ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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久しぶりに書いてみると頭がよく働きます。
いやあ…執筆って楽しい!


第30話

冬木冬馬side

目の前に瑞穂がいる。少し前に進めば、彼女の手を掴むことが出来る。

だが…その前に男たちが現れ、瑞穂を守るように立ち塞がると同時に俺を取り押さえる。

抵抗する俺に瑞穂はバールを持って、思いっ切り腹を殴る。

 

「ぐはっ…」

 

唾が大量に吐きだされ、俺は噎せる。しかし瑞穂はそれを楽しむかのように続ける。

「やめろ」「やめてくれ」と懇願する俺だが、瑞穂は髪の毛を掴んで、こう言った。

 

「冬馬がいけないの。冬馬がいなければ…」

 

そう呟き、バールを振り上げる。

 

「やめろ…」

 

最後の懇願も虚しく、バールは勢いよく振り下ろされ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こらっ!さっさと起きなさいよ‼」

 

ドカッと背中を思いっ切り叩かれて、俺の今日の睡眠と夢は唐突に終わりを迎えた。

 

「いでっ⁈」

 

俺は背中を抑えて、背中を蹴り上げた犯人を見上げた。

 

「高城…お前、何するんだよ…」

「あら?もう朝の九時になるから起こしてあげたんじゃない?感謝しなさいよ」

 

そう言いながら、「ふん」とそっぽを向く。

俺は溜め息を吐きつつ、眠気から目覚めたばかりの身体を起こす。

でも…起こしてくれて正解だったかもしれない。瑞穂に殺される夢なんか…夢であったとしても見たくない。

 

「…ありがとうな」

「へっ⁈な、何よ…。急に改まって…」

 

高城は顔を赤くしながら、逃げるように向こうへ行ってしまった。

 

「…ツンデレかよ、やっぱりあいつ…」

 

俺は床に置きっぱなしになっている服を着て、『下』に向かう。

そう…今俺や小室たちが住んでいるのは、でっかいビルだ。地上10階建ての高層ビル…に近いものだ。しかも運が良かったらしく、ここには食べ物や水に服、更には風呂がある。要するに水道やガスが世界が滅んだ三年もの間、ずっと動き続けているという信じられないことが起きているのだ。初めはとても驚いたが、風呂に入った時の快感を久々に味わって、思わず泣きそうになってしまった。

おまけに屋上は菜園になっており、野菜が育てられているらしい。それはまだ見てないから、これから見ようかと思っている。

…やることをやってから…。

 

 

地下室に来た俺は異臭のする部屋の中に入った。俺の後ろには小室と平野が立っており、万が一の場合があった時のために銃を持っている。

ここに何があるのか…それは、墓だ。火葬も土葬もしていないため、死体は日が当たらない場所に置かれている。それでもいずれは腐り、即席で作ったと見られる箱の周りには雑食のゴミムシにネズミ、ゴキブリがウロチョロしている。死体を食っているかもしれないが、今の俺はそんな害虫どもはどうでもよかった。

目の前の箱に刻まれた名前は…健太と栞。

 

「…三年ぶりだな、健太、栞」

 

小室の話を聞いた限り、栞がウォーカーに襲われて、噛まれてしまい…健太が殺した。その後悔の念に押し潰されてしまった健太は自殺を図ってしまった…とのことらしい。

その場に俺がいたなら、まずは何故栞を先に行かせたんだと、健太か…小室を問い詰めて、殺していたかもしれない。

だが、あの時…俺はその場にいなくて、何もしてやれなかった。栞を守ることも、健太を止めることも…。

 

「だらしない兄貴で、本当にごめんな」

 

手を合わせて、健太の墓を開く。開けた途端に一瞬で吐きそうになる程の激臭が鼻を突いたが、俺は死ぬ気で我慢して、彼の亡骸を見届けた。栞も同様に。

自然と涙は出なかった。

不思議だ。他のことで泣くことはあったのに、家族が死んでも泣くことはないのか…。

自嘲気味に笑って、異臭のする部屋を後にして、屋上に向かう。

 

 

扉を開けて、ストンと背中を預けて、倒れるように地面に座る。

日も出ていたのに、あの部屋から出て外に出ると、ゴロゴロと雷が鳴り、雨が降ってくる。俺たち生存者はこの雨は貴重な飲み水になるため、普段ならとても喜ばしいことだ。普段なら…だが。

