Fate/Zero:IF   作:フリーズ

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第8話

 

「召喚される、という感覚はこのようはものなのか……一先ず、自己紹介を。

初めましてマスター。セイバー"ランスロット"ここに罷り越しました。あなたが、私のマスターですね?」

「……セイバーだと?」

 

爽風と自らの真名を明かしたセイバー、ランスロットは、眼前に膝をつく雁夜へ深々と頭を下げる。

だが雁夜は状況への理解が追い付かず、呆然と口を開けるより他にない。

 

「……俺は、狂化の詠唱を加えた筈だ。何故、お前のように真っ当な騎士が?」

「狂化ですか……見たところによれば、私には一切の邪気が感じられませぬ。

もしや、誰かが先に狂戦士を召喚していたのでは?」

 

そう訊ねられ、雁夜は現段階で判明しているマスターを思い返す。

蔵硯の言葉に偽りがなければ、アインツベルンより魔術師殺しの衛宮。

遠坂より忌まわしき時臣。時臣との師弟関係を破棄した神父。時計塔より二人の輩出者……残り一人は空席だと聞かされた。

 

しかし、雁夜がバーサーカーの居所を考えるより先んじて、セイバーの冷徹な声音がその思考を遮った。

 

「ですがそれを論ずるより先に……我がマスターに、私の力量を示しましょう」

「……何?」

 

セイバーは嘯くや、雁夜と反対方向に視線を遣る。

そこには、己の想像だにしないサーヴァントの召喚に戸惑う、間桐蔵硯の姿があった。

 

「貴様……何故、貴様が!?」

「私はお前が誰かは知らない。……だが、なまじ強力な邪悪さと、我がマスターの表情から、お前の素性には大方予想がつくぞ、ご老体」

 

算段を完全に狂わされた蔵硯は、摺り足で間合いを詰めるセイバーへと、群れを成した蟲を手向ける。

だが、ただの使い魔ごときがサーヴァントに勝てる道理など、どこに有り得ようか。

 

「ぬぅあぁぁあ!」

 

蟲蔵の蟲が総出でセイバーを殺さんと詰め寄るも、セイバーは腰に携えていた聖剣を振り抜き、数舜の内にして灰塵と変えた。

己が死を悟った蔵硯は、体内に寄生させた蟲を足下に束ね、この場を離脱せんと急ぐも……既に振りかぶられた聖は、過たず蔵硯の首を刎ねる。

 

「なるほど……そうやって生き永らえていたらしい。

マスター。ここで一度、私の宝具を御見せしましょう」

 

唖然とする雁夜の眼前で、セイバーは聖剣に極光を束ねる。

美しく繊細に刎ねられた蔵硯の首の断面より、小粒の蟲が這い出る。

ーーーーそれこそが紛うことなき、間桐蔵硯の本体であった。

 

「逃がさんぞ、ご老体

……最果てに至れ。限界を越えよ。彼方の王よ……この光を御覧あれ!」

 

遮蔽物の合間をすり抜けて逃げ行く蔵硯を、セイバーは跳躍一度と三歩で詰め寄った。

そして、その光輝く聖剣は、矮躯に変わり果てた蔵硯を塵同然と切り捨てる。

 

縛鎖全断(アロンダイト )過重湖光(オーバーロード)!」

 

雁夜のみならず、間桐の人間並びに桜を苦しめていた元凶は、たかだか数舜の刻にして姿を消した。

それがサーヴァントの力であり、サーヴァントの前に立ち塞がった者の道理。

他のサーヴァントの実力がどうであれ、雁夜も敵前に躍り出れば、蔵硯と同じ道を辿ることは明白だ。

 

その恐怖と、恩讐の敵が消えた喜びに板挟みされた雁夜に、セイバーは再度問う。

 

「そういえば、先程の返答を聞いておりませんでした。……あなたが、私のマスターでしょうか?」

「ーーーーそうだ。俺は間桐雁夜……訳あって、この聖杯戦争に参加している」

「えぇ、今後とも宜しくお願いしましょう。カリヤ」

 

差し出された籠手越しに、雁夜はセイバーの体温を感じとる。

それは間違いなく、根っからの善人が持ち合わせる、人の温もりであった。

 

「……では先ず、カリヤの事情とやらを教えていただきたい。それから、戦略を立てるとしましょう」

「あぁ。どうか俺を勝たせてくれ、セイバー」

 

雁夜は間桐邸の右も左も分からぬセイバーを、寝静まった虚ろな少女の下へと案内していった。

 

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