ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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第12話

???side

僕の手は血濡れていた…。片方はべっとりと血で汚れ、もう一方の手には今も滴り落ちる包丁が握られていた。

どういう状況か把握した時、僕はその包丁を落ちし、膝から崩れ落ちていた。目の前にある無惨な姿と化した母を見て…頭の中が真っ暗になった。隣では父が僕の肩を掴んで揺するが、そんなことは僕の頭の中には入って来ない。

ただ1つの事実が…僕の頭の中を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

僕が母を…………殺したんだ……。

 

 

 

 

その事実が分かっても僕は何の反応も示さなかった。

表情も変わることはない。

身体も固まったままで、少しも動かなかった。

…叫び声が聞こえる…。妹が泣き叫ぶ音と父が怒鳴っている声が混じり合い、何を言っているのか理解も出来ない。

僕は父にされるがまま、車に乗せられ…懐かしき家を離れていくところで……

 

今日の夢は終わり、身体を起こした。

テントの中には小学六年生の妹がまだ寝息を立てている。だけど、妹の恐怖は暫く経った今でも変わらないことだろう。

奴らから逃げ、“ここ”に来てからも状況は大して変わらない。

妹の心を埋め尽くすのは恐怖だけだ。

一方僕の心を埋め尽くすのは虚無と悔恨だ。

大切な家族を『3人』も失った僕は、完全に絶望に入り浸っていた。

ああ…今日も朝から始まる。

朝日に照らされ、ウォーカーは奇声を上げた。

僕はこんな世界で…ただ一言…呟くのだった。

 

「兄ちゃん…俺、どうしたらいいんだ?」

 

 

冬木冬馬side

バシャバシャと水飛沫が立つ時の音に俺は目が覚めた。

起きた時、全身は大雨にでも打たれたかの如く、ずぶ濡れだった。

周りを窺うと、そこは樹海だった。

何故…こんなところにいるのかを整理する。

確か…あのビルから4人で脱出して…高速道路にまで逃げて……それで……。

 

「!そうか…。俺は…」

 

あの崩れた橋から落ちたんだ。

それを思い出すと、俺が庇うかのように倒れている瑞穂の姿もあった。彼女も全身ずぶ濡れだが、こっちは意識がない。

俺はまずこの冷たい川から出ようと思って、瑞穂を抱えようと思ったのだが、左腕に痛みが走った。どうやら川に落下した時の衝撃で左腕を痛めてしまったらしい。

 

「……クソ…」

 

俺は舌打ちしながらも瑞穂を水から出し、彼女に何度も呼びかけた。

 

「瑞穂!瑞穂、しっかりしろ‼︎」

 

何度呼んでも瑞穂の目が開くことはない。

死んだのではないか…。

そんな嫌な考えが頭の中をよぎった。高さにもよるが、高い場所から落ちて水面にぶつかると、当たりどころが悪ければ死ぬこともあると新聞で読んだことがある。

だけどあの時、俺は瑞穂を抱えて守る形で落下したんだ。俺が生きているんだから死ぬはずがない。

そう考えた俺は瑞穂を地面に寝かせ、その可愛らしい唇に自らの唇を付けて人工呼吸を行った。ちょっとだけ…嫌らしい考えはあったが、今はそんなことを気にしている場合でもない。俺は何度となく瑞穂の肺に綺麗な空気を送る。

すると、突然俺の口の中に生暖かい水が逆流したかのように俺の口の中に広がった。そして…。

 

「えほっ‼︎ゴホッ!ゴホッ……」

 

瑞穂は噎せてはいたが、目を覚ました。

俺も同じように噎せていたが、瑞穂が生きていたことが嬉しくて、彼女の前であるにも関わらず両目から熱い雫を落としていた。

 

「と…冬馬ぁ…?」

 

弱々しい瑞穂の声を聞いて、俺は彼女の身体を抱き締めた。瑞穂も目覚めたばかりで意識が曖昧なのか、俺の背中に腕を回して胸の中に頭を埋めた。

 

「冬馬ぁ…寒いよぉ……」

「もっと抱きついてこい。暖めてやる」

「本当だぁ…。あったか〜い……」

 

瑞穂が目覚めたばかりだとこんなに可愛く甘えると分かったところで俺は瑞穂の身体を背中にオブって支えると、そのまま宛もなく樹海の中を歩き始めるのだった。

 

成瀬瑞穂side

穴が今あるのならすぐに埋まりたい気持ちが頭だけでなく、身体全体に駆け巡っていた。さっき、目覚めた時…目の前に冬馬がいて安心しきって…物凄い甘えた声で冬馬と抱く締めあってしまった。

いくら朧げな意識だったとは言えども、弁解出来っこなかった。

今彼の背中に担がれているけど…振り向かれてでもしたら絶対失神する、恥ずかしすぎて…。

冬馬は私のことを…変な女の子だって思っているのかな?

