ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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このシリーズは第6シーズンまで書こうかなと思っています。
それと、原作にはあまり沿わないように頑張ります。まあどうせシーズン4までしか見たことないんで、原作と同じように書けるのはそこまでですが…。


第29話

小室孝side

「本当…面倒くせえな…」

 

僕はもう口癖になりつつある台詞を溢しながら、瓦礫の上に座ってウォーカーが来ないか

見張りをする。高城にきちんとやってよと言われているが、最近はウォーカーの数も少ない気がする。その原因も僕は分かっている。

隣の地区をベースにしている連中が何の目的かは知らないが、よくウォーカーを狩っているのを見る。本当に目的が分からないし、しかもあそこのリーダーは若い女性だ。僕たちと年齢はあまり変わらない、麗と同じくらい綺麗な女性だった。

 

「また、”麗”…。やっぱり、いつまで経っても忘れられないものだな…」

 

高城家で自ら死を選んだ麗…。

脱出するときに、僕がきちんとついていなかったから…彼女は死んでしまった。

誰もそのことを責めては来なかったが、もしかしたら…三年経った今でも密かに僕のせいだと思っている人はいるかもしれない。

 

「…こんなこと考えてたら、ウォーカーが来たときにすぐに対処出来ないな…。きちんとしていなきゃ」

 

こうして、もう一度周囲に注意を配ると、ずっとここで生き続けてきたが、聞き慣れない音が耳に入って来た。ブロロロ…と、バイクのエンジン音がこっちに近付いてくる気がする。

腰に置いている散弾銃『イサカM37』を手に取り、ゆっくりとエンジン音のする方向に歩み寄る。

最初に視界に入ったのは大きな背中だった。大きな背中…要するに男だ。

バイクのエンジンを切り、胸に手を当てて大きく息を吸っているのが見える。

何か苦しんでいるように見えるが、どこかで…。

 

「お前…冬馬⁈」

 

そこで漸く男の正体に気付いた。

三年前…梶浩二のグループに単身で突っ込んで、戻って来なかったため、僕も平野も死んだのではないかと思っていた…冬木冬馬だった。

冬馬も俺を見て、驚愕の表情を浮かべている。しかし…その表情にはどこか懐かしさを感じられない。何かが…違う気がした。

 

「お前は確か…小室…。生きてたのか」

 

言葉も淡々としていて、覇気を感じられない。三年前、僕たちと共に危機を脱するために頑張ってきた冬馬とはほぼ別人と言っても良いくらい変わりきっていた。

 

「あ、ああ…。どうにかな…。生きてて良かったよ、冬馬」

 

散弾銃を降ろして、冬馬に手を差し伸ばす。冬馬はキョトンとした表情を見せる。

 

「…何のつもりだ?」

「握手だよ!分かるだろ?」

「言っておくが、俺はここに残る気はないぞ?邪魔になるだろ?」

「何言ってんだよ!邪魔な訳ないだろ」

 

どうしてそんな考えに至るか…分からないけど、僕はここで冬馬を一人で行かせたくなかった。

高城のと冬馬の知り合い…確か…梶浩二?だっけ?そいつとの抗争で消えてしまった冬馬。その時何があったのか知らないが、もう仲間がいなくなるは嫌だから…。

 

「とにかく、僕らと一緒にいようぜ?俺らのセーフゾーンには食料も水も風呂もある。また危険なウォーカーが練り歩く世界を行く必要はないんだ」

「だが…俺は……」

 

冬馬は視線を逸らして、僕の要望を拒否する。

ならば…。

 

「一人がいいのか?それなら止めないよ。だけど、ここで冬馬が離れたら…二度と会えないかもしれないんだぞ?」

 

我ながら実に嫌らしい言い方だと思った。だけど、僕と平野や冴子だけではこの場をずっと守り通すのは厳しいと思っている。そこに冬馬も参加してくれたら…非常に心強い。

冬馬は暫く俯いて、考えていると、「はあ」と息を吐いて、僕の方を見た。

 

「…ずるいな、お前。俺がそんなことを言われたら、断れないことを知っておきながら…」

「すまないな、冬馬。こっちだ」

 

冬馬はバイクのエンジンを切り、押して僕の後をついてくる。

だが、その後ろで小さく呟いていること声が耳に入った。

 

「どうして…瑞穂は……ああ言ってくれなかったんだ…」

「ん?どうした?」

「いや…何でもない」

 

瑞穂……三年前に梶浩二に連れ浚われた冬馬の友達の名前だ。

どうしてこのタイミングでその名前を出したんだろう?どこかで会ったのだろうか?

