ウォーキングデッドin Japan   作:GZL

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遅くなり、申し訳ありません。


第6話

成瀬瑞穂side

私はあの日…彼を、冬馬を見捨てた。引き摺ってでも運ぶ。それくらいのことも出来たはずなのに…彼が好きなはずだったのに、私はそれすらせず、自らの命が惜しくて…梶くんに手を引っ張られて……どうすることも出来なかった。今日も私は…嫌な夢を見た。

 

真っ暗な視界に徐々に明るく白い壁が見えてくる。それは病院の壁だった。ただ、所々に赤い染みが点々としていて、これが血痕だと気付き、私は足を後ろに退いた。

 

「ここは……」

 

ゆっくりと血だらけの病院の通路を歩いていると、T字路に見覚えのある男の子が立っていた。

180cm近い身長に、柔らかな髪。そして何より私はあの男の子の後ろ姿をずっと見てきたため、誰かなんてすぐに分かった。

 

「冬馬!良かった‼無事……」

 

喜びの声を上げて彼に近付くと、私の足は突然金縛りにでもあったかのように動かなくなった。そして…冬馬はゆっくりと顔をこちらに向けた。

 

「…!う…そ……」

 

彼の清々しい顔は無惨な状態になっていた。皮膚の半分は破け、鼻は食い千切られたように欠損している。赤く血走った目は私をギロリと見て…薄紫色に変色した唇からは…か細い…助けを求める声が発せられた。

 

「助けて………くれえ………」

「い………や………」

 

私は醜悪な顔へと変貌した冬馬から距離を取りたかった。だけど、どんなことをしても身体は動かない。涙が溜まり、拒絶する私の声だけが病院内を木霊する。

 

「来ないで………来ないで……っ!」

 

フラフラと千鳥足の冬馬は私の言うことなど耳に入っていないのか、足を止めずに私の方にやって来る。

 

「助けて……瑞穂ぉおおぉ……」

 

そう言ったが、最後…彼は口を大きく開け、私の首に噛みつくのだった。

 

 

 

その瞬間、私は身体を起こして目を覚ました。動悸は激しく、着ている服には汗がベットリと貼り付いている。

また…同じ夢だ……。

私は今回で同じ夢を5度見た。冬馬が助けを求めて、近付くが…最後に人間としての理性を失い、私の肉を抉る夢…。そこでまた私は思い出されるのだ。

冬馬は……死んだんだ、と…。

私はベッドに再び横になり、涙を溜めて、小さな子供のようにまた…喘ぎ泣くのであった。

 

 

 

冬木冬馬side

シャッターを開け、眩しい太陽が俺と咲良を照らした。太陽だけは、いつもと変わらないで上がるんだな…と感慨深くなってしまう。

今日は町に向かおうと思っている。俺の近所がどこに逃げたのかは分からないが、町に行ってみれば何かしらのことは分かるだろう。

 

「…行こう」

「うん…」

 

昨日、咲良に告白された俺はいつも以上に彼女に気を配っていた。咲良も同じようで、バイクに乗る時、俺の腹に腕を回すのだが、力が昨日に比べて全く入っていない。俺も実際、好きだと言った彼女が後ろにいるだけで妙に緊張してしまっている。

…この状態のまま、俺たちはバイクを進めていくのだった。

 

ただ、町に行くまではかなり厳しそうだ。バイクのガソリン残量を見たのだが、もう無いに等しい。このままでは町に着く前にバイクは止まってしまうだろう。

 

「なあ…咲良、この近くにガソリンスタンドあるか?」

「知らない…。私、ここまで来たことないから…」

「そうか…」

「それよりもあれ」

 

咲良が指差すところには、赤いライトを点滅させたパトカーの前の辺りが道路の角から覗かせていた。それを見た俺は思わず笑みを浮かべた。

 

「ヘルメット無しでバイクに乗っているから、補導されるのは確定だな…」

「ウォーカーの垣根を突破してきた癖に警察が怖いの?冬馬は」

「そんなわけないだろ?」

 

