ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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第22話

成瀬瑞穂side

「うっ………うぅ……」

 

冷たい牢獄のような部屋で私はずっと泣いていた。

色々な感情が混じり合っていた。冬馬と引き裂かれたこと…梶くんに犯されたこと…そして、無理矢理なのに愉悦を感じてしまっていた自分自身の愚かさ…。

どうしてこうなったのか……私たちが梶くんに何をしたというのか…。考えても考えてもその答えが見つかることはなかった。

汚れたベッドの上で泣き続けていると、足音が響いてきた。その音に私は反応して、鉄格子の先を見る。

そこからあの悪魔…梶くん…いや、梶が姿を現した。

私は瞬時に相手を威嚇するように、鋭い眼差しを梶に向けるが、本当は今すぐ叫んで逃げ回りたい程の恐怖を感じていた。

 

「よう、瑞穂。元気か?」

「最低よ‼︎」

「……」

 

梶の目尻がピクッと動いたが、鉄格子の一部を開けるとそこからトレイに乗せた食事が運ばれてきた。食えと言いたいのだろうが、私はそのトレイごと梶に投げて叫んだ。

 

「消えて‼︎私の前から今すぐ‼︎」

 

梶は顔に付いたスープを拭きながら無言で私の前から消えた。

必死に平常を保っていたが、彼が居なくなってすぐにその気力は失われ、力なく地面に横になった。

そして…無意識のうちに私は愛する彼の名を呼び、助けを求めるのであった。

 

「助けて……。助けてよ……冬馬ぁ……」

 

 

冬木冬馬side

孝と麗のお節介になってかれこれ3日が経つ。

大半の傷は治ってきてはいるが、身体の痛みは少しだけ残っていた。

だから今も古ぼけたベッドの上で病人みたいな生活を送っている。

2人には感謝している。けど、いつまでもここにいて2人の目的の邪魔をすることは出来ない。だから俺はこの傷が治れば即座に彼らの前から消えようと決めていた。

そんな時、2人が家にいないことの気付いた俺はすぐにお暇しようと考えた。ナイフと拳銃を持ち、少しだけだが食料を抱えてゆっくりと部屋から出る。

すると不意に声が聞こえた。

 

「冬木くん?」

 

ビクッとして、反射的に拳銃を向けてしまうが、銃口を向けた先には妖艶な笑みを浮かべた宮本が立っていた。どうやら俺が勝手に逃げ出さないように、見張りを置いていたようだ。

 

「どこ行くの?」

「大分傷も癒えたし、あんたらの世話になる気もないからさっさとここから出て行くだけだよ」

「傷が癒えた?まだ完治してないのに、行くには無茶じゃなくて?」

「………」

 

正論を言われて、俺は黙る。

その隙を逃さないばかりに宮本は俺のところにズケズケと入って行く。

 

「助けたのに、無理してあなたが死んだら私と孝は嫌なの!それくらい察してよね」

「………うるさい」

「え?」

「うるさいって言ってんだよ‼︎」

 

宮本は俺が怒鳴ると予想していなかったのか、ちょっとだけ後退した。

 

「俺の邪魔ばかりしやがって‼︎俺にも目的があるんだよ!お前らみたいにイチャイチャ遊んでるのとは違うんだよ!この……っ⁈」

 

大声で叫んでいると、急に身体に痛みが突き抜けた。

足腰に力が入らなくなり、膝を付いて動けなくなってしまう。

 

「ほら!無理しすぎなの。ちょっとは自分の身体がどういう状態なのか理解しなさいよ」

 

俺は宮本に支えられて再び部屋へと戻される。

…こんなことしてる場合じゃないのに……。

俺は…瑞穂を助けなきゃいけないんだ…。こんなところで……。

心の中ではそう思っても、身体が言うことを聞いてくれないのが…今の俺の現状だった。

 

宮本麗side

孝から言われて部屋の外で見張っていたけど、本当にここから逃げ出そうとするなんて思っても見なかった。強制的に彼をベッドに戻し、私が監視する。

まるで刑務所みたいに見えるけど、このまま冬木くんを死なせるわけにもいかなかった。

見張っている中、孝が言っていたことを思い出した。

 

『彼は何か……誰かを探している。そして、焦っている』

 

孝の言う通りかもしれない。

彼は明らかに焦っている。どうしてなのかは分からないが、良い機会だし、聞いてみるのも悪くない。

 

