silence of this area collapses 作:風見 桃李
side井沢研太郎
「貴方は、金田一くんに会いたいですか?」
地獄の傀儡師、いや、今はその名を聞くことはない。
彼は、高遠遙一少年は、俺を試そうとしてしているに違いない。
金田一と友達だった俺が、金田一の名を聞けば止めると思っている。
「会わないって、言ったら?」
「無理矢理でも犯罪を止めます、殺しはしませんが拘束でもしましょうか?それに、折角正真正銘の白紙の経歴だというのに、変に傷を付けられても困るものでね」
「…っ!」
そういうと高遠遙一の目は、本気だった。
冷酷な犯罪者ではない高遠遙一、いや、確かに冷酷なのかもしれないが今は犯罪者ではない。変な手は使わない筈だ。
さらに俺と近い年齢というのはポイントだ、少しは俺の方が力が…いや、明智健悟がどちらについているかわからない。
特に俺は、明智健悟の実力を知っている。
金田一より強い力に、それに近い頭脳(学力は似ても似つかないけど)。
…本当は、金田一に会いたいさ。
けど俺は、俺は!
「研太郎、悩んでることがあるなら何で私に言ってくれないのです?家族との関係は良好なのでしょう?ならやはり仕事面ですか?」
「家族との関係は良好?明智くん、彼の家族は生きていると?」
「は?えぇ、生きてますよ。それがなにか?」
け、健悟~!高遠遙一にピースを埋めるような発言は止めてくれぇ!
高遠遙一はゆらりとこちらを見てきた、その目は完全に座ってる。
この時点で俺は、生きた心地はしなかった。
「井沢くん、もう一度問いたい。貴方は、金田一くんに会いたいですか?」
「…会いたいに決まってます」
「なにをそんなに震えているのですか?」
「高遠くん、顔ですよ、顔。般若みたいですよ」
「失礼な。まぁ、それはさておき。井沢くん、君、今回は殺す理由無いじゃないですか」
「前回、殺しきれなかったから殺そうかと…金田一居ないからバレないかと思ったし…」
「…まだ、憎いですか?」
「当たり前だ!俺が早くに記憶が無かったら、思い出すことが出来なかったら!やっぱりあいつらは俺の家族を殺そうとしてた…!俺たちのほうを見てたからな!俺は熱の中なんとか父さんが金の話をしないようになんども…何度も何度も話を反らさせた…なんであんなところであんな大金の話をするんだよ!母さんの言う通りだったよ!父さんより俺の方がしっかりしてるって!」
高遠遙一のその静かに響いた声は、俺の中の憎悪や苦労、誰にも話せなかった今までの気持ちを吐き出せた。
父さん、あのスキーの日はホントに大変だったよ。
そもそもそんなに持ち歩くなよ!子供の微熱は普通の熱と同じなんだ!次の日は動けなかったんだぞ!
俺が前日に思い出してなかったら…みんな死んでいた!
「(井沢くん、愚痴になってきてますね。まぁ、しかし)井沢くん、君はひとつの未来を掴み取った」
「ひとつの、未来?」
「ええ、君は家族を失わずに、綺麗な経歴のままその地位になった」
「それは、前世もあったからで!」
「それでも、君はそこに辿り着いた。それは誇るべきモノですよ。えぇ、私にもわかりますから、私も死なせたくない人がいるので。少なくとも、復讐という領域で君と私は共通している」
「復讐という領域…」
「…前世での、あなたと出会った最初の事件は、母のための復讐でしたね」
「えぇ、ですが今は近宮玲子は生きている」
「は?え、近宮玲子?あの世界的マジシャンの?た、高遠遙一の母が近宮玲子…?!」
そもそも近宮玲子って子供がいたのか!