俺はそう言って、何の躊躇もなくパトカーの前にバイクを走らせるが……そこは想像以上に酷い有り様だった。

見えていなかった後方部分はトラックによってぐちゃぐちゃに潰され、中にいた警官二名も死んでいた。

 

「…マジかよ……」

「ねえ、冬馬くん。もしかしたら…警察官だし、何か持っているかも…」

「でもなぁ……ガソリン漏れてるし、引火したら大変だぞ?」

「こんな不甲斐ないバットとスコップよりも良い物があるかもよ?」

 

咲良の言うことも一理あったため、俺はバイクを降りて、死んでいた警察官の腰に装着されたままの武器を手に取った。その途端、後部座席にいたウォーカーが俺の方に手を伸ばしてきた。けど、全く届きそうになかったため、無視して咲良の元に戻った。

 

「ほらね?いいのあったじゃん」

「警棒はまだしも…拳銃なんて……撃ったこともないのに…」

 

もう一度拳銃を持ってみたが、ズシリと手に重みが感じられた。普段絶対に持てない拳銃を持てて、少なくともかなりの興奮を覚えてしまっている俺。いつまでも持っている訳にもいかず、腰に差した。

そのまま俺たちはガソリンスタンドを探しにバイクを走らせたが、そのあとすぐにパトカーはガソリンに引火したのか爆発した。それを見た咲良はこう呟いた。

 

「…本当に危なかったね」

「……ああ」

 

 

 

俺と咲良はそれからすぐにガソリンスタンドを見つけた。見つけたのだが…1つだけ問題が発生していた。

 

「咲良……金、ないよな…」

「うん…ない」

 

そう…このガソリンスタンドはセルフ式で勝手に入れることが出来ないものだったのだ。困ったことになってしまったので、俺は金属バットを持って、併設されているコンビニに行って金を調達することにした。

 

「金を取ってくるから、ここで待っていてくれ。何かあっても絶対に声を出さないでここまで来いよ?」

 

咲良はコクンと頷いた。

俺はコンビニに入って、レジの中を取り出そうと思ったのだが、やはり鍵が掛かっていて取れなかった。

 

「やっぱりダメか…」

 

そこで俺はレジを地面に置き、バットを高々と振り上げた。

この時…俺は自然と笑みを溢していた。何故かって?それは…何となくであったが…この世界が楽しいと思い始めていたからだ。

 

 

杉山咲良side

突然、肩がビクッと震えてしまう程の音が奥のコンビニから響いてきた。

 

「えっ?」

 

続けて、ガシャン、ガシャンと何度も殴る音が聞こえてくる。恐らく、レジを壊しているのだろう。

音を出すなとあれだけ言っている癖に彼はあんなに出している。理不尽だと思ったが、彼がいなかったら…私はどうなっていたことだろうか…。お父さんの死を乗り越えられず…絶望して私も後を追っていたかもしれない。

それに昨日は……。

 

「…ふふっ……遂に告白しちゃったなぁ…」

 

仄かに顔が暖かくなる。何年間も想いを馳せていたために、あそこで告白してしまった。そんな風に昨日のことを思い出している時だった。

突然…誰かが私に向かってきたことに……。

 

 

冬木冬馬side

「きゃあああああああ‼」

 

千円札をいくつか手に掴んだ時、外から咲良の悲鳴が聞こえた。俺は焦って、急いで外に飛び出した。

そこでは太った男に捕まって暴れている咲良の姿があった。しかしその首にはキラリと光るナイフが当てられると、咲良は恐怖に身体を固めた。

 

「……くくく……くっわはははは‼」

 

男は咲良の身体に腕を回しながらも、気持ちの悪い奇声を上げた。

 

「よお…兄ちゃん!いい女連れているじゃねえか…」

「咲良を離せ!今こんなことしてる場合じゃないだろ‼」

「うるせえ‼こんなクソみたいな世界で生きていくには…女が必要だからなぁ‼」

 

