また、今週は少し忙しいため、更新時間が遅れたり、更新できない日ができるかもしれません。極力ないように心がけますが、ご理解いただけると嬉しいです。
それでは、お楽しみください!
6話 平穏の崩れ
薄暗いバーの店内。2人の男が机を挟んで向かい合って座っている。1人は貴族の男であり、余裕の表情で爪とぎをしている。一方、向かい合うのはこのバーの主人らしき男で、冷や汗を流しながら机に向かっている。机の上にはチェス盤とチェスクロックがあり、片方のチェスクロックの残り時間だけが刻一刻と減っていく。バーの主人が諦めかけたその時、バーの扉が大きく開き、そこに光が差し込んだ。
「やっと来てくれたのか!」
バーの主人が心底安堵したかのような表情で、今しがた入ってきた青年に声をかけた。
「状況はかなり悪いようですね」
「あぁ…。だが、君なら勝てるだろう…?」
「ええ、任せてください。報酬はいつもの所へ」
青年は、バーの主人との会話を終えると、先程までバーの主人が座っていた場所に腰掛けた。盤面はもう負けといってもいいほどに壊滅的であった。青年が席に着いた途端、その青年がキングの駒を取るのを見て、貴族の男は青年を嘲笑うかのような口調で話しかけた。
「貴様、キングから動くだと?」
「王が動かないと、民はついてこないからな」
そうして青年は、キングの駒を動かした。
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「ルルーシュ!今の試合8分37秒だって!今までの最短記録更新だな!」
「相手が弱かっただけだよ。貴族なんて、権力を傘にした無能なのさ」
今しがたまで、チェスを打っていた青年に話しかける者の名は「リヴァル」。彼は「アッシュフォード学園」に通うブリタニア人の学生であり、学生服を身にまとっている。
であれば、先程までチェスを打っていた青年もまた学生であることがわかるだろう。
彼の名は「ルルーシュ・ランペルージ」。かつて、「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」として生きていた少年、その成長した姿であった。
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ルルーシュとリヴァルは、昼休みに学校を抜け出してチェスの代打ちに来ていた為、急いで学校に戻る必要があった。リヴァルの運転するバイクのサイドカーに乗ろうとしたその時、ビルの壁面に設置されていた大型テレビの映像が突然切り替わり、1人の男が姿を現した。
男の名は「クロヴィス・ラ・ブリタニア」。ブリタニア帝国第3皇子であり、ルルーシュの腹違いの兄。そして、現在の「エリア11」総督であった。
クロヴィスは悲痛そうな表情を見せると、その口を開いた。曰く、「先日の「イレブン」の反乱によって失われた8名の命に追悼の意を」ということだった。
ルルーシュは、その姿を忌々しげに睨むと、リヴァルを促してバイクを発進させた。
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ルルーシュとリヴァルが学校に向かう途中、高速道路を走っていると、後ろから大型のトラックが迫ってきた。明らかに法的速度を無視した速度での運転であり、このまま進めば、ルルーシュとリヴァルの乗るバイクなど原型を止めることなく潰されてしまうであろうことが目に見えていた。
「おいおい!これはヤバイって!」
リヴァルは必死に速度を上げて追いつかれないようにするが、小型のバイクと大型のトラックでは馬力が違う為、その差は縮まっていく一方だった。
ルルーシュは考え事をしていた為、リヴァルの焦った声を聞き、現在の状況を把握したが、今のルルーシュにできるのは、バイクとトラックがぶつからないように祈る事だけだった。
道路が分岐に差し掛かった時、トラックはリヴァルのバイクを避けるように、立ち入り禁止の道路へと進んでいき、そのまま壁に当たって動きを止めてしまった。その音を聞きつけてか、周りには多くの野次馬が集まって来ていたが、誰1人としてトラックの運転手を助けようとする者はなく、それどころかその様子を携帯で撮るなどして、事故そのものを面白おかしく見ている者もいた。
