ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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梶の過去が明らかに、そして…彼の欲望が暴走する…。


第20話

冬木冬馬side

この日は曇りであったが、俺たち生存者からしたら嬉しい方だった。晴れているとウォーカーからよく見られるし、何より体力を無駄に奪われる。日照りの影響は俺の中ではそこそこ大きい。

朝…俺はまた瑞穂と共に夜を過ごしていた。

彼女が怖くて眠れないから……とずっと言っているから、その延長線上でやってしまっている。

でも本当は分かっている。瑞穂はウォーカーに恐れて怖いんじゃない。“俺がいなくなってしまうこと”が怖くて堪らないんだろう。それなら俺も同じだが、だからと言って一緒に寝るというのはどうも俺の中では未だに区切りが付けられていない。

しかし…人間の欲というのは恐ろしく、全く逆らえない。俺も…その欲にもう何度負けたのかも分からない。

そんなことを考えていると、隣で寝ている瑞穂も目を覚まして、俺がいたことに安堵した表情を作った。

 

「起こしたか?まだ寝たいんだったら……」

「ううん……。私は冬馬と一緒にいたい…。だから冬馬が起きたら私も起きる…。それじゃ……ダメかな?」

 

そんな甘えた言葉をかけられ、俺の欲望と理性が一瞬戦うが、瞬時に理性が負ける。

俺は瑞穂の上に覆い被さり、その柔らかな唇を乱暴に塞いだ。

キスの後、瑞穂は嬉しそうな表情を浮かべて、こくんと頷いた。

ああ……今日も朝から身体を交えさせるのか…。

若干の後悔を抱きながらも、俺の口許は僅かに笑っているのだった。

 

その後、家の周りをいつものように窺っていると、ポストの中に何かが入っていることに気付いた。取ってみると、それは昨日会った交換屋の爺さんからだった。

内容は

『昨日渡した拳銃の弾、もっと欲しいじゃろ?今日受け取りに来んか?場所はいつものところで』とあった。

少し違和感のある文章だったが、弾をくれるのならそれは有り難いから、今日も取引場所に行くことにした。

もちろん瑞穂を連れて行くのだが、この時思えば…俺1人だけで良かったと思っている。俺もどこかで安心しきっていたんだ…。この世界で危険なのはウォーカーだけではないということに…。

それに…こんな形で『あいつ』に出会うなんて、思ってもみなかった。

 

梶浩二side

あの写真を見てからムラムラした感情がずっと胸の中で溜まっている。だけどそれも今日までだろう。

漸く冬馬たちが居住地にしている場所を発見した。それは予想外なことに冬馬の実家だったのだ。これは流石の俺でも驚いてしまった。

家の周りはウォーカーが入って来れないように俺の身長よりも高くバリケードが作られている。どうやって中に入ろうかと思ったが、これは無理矢理押し入るよりも、相手から勝手に出てくれればいいんだと思い、俺は一計を案じた。

昨日殺したあの爺さんのふりをして、奴らを誘き寄せればいいんだ。車の中には銃の弾も一杯置いてあったし、冬馬も拳銃なしでこの世界は生きていられないだろう。

俺は紙に弾をやるからいつもの場所に来いと書いて、奴らを誘き寄せた。仮に冬馬1人だけ来ても痛めつけて、その後に瑞穂を貰いに行けばいい。

ここまでの作戦は完璧だ。あとはどう冬馬たちが動くかによる。

暫く待ちながら、俺は昔…と言ってもほんの数年前だが、その頃のことを思い出していた。

俺はあの頃…瑞穂に特別な感情なんて抱いていなかった。単なる普通の幼馴染…。それだけのものだった。

だけど、俺と冬馬が高校一年の時の試合で他校に負けた時、俺たちは落胆しきっていた。それを見たのか瑞穂はこう言ったんだ。

 

『大丈夫だよ!梶くん!また次もあるし、お互いに頑張ろう!』

 

これには俺も泣くほどに嬉しかった。この一言があったから、あの時まで野球をやれていたんだと自分の中で思っている。

そして俺の中で何かが変わった。いつも一緒にいるはずの瑞穂にこの時は分からなかったが、特別な想いが込み上げてくると同時に、冬馬と触れ合っていると邪魔したくなる自分がいつもいた。

