マジで、スランプでした。
圭太side
俺は成瀬を縛り上げると、ロープを余分に余らせて、自らの腕に巻き付けた。
これは彼女がすぐに逃げられないようにするためだ。
そして、広場に集めた生存者のもとへと向かった。その途中で成瀬は目を覚ましたが、縛られた状態では暴れることも出来ないからか、俺に向かって声を荒げた。
「何するの⁈こんなことして…ただで済むと思ってるの⁈」
「その強気な態度も今のうちだ」
俺は軽く抵抗する彼女をいなしながら、広場に入った。
全員の視線は俺と縛れらている成瀬に集中したが、誤解が生まれないうちに、口を開いた。
「みんな!これは誤解しないでほしい!この女は…俺たちを見殺しにして、向かいのビルの生存者グループに入ろうと計画してたんだ!」
そうは言っても、突然そんなことを簡単に信じる者はいないだろう。それも想定済みだ。
そこで俺は指をパチンと鳴らした。
すると、広場の左側のカーテンが外れる。
そこには、俺が長い期間かけて集めたウォーカーをフェンス越しに見せれるようにしておいたのだ。因みにだが、このウォーカーの元はここの生存者だ。
「こいつはな…この女が生存者を殺して集めたウォーカーだ。これで俺たちを殺して、寝返るつもりだったんだ!」
「そんなのウソよ!信じて!」
成瀬は叫ぶが、全員怪しい目付きを見せ始めていた。
「その証拠に…最近、俺たちはあっちの集団の攻撃を散々に受けていた。なのに、この女はそれを止めようとしなかった。そうだろう?」
「そんな報告は受けてないわ!圭太…あんた、まさか…!」
「嘘をつくな!ここにいる全員は奴らの攻撃を受けた被害者だ!そうだよな⁈」
俺の強い言葉に全員が「そうだ!」と反応した。
ここまで来れば…もうこっちのものだ。
「満場一致だな?じゃあ…この女はどうする?」
この発言に成瀬の表情が一気に変わった。
俺が大好きな恐怖に満ちた表情だ。
暫く隣同士で話している彼らだったが、1人が唐突にこう言った。
「あのウォーカーの塊に入れてしまえ‼」
「……そいつは良い考えだ」
俺は薄ら笑いを浮かべたまま、成瀬を縛るロープを引っ張った。
「ちょっ…!離して‼やめて‼」
成瀬は必死に抵抗するが、意味はない。
俺は着実に彼女をフェンスの方へ無理矢理連れていき、閉じている鎖にも手をかけた。
「さあ…死んで償え!」
フェンスを開け、この女を中に放り込もうとしたとき、男の叫び声が響いた。
「やめろ‼瑞穂を放せ‼」
俺は一旦動きを止めて、声のした方向を向く。
そこにいたのは…俺が椅子に繋ぎ止めていたはずの、捕虜の男だった。
冬木冬馬side
俺は今にもウォーカーの塊の中へと放り込まれようとしている瑞穂を助けるために、自然と身体が動いてしまっていた。そのせいで、隠れて瑞穂を助けようとした作戦が御釈迦になってしまったが…仕方ない。
「冬馬?…どうして…」
「訳は後で話す。それより、テメエ…早く瑞穂を解放しろ。頭に風穴空けられたいか?」
俺は躊躇することなく、和也という奴から返してもらった拳銃を向けた。
途端に広場にいる生存者たちは悲鳴や恐怖の声を上げて、どこかへと逃げていく。この際、俺にとってはその方が楽だ。
「お前…どうやって外に出た?」
「さあな…。ご想像にお任せするよ」
「ちっ…。テメエにはこの女が死ぬまで大人しくしてほしかったがな…。仕方ない、テメエの前でこの女が無残に喰われる瞬間を見せてやる」
圭太…という名前だったかな?
