悪逆皇帝と騎士   作:beatkun3

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7話 王の力

 ルルーシュとスザクの再会。それは、2人にとって大きな意味を持っていた。

 

 スザクには、7年前に別れてから安否がわからなくなっていた親友と再会できたことを純粋に喜ぶ気持ちがあった。しかし、ルルーシュには別の気持ちも存在していた。即ち、日本人であったスザクがブリタニアの軍人としてこの場所にいることに驚愕する気持ちであった。

 

「お前…ブリタニア軍に入ったのか」

 

「あぁ、僕の理想を叶えるために」

 

 ルルーシュの問いに、スザクは「理想」と答えた。それについてルルーシュが聞こうとすると、先にスザクが口を開いた。

 

「ルルーシュ、ところで君はこんなところで何を?まさか君がテロリスト…」

 

「違う!俺は巻き込まれただけだ!テロリストとは何の関係もない!」

 

「そうか、良かった。」

 

 スザクは、安堵した表情を見せると、すぐに顔を引き締めて、トラックの荷台に積んであった球状の物体に指をさしてこう言った。

 

「それよりも、早くここから離れないと!ここは危険だ!その中には、テロリストが軍から奪った猛毒のガスが入っているんだ!」

 

 スザクの言葉を聞いたルルーシュは、スザクに聞きたいことよりも自身の安全を優先し、スザクと一緒にその場を離れようとした。ちょうどその時、スザクが「毒ガス」と言っていた球体が開かれた。

 

 スザクは自身の被っていたマスクをルルーシュの顔に押し付けると、そのままルルーシュと一緒にトラックの荷台の床に倒れこんだ。ルルーシュはスザクの咄嗟の行動に反応しきることができず、受け身も取れていないようであった。痛みに耐えながら顔を上げようとすると、その上には目を見開くスザクの顔が見えた。

 

「おい、スザク。一体何が…」

 

 そして、ルルーシュもその光景を見て驚きを隠せなかった。球体の中から出てきたのは毒ガスなどではなく、拘束服で全身を固定された、緑の髪の女だった。

 

 

 

 

「おい、答えろよスザク!これが毒ガスか!?」

 

「違う!僕は本当に毒ガスと!」

 

 ルルーシュとスザクは、女をトラックの荷台から降ろし、拘束服の点検をしながらこの女について話をしていた。ルルーシュがスザクに事の真意を問いただそうとしたその時、先程スザクがやってきた通路から、小規模な歩兵部隊が現れた。スザクはその部隊の先頭にいた男に近づくと、その男に向けて敬礼をした。どうやら、スザクよりも上の階級の者らしかった。

 

 その男は、軍服の内側から出した自身の銃をスザクに手渡すと、ルルーシュに聞こえるほどの声でスザクに命令した。

 

「枢木一等兵、こいつであのブリタニア人の学生を殺せ」

 

「そんな!彼は違います!テロリストではありません!」

 

「ならん!君がその手で殺すのだ」

 

 ルルーシュにとって、スザクに銃が渡されようとしている時間は、地獄のように感じられた。親友の手で、何も残せないまま殺されてしまう。そんな最悪の未来を想像してしまい、ルルーシュはスザクの事を直視することができなかった。しかし、次のスザクの一言にルルーシュは驚き、スザクへと顔を向けた。

 

「僕には、民間人を打つことなどできません。それに彼は友達で…」

 

 スザクの答えに、ルルーシュが安堵した一瞬の後、スザクの上官とみられる男はスザクに渡そうとしていた銃を自分の手で構え直すと、

 

「では君が先に死ね」

 

 と、スザクの脇腹を銃で撃った。

 

「スザァァァク!」

 

 その光景を見たルルーシュは思わず叫ぶが、スザクを撃った男はそのまま銃をルルーシュの方へと向けた。銃の引き金に指がかけられ、ルルーシュが思わず目を背けたまさにその時、突然トラックが爆発した。ルルーシュは、その混乱に乗じて、女を引きずるようにして、地下道の中を走っていったのだった。

 

 

 

 

「クロヴィス殿下、親衛隊から報告が」

 

「内容は」

 

「それが、テロリストを逃してしまったとのことで、これから捜索をするようです」

 

「そうか…」

 

 テロリストに関する報告を聞き、クロヴィスは何か思案するような顔になると、近くに控えていたバトレーに現在の状況を聞いた。

 

「バトレー!地上に出ているテロリストの活動状況は!」

 

「新宿ゲットーにて、未だに反乱を続けているとのことです」

 

「軍からアレを盗み出したテロリストどもが逃げた場所も新宿ゲットーだったな…。」

 

 そういってクロヴィスは少しした後、立ち上がってこう命令を下した。即ち、「新宿ゲットーを壊滅せよ!」と。

 

 

 

 

 ルルーシュは、トラックの爆発に乗じて新宿ゲットーの地下道を歩いていた。幸いにも後ろからあったが来る気配はなかったが、ルルーシュは急いで逃げていた。元々の体力のなさが災いし、しかも女を引きずらようにしながら逃げてきたため、もうルルーシュの体力も限界に近かった。

