至高の御方々専用イストワール   作:黄雨

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ゲームモードの選択 ー> 至高の御方モード

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 西暦二一四四年現在。<DGFE>という言葉がある。

<Dive(ダイブ) Game(ゲーム) Free(フリー) Editor(エディター)>の略称であり、サイバー技術とナノテクノロジーの粋を終結した脳内ナノコンピューター網――ニューロンナノインターフェースと専用コンソールを連結した際に構築される仮想領域内で、あたかも現実にいるかのように遊べる体感型ゲームを『自作』できるというものだ。

 

 つまりは仮想現実(バーチャルリアリティ)空間において、DGFEユーザーは創世神の如く一個世界を作り上げることができるのである。

 

 しかし、なんでもかんでも製作者の思い通りになる……というのは素人の意見。

 脳内と専用コンソールを連結したからといって、脳裏に思い描いたモノコトが忠実に仮想現実へと反映されるわけではないのだ。

 

 フリーゲームを作るにあたって必要なものは様々だが、2D時代のフリーゲームと比較して圧倒的に手間がかかるのは仮想現実用のマップ構築であろう。

 2Dマップチップとは次元の異なる、仮想現実用のグラフィックを用いてのワールドエディットだ。

 汎用性のある画一的なデフォルト素材だけでは、二十二世紀のクリエーターは満足できるものを作り上げられるはずがなく――理想を追求するあまり、必要以上に手間ヒマをかけてしまう。

 凝れば凝るほど手間のかかるものはそれだけではない。キャラクターやモンスターといった動く者には例外なく付随する一挙一動のモーションを破綻や違和感なく動かすのは一苦労どころではなく、そのうえ装備類の外装も手がけるとなると、もはや個人製作するにはあまりにも膨大な時間を浪費してしまう。イベント管理やシステムデータベースを作り上げる以前の段階で躓くことになる。

 

 数タイトルだけが細々と販売され、その後ユグドラシルのサービス終了にともない行き場を失った創作難民をターゲットとして後続がいくつか開発されたはいいものの、結局は多数の挫折者を生みだしただけとなったDGFEの中に、流星のごとく現れた一つのタイトルがある。

 

 ユグドラシル・ツクール。

 

 二一四一年に、日本のメーカーが発売したそのゲームは、タイトルにあるDMMO-RPG内で使用された様々なデータをデフォルト素材として利用でき……その中にはプレイヤーが製作していた外装やNPC、ギルド拠点までもが丸々使いまわされた膨大なサンプルデータが標準装備されていた。

 

 その件について一部の旧ユグドラシルプレイヤーは、自作の創作物などの流用に対し著作権の侵害を訴えんとしたが、ユグドラシルの利用規約には『ユグドラシル内でユーザーが製作した外装等の著作物に関するすべての権利は当社に無償で譲渡するものとする。また、ユーザーは当社に対し、これらに関して著作者人格権等を行使しないものとする』といったような内容が書かれていたため、旧プレイヤーであるからには当然その利用規約に同意していることから、ろくに利用規約も読まずプレイしていた者たちの間で大炎上すれどもまともな裁判にはならなかった。

 

 ともあれ、DGFEを作り上げる上で最大の障害となっていたワールド構築の問題を概ね解決したのである。あるところから持ってくる。それで事足りた。もちろん、理想を追求するものはそこから更に手を加えたりするのだが。

 

 また、デフォルトシステムもまたユグドラシルと同じものが流用されており、種族や職業、スキルや魔法などといった各種データが揃う。これらもまた編集可能。オリジナルのデータだって新規作成できる。

 

 製作されたフリーゲームはユグドラシル・ツクールに同梱された専用アカウントでのみログインできる投稿サイトに投稿でき、そしてユグドラシル・ツクール本体を持つものは誰でもプレイ可能。

 

 さすがにゲーム製作は敷居が高い……と感じる者も、フリーゲームをプレイしたいがために購入する者もいたし、ユグドラシルと同じ外部ツールを使って作成できるNPCキャラクターや装備などといった一部だけを手がけ、素材単位で投稿するものもいた。

 

 作成可能なゲームはRPGだけではなく、特定のレベル配分がなされたキャラクター同士のPvPを主眼においた格闘ゲーム、<飛行(フライ)>で空を飛び、次々と襲い掛かってくるモンスターを撃退し続けるシューティングゲーム、モンスターの群れを薙ぎ払う無双系ゲーム、ギルド拠点攻略戦を想起させるような戦略シミュレーションゲーム、月毎定額課金で借りられるレンタルサーバーを活用したMO-RPGなど、製作者の発想しだいでどのようなゲームでも作成できるという。

 

 用意された世界。膨大な素材。それらを幾らでも弄れるフリーエディターというツール。

 

 かつて「外装人気」と言われ、爆発的な人気を得ていた<ユグドラシル>そのものをまるまる編集できる(しかもデータクリスタルもなしに!)