こいつが動きそうになったので、俺は1発だけ脅しを含めた発砲を奴のすぐ足元に撃った。
流石の奴も本当に撃つとは思っていなかったのか、冷や汗を流しているのが分かった。
「動くなと言っただろ?」
「別に良いんだぞ?俺は、この女が死んでもな!」
圭太は最後の切り札とでも言いたいのか、瑞穂の首にナイフの刃を当てて、人質に取った。
想定外ではあったが、こうなっては俺もどうにも出来ない。
「やはりな…。お前ら、親しい…いや、それ以上の関係だろ?」
「………」
「冬馬…」
「それなら良いこと教えてやるぜ?こいつはアバズレだぜ?何故なら、この女は和也と寝ていたんだからな‼」
それを口走った瞬間、俺の中で動揺と不信感が広がっていく。
瑞穂も知られたくない事実を言われてしまったからか、顔を青くさせていく。
「そんな女をまだ愛するのか?テメエは。俺なら捨てるし、殺したくもなるな。そこでだ。俺と一緒に来ないか?」
唐突な圭太の催促に俺は黙って聞く。
「テメエみたいな素晴らしい人材がいれば…この世界でも十分楽しく生きていける。どうだ?」
「…返答を聞かないと分からないのか?」
俺は拳銃を下ろし、すう…と大きく息を吸った。
「だったら言わせてもらうぜ?俺はお前みてえなな…最低のクズ野郎が一番嫌いなんだよ‼‼仲間を…人の命をゴミみたいにしか考えていない奴にはなおさらな‼だから俺は…貴様を絶対に殺す!」
それを聞いた圭太は暫く黙っていたが、急に馬鹿みたいに笑い出した。恐怖のあまり、頭がイカれたのかと俺は思ったが、それは間違いだった。奴に気を取られているうちに、不意に膝の裏を蹴られて、態勢を崩されてしまう。後ろを急いで振り向くと、そこには別の男たちがニヤついて立っていた。
「!」
「冬馬!」
「くくく……あーはっはっはっは‼テメエがそんなこと言うのはお見通しだ!今までの会話は単なる時間稼ぎだ!さて、これでお前は何も出来なくなってしまったなぁ」
圭太の言う通り、俺は拳銃を奪われて、地面に身体を抑えつけられている。
(くそ…。まだ、まだなのか⁈)
「さて、そろそろ…フィナーレと行こうか…」
圭太は瑞穂の縄を解き、腕で彼女の首を抑えつけて拘束する。
「くっ…!」
既にフェンスにはウォーカーが肉を喰らいたいと腕を伸ばしており、瑞穂にはその恐怖心が伝わってきた。
俺はもう『彼ら』が来るのを諦めて、今俺の上に乗っている奴らを退かして、瑞穂を助けに行こうと思った時。
窓の辺りから、キラリと何か光ったのが分かった。思わず、俺は顔を下げて、笑いを溢してしまった。
「…?何がおかしい?」
「別に…。確信出来ただけさ、お前らが死ぬってな!」
そう言った途端、銃声が何発と鳴り響き、俺の上に乗っていた男と取り巻き共が苦痛の声を漏らした。
「ぐああっ!」
肩や腹から血が噴き出した男たちは地面に倒れて暴れるか、動かなくなった。
それに動揺した圭太であったが、せめて瑞穂だけでも殺してやると思い至ったのか、フェンスを開けて、彼女を中に放り込んだ。
「冬馬…!助けて!」
その声は明らかに死の恐怖に震えている瑞穂の声であった。
俺は再び立ち上がって、フェンスへと走っていく。だが、圭太は行かせまいと前に立ち塞がった。俺は拳を作り、それを奴の顔面にめり込ませた。
「退けぇッ‼」
「ぶふっ!」
フェンスの中に入ろうとしたが、入る前に何か棒状の物が飛んでくる。
それは金槌で、遠くからやって来ている小室が投げたものだとすぐに分かった。
「借りるぞ!」
瑞穂はウォーカーに捕まりそうになりながらも、必死に逃げ回っていた。
そこに俺が割って入り、ウォーカーの頭を砕いた。血がブシャッと飛び散り、溶けた脳の一部や目玉が飛び出る。
そして…俺は瑞穂を抱きすくめて、決して離そうとしなかった。
「と、冬馬…」
「走れるか?さっさとここから出るぞ」
瑞穂は小さく頷き、俺は彼女を支えながら元の入口へと駆けていく。
道中で前に立つウォーカーの頭を砕きながら…。
そして、外に出た瞬間、瑞穂は力が抜けたのか、倒れて、俺にこう言った。
「冬馬…私、ごめんなさい…。私が…間違ってた」
次の話でThird Seasonは終了です。
次回、何が起きたのか、全てが分かります。