「ねえ」

「………」

 

冬木くんは無言のまま私の方に首を動かした。

 

「どうしてあそこで倒れていたか…教えてくれない?」

 

冬木くんは少し間を置いてから話し出した。

 

「……宮本には、親友って存在はいるか?」

「いるよ。少なくとも1人は生きているから」

「その親友に裏切られたら……どういう気持ちになるよ…」

「……」

「俺には浩二っていう小学校からの仲の親友がいたんだ。いつもいつも一緒で…バカやって…ホント、楽しかったよ。この世界になって…バラバラになって…つい3日前に久しぶりに会えたんだよ。でも、浩二は変わってしまっていた……。盗賊団を組織して、俺の大切なものを奪っていった…」

「大切なもの?」

「そうだ…。俺にとっては金銀財宝、武器、食料…いや、命よりも大切だったかもしれない奴を奪われたんだ、無理矢理…」

 

私は彼の手が小刻みに震えていることに気付いた。今冬木くんの中にある怒りか…後悔か……。

 

「それで俺は殺されかけた。小室と宮本が助けてくれなかったら、今頃あの世行きだ。そこは感謝している。だから頼む。俺をここから逃がしてくれ。俺は…俺は……瑞穂を助けに行かなきゃならないんだ!」

 

冬木くんの必死の懇願のに一瞬、自分が折れかけたがどうにか持ち直して首を横に振った。

 

「ダメ。尚更ね」

「…何でだよ……」

「感情的に動いても死ぬだけだから」

「あんたに何が分かるんだよ‼︎俺はもう数え切れない程大切なものを失ってきたんだ!そんな俺の心情を知るわけないだろ‼︎大切なものなんか……失った事ないくせに!」

「あるわよっ‼︎‼︎」

 

私は冬木くんに負けない程の大きな声を上げて、彼の言葉を途中で止めた。彼は私の声に相当動揺したようで、目が完全に泳いでしまっている。その間に私は自分が味わってきた悲しみと後悔を切り出した。

 

「冬木くんだけが辛い目にあっただけじゃないのよ‼︎私だって……私だって、大切なものを1つ失った‼︎」

「………」

「世界が滅んだ日、私は学校にいたの…。その頃の私はある男に留年させられて、その苛つきとストレス…恨みで自分を失いかけていた。それでも……永と孝がいたからどうにかなっていた…。でも……逃げる際に永はウォーカーに噛まれて、死んだの」

 

冬木くんは黙ったまま私の過去に耳を傾けていた。

 

「ウォーカーになった彼を殺したのは……孝だったの…。私は底知れない悲しみを味わいながらも、永を殺した孝に計り知れない怒りを覚えた。そのせいで、言っちゃいけないことを言ってしまったの…。『永を殺したのは、永を嫌っていたから。私と付き合っていたから』って…。その時の孝の目…とても悲しそうだった…。それ以来、私と孝はあんな感じだけど…ちぐはぐな感じなのよね…」

「……ごめん、勝手なことばかり…」

「良いのよ。人は……好きな子に何かあったら焦ってしまうから」

 

そう…私も永と付き合っていた理由をもし孝が知ったら…どんな反応するかな?でもその真相を言うことは恐らく二度とないだろうけど。

 

「…俺はどうしたらいい?宮本」

 

冬木くんは真剣な表情で聞いてきて、私はクスッと笑って彼に言った。

 

「まずはその傷を直して、チャンスが来るのを待ちましょう!」

「…おう!」

 

冬木くんの声はもうさっきみたいな覇気のない声ではなかった。

 

梶浩二side

冬馬を殺したと自分の中では思っている。

だけど奴のしぶとさは俺が1番よく知っているつもりだ。万が一…生き残っていたら冬馬はどんなに時間が掛かったとしてもここに来て、瑞穂を奪いに来るはずだ。

そのために…まずは奴の居場所を消すとしよう。

遠くから見ているが、今冬馬の実家を部下に頼んで燃やしている最中だ。中には知らない女と冬馬の妹がいるが、別にどうでもいい。

この世界で死ぬのは日常茶飯事だ。

さて…俺は瑞穂の元に行くとしよう。

彼女の強張り、恐怖に震える姿を見る度に征服感が俺の心を満たしていく。

俺はいつまでも笑いを止めることが出来なかった。

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