それと短めです。
冬木冬馬side
火浦を殺した後に彼のポケットの中にあった車のキーを取って、死んだ奴が言う脱出出来る車へと向かうことにした。地下二階には車がたくさんあるとは思うが、電子キーだからすぐに見つけられると思う。
そう思いながら向かおうとした時、こちらにどんどん近付いてくる足音が聞こえてきた。俺はすぐに散弾銃を構えて、撃とうとしたら、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「待て‼︎撃つな‼︎丹波だよ‼︎」
普通の人間だと分かり、俺たちは安堵の溜め息を吐く。
「いやーー火浦くん、頭が見事にぐちゃぐちゃだねー…。流石!よくこいつをやってくれたらよ!」
「そりゃどうも…」
そうやって話していると、奥の方からウォーカーの呻き声が駐車場全体に木霊した。一瞬固まる俺たちだが、逃げる前に俺は丹波に聞く。
「弾は⁈こいつの弾!」
「ほら、ほら!」
丹波も焦りながら俺に全ての弾を渡して、6人で駐車場内から出ようとする。シャッターを潜り、外に繋がる広い通路へと出る。するとまたこっちに走ってくる足音が聞こえてきた。
今度は矢部さんだった。俺たちを見るなり嬉しそうな表情と絶望しきった表情を浮かべて、大声で叫んだ。
「いた!おーーーい‼︎」
「矢部さん!無事だった……⁈」
「探したよ‼︎」
だが、こっちに向かって来ているのは矢部さんだけではなかった。
矢部さんを追って来る何十体というウォーカーまで引き連れていたのだ。しかも叫んでいるため、完全に俺たちを標的に捉えている。
「嘘…」
「行くよ!」
藪さんが先導して前へと走る。
俺から見て、あれは正に死者の雪崩そのものだった。あれに巻き込まれば、待っているのは確実な死だけだ。
そう思って俺も急いで逃げるのだが、ここで最悪の展開を迎えてしまう。
前方が明るいから出口だと思えば、そこからも大量のウォーカーがやって来たのだ。完全に挟まれてしまった俺たちに残された手段は1つしかなかった。
「冬馬…どうしよう…」
瑞穂が俺の服の袖口を握り、恐怖の表情を俺に見せた。
俺は奴らを一瞥してから、はっきり言った。
「全部殺すしかない…」
それを聞いたみんなは俺の方を向き、ごくっと生唾を飲んだ、
「…やるしかない…わね」
「あああーーー、ここまで来たらやけくそだな…」
俺も散弾銃に弾丸を込めて前に立つ。
まだ一回しか撃ったことのないこれを上手く扱えるかなんて分からない。だけど……俺がやるしかないんだ…。
そう肝に命じて、俺は…引き金を引くのだった。
長い戦いだった…。
恐らく百体を超えるウォーカーを俺は殺した。駐車場に続く通路は地面、壁、天井に血と肉片に肉塊がバラバラになって落ちていて、もう腐敗臭が漂っていた。
しかし…その代償も大きかった。丹波と矢部さんは死に、健太も…ウォーカーに噛まれてしまったのだ。二の腕を噛まれていて、まだ人間としての意識はあるが、いつウォーカーになるか分からない恐怖から兄である俺でさえも、健太に近付けずにいた。
「兄ちゃん…」
「………」
俺は何も言えなかった。そして無力だった。
いつもの虚無感が身体中を支配していく。すると、健太は噛まれていない腕を伸ばして、残り1発となった散弾銃を掴んできた。
「僕を置いて…いって……。それと…これを頂戴…」
「………分かった。俺だって、健太の命を自分の手で奪うのは嫌だからな…」
「お兄ちゃん…!嫌だ‼︎」
栞が泣き出し、俺の腹辺りに顔を埋める。
俺だって悲しい。悲しくないはずがない。
俺は栞が止めるのを無視して、散弾銃を渡した。
「最後のプレゼントが…銃なんて、運がいいなぁ…」
「…っバカ!」
俺はそう叫んで健太の身体を強く抱擁した。健太も最初は戸惑っていたが、すぐに大きな声で泣き出した。
これで…健太も失ってしまうのかと思って…更なる悲しみと絶望が俺を襲ったが、これも仕方ないんだと必死に自分に言い聞かせたのだった。
それから俺は嫌々泣き喚く栞を抱えて、藪さんが運転する車に乗り込んだ。白いセダンに乗り、そこから俺は今回の激戦の跡の凄まじさに言葉を失った。角度の関係上、通路の端っこで座っている健太は見えないが、俺たちがここを出た後には…その命の灯火を自ら消すことになるだろう。
一通りこの悲惨な光景を見た後に藪さんは辛そうな表情を浮かべて、車を前へと走らせた。
その数秒後…大きな銃声が外にまで響き渡るのだった。
俺は一筋だけ涙を流し…ずっと泣き続けている栞をぎゅっと抱き締めた。妹の悲しみも俺が背負う…そういった気持ちを心の中でした。
だが、途中で車が黒焦げで縛られたウォーカーの横を通ったため、急いで藪さんに車を止めるように言った。
「藪さん!ちょっといいですか?」
藪さんが車を停止させたと同時に俺は降りて、例の黒焦げウォーカーのところに向かっていく。そのウォーカーは火浦や健太の話によれば、父さんらしいのだが、よく見てもその面影は皆無だった。
「……久しぶりだな…父さん…。結局仲違いしたままだったけど、俺は父さんのこと…嫌いじゃなかったよ」
そう言って俺は金槌を振り上げた。
言葉も声すらも出せない程に焼かれてしまった父さんは血の気のない双眸で俺を凝視している。耳もないから聞こえていないだろうけど…俺の想いは届いたのだろうか…。
「さよなら……父さん」
俺が振り落とした一撃が父さんの頭蓋骨を砕き、確実な死を齎(もたら)した。1日に2人もの家族を失っても、俺の心が深く傷付くことはなかった。もう既にボロボロだからだ。
俺はその金槌を捨てて、また車に乗り込んだ。
誰もが無言だった。瑞穂は泣き疲れた栞を膝に置いて、一緒に寝ている。藪さんも血だらけの顔をハンカチで拭き、タバコに火を付けていた。
俺はというと、半茫然自失状態で血塗れの両手を見ていた。
散弾銃を撃ちすぎたせいで、手は今も痺れていて感覚はあまりない。
俺はそこから視線を外に移した。
外は夕焼けだ…。
血のように真っ赤だ…。
この世界は始まったばかりで、何が起きてもおかしくない。
…ああ、車の前方にフラフラした人影が見える…。
藪さんはエンジンを緩める様子はない。
このまま轢くつもりだ。
そして……車はウォーカーを轢き、真っ暗な町の中へと走らせていくのだった。
戦闘シーンを端折ってしまってすみません…。
この展開、あまり起点がないから淡々となると思ったので、端折らせて頂きました。
本当に申し訳ないです…。
次回からSecond Seasonです。
予告
ウォーカーの世界となり、1年余りが過ぎた頃、冬馬たちは故郷の町に戻りひっそりと暮らしていた。
だがそこに盗賊団を率いて浩二が現れ、瑞穂が拐われてしまう。
これをきっかけに、親友の仲が崩れ、敵対する2人…。
そして、瑞穂もとある決心をする…。
「私がいなければ…2人は……。それなら……」