悪逆皇帝と騎士   作:beatkun3

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9話 再会

 軍の本部で、クロヴィスは現在の戦況を確認していた。前面に置かれたパネルには、新宿ゲットーの地図と自軍のKMFの状況が示されていた。

 

「一般のイレブンに混じって、テロリストどもが多少の抵抗をしているようですが、我が軍の圧倒的優位は変わりません。やはりラウンズの力など使うまでもありませんでしたな」

 

「当然だ。それより、毒ガスのカプセルはどうなっている?」

 

「はっ、現在中身(・・)を捜索中です。見つかり次第、また連絡を」

 

「よし。全軍、そのまま殲滅を続けろ!」

 

 クロヴィスは、自軍の勝利を疑うことなくそう指示を出したのだった。戦場のどこかで、反撃の狼煙が上がったことも知らず…

 

 

 

 

「なぁ、扇ぃ!本当に得体のしれないやつの言うことなんて信じていいのかよ!この機体だって罠かもしれないだろ!?」

 

「どうせ何もしなければ俺たちは終わっちまう!それに、今の状況であいつらが罠なんて仕掛けるはずがない!彼を信じよう!」

 

 メンバーからの反対の声もあったが、レジスタンスのリーダーである扇は、謎の声に従うことに決めた。先程の戦闘や、このサザーランドを見るに、彼に従った方がこの戦いに勝てそうだったからである。何もせずに終わるなら、何かを為して終わりたい。扇はそう考えていた。

 

「…よし、10分経ったな。それでは、君たちに次の指示を与える!」

 

 聞こえてきた謎の声の正体に疑念を抱きながらも、レジスタンスは全員リーダーに倣い、謎の声に従うことにした。しかし、次の瞬間に聞こえてきた指示の内容に耳を疑うことになるのだった。

 

 

 

 

(よし、テロリストどもが俺の指示の通りに動いてくれるなら、障害はクリアしたも同然。この勝負、勝てる…!)

 

 ルルーシュは廃ビルに隠れながら、そう考えていた。自分からは相手のKMFの位置が全て分かるし、そこから敵の動きを推測することも容易で、ルルーシュは正にストラテジーゲームのように相手を追い詰めようとしていた。

 

「…よし、10分経ったな。それでは、君たちに次の指示を与える!」

 

「P2、P3は今から23秒後に、目の前の壁に向かって銃を乱射しろ!そこに敵が来る!」

 

「なっ!そんなの信じられるわけないだろ!」

 

 ルルーシュの出した指示に、当然レジスタンスからは反対の声が届いてきた。しかし、それを遮ったのはまたしてもリーダーである扇だった。

 

「構えろ!」

 

「扇!でもよぉ…」

 

「俺は彼に乗る、そう決めたんだ」

 

「ちっ、分かったよ。おい、お前!嘘だったら承知しねぇからな!」

 

「おい、玉城!」

 

 レジスタンスの中でも特にうるさかった男。「玉城」と言うらしい。ルルーシュは、彼のことが嫌いになった。一方、扇のについては、「話がわかる奴もいる」と、少し評価を上げていた。

 

「そろそろ時間だぞ!5秒前!4、3、2、1、撃て!」

 

 ルルーシュの指示に合わせて、レジスタンスの指示された面々は、目の前の壁に銃弾を放った。すると、その向こうで敵のサザーランドが爆発する音が聞こえて、レジスタンスたちは作戦の成功を悟った。

 

「嘘だろ…」「凄い…」

 

 そういった声が流れる中で、ルルーシュは冷静に次の指示を出す。最初の撃破で、今までは半信半疑だったレジスタンスも素直にその指示に従うようになり、結果、相手のサザーランドは軒並み壊滅状態に陥り、レジスタンスたちは殆ど無傷でいた。今この瞬間、戦況はルルーシュの率いるレジスタンスに完全に傾いたのだった。

 

 

 

 