 というニトロをぶち込まれたクリエイト魂を更にオーバードーズさせるかの如き大盤振る舞いに、旧ユグドラシルプレイヤーを始めとしたいわゆる『職人』と呼ばれる者たちは我先にとユグドラシル・ツクールにのめり込んでいった。

 

 

 

 ……なお、相変わらず某ゲーム会社のR18への姿勢は非常に厳しく、公表していない何らかの検索手段に引っかかった該当ユーザーは、ある日突然ユグドラシル・ツクール内のデータが削除されるという。

 

 

 

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『DGリメイク版・イストワールの世界へようこそ。そして、あなたの帰還に感謝します』

 

(こうやってゲームするのは久しぶりだなぁ)

 

 周囲一帯が闇に覆われた空間。

 ゲーム開始直後特有のスターティングフィールドの中央で、鈴木悟(すずきさとる)はぼんやりとシステムメッセージの声を右から左へ聞き流した。

 

 仕事明けの趣味の時間。彼は久々にオフラインゲームをプレイしていた。

 

 鈴木悟はユグドラシルのサービス終了と同時に異世界に転移する――なんて一世紀前のライトノベルのような素敵で不思議な超展開など起こらず、当たり前のように強制ログアウトされたあと、それからの人生を無気力かつ惰性で生きていた。

 が、在りし日の思い出が詰まったDMMORPGの後継機ともいうべきユグドラシル・ツクールを手にいれてからは、無くしたものを取り戻すかのごとき勢いで趣味の時間の大半をフリーゲーム作りに注いでいる。

 しかし近ごろはどうにも作りたいものを作りたいように作れないスランプに陥り、煮詰まってしまったために今日は気分転換にとユグドラシル・ツクール内のフリーゲーム投稿サイトから「あなたにオススメのゲーム」をプレイしはじめた。

 

『まずは初期設定を行います。あなたの誕生日を教えてください』

「○月×日」

 

 悟の言葉に音声認識機能が反応し、視界の正面に『○月×日』と書かれた入力パネルが現れた。音声認識機能のキーワード機能の一つである「確定」と呟いて、誕生日入力を終了させる。

 

『簡易キャラクターエディットのため、以下の質問にお答えください。

 生まれ変わったら何になりたいですか?』

「別に生まれ変わりたく無いなぁ……こんな世界で生まれ変わりたくなんてない」

『誕生日は○月×日。生まれ変わらずに死後アンデッドになりたい。初期設定は以上で宜しかったでしょうか?』

 

 何故「生まれ変わりたくない」と言ったのにアンデッドになると認識されるのか?

 それは音声認識機能が限られた選択の中に収まるように自動翻訳したからだ。

 この機能は音声認識の仕様の一部なのだが、滑舌の悪い者には嫌われている。そのためダイブ型の体感型ゲームにおいて、いまだに音声入力だけではなく手動入力機能は残っていた。

 

 簡易キャラクターグラフィックとして表示されたありきたりなアンデッドの姿をみて、彼はふと思う。

 

 ユグドラシルのサービス終了から六年以上。劣悪な環境下で暮らす下層市民にとっての平均寿命がそう遠くない先にある今日この頃。良いことなんてユグドラシルをプレイしていた頃くらいしか思い出せない自分自身の姿そのもののようだ。なんて自虐を。

 

(俺は生きてるんじゃない。ただ死んでないだけだ。

 オーバーロードだったあの頃のほうがよっぽど活き活きしてたさ。

 たとえ生まれ変わったところで幸せになれるとは思えないし。

 あーあ……生まれ変わるくらいならあの頃に戻りたいなあ)

 

「……訂正。オーバーロードになりたい」

『情報を修正しています……誕生日は○月×日。生まれ変わらずに死後オーバーロードになりたい。以上の設定で宜しかったでしょうか?』

「……確定」

『確定した初期設定により、主人公特性<覚醒率UP>のパッシブスキルを取得しました』

 