「誰もトラックの運転手を助けようとする奴はいないのか…!」
ルルーシュは悪態1つつくと、何かを訴えるリヴァルの声を無視して、トラックに駆け寄った。そして、トラックに手を触れた瞬間、誰かの声のようなものを聞いた気がした。
「中の人、大丈夫ですか!」
ルルーシュが必死に呼びかけるが、トラックの運転席からは返事がなく、ルルーシュはどうにかして運転席に行けないかと、トラックの荷台の部分に乗り込んだ。そしてその瞬間、突然トラックがバックをし、凄まじいスピードで再び走り出した。ルルーシュの制止を求める声も虚しく、トラックはそのまま何処へと走り出してしまった。
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一方その頃、クロヴィスは会見を終え、パーティーへと戻っていた。周りの貴族たちがクロヴィスのことを賞賛している時、1人の小太りした男がクロヴィスの元へ走り寄って来た。男がクロヴィスの耳に何事かを囁くと、クロヴィスは焦ったかのように男に向かって声を荒げた。
「何?"アレ"を載せたトラックが、テロリストどもに盗まれただと!?」
「はい、そのように…」
「警察への説明はどうなっている!」
「それが、"アレ"の中身を民間人に知られるわけにはいかず…」
「ッ!もういい!親衛隊を出せ!」
「しかし、今このエリア11には「ラウンズ」の方が…」
「あんな"小娘"など放っておけ!本国への説明は後からどうとでもできる!」
クロヴィスはそう言い放つと、管制室へと足を急いだ。
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舞台は再びルルーシュへと移り変わる。トラックで運ばれている間、ルルーシュは考えを巡らせていた。先程、トラックの運転席の方から、1人の女がKMFに乗ってトラックの荷台から降りていったのを見て、ルルーシュは、このトラックがテロリストのものであることを知った。何故なら、このKMF、通称「ナイトメア」は、ブリタニア軍を除けば、エリア11の反ブリタニア勢力しか保有していないものであるからだ。
外からは、明らかに車ではないものの駆動音まで聞こえて来て、先程は銃声も響いた。その際にトラックが揺れたことから、このトラックには何かある。そう考えたルルーシュは、トラックの中を自身の携帯で照らした。今まで気付かなかったが、ルルーシュがあるトラックの荷台には、大きな丸い機械のようなものが積み込まれていた。
ルルーシュが、その球体について考えをめぐらそうとした時、トラックに大きな衝撃が走ったかと思うと、トラックはその動きを停止させた。
衝撃のせいだろうか、トラックの荷台の側面が開いた。その時、向こう側の通路から1人のブリタニア軍の軍人が姿を現した。その軍人はフルフェイスのヘルメットを装備しており、暗闇の中でも活動できるようだった。その軍人は、ルルーシュの乗るトラックの荷台の中に入り、隠れているルルーシュを見つけると、ルルーシュに向けて蹴りを放った。
咄嗟の判断でその蹴りを腕で防ぐことに成功したルルーシュだったが、衝撃までも防ぐことはできなかったようで、ルルーシュの身体は宙を舞った。
「もうこれ以上罪を重ねるな!」
軍人はルルーシュに向けてそう言った。
「罪を重ねるなだと?そもそも、最初に罪を犯したのはブリタニアではないのか!」
ルルーシュは蹴り飛ばされた状態から立ち上がると、暗闇からその姿を晒しながら軍人に向けて声を荒げた。すると、その姿を見た軍人は何かに驚いたかのように動きを止めると、フルフェイスのヘルメットを外しながらルルーシュに向けて話しかけた。
「ルルーシュかい?良かった、無事だったんだね!」
「お前…スザクか!?」
それは、7年前に別れたルルーシュの親友、枢木スザクだった。
こうして、2人が再会したところから、新たな物語の幕が開くのだった。
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「…様、どうやらクロヴィス殿下が何やら始められるようですが…」
「…私は何も言われてない。それに、何かあればジェレミアがなんとかするはず」
ルルーシュたちとは別のところでも、物語は動こうとしていた…