 一方、ブリタニア軍の本部では、将軍や参謀達が、次々と不利になっていく戦況を見て顔を青ざめさせていた。

 

「ラスゴー隊もやられました!」「他から早く応援を回せ!」「ダメです!どこもテロリストどもに攻撃されていて!もう動かせる隊もありません!」「何か策はないのか!」

 

 眼前で行われる、まるで意味を持たない戦術会議に業を煮やし、クロヴィスは座っていた豪華絢爛な椅子から勢いよく立ち上がると、大声で叱責を飛ばした。

 

「なんたる失態か!テロリストどもにいいようにやられおって!」

 

 そう言いながらクロヴィスは、新宿ゲットーの地図が映し出されている画面の1点に指を置き、こう指示を出した。

 

「どうせこの場所にテロリストどもがいるのだ!包囲を説き、残る全軍をここに向かわせろ!」

 

「しかし殿下!それでは本陣の守りも…」

 

「この場所までテロリストが来ることなどない!いいから早く機体を回せ!」

 

 クロヴィスからの突然の指示に混乱を隠せない軍のトップ達だったが、クロヴィスの命令に逆らうことなどできず、結局その命令通りに部隊を動かした。しかし、テロリストの罠にはめられてしまい、その場所に集めていた全てのKMFが反応を消失させてしまった。

 

 それを見た本部の人間は皆顔を青ざめさせたが、直後に入ってきた通信に驚きを隠せなかった。

 

「は〜い!殿下、まだお困りですか?」

 

「貴様!ロイド!特派の分際で再び殿下に何の用だ!」

 

 通信の相手は、先程スザクを救った「ロイド」という人物だった。クロヴィス相手にも、人をおちょくるような口調と声色で話しかけていた。先程の失態と合わせて軍部の者達の顔はもう真っ赤だった。

 

「よい!それよりもロイド!貴様の"おもちゃ"であれば、この戦況を逆転できるのか!」

 

「お任せください、殿下」

 

 実は先程、1度特派の申し出をクロヴィスは断っていた。その手前、ロイド率いる特派の連中に頼むのは気が進まなかったが、それよりも今、"視察"という形でエリア11に来ているラウンズにこの失態がバレ、本国に報告されるよりはマシだと思った。

 

 しかし、ロイドに指示を出した後入ってきた部下の言葉で、クロヴィスは自身の対応が遅かったことを知った。

 

「ラウンズ、アールストレイム(・・・・・・・・)卿が、我が軍のサザーランドで勝手に戦場に出てしまわれました!申し訳ありません!我々では止める権利もなく…!」

 

 

 

 

「クロヴィス殿下からの許可は下りたよ。行けるかい?スザク君」

 

「はい。でも、どうして僕なんかが…」

 

「まあまあ、そういったのはまた後で」

 

 スザクは、パイロットスーツに着替えていた。手には、先程渡された認証キー。名前は「Z-01 ランスロット」と言い、世界で唯一の第7世代KMFということらしかった。しかし、スザクにはそんなことは些細なことだった。

 

「作戦内容を確認します。作戦内容は、敵戦力の無力化、および排除です。」

 

 作戦を心の中で復唱するのと同時にスザクは思った。

 

(この力さえあれば、この戦いを止められる!誰も傷つかずに済む!)

 

「共同開発兵器、Z-01ランスロット、発進!」

 

 そして、スザクが戦場に降り立った時、全てのピースが揃うのだった。

 

 

 

 

 ルルーシュは、手の上でチェスの駒を転がしながら、戦場の様子を見ていた。自分の指示で動く駒が、相手の駒を次々と倒していく。自分の思い描いたシナリオが盤上に現れるのを見て、ルルーシュはほくそ笑んでいた。今戦場に残る敵機は、最初に抱かずに比べると雀の涙ほどになっていた。

 

 それゆえに、ルルーシュは油断していた。これで勝ったと。しかし、現実はゲームのようには甘くなかった。

 