会うにしても…この近くで会えるのは、僕らと『対立』関係になりかけているあのグループの誰か。しかも女性に限定すると、僕らや冬馬と同じ年に見えるリーダー…。

ここに来る前に会った?いや、まさか。あり得ない。だって奴らは…

 

 

 

 

 

 

 

僕らを殺そうとしてくる最低集団だからだ。

もし冬馬が奴らと接触しているのなら、今彼はここにはいない。

 

 

和也side

夜になった。

今日は瑞穂さんと一緒にベッドの上で寝る日だ。もちろん、男が女と一緒にベッドの上でただ単に寝るだけで終わるはずがない。

今まで何十回と行為を繰り返しており、お互いに愉悦を感じている。

なのに、なのに…だ。今日の瑞穂さんはものすごく消極的だ。ベッドに座ってはいるが、自分から服を脱ぐようなことも、俺を誘うようなこともない。ただ静かに、ベッドで座っているだけ。

こんな瑞穂さんを見たのは、知り合ってから初めて見た。

 

「どうしたんだよ、瑞穂さん」

「別に……。今日は、気分が乗らないだけ…」

「それもあるだろうけど、他にもあるだろ?相談に乗ってやるぜ?だけど…」

 

俺は瑞穂さんの両手を掴んで、ベッドに押し倒す。抵抗しない瑞穂さんに対して、被虐心が湧き上がって、着ている邪魔な衣服をはぎ取ろうと手を伸ばした時、俺は気付いた。

 

「うっ……ううぅ………」

 

泣いていたのだ。これも初めて見た。

会った時から自分から率先して進み、弱音も涙も見せなかった瑞穂さんに俺は突然、申し訳なさが一気に湧き上がり、拘束している両手を解放して、彼女から離れた。

瑞穂さんもこれには驚いたのか、涙を拭いながら俺に問いをかけてきた。

 

「珍しいわね。あなたらしくない」

「…俺も気分が乗らないだけさ。泣いている女性をヤルなんて、最低な行為だからな」

「なんだ、和也…優しいじゃない」

 

俺は瑞穂さんに顔を合わせられず、言葉に詰まる。

瑞穂さんはクスッと笑って、唐突に話し始めた。

 

「今日、私たちが遭ったあの男性…私の、一番大事な…大切な人なの」

「………なるほどな、動揺するわけだ」

「でも…私は彼を…冬馬を裏切った」

「瑞穂さんが裏切るようなことするとは思えねえ。間違いじゃないか?」

「私は和也やみんなが思っているような人じゃない!」

 

俺は瑞穂さんの悲痛な声に思わず、言葉に詰まって何も言えなくなってしまう。

よく見ると、瑞穂さんの身体は小刻みに震え、涙がポロポロと溢れていた。

 

「私は…私がいたせいで…冬馬と梶くんが争って…梶くんが死んで……冬馬は冷たくなってしまった…。あの時だって…冬馬は私を蔑んでいた…。きっと、梶くんと私が”してた”ことを知って…軽蔑していたんだ…。それを謝りたくて…許してほしくて…今日、折角会えたのに……。私……はっ……」

 

俺が目の前にいることを忘れたのか、わけも分からず顔を両手で覆って泣き出す。

今目の前にいる瑞穂さんが…『本当の瑞穂さん』なんだと…やっと分かった。

俺はガラにもなく、彼女を抱き締めた。

普段ならこんな格好つけたことなんてしないが、今回は状況が状況だ。

 

「…瑞穂…さん」

 

今までの俺は…瑞穂さんのことを単なるリーダーであると同時に、性欲処理に使える”都合のいい女”と認識していた。だが…こんな彼女を見てしまったら…そう思っていた自分を激しく後悔する。

またこの瞬間、俺の心の中に新たな感情が芽生えた。

それは恋心、だ。儚く叶うことのない、悲しい恋心…。

 

 

成瀬瑞穂side

目を覚ますと、私を抱き締めてくれた和也はもういなかった。

冬馬とはまた違った温かさを感じれて、少し落ち着けた気がする。

それにしても…久しぶりに泣いたなあ…。

この三年間、冬馬と会わなかったから…彼のことを思い出す要因がなかったから…弱い私を見せることはなかった。

だが、今日ばかりは抑えきれなかった。

和也の前で本当の自分を曝け出した私は、いつもと違う考えを持ち出していた。

冬馬に会いたい…。会って、話したい。会って…また昔のように…。

 

「冬馬…どこにいるの?」

 

真っ暗な夜の街を見下ろしながら、私は呟く。

また、少し遠くで見える灯り。あそこには他の生存者を集めたグループがいる。

最近、あそことここはよく問題を起こしている。

穏便に話を進めたいが、簡単には行かない。いずれ、あそこ…小室孝のグループとの問題も解決しなくてはならない。話し合いがダメなら…どうしようか…。

他のメンバーは強硬手段を言うだろうが、私は賛成しない。

生き残りは生き残り同士、お互いに頑張ろうと言いたい。

だが、そんな私の思惑とは別のところで、事は進んでいることに気付いていなかった。

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