<覚醒率UP>などというスキルはユグドラシルには無かった。

 少なくとも鈴木悟の知識にはない。

 <覚醒>というスキルや良性スタータス変化も思い浮かばない。

 おそらくこのフリーゲーム製作者が自作したスキルかなにかだろう。

 果たして有用なスキルかどうか……なんて考察したりはしない。

『あのころ』ならば、間違いなくしていただろう。初期設定毎に変わると予想される主人公特性が決まる法則を調べていたと断言できる。だが、いまの彼はもうそこまで情熱をもってゲームをプレイできなかった。

 

 鈴木悟の全盛期は、ユグドラシルのサービス終了とともに終わったのだ。

 

 今回はあくまで気分転換にプレイするのであって、ジャンルや作者さえ調べていないこのゲームをキッチリやりこみたい訳ではない。

 

『最後に――あなたの名前を教えてください』

「モモンガ」

 

 鈴木悟改めモモンガは、ゲーム内で名乗る主人公名を使い回しするプレイヤーであった。

 

『モモンガ様、で宜しかったでしょうか?』

「確定」

『……、ちょっとお聞きしますが、あなたはこのゲームは前情報無しの初プレイでしょうか?』

 

(……? それがどうかしたのか?)

 

 新たな選択肢ウィンドウ『はい』『いいえ』が現れる。「はい」と呟いても反応しない。

 どうやらこの入力は音声入力できず、手動入力しないといけないらしい。

 モモンガは腕を動かす感覚で操作できるアームポインタを『はい』の項目に合わせ、指先を動かす感覚でタッチして決定する。

 

『……、…………、………………、シークレットコマンドを認識。『至高の御方モード』が解禁されました。

 ゲームモードを選択してください』

「いや至高の御方ってなんだよ」

『至高の御方は至高の御方です。あなたが至高の御方なら至高の御方がなにかは分かるはず』

 

(いや至高の御方とかじゃないからわからんし)

 

 気になってしまうものの、いまは目前に展開されている選択肢ウィンドウの文字列を追う。

 ウィンドウには『通常モードプレイ』『至高の御方モードプレイ』『このゲームの特徴』『二つのゲームモードの違い』の四つの項目があった。

 

(ゲームモードの違いって難易度設定的なヤツじゃないのか? ホント何なんだよ至高の御方モードって……)

 

 胸の奥がむずむずする感覚。久しく感じていなかった好奇心への刺激だ。

 心拍数の上がる心臓をいったん落ち着かせるために、彼はゲームモードとは関わり無さそうな『このゲームの特徴』を選んだ。

 

『このゲームはダンジョン探索をメインにした半フリーシナリオのRPGです。ある程度自由に楽しんでいただくために、問題を解決する方法はだいたいにおいて二通り以上用意しています。

 あなたの好きな歩き方で、世界を踏破してください。

 なお、本作では時間がカウントされていきますが、ストーリーは時間が進むことを前提に作られていますので、初めてのかたでも全く急ぐ必要はありません。ごあんしんください』

 

(へえ、なかなか面白そうなじゃないか。

 にしてもこのシステムメッセージ、誰の声だ? 途中から機械音声じゃなくなったような気がするんだけど。

 自声の音声登録? どこかで聞いたことあるようなないような……)

 

 フリーゲームでボイスが取り入れられるとき、大抵は無味乾燥とした機械音声であるため、ちょっとした変化でもよく目立つ。

 ユグドラシル時代に同じギルドのメンバーだった『ぶくぶく茶釜』さんにお願いしたらボイスを用意してくれるだろうか? なんて夢想するものの。

 

(相手は声に関してはプロだしなぁ……個人的なワガママ頼みこむなんてダメだろうなー。最後にやりとりしたのは何年前だっけ?)

 

 なんてことを考えながら、次に『二つのゲームモードの違い』を選ぶモモンガ。

 

『通常モードは2004年10月28日に公開されております「イストワールver2.03」をユグドラシル・ツクールで再現したものとなっています。もちろん仕様の違いは多々ありますが、できるだけがんばって再現したつもりです

 ……、一方、至高の御方モードは最新の非公式パッチにより導入された、初プレイ時に規定の初期設定と名前を選択したときのみ解禁されるDGリメイク版専用の特別なモードです。初プレイ時限定ですので、一度通常モード選んでしまうと二度とプレイ出来ません』

 

 機会音声とそれに似せた台詞が入り混じる言葉の中に、初プレイ時限定。特別なモード。逃すと二度とプレイ出来ない……などといった抗いがたい言葉が含まれている。

 これでは専用ストーリーモードをやってくれと言っているようなもの。

 モモンガはツンツン刺激される好奇心に逆らわず、素直に至高の御方モードとやらでこのゲームをプレイすることにした。

 

『……っ、それではモモンガ様、どうぞこちらへ』

 

 システムメッセージが喋り終えると、大きな扉が闇から這い出るように現れた。と同時に自分の体……アバターが動かせるようになる。

 この扉を開けることでゲーム開始するのだろう。

 よくよく扉を見てみると中央に張り紙がされていて『この扉は千兆分の一の確率でさえ開かない。我々は千兆分の一の確率でさえ祝福されない』と書かれている。

 

(千兆分の一って……流石に大げさ過ぎないか?