「助けてくれ!こちらP3!今、見たことも無いKMFが!うわぁぁぁ!」

 

「くそ!こちらP5!なんなんだこいつは!早すぎる!実弾も弾かれた!」

 

「一体何が起こっている!おい!」

 

 ルルーシュには訳がわからなかった。もうこの勝負は自分の勝ちだと思っていたし、今更どうこうなるなんて考えてもいなかった。それ故に対応が遅れてしまった。ルルーシュが気付いた時には、目の前に白いKMFがその姿をさらしていたのだった。ルルーシュは知る由もないが、その機体はランスロットであり、乗っているパイロットはスザクだった。

 

 戦場で、親友は再び相対するのだった。

 

「なんなんだ!お前は!」

 

 ルルーシュは、乗っているサザーランドの武装で応戦しようとするが、実弾は腕のシールドのようなものに弾かれてしまった。

 

 ルルーシュはKMFの操縦経験などなかった。相手のKMFは殴りかかってきたが、その一撃に、ルルーシュは反応できなかった。しかし、相手の拳がルルーシュにあたる直前、片腕のグラスコーがそれを防いだ。

 

「逃げてください!早く!」

 

 それを見たルルーシュは、迅速にその場を抜け出した。崩れていか廃ビルを後ろ目に見ながら、ルルーシュはこれからのことを考えるのだった。しかし、安心したのもつかの間、ルルーシュの背後からランスロットが迫ってきていた。それも驚異的なスピードであり、このままではすぐにルルーシュは追いつかれてしまう。

 

「なんなんだあの化け物は!」

 

 このままでは追いつかれる。そう思ってルルーシュが後ろ向きに銃を構えようとしたその時、ランスロットは突然空中に飛び上がると、崩れた建物から落ちてくる女性と子供を助けたのだった。それを見たルルーシュは、一気に力が抜けた。

 

「なんだアイツは…戦闘の最中に人助けだと?ふん、まぁいい。おかげで俺は逃げられるんだからな」

 

 しかし、ルルーシュはまたしても戦場で油断してしまった。そして、その油断が一瞬の命取りとなった。

 

 ルルーシュが気を緩めた瞬間、突如として近づいてきたサザーランドに、ルルーシュの乗るサザーランドは馬乗りに倒されてしまったのだった。

 

 

 

 

 時は少し遡り、ルルーシュが廃ビルを脱出した直後。ルルーシュの乗るサザーランドを背後から追跡していたスザクだったが、目の前に女性と、赤子が落ちてくるのを見て、追跡を続けるのか、それとも助かるのか、一瞬の戸惑いが浮かんでしまった。ちょうどその時、ランスロットの通信に、若い女性の声が聞こえた。

 

「あなたはその人たちを助けてあげて。私が奴を捕まえる」

 

「分かりました!お願いします!」

 

 そうしてスザクは、人命救助に当たったのだった。

 

 

 

 

(くそ!油断した!)

 

 ルルーシュは今の状況をどうやって打破しようか考えていた。しかし、どれだけ必死に考えようとも、自身が動けない時点で詰みのようなものだった。ルルーシュに残された手段は、相手の目を直接見ることで命令を下すことしか無かったが、テロリストだとバレている今の状況で怪しまれないように相手に顔を見せるのは無謀のような気がした。

 

 ルルーシュがピンチに焦っていると、頭上のサザーランドのコクピットが開き、中から1人の少女が姿を現した。そして、その姿を見たルルーシュは、刹那のうちに思考を止め、その姿に見入ることになってしまった。

 

「…アーニャなのか…?」

 

 そこにいた少女を見て、かつて共に過ごした初恋の少女の姿をそこに幻視したルルーシュは、そう小さくつぶやきを漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやくこの小説の本題を始めることができそうで、ホッとしております。
今まで書いてきたどの話よりも構想に悩んだ話でした。ついに出会ったルルーシュとアーニャ、2人の今後の関係にご期待ください!
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