あの時、バレンタインの話を聞いていたから、あそこで俺が出て話を無理に止めたんだ。だけど、瑞穂が俺を好きになることはないと分かり、ちょっとだけ虚しい気分になった。

だが…盗賊団を結成した時に俺はそう思った。最初は頑張って生き残るのに必死だったけど、盗みや殺しをしていき、俺の考えは一気に変わった。昔は欲しいものは指を咥えて眺めているだけであったが、今は欲しいものがあるなら……

 

力付くで奪えばいいんだ

 

と思った。そう…瑞穂も冬馬のところから奪ってしまえばいいだ…。

我ながら素晴らしい考えだなと物思いに耽っていると、ガチャと扉が開く音がした。

俺は草むらに隠れながら見て、俺は目を丸くした。

家の前で2人はキスをしていたのだ。それも瑞穂から率先してだ。

悔しかった。殺してやりたかった。だけど、その怒りはまだ抑えておかなくてはならない。

どうせ…こいつらはもう俺の手中にあるからな…。

そう思うと笑いを堪え切れなくなるのだった。

 

冬木冬馬side

俺はつい先日に貰った刀剣だけを持って、瑞穂とあの爺さんの取引場に向かっていた。あの爺さんのことだから、ただではくれないと思い、俺は僅かだが食料をポケットに忍ばせていた。

瑞穂はというと、俺と一緒にいるのが楽しいのか、鼻歌まで歌っている始末だった。俺も嬉しいが、ここまで気を抜いていていいのかと疑問視してしまう。だけど…こういうのも悪くない。

瑞穂との関係は止まったままだが、この状況のままいいとも思っていた。中途半端でいい…。深い関係だと、後に大変なことになると思ったからだ。

そう思っていると、また同じ場所、同じ時間に車が置かれていた。

 

「おい!来たぞ、爺さん」

 

そう呼びかけると、車のドアが開き、あの爺さんが出てきた……と思った。出てきたが、それは爺さんの無惨な死体だった。

 

「爺さん⁈」

「何これ⁈どうなってるの⁈」

 

瑞穂も俺も混乱していると、周りの空き家から拳銃やナイフを持った男たちが現れた。身なりからして、盗賊だ。

 

「どうやら……盗賊の罠に掛かっちまったみたいだな…」

「よく分かってんじゃないか、冬馬」

「え?」

「今の声って…!」

 

車の陰からゆっくりと姿を現れた男に俺の目は丸くなった。

髪は少し廃れていて、昔のような輝きは微塵もない。あの時の優しげな眼差しも今となってはまるで肉に飢えた狂犬にも見える。

でもその姿は間違いなく…俺と同じ時を過ごした親友だった。

 

「浩二…‼︎」

「久しぶりだな」

「梶くん‼︎どういうこと⁈」

「おっと、動くなよ。2人とも殺したくないからな」

 

今までの浩二からは考えられない言葉を続けているため、俺の頭の中は混乱しきったままだ。

 

「どういうことだ、浩二!俺たちは…!」

「親友だとでも?」

 

浩二の冷たい声に俺は言葉を失った。

 

「この世界になって漸く分かったんだよ、冬馬…。欲しいものは全て力で手に入れればいいってな…」

「欲しいもの?」

 

浩二はギラついた目線を瑞穂に向けている感じがした。

そして俺は分かった。浩二がここに誘き寄せた訳が…。

 

「瑞穂‼︎逃げろ‼︎」

 

俺はそう言って、瑞穂の腰から拳銃を取り、奴らに構えようとしたが、引き金を引く前に鈍器みたいなもので頭部を殴打されてしまう。

 

「ぐあっ‼︎」

「冬馬!…きゃ‼︎」

 

瑞穂の悲鳴を聞き、顔を上げると瑞穂はもう浩二の腕の中に捕らえられていた。

 

「瑞穂…!ぐっ⁈」

 

起き上がろうとしたが、背中に急激な重さがかかり、立ち上がれなくなる。浩二は俺を見下すようにして、淡々と話す。

 

「冬馬…。お前ともここでお別れだな…。長い間楽しかったよ。じゃあ最後は地獄の苦痛を味わって死ぬがいい!」

 

そう言って高笑いをした途端に周りの連中が俺の身体を容赦なく暴行を加えてきた。

俺は意識を失うかもしれないと思い、最後に浩二に向かって叫んだ。

 

「瑞穂を……返せえええええええええええ‼︎‼︎」

 

その声は虚しく故郷に広がり、永遠かもしれない激痛に俺は耐えられず、意識を手放してしまうのだった。




次回は新オリキャラを出します。
そして、捕らえられた瑞穂は……。
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