人々に正しき死を与えること。それが私の仕事。誰にもその存在を知られる事なく行うその仕事は、ストレスがよく溜まる。先日の件で私という存在が公になった手前、無理に活動ができなくなってしまった。
―あの王はそこまでのリスクを負ってでも殺さなければならなかった。
世間で私は“王殺しの大悪党”と呼ばれている。しかし逆に言えば
...だが、私生活に支障を着出した。全ての国に中将クラスの海兵が配置されたのだ。
「...ハァ...」
『おいおい!そんなへこむなって!!お前と俺なら中将なんざケチョンケチョンだぜ!?』
拙い言葉使いで私を励ます骸骨。そのポジティブさは見習いたいものだ
「...ドレスローザ...確かここにいる中将は“孤独”と“ルイン”。」
『珍しいよなァ、あの孤独の狩人が他の中将といっしょにいるなんてよぉ!?』
「......そう。」
―嫌な予感がする
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ニコラside
「ぬおらッ!!!」
わかりやすい剣筋で首を狙う刀を左手で受け止め、刀身を握り潰す。
「わかりやすいんだよ、首なんてのは一撃目から狙うもんじゃねェ、しかも」
オレは剣闘士の体を腹から抱え、持ち上げる
「大振りは大きな隙を生む、実戦では破壊力重視の一撃より手数で攻める方が相手を困惑させられる、じゃあな。」
そう言った後、場外の水上に向けて放り投げた。これで最後の一人を場外に落とした
『...!!決まったー!!今コロシアム優勝候補【血濡れのアスク】を圧倒し、立った今九人の剣闘士の攻撃を全ていなして傷つけることなく場外へと放り投げ!!見事決勝ブロックへの出場権を手にしたその男の名はァ!!!皆さんせーの!!!』
―ニコラ・アデルッ!!!!
先程の静寂とは真逆、決勝進出を祝う歓声がコロシアム中に響き渡る。俺を軽蔑する声の一つも上がらない。つまり完全勝利だ。
『それでは観客の皆様!今から休憩時間を一時間取ります、トイレや喫煙室はコロシアム入場口手前にありますのでこの休憩時間中にご利用ください。後コロシアム限定弁当も販売してるのでそちらの方もぜひとも購入してみてはいかがでしょうか!それではまた一時間後、Bブロックにてお会いしましょう!!』
「さ、ニコラさん、こちらへ...」
係りの者に誘導されるまま進む。そうして剣闘士待合室手前についた時、二階の窓の所で観戦していたはずのナックがオレの事を出迎えてくれた
「ニコラ!お疲れ様、あんなに強かったなんて思わなかったよ!俺でも苦労する相手なのに一瞬で倒しちまうなんて...」
「...まあな。」
アイツは、心の方に問題があった。海賊を十人程度葬ったってだけで慢心していた。故の勝利だ。
「ふわぁ.........眠い...ん?」
何かがこっちに向かって直進してくる
「ニコラ
その何かの正体は先程の試合でオレに負けた剣闘士の集団だった。
「この試合が終われば俺達にもっと戦い方を教えてください!!」
「アンタみてぇに強くなりてぇ!!!」
「先生に言われて気付いたんだよ、勝ちを追い求めすぎて色んな物が疎かになっていた事を」
「今まで独学でやってきたんだが、やっぱり先生が欲しい!!」
面倒くさいことになった。オレただ思った事言っただけなのに。
「...やってみたらどうだい?俺も君が鍛えた生徒と戦ってみたいし」
「......まあ、明日以降ならいいか。そん時ならオレ暇だし。」
―!!本当ですか先生!!!よーしお前ら!!!明日から頑張ろうぜお前ら!!!
うおおおおおおおおお!!!!
「...めんどくさそうだなニコラ」
「まあな」
本当、鉱石の一つくらい持参して来いって言いたい
「...あ、ナック、キュロスって誰だ?」
そう、あの荒くれ者の剣闘士たちがキュロスを倒すという所だけは同調していた。だから興味をそそられた。
「ああ、彼は別名“コロシアム無敗の男”。現在2600戦無敗なんだよ。俺も戦ったことがあるけど一度も勝ったことがない。だから今日こそその伝説を打ち破るんだ!俺が!!」
「へぇ。無敗、ねぇ...」
2600戦か。それらの試合全てを無敗で勝ってきたのならばそれこそ大海賊と呼ばれる者レベルの経験が積まれている。言うのは悪いがナックがどれだけあがいても勝てる相手ではないだろう。まだナックの戦闘を見ていないから断定は出来んが。
「...さて、俺は今からウォーミングアップしてくるよ。ニコラはどうする?」
「オレは寝る。」
体が壊れている故に、異常なほどに眠い。まあ、いつものことだが。
「そ、そうか。わかった。じゃあ良い夢を。」
「ああ、勝てよ。」
「任せろ!!」
ナックは上機嫌で待合室のトレーニングルームへと歩いて行った。それを見送った俺もちょうどいい寝床を探すためにそこらじゅうを歩き回ることにした
―結構歩いた末、寝るのに最適だと判断した場所はトレーニングルームの奥の独房前にあるベンチ。ここなら誰にも快眠を邪魔されないだろうし、第一声を掛けてすらこない筈だ。
「...おい、お前さっきの試合凄かったな!」
前言撤回。場所を変えようか
「待てって!!」
「...何だよ、オレは眠いんだ。」
「あんたならキュロスを倒せるかもしれねェ。だから頼む!!俺達の分まで「甘ったれたこと言うな」...!!!」
「うるさいんだよ
「何だと!!!」
牢屋に入っている数人の剣闘士が檻を掴んで叫んだ。
「誰かに倒してもらえるなんて考えるな、それは自分がまがりにも一度は超えたいと思った相手に対する侮辱だ。」
「ぐっ...」
オレの言葉が相当響いたらしく、剣闘士たちは何も言えなくなっていた。...流石に言い過ぎたかな。
「...自分で倒したいって考えるなら手は差し伸べてやってもいい。」
「本当かァ!!??」
「ああ、ロキとルインに掛け合ってみてやるよ。もしかしたらお前等を鍛えてくれるかもしれねェ。」
オレがそう言うと再びこの暗い独房内の剣闘士たちは歓声を上げる。まだ決まったわけじゃねェのに気が早い奴らだな。
まあルインは愛想良いからOK出しそうだが、ロキは何か言ってきそうだな。
「...ふわあ」
ああ、眠い。さっさと退散していい寝床を見つけることにしよう。
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それから少し時間が立ち、Bブロックの試合が始まろうとしていた。
ナックが教えてくれた場所からコロシアムを一瞥すると中々覇気のある者たちが何名か確認できた。もしかしなくともオレが戦ったAブロックの奴らよりは遥かに強いだろう。
『さあさあBブロック!全世界から集まった猛者達が集います!!...おっと、最後の一人が入場してきましたァ!!』
―最後の一人、そいつの入場に観客達は歓声を上げた。
『最後の一人ィ!!当コロシアム所属の剣闘士、何度かキュロスへの挑戦権を得たことのある優勝候補の一人!その名もナック・ロバーツゥ!!』
―おおおおおおおお!!
―今日も魅せてくれナックー!!
...へぇ、アイツ意外と人気なのか。一目見たときはそこらの剣闘士と大して変わらないナリをしていたからわからんかったが決勝戦に進出したことがあるのか。
そんなことを思っていると、ナックがこちらを向いて二カッと笑って見せた。それを見ていた女性客たちは黄色い声を上げる。
「...フッ。」
これは面白い戦いになりそうだな。寝ずに見物するとするか......。