Fate/Zero:IF   作:フリーズ

7 / 17
今回は一日に二本となります。
どうしても召喚をあげたかった…!


第7話

 

「召喚の儀を行うのに、こんな術式で良いの?」

「意外に思うかもだけどね、実際に英霊を呼び出すのは聖杯だ。マスターたる僕は、ただ魔力のパスを回すだけでいい」

 

水銀を指先でなぞり、術式に文句がないことを確認した切嗣は、祭壇上に触媒となる伝説の聖剣の鞘を置いた。

 

「それじゃあ、始めよう」

 

■■■

 

 

「召喚のための呪文は、きっちり憶えてきたじゃろうな?」

 

暗鬱な蟲蔵で、禿頭の老人たる間桐蔵硯が、生気の失せた雁夜に問う。

雁夜の無言の首肯に、だが蔵硯はしたり顔で言う。

 

「じゃが、その間に二節、別の呪詛を付け加えてもらうぞ」

「どういうことだ?」

「なに、お主は他のマスターとは違い、急拵えで仕立てたマスター……普通のサーヴァントを召喚したところで、勝ち目は薄い」

 

蔵硯の思惑を図りあぐねる雁夜は、懐疑の眼を向ける。

 

「雁夜、今回お主のサーヴァントには、狂化の属性を付与してもらう」

 

狂化……即して、それはサーヴァントに有無を言わさずに理性を破壊させること。

つまるところ、蔵硯の用意したこの触媒には、狂化の素質がある英霊の聖遺物であるということだ。

つくづく用意周到かつ悪趣味な老害だと内心舌打ちながらも、雁夜は首肯で応じた。

 

■■■

 

深山の森にて、ウェイバーは長らく喧しかった鶏を漸くに殺し、その生き血で魔法陣を描いていた。

魔力の回りはいつもより格段によく、確実に最強の英霊を呼び出す準備が整っていた。

 

持ち運んだ巨石の上に、触媒たる彼の王の羽織り布地を乗せ、赤黒く発光を始めた魔法陣をみやる。

 

■■■

 

遠坂邸の地下。

言峰璃正神父と、その息子たる言峰綺礼の見守る下、遠坂時臣は、この世で初めて脱皮した蛇の脱け殻を壇上に置き、召喚の詠唱を紡ぎ始めた。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。

  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 

裏山でウェイバーが、総身の魔術回路から魔力が吸われていく感覚を味わいながらも、詠唱を続ける。

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する!」

 

時臣の後方で、英霊召喚という奇跡を目の当たりにした璃正神父が眼を見開く。

 

「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

 

巻き起こる逆向きの突風が、ウェイバーの髪を煽る。

 

「 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

 

 

蟲蔵の陰鬱な空気に毒され、体内の疑似魔術回路……刻印蟲が蠢き出したおかげで、雁夜は全身の毛細血管を破裂させていた。

 

「誓いを……此処にぃ!

  我は、常世総ての善と成る者、

  我は……常世総ての悪を敷く者ォ!」

 

 

アイリスフィールが見守る中で、切嗣は雁夜とほぼ同じ時刻に、同じ狂化の詠唱を紡ぐ。

 

「「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」」

 

 

 

汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 

聖杯を求め、一時的な協力関係をもたらすサーヴァント四騎が、今夜の内にほぼ同時に召喚された。

 

 

眼前に顕現した黄金の鎧のサーヴァントに、時臣は興奮で破顔する。

それはまさしく、時臣が望んでいた通りの、最強の英霊。

 

「勝った……勝ったぞ綺礼。この戦い、我々の勝利だ!」

 

 

極光と白煙の中から悠然と飛び出した英霊に、だがウェイバーは唖然とするより他になかった。

召喚は明らかに成功した。

しかし、その結果として顕現したサーヴァントは……想像する巨躯ではなく、むしろウェイバーよりも小さき、矮躯であった。

 

「……嘘、だろ?」

 

 

召喚の際に無理矢理にもっていかれた魔力を補わんと、刻印蟲が雁夜の肉体を苛む。

その鈍痛に膝をつく雁夜の眼前に顕現したサーヴァントは……およそ狂気には見えない、真っ当な短髪の白騎士。

その風貌に、他ならぬ蔵硯が驚愕に打ち震える。

 

「……?」

「馬鹿な……有り得ん、有り得ん!」

 

 

氷に閉ざされたアインツベルン城の祭儀の間で、黒鎧に身を包んだ、叡知の結晶たる眼鏡を掛けた狂化の英霊が、切嗣とアイリスフィールの眼前に躍り出る。

だが果たして、その容姿は二人の想像するそれとは、遥かに異なったものであった。

 

「コイツは……」

「質問です。あなたが私のマスターでしょうか?」

 

開口一番にそう訊ねるや、バーサーカーは向けられる視線に首を傾げるのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。