男は咲良の瞳に溜まった涙を舌ですくい上げた。その行動に咲良は「ひっ…」と小さな悲鳴を上げ、更に表情がひきつっていく。

 

「お前……正気で言ってんのか?」

「正気かって?当たり前だ‼化け物だらけの世界でまともにいられるはずがねえだろが‼俺はなぁ…家族を全員殺したんだよ‼目の前で頭をかち割って…正気でいられる方がおかしいだろうがぁ‼」

 

男はウォーカーを引き寄せてしまうくらいに高笑いを続ける。俺は奴に突っ込んで咲良を助けたかったが、人質を取られている俺にはまだ…動くことは出来なかった。

それどころか男は更に図に乗り……。

 

「へへへっ……」

「⁉ひぐっ⁉」

 

咲良の身体をさわさわと触り始めたのだ。彼女は男の太い腕から全く逃れられず、好きなように触られる。

 

「いや…!いやぁ‼」

 

咲良は男を拒絶しようと何度も悲鳴を上げる。俺は歯を強く噛んで、彼女の方に足を一歩だけ…動こうとした時…再び男は威嚇をした。

 

「動くんじゃねえ‼女とバイクは貰っていくからどっか行きやがれ!」

「……ガソリンないぞ?」

「レジ壊してただろうが!給油しろよ‼変なことはするなよ…」

 

今ここで無闇に突っ込んでも咲良は殺されるだけだ。そう思った俺は大人しく男の言う通りに給油を開始する。

だけどその間も俺は男に話しかけた。もしかしたら…見逃してくれるかもと…。

 

「なぁ………」

「うるせえ‼喋るんじゃねえ‼」

 

ダメだ。全く聞く耳を持たない。

俺はそのまま給油を終えてしまい、どうすることも出来ずに突っ立っていると、男はナイフを俺に向ける。

 

「ほら!どっかに消えろよ‼」

 

そんなわけにいくか……。

ここで咲良を連れていかれるわけにはいかないんだ。

俺はもう一度だけ、男を説得する。

 

「なぁ…本当に………」

「うるせえって言ってんだろっ‼お前も死にてえのか⁉」

 

そう怒鳴り、男はナイフを高々に上げた。その時、俺の身体を勝手に前に進んでいた。腰に収めていた拳銃を掴んで、男の右肩にその銃口を当てていた。男も俺が拳銃を持っているなんて思っているはずがなく、顔を徐々に青くしていった。

ガチャリと安全装置のようなものを引き、俺は小さく呟く。

 

「撃つのは初めてだ。だけど、これなら外れることはない…」

「お、おい…。撃ってガソリンにでも引火したら……どうすんだ?お互い死ぬぜ⁉」

 

男は焦りながらも、説得を開始する。だが俺は……咲良が散々な屈辱を受けた姿を見てしまったせいで…我をほぼ、忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……咲良を傷付けた、お前が悪いんだ……」

 

 

 

 

 

 

俺はそう言って……拳銃の引き金を引いた。すぐに俺の両腕にとんでもない衝撃が伝わり、俺は地面に背中から倒れた。だが、撃たれた男も肩を撃ち抜かれて…咲良を解放した。

 

「うぐわああああああああああ‼腕がっ……肩がぁ‼血がぁ‼」

 

男は痛みにもがき苦しみ、奇声を上げ続けていた。咲良は俺の胸に飛び込んで身体を震えさせる。

彼女が泣き止むまで、こうしてあげたかったが…銃声と男の悲鳴により、近くにいたウォーカーがこちらに近寄りつつあったため、俺はすぐに咲良をバイクに乗せて、この場を離れることにした。

 

「おい‼待ってくれよ‼俺を置いていかないでくれぇ‼」

 

男は泣き叫びながら、俺たちに助けを懇願した。だが…俺は助ける気も、助けるつもりもなかったため、そのままバイクを運転させた。

その数分後…男の悲鳴が聞こえてくるのだった。




今回は学園黙示録に近いストーリーにしました。
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