忙しさのピークが過ぎたので、今週の土曜日あたりからまた連載再開していきたいと思います!よろしくお願いします!
「…アーニャなのか…?」
ルルーシュは思わずそう小さく呟いてしまう。最後に会ったのは8年前で、ルルーシュ自身もアーニャも小さかったため、記憶を頼りにするのは少々不安な気もしたが、それでもルルーシュの目の前にいる少女は間違いなくアーニャであるとルルーシュは思った。
ルルーシュは思わず乗っていたサザーランドのコクピットから飛び出した。普段の冷静なルルーシュであったなら、こんな突発的な行動は取らなかっただろう。しかし、ルルーシュは今、平静とはかけ離れた精神状態の中にいた。
「アーニャ!」
ルルーシュは、コクピットから飛び出しながら目の前の少女にそう呼びかけた。そこに策などはなく、8年前から続く純粋な想いがあった。そして、目の前の少女は、ルルーシュの姿を見てその動きを止めた。
「…ルルーシュ?」
そのつぶやきがルルーシュの耳に入った瞬間、ルルーシュは思わずアーニャの元へと駆け寄ろうとした。しかし、よほど焦っていたのか、はたまた慣れないKMFの操縦で疲れていたのか、ルルーシュはサザーランドの機体の上で足を滑らせてしまう。ルルーシュは、滑り落ちる自分の体をまるで他人事のように考えていた。目の前にアーニャがいるのも、何かの夢なのかもしれない。そうも考えた。
そして、ルルーシュは目を閉じ、浮遊感に身を投げ出した。しかし、地面にその体がぶつかる直前、何かに支えられるようにルルーシュの落下が止まった。何事かとルルーシュが目を開けると、目の前にはアーニャの顔があった。つまり、ルルーシュはお姫様抱っこをされていた。
「なっ!おい!離せ!」
ルルーシュは恥ずかしさのあまり、ここが敵地だということも忘れて叫んでしまう。アーニャはルルーシュを地面に立たせると、そのままルルーシュに抱きついた。
「ルルーシュ!本当にルルーシュ!?」
「あぁ!俺だよ!アーニャ!」
「ルルーシュ!」
ルルーシュとアーニャは、互いの名を呼びあうと、その存在を確認するかのように強く抱き合った。2人は、唐突な再会に涙していた。それは、別れの時とは違う、喜びの涙だった。
ー
「本当にアーニャなんだな?」
「うん。ルルーシュ」
ルルーシュとアーニャはいまだに抱き合っていた。まるでもう離さないと言っているかのように、2人はその腕を緩めようとはしなかった。しかし、その均衡を破ったのはルルーシュだった。
(む、胸が!いや、胸…なのか?)
ルルーシュは、押し付けられたアーニャの胸を意識してしまっていた。しかし、アーニャは良く言えば発展途上、悪く言えば貧しかった。そのため、ルルーシュは自分の感じているものが本当に胸であるのか判断がつかなかった。
そんな不埒な考えを悟ったのだろうか、アーニャはルルーシュから手を離すと、そのまま体を後ろへと引き、胸を隠しながらこう言った。
「私にも、ある…」
わずかに赤面してみせるアーニャの様子に、ルルーシュはもうノックダウン寸前だった。思わず鼻を抑えたルルーシュだったが、あらまめてアーニャに目を向けた時、その格好に驚いた。なぜなら、アーニャがサザーランドから出てきたときに、軍属であるだろうことはルルーシュにもわかっていた。まして、自分がそうなるように望んだからだ。しかし、これは想定外だった。
「アーニャ…、そのコートは?」
アーニャは、通常の軍服の上に、装飾の施されたピンクのコートを羽織っていた。彼女の髪の色と同じ色で、とてもよく似合っていたが、ルルーシュが着目したのはその存在自体にである。
なぜなら、色付きのコートの着用を許されているのはブリタニア帝国の上位12名の騎士「ナイト・オブ・ラウンズ」のみであったからだ。そして、ラウンズが守るのは、ルルーシュがこの世で最も憎む男。第98代ブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアであったからだ。
故に、ルルーシュは質問した。返答次第によっては、彼女に謎の力を行使することを考えて。しかし、アーニャの返した言葉は、ルルーシュの予想を上回るものだった。
「あぁ、これ?ジェレミアがなっておけって。ルルーシュが生きていたら必ず役に立つって言ってたから」
「つまり、それは俺のためということか?」
「うん」
ルルーシュは驚いた。アーニャが自分のためにラウンズという、帝国では最上級に位置する地位を保持していたこと。そして、ジェレミアがアーニャにそれを進めたことである。ジェレミアとルルーシュはそこまで面識があるわけではなかったので、なおさらだった。
「アーニャ、ジェレミアが協力してくれたのか?」
「結構。これもジェレミアの。私の専用機はまだできてないから…」
ルルーシュは、ジェレミアの評価を上げると同時に、警戒心を増した。ジェレミアがロリコンで無いことを願うばかりであった。もしそうであったなら、ルルーシュはジェレミアを処理しなければならないからである。
「アーニャ、ジェレミアと話がしたい。あとで連絡を取ってもらえないか?」
「?もちろん」
ルルーシュのどこか鬼気迫る様子を不思議に思いながらも、アーニャはそれを了承した。
それから2人は色んなことを話した。今までの生活を互いに言い合って、笑ったり、ときには泣いたりもした。ここが戦場だということを忘れるほど、2人は話を続けた。今までの会えなかった時間を埋めるように…
「アーニャ」
「何?」
「俺はこれから、ブリタニアを潰す。俺に、協力してくれないか?俺には、君が必要なんだ。」
「良いよ。私もルルーシュと一緒に戦う。だって私は、あなたの"騎士"だから」
ルルーシュは、まっすぐアーニャを見つめた。アーニャは、ルルーシュの顔を見た。2人とも頬が赤みを帯びていた。影が1つになった。甘い味がした。
ー
ルルーシュは、ブリタニア軍の本部に来ていた。
「お久しぶりです、兄上」
「貴様…いったい何者だ!」
「覚えてませんか?小さい頃チェスをしましたよね?アリエスの離宮で。全て僕の勝ちでした。」
「まさか、お前は!」
ルルーシュは、クロヴィスに銃を向けたまま不敵に微笑むのだった。