 いや、導入部ならこれくらいの方がいいんだろうな。多分だけど。

 参考にしようっと)

 

 モモンガは抜け目のないフリーゲームクリエイターの視点で情報収集しつつ、ゲームを始めるべくその扉を開く。

 

 扉の中央に張られた張り紙は、当然ビリビリと真っ二つに破れた。

 

 直後、フラッシュとともに雷のSEが鳴り響く。

「うわっ」演出に驚いたモモンガであったが、どうやらそれ以上のドッキリ要素はないようだ。

 

(心臓に悪い演出はやめてくれよ、心臓麻痺で死ぬだろうが。プレイヤーが全員健康体だと思うなよ?)

 

 製作者に悪態をつきながらも彼はそのまま中に入っていく。

 扉の先には薄暗い通路が続いていた。

 周囲の状況がわかりづらかったものの、通路の先は個室で、プロジェクターから発した光が正面に壁があること示していた。

 

 これ以上進める場所はない。

 強制イベントでも始まるのだろう、とモモンガがあたりをつけていると、オープニングムービーらしきものが流れ始めた。

 といってもそれは動画ではなく、文字列が下から上へスクロールしていくという簡素なもの。

 個人製作のフリーゲームにありがちな演出だ。

 あるいは古き良き2D画面のレトロゲームの演出を今風に再現したものかもしれない。

 そこにはこう書かれていた。

 

 

 

 ----------------------------------

 

「私を愛して欲しい」

 

 とあなたは言った。

 

 あなたが最後に発した言葉は、私を表す力となった。

 

『私は愛する』

 

 と改めて誓った。

 

 しかし、私は一人となった。

 

 散りゆく木の葉は泥の海に沈み、そして何処かへ辿り着いた。

 

「きっとあなたは見失っている。だからあなたは辿り着けない。だってそうとしか考えられない。それ以外に理由はない。

 ――この地に栄光の証を刻もう」

 

 私はここにいますと、どこから見ても分かるように、私は我らが同胞と、未知なる地を征しに行った。

 

 ----------------------------------

 

 

 

 

 意味深な文章であったが、意図するものはモモンガにはわからない。

 わかるのは、木の葉はユグドラシルの暗喩であろうということと、異世界転移モノっぽいプロローグだということだけ。回顧主義の旧ユグドラシルプレイヤーが頻繁に使う演出である。

 モモンガはこれを「初見のプレイヤーには完全に理解させるつもりはなく、最後までクリアした後に改めてはじめからプレイすることでようやく詳細が察せる文章」だと捉えた。あるいはプレイヤーの興味を引くだけの文章で、深い意味などないかもしれない。

 

 いずれにしても、いつかわかる時が来るだろう。

 途中で投げ出さず、最後までゲームをプレイしていたらの話だが。

 

 シンプルなオープニングムービーが終わると重厚な扉が閉まるようなSEとともに景色が一変し、モモンガは洋館と思われる場所のエントランス中央に立っていた。

 転移魔法のちょっとした応用で再現される場面転換テクニックだ。モモンガもまた自作ゲームでこの演出を取り入れている。

 

 正面には大扉があり、左右に伸びる通路と二階に繋がる階段が目に付く。背後には玄関と思われる扉があった。

 足元は簡素ながら清潔なフローリング。一部に絨毯が敷かれているが廊下の途中で途切れている。

 上を見上げればシャンデリアがひとつ。天井はほどほどに高い。

 ゲームプレイヤーの嗜みとしてまずはぐるりと周囲を見まわしたが、特に気になるものはない。

 作りこみすぎず、されど不足させすぎずといった無難な作りである。

 強いて気になる点があるとすれば、絨毯を敷くならきっちり作りこめば良いのに、という程度。

 周囲を確認していると『隔離区域・ウル別館』という文字が右から左へ通り過ぎた。

 視界に文字がスクロールしていくだけの演出なのだが、ついつい目で追ってしまう。

 印象に残る演出だ、とモモンガは感心した。

 

