「……どうだ、そこな剣使いよ!?」
開口一番に厳粛さも糞もないことを嘯いたライダーは、傍らにいたバーサーカーへと訊く。
「お断りします。あなたはむさ苦しいです」
「ぬぅ?……ならば、貴様はどうだランサー?」
首を振って拒否したバーサーカーから惜しくも視線を外し、ライダーはランサーを誘いにかける。
「俺が聖杯を持ち帰る者は新たなる主唯一人。断じて貴様などではないぞ征服王」
当のランサーも拒絶を色濃く示し、遊興を講じにバーサーカーとの勝負を邪魔立てしたライダーを、深く睨み据える。
「ーーーー物は相談だが」
「くどいです。新手のセールスマンですか」
「そも、俺はそこの剣使いと決戦中なのだ。邪魔立てをしてもらっては困る」
二挺の槍を構え直し、ランサーはバーサーカーへとその切っ先を向ける。だがライダーはその切っ先の前に手を出し、ランサーを制する。
「……何のつもりだ?」
「まぁ待て。先程の見事な戦闘に釣られたサーヴァントが、まさか余一人というわけではあるまい。
ーーーー聖杯に招かれた者は今、ここに集うがいい!が、なおも顔見せを惜しむような連中は……征服王の侮蔑を免れぬものと知れ!」
遥か虚空……電信の頂と、沿岸部のデリッククレーン、倉庫街へと通ずる直線道路の反対斜線へと、ライダーは挑発を飛ばす。
たかだか安い挑発とは言えどーーーーこと侮辱には過敏に反応する英霊が、運悪くも居合わせていた。
距離を遠くして、遠坂邸に侍る遠坂時臣と、その時臣へ現場の状況を知らせる言峰綺礼が、同時刻に難儀に顔をしかめていた。
「これは……拙いな」
「ええ……拙いですね」
瞬間、電柱の頂に、金色の粒子が写し身を形作る。
豪奢な金鎧を違和感なく着こなし、この世の宝物さながらの"美"を顕現する英霊が、傲岸不遜にも聳え立つ電柱に佇立していた。
不愉快げに顔を歪め、そのサーヴァント……アーチャーは、挑発を働いたライダーを睥睨する。
「……まさか、俺の居ぬ内に王を名乗る痴れ者が沸くとはな。天上天下に於いて、王たる者はこの我一人よ」
「フン、そう難癖つけられたところでな……で?その王たる貴様は名乗らんのか?」
誰もが唖然とする中で、ライダーは飄々と訊ねる。
「この顔を拝謁させてなおも我を知らぬとは……そのような不届き者は、生かしておく価値すらない!」
ライダーの問いへ答えず、アーチャーは怒りに顔を歪めながらも、自らの宝具を起動する。
アーチャーの背面に出現した二挺の宝刀と宝挺。その実態がいかなモノにせよ……揺らめく黄金より出でたその武具は、明らかに天上の宝具であった。
「な、何だってんだよ!?」
「坊主、余の後ろに居れ。中々に面倒な相手だ」
皆等しく警戒するアーチャーを、使い魔たる蟲で見咎めた雁夜は、不敵に笑う。
セイバーに指示された通りに下水路に潜んでから約三十分を越えた刻。セイバーの直感通り、狙いの獲物が姿を表した。
ならば、マスターたる雁夜が命じる事は一つ。
「ーーーー殺せ」
雁夜の命じたままに、セイバーは遂行する。
拮抗した状況の倉庫街に、逆巻きの突風が吹き抜ける。一同がその元凶……一本道より悠然と歩み寄る一騎の英霊へと、視線をあてた。
堅固な白鎧で防護し、淡く深い紫水の短髪たる騎士が、この状況下で現れたのだ。
「また新手のサーヴァント!?」
「アイリスフィールさん。私の後ろから動かないでください」
「うむ、大量大量、僥倖僥倖、だな」
「そんなこと言ってる場合かよ馬鹿野郎!あのサーヴァント……パラメータも何もまったく見えないぞライダー!」
驚愕するアイリスフィールへ、バーサーカーは身の保全のための必要最低限の事項を伝える。
まるで釈然としないライダーに、ウェイバーは違和感を伝える。
だがセイバーは四者にも、ランサーにも、況してや二つの監視者にも目を繰れることなくーーーーアーチャーを見据えていた。