 

 ルルーシュは女を投げるようにして放ると、壁に寄りかからながらも女に向かって怒鳴り声をあげた。

 

「一体お前は何なんだ!お前のせいで…俺は…スザクまでも…!」

 

 しかし、1度怒鳴ったことで逆に冷静になったのか、ルルーシュは再び女を立たせると、また地下道を歩き始めた。

 

 そうして進んでいくと、目の前に階段が見えた。ルルーシュは階段の陰に身を潜めると、少し頭を出して周囲の様子を確認した。するとその時、正面から光が差し込んだかと思うと、辺りに銃声が鳴り響いた。

 

 ルルーシュは突然の出来事に驚いたが、女の頭を下げさせると、自分もすぐに頭を階段に隠して銃声が止むのを待った。

 

 銃声が止んだ後、再びルルーシュが階段から頭を出して、銃声の発生源を覗き見ると、そこにいたのは先程スザクを撃った男と、その男が率いる部隊だった。さらにその周囲を見渡せば、イレブンとみられる死体がそこかしこに転がっており、先程の銃声の犠牲者であるのだと知った。

 

 すると、どこからか赤ん坊の泣く声が聞こえた。その声のする方をルルーシュが見ようとした時、それよりも早く銃声が鳴り響き、赤ん坊の声が聞こえなくなった。ルルーシュが別のルートからの脱出を試みようとしたその時、ルルーシュのポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 ルルーシュは、階段に隠れていたところを発見され、階段から引きずり出されていた。ここはどこかの倉庫らしく、床には先程撃たれたイレブンの死体が転がっている。この先の自分の未来を想像したルルーシュは、自らの運命を強く呪った。

 

(俺はここで終わるのか…!何もすることができず、こんなところで…!ごめん!ナナリー!)

 

 ルルーシュが死を予見し、銃弾がルルーシュに向けて放たれた瞬間、それまで兵士たちに捕らえられ、抵抗を続けていた女が勢いよくルルーシュの前に飛び出してきたかと思うと、

 

「殺すな!」

 

 と言いながら両腕を広げ、ルルーシュを守るかのような体勢になった。しかし、その叫びも虚しく、放たれた弾丸は女の額をまっすぐ打ち抜き、女はそのまま地に倒れ伏してしまった。

 

 ルルーシュ自身もまた、目の前で人が死んだということに驚き、思わず膝を地面についてしまった。ルルーシュの心は折れ、もう立ち上がることさえできないようだった。

 

 スザクを撃った男が他の兵士たちに命令を下し、再び銃の照準がルルーシュへと向けられた瞬間、突然、先程額を穿たれ死んだと思われていた女の手が動き、ルルーシュの手首に触れた。次の瞬間、ルルーシュの意識は今ある場所を離れ、別の場所へと移ったのだった。

 

 

 

 

「力が欲しいか?ならば、契約をしてもらう」

 

 女は言った。

 

「お前に力をやる代わりに、私の願いを1つ叶えてもらおう」

 

「王の力はお前を孤独にする。それでも望むか?力を」

 

 ルルーシュはそれに答えた。

 

「いいだろう!結ぶぞ、その契約!」

 

「俺に、その力をよこせ!」

 

 

 

 

 ルルーシュの意識は、再び倉庫へと戻った。未だ自分の体から血が流れている様子も、痛みがある様子もないことから、ルルーシュは今の会話が、この世の理から外れた力で行われていたことを知った。自身にも、その力の一端が与えられたことを本能で察したルルーシュは、立ち上がり、自分を撃てと命じた男の目を見据えた。

 

「なぁ、ブリタニアを憎むブリタニア人は、どう生きればいい?」

 

「貴様!」

 

 男は銃を構え直し、ルルーシュを撃とうとしたが、ルルーシュの先程までとは違う雰囲気を少し不審に思い、撃つのをためらった。

 

「どうした?撃たないのか?それとも、今更気づいたのか?撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだと!」

 

 そうルルーシュが言い、左目を覆っていた手をどかすと、その下にあった左目から、何かの模様のようなものが姿を現した。男には見えなかったが、ルルーシュの異様な雰囲気を感じたり、怖気付いたのか、少しずつ後ろに後ずさりしていた。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる…貴様達は、死ね!」

 

 ルルーシュがそう命じると、ルルーシュの目の前にいた部隊の男たちは皆、ルルーシュに向けて構えていた銃を自分の首筋に構え直すと、

 

「Yes,your highness!」

 

 と高らかに宣言すると、一斉に銃の引き金を引き、全員がその場に倒れ伏した。

 

 ルルーシュはその光景を目にし、一瞬だったが動きを止めた。しかし、顔を歪めると、自分が手に入れた力と、これからの自分の生活を想像するのだった。

 

 

 

 

 

 




最後のシーンですが、アニメと台詞回しをほとんど変えていません。理由は、このシーンがコードギアスの始まりであると思うからです。
「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」このセリフ、とても印象に残っています
それでは次回もお楽しみに!
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