(これいいな。あとでこの演出のやりかた調べとこう。使うかもしれないし)

 

 どう活かすかと悩んだ挙句、結局使わなさそうなことを考えつつ、モモンガは目線を手元に送る。

 果たして彼の手は剥きだしの骨となっていた。

 体がスケルトンになっている。

 

(いや、初期設定のキャラクターエディットでオーバーロード選んだんだから、たぶんオーバーロードだろ)

 

 なにせユグドラシル・ツクールならばユグドラシル時代には不可能だった「下位職なしでオーバーロードLv1のみ」というレベル配分も可能なのだ。

 ゲーム開始直後の種族が死の支配者だったとしても、どこもおかしくはない。

 手を握りこみ、そして開く動きに違和感はない。

 在りし日の思い出が脳裏によぎり、どこか懐かしく感じた。

 ステータスを確認するためにメニュー画面を開こうとしたが、その直前にパリンとガラスが割れる音がした。

 

 モモンガが手元から視界をあげると『シャルティア・ブラッドフォールン』が驚愕に目を見開き、口元に手を当てていた。漆黒のボールガウンを身に纏う姿はサンプルNPCとしてユグドラシル・ツクールに登録されたデフォルト設定そのものであった。

 頭上には『美少女』という名前表記が浮かんでいて、その足元には割れたグラスやボトルが散らばっている。

 

 ユグドラシル・ツクールではユグドラシルからの進化としてNPCの表情さえ作りこめるようになったのだが、その機能を使いこなしているのだろう、涙目で震えながらモモンガを見つめている様子を目の当たりにし、謎の罪悪感を抱くとともに見事なマクロ構成だと感心してしまう。

 

(にしてもシャルティアはNPCの中でも特に人気だなー。やばいくらい表情差分たくさん作られてるんだよな。作者もめんどくさいだろうに、よくここまでモーションと連動した表情変化のマクロ作れるもんだな。

 で? 最序盤から登場した『このゲームの』シャルティアはどんな配役だ?)

 

「も、もんが、さま?」

 

 機会音声ではないシャルティアの呟きにフルボイスかと耳を疑った。

 モモンガが想定したいるより大作なのかもしれない。

 明日も仕事なのに……なんて思っていると、彼の目の前に選択肢ウィンドウが出てきた。

『首を縦に振る』『首を横に振る』『首を傾げる』の三択。透過ウィンドウに設定されているのかウィンドウ越しに背景が見えた。

 モモンガは無難な選択肢として首を縦に振った。

 

「モ、モモンガさまが御帰りに! モモンガさまがっ! あああああっ!」

 

 シャルティアはこれこそが嬉しい悲鳴だといわんばかりのお手本のような歓声をあげ、エントランス正面扉を開け放ち叫んだ。

 

「もももモモンガ様のおぉぉぉぉおおおおおお!!!

 おなぁぁぁりぃぃぃいいいいぃぃぃぃいいいいいいい!!!」

 

 ガタガタガタッ! と室内から椅子が倒れるSE。直後に『執事』『悪魔』『男の子』『女の子』『巨大昆虫』などといった名前表記を浮かべる者達がどたばたやってきて、ある者は漢泣きし、ある者は号泣し、ある者は平伏し、ある者は抱きついてきてと大混乱に陥った。

 

(うん……えーと……なんだこれ?)

 

 きっと。

 

 きっとこれは、主人公と彼ら彼女らとの、感動の再会を表すイベントシーンなのだろう。

 

 けれども、感化されようにも開幕からフルスロットルすぎて展開についていけない。

 

 モモンガはなずがまま抵抗一つできず、そのどたばたを受け入れることしかできなかった。

 

 

 




 モモンガさん=いつものゲームのつもり。
 ナザリック勢=待ちに待った主の帰還。
 ……という一風変わった設定から始まるオバロ二次を書きたいがために捏造を始めとした前フリ長文を書く必要があるところにオーバーロード二次書くむつかしさを感じました(こなみ)

 イストワールのタグに釣られた方への処方箋=超次元ゲイム ネプテューヌの登場キャラクターではありません。ダンジョン探索型のフリーRPGのほうのイストワールです。
 ですが、レーベン君(仮名)を始めとした主人公系と愉快な仲間たちは出てきません(重要)
 二次創作オバロストーリーに、イストワールの舞台設定、世界観などを差し込もうとしている――というイメージです。

 そういうタイプのクロスオーバーですのでよしなによろしくお願いします。


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