今はとても気分が落ちている。残りの家族の死のショックは…俺の想像を超えていた。

いざ感じると、途轍もなかった。

 

「はは…」

 

雨は更に強くなり、周りの音は雨が地面を打つ音だけになる。

そして…ここで涙が溢れる。

雨と一緒に流れ落ち、俺の心を酷く抉る。

 

「どうして…生き延びたんだろう…」

 

今更ながら思った。

俺は何を目的にして生きて来たんだろう…。

いつも思っていることだった。他人を見殺しにしてまで、俺はどうして…。

 

「何を泣いている。男が情けない」

 

1人だと思っていたら、唐突に横から声が聞こえた。ゆっくりと顔を横に向けると、紫色の髪をした妖艶な女性が立っていた。その手には見事な日本刀を有して。屋上の扉に背中を預ける形で座っているので、元からここにいたのだろう。

見覚えがある。確か彼女の名前は毒島冴子…だったっけ?

 

「情けない?俺が?」

「そうだ。男が泣くのなら、女子の前で泣き、自らの心中を溢れさせなくては」

「なんだそりゃ。それこそ「情けない」だろ」

「君はそう思うかもしれないが、私はそう思っている。しかし、どうした。幾年前に見た君とはまるで違うようだが」

「……家族を失った痛みを受けている……と言えば、分かるかな?」

「…なるほど」

 

毒島さんはそう言って、俺の隣に座る。雨で濡れた紫色の髪は美しく靡いている。

 

「私には少し理解しかねるな…。母は早くに亡くし、父は今もどうなっているか分からない。家族というものに疎いことに気付いたよ」

「初めて知ったな、そのこと」

「だが…」

 

毒島さんは俺の方をじっと見ながらこう言った。

 

「仲間を失った気持ちと同じだってことは分かっている」

「……仲間、か」

 

俺も毒島さんと話していて気付いたことが見つかった。

俺にははっきりとした『仲間』が存在しない。

小室たちと出会った時も偶然で、流れで彼らと居ただけで『仲間』とはきちんと自分の中では思っていない。

 

「君にもはっきりとした仲間…私たちが必要だろう?」

 

俺の心を見透かしたように、毒島さんは俺に手を差し伸べる。

ここで凄いタイミングで雨が上がり、陽光が差し込む。

毒島さんを見上げて、彼女の華奢な手を見つめる。

心のどこかでずっと言われたかった言葉だったのか、俺はまた泣きそうになる。

 

「また泣くか。それでも…」

「男だよ…。いいじゃねえかよ、嬉し泣きくらいよ、毒島さん」

「仲間になるのなら…『冴子』と呼んでもらいたいよ、冬木くん」

「そうですか……なら、呼ばせてもらおうかな。冴子さん」

 

冴子さんはクスッと笑った。

 

健太、栞……俺にも漸く『仲間』と呼べる人が出来たよ。

彼らが居れば…これからどんなことが起きても耐えていけそうだよ。

俺は今日、家族の死に打ちひしがれていたが、冴子さんのお陰で、縋れる『仲間』を見つけることが出来た。

それだけでも…俺にとっては大きなことだった。

 

 

???side

俺たちはあの女…成瀬瑞穂の采配に全く誠意を感じられない。

ウォーカーにいつ襲われるか分からねえこんな世界で、話し合おうなんて甘いにも程がある。だから俺と俺に賛同してくれている約3人のメンバーで、わざと二つの生存集団で抗争を引き起こしている。

あっち側もなんの疑いもなく、抗争の原因があの女であると決めつけており、俺たちに疑いが及ぶことはない。

まあそれで良い。

そうすれば…どちらも潰しつつ、俺がこの地帯を征服して、安全に生き残ることが出来る。

抗争も激しさも増しているし、あと1、2回起きれば、俺の計画も最終段階に進む。

 

「くくく……さあ、今日も一仕事だ」

 

俺は小室孝たちがいるエリアを区切っている網に切れ込みを入れ、その前に人肉を置く。この人肉は使えない子供や老人どもを殺して、使っているやつだ。

あの女も徐々に生存者が減っていることに気付いてはいるようだが、今更遅い。

動き出した歯車は、止まらない。

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