめん。一夏くんに付き合ってたら遅くなっちゃって」

 

 

 学園発の電車のホームでは、大きい鞄を二つ抱えたカミラが待っていた。空港行の電車が来るまではあと5分ほどしかなく、本当にギリギリだった。

 

 

「ほんとーにギリギリだねー、いーちゃん」

 

「そーそー。ギリギリだよー、あーるん」

 

 

 そう言いながら自動販売機の影から出てきたのは、イサベルが隊長を務めるIS部隊『ラ・アルマダ』の副隊長、アルセリア・ラウレアノ、21歳独身。背が低く、薄い色をした金髪の彼女は、ともすれば中学生にも見えないこともない。その話し方も相まって、初対面ではまだ学生に見られることも多い。

 

 そして、イサベルがアルセリアと似ていると感じた布仏本音。

 

 彼女たちの話によれば、生徒会から派遣された案内係が本音で、案内される側がアルセリア。二人は会うなりすぐに意気投合したらしい。

 

 

「ベル、この二人と話してると疲れる気がするんだけど、気のせいかな?」

 

「そう? 私は癒されるんだけど」

 

 

 そんな会話をしている内に電車は到着し、イサベルたちは空港に向かう。

 

 20分ほど電車に揺られ到着した空港には、当然のようにスペインの国家専用便があった。

 

 空港に待ち構えていたSPたちに囲まれながらイサベルは出国ゲートを通り飛行機へと乗り込む。それまでの間、彼女たちは一切言葉を発していなかった。

 

 程なくして飛行機が離陸すると、ようやく彼女たちは話し始めた。

 

 

「やっぱりあの沈黙の時間は嫌い。肩凝りそう」

 

「みーちゃんは大きいから余計にだよねー」

 

「そうそう。この三人の中で一番大きいからねー」

 

「で、アルセリア。今回の招集って、やっぱりアレ?」

 

 

 詳細は知らされていなかったらしく、イサベルはアルセリアに尋ねる。とは言っても、ほとんど予想は着いているようだったが。

 

 

「そーだよ。ミゲルさんが頑張ってたからねー」

 

「流石、おじさんだね」

 

「ほんと、パパには脱帽だよ。だって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランスを欧州連合から脱退させて、ウチと同盟結ばせちゃうんだから」

 

 

 

 

 

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