 

そんなことを胸の内で考えながらも、冬馬は道無き道をひたすらに歩いていく。冬馬はどうやらどこかで一休みを取りたいと思っているらしい。

この樹海は昼間であっても薄暗く、どことなく不気味だった。それこそどこからウォーカーが襲って来ても不思議に感じられなかった。もしこのまま夜を迎えでもしたら…最悪だ。

すると、途中、これまでずっと木々ばかりが続いていたのに突然開けた場所に出たのだ。そこには灯りが僅かばかり付いていた。更に私たちの右側に見えたのは古そうな社だった。見る限り人の気配は一切感じられない。

 

「……今日はここで泊まるしかねえみたいだな…」

「…そうだね」

 

本音は嫌だった。

こんな得体の知れない場所で冬馬と2人きり…。もっと開けた場所…例えば道路とか立派な建物にまで行きたいと言いたかったが、オブって貰っている分際で我儘を言うのは良くないと思い、私は承諾した。

 

木造の社の扉は易々と開いた。

だけど中は慌てて逃げ出したような雰囲気だった。床や壁に血が付着していて、ここも襲撃されたんだと思った。

冬馬は私を降ろし、彼は扉の外へと出て行った。

周りを見てくる…と言っていた。寂しい廃れた社の中に取り残された私だけど、疲れが溜まっているというのに寝ようとしなかった。

どうしてかというと、今ここで眠りに落ちたら冬馬とまた別れ離れになってしまうんじゃないか…と、根も葉もない憶測に不安を感じていたからだ。

あの時は梶くんがいて…私をギリギリのラインで支えてくれていた。だけど今度は一人…。ここで冬馬が死んだり、いなくなったりしたら…今度こそ私の人生はそこで終わりを告げることだろう。

 

「冬馬…遅いなぁ…」

 

時計もないため、正確な時間を測れないが、もう十分は経っている…と思う。1秒時間が経つ度に私の中で不安が募っていく。

いてもたってもいられなくなった私は社を飛び出し、大きな声で叫んだ。

 

「冬馬ぁ‼︎‼︎」

「バカッ…!」

 

呼んですぐに冬馬の声が背後からした。しかし私が振り向く前に冬馬に口に手を当てられ、抱き寄せられ、扉の影に隠れた。

 

「んっ⁈んんーーー!」

「騒ぐな!」

 

冬馬の焦った声が耳に入ってきて、私は抵抗を止めた。

冬馬が何故こんなことしてるのか分からずオロオロしていると、彼の抱擁が更に増した。

その行為が原因で、私の心臓の鼓動は勢いを増していく。身体が密着し、熱くなっていくのも自分で分かった。

理由は何でもいいけ…ずっとこのままだったら……。

ずっとこのまま……。

安心しきった私は遂に睡魔に勝てず、冬馬に抱き締められたまま、眠りに落ちていくのだった。

 

冬木冬馬side

口をも抑えてしまって、1分と経たない内に瑞穂は眠ってしまった。もしかしたら息が出来なくて、気絶したんじゃ…⁈と思ったが、それは徒労に終わった。ただ単に眠たかっただけのようだ。

それはそれで良かったと思いながらも、俺は外を彷徨いている一体のウォーカーをずっと見続けていた。さっき瑞穂が叫んでしまい、少しだけこっちに呼び寄せてしまったが、今が夜で尚且つ明るくない樹海であったのが助かった。ウォーカーはキョロキョロと周りを窺ってから、森の奥深くへと消えていった。

俺は安堵の息を吐いた。

しかし今回はどうにかなったが、この樹海に居続けるのはかなり危険だと思った。明日にでも抜け出さないとな…。

俺はそれから瑞穂を社に戻して、自分も中に入った。でも寝るつもりは毛頭ない。いつウォーカーが来るか分からないのに寝てなんかいられない。かといって、このまま夜が明けるまでじっとしているのも退屈だった。

今になって、スマホなどのゲーム機がいかに便利だったかを思い知らされた。

 

「しかし…退屈だなぁ…」

 

改めて口に出してしまう。

すると、ゴロンと寝返りを打った瑞穂の頭が俺の膝の上に乗った。

寝相の悪さはいつまで経っても変わらない。そう思うと、久しぶりに笑いが溢れた。

しかし、同時に俺は彼女の無防備さに…理性を削られていた。

俺の膝に頭を乗せたことで軽く胸元が見え、未だに湿る服は肌に吸い付き、何とも言えない妖艶さを醸し出していた。

 

「………」

 

ゴクッと生唾を飲み込み、瑞穂の美しさに見惚れる。

俺はあらん限りの理性を脳内に集中させる。そうやって数時間経った頃に瑞穂は急に目をパチクリさせて起きた。

 

「瑞穂?平気か?」

「うん……冬馬は…?」

「俺は眠たく……」

「違う…。寒くないかってこと…。私ばっか暖めてもらってばかりだから…」

 

瑞穂の言う通り、実を言うと寒かった。

濡れた服はいくら時間が経っても乾かないし、外は冷えていくばかりだ。だけど、瑞穂の方が心配な俺は我慢してい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ…暖かくなろうよ…。お互いに……」

 

 

「……え」

 

瑞穂は確かにそう言った。

彼女が言わんとしていることは……つまり……。

だけど、そう言われても尚、俺の理性はまだ働いていた。

 

「いや…瑞穂、それは……」

「私はいいんだよ…?冬馬になら…何をされてもいい……」

「っ……」

 

俺の理性に僅かにヒビが入り、俺は瑞穂の両腕を掴んで拘束すると、彼女の上に覆い被さった。瑞穂と俺の視線は真っ直ぐ重なり、吐く息も荒々しくなる。

 

「瑞穂……寝ぼけて言ってないんだよな?今ここで嫌だとか否定しないと……俺…」

「……さっき良いって……言ったじゃん…。私は…………」

 

小さすぎて今にも消え入りそうな声だったけど…確かに聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冬馬が好きだから…」

 

 

 

 

 

そこで俺の理性は崩れ落ちた。

瑞穂の唇を乱暴に塞ぎ、服を剥ぎ取る。

俺は抵抗のない瑞穂を……この夜、初めて抱くのだった。

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