あ、だけど言われればなんか似てるような…眉とか顔とか、特に雰囲気。
「そう、近宮玲子が生きている。易々と、あの人を死なせるわけにはいかない。…度々釘を打ってはいますが、この時期は中々安心できなくてね。そのせいもあって少々気が立っていたかも知れません、まあ私の話は良いんですよ」
「高遠くん…」
「井沢くん、綺麗な経歴のまま、金田一くんに会いませんか?会える確証は出来ません、ですが、必ず彼に会える。私はそう、信じています」
高遠遙一と言う男は、用意周到な筈だ。
それは俺が火祀家を殺すきっかけとなった井沢一家三人殺人事件のレポートでわかる、その男が確証は無いのに、俺を誘うとしてる。
綺麗な経歴のまま、という言葉。
例えこの真剣な目が演技だったとしても。
「…何を、するんだ?」
「この話、乗るんですね?」
「…乗るに決まってる!あの高遠がよくわからないのに信じてたり、同い年とか一般人とか、俺の家族が死んでないのに火祀家があるとか、前と同じような記憶があるとか、正直キャパオーバーだったんだよ!それに、今度は俺の番だ、金田一が本気で俺のことを考えてくれたんだ。今度は俺が、金田一について本気で考える番だよ」
「金田一くんが本気で井沢くんのことを…ほぉ、そっちの気が」
「え、いや、そういうことじゃないぞ!そういうことじゃない!そういうことじゃないからな高遠!」
そう言うと高遠遙一は少し、優しい目をした気がした。
もしかして、俺は気を使われた?あの高遠遙一に!?
「明智くん、君も金田一くんに会いたいですよね?」
「え?それは会ってみたいですよ」
「ククク、よろしい、ではこれより私たち三人は…金田一捜索組織です、すみませんが名前は後で。内容は、そうですね、当分金田一くんの捜索と金田一くん関連の事件化の阻止です。ですので井沢くんには犯行を止めてもらいますので、明智くんも良いですよね?」
「それは、いいのですが…」
なんで、高遠遙一は事件を防ぎたいんだろう?
それが聞こえたかのように彼は話した。
「私は人を欺くのが好きです。今回はその方向性を変えているだけの話ですよ。壊すのではなく、防ぐ方に。金田一くんが知ってる事件が何も起きてなかったら、彼は凄く驚くでしょうね!!!まぁ、やる側も楽ではないですが、こちら側も楽ではありませんね」
「少しは私の苦労がわかりましたか?高遠くん」
「その記憶を自分の物に出来てないのによく言いますね。さて、井沢くんが此方に来てくれたので井沢くんが犯罪をするのは無しになりましたが…次に気になる火祀星子と黒瓜鬼門ですが」
俺の部屋に扉からのノックが聞こえる。
声も聞こえた、どうやら火祀星子と高野遙のようだ。
大分時間が経っていた、そろそろ夕食の時間だ。
食後、奴が来る、誰かわからぬ黒瓜鬼門が!
「貴方達は火祀星子に注意しなさい、私は黒瓜鬼門を見ます」
そして、始まる、黒魔術の儀が!
side 井沢研太郎end
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食後、火祀暁に声を掛けられ高遠等は離れに移動した。
離れに移動すると暁はこれからやることについて説明をし始めた。
「さて、ゆっくりされているところ失礼しました。ここにいらっしゃる大半の方は御存知のように、私ども火祀コーポレーションはこの5年の間に飛躍的な発展を遂げてまいりました。その隠された原動力、ともいうべきものが私どもが信奉している『黒魔術』の神秘的な力でございます。黒魔術と申しましても決して、悪魔崇拝を指すわけではございせん。むしろ、私どもの崇拝する黒魔術とはより高尚で貴族的ないわば哲学というべき思想なのです。資本主義とは競争であり―――」
火祀暁の演説のような話を高遠遙一は適当に聞き流していた。
彼は待っているのだ、黒瓜鬼門を。
本来なら『黒瓜鬼門』という男は存在しない、前世彼だったのは高遠遙一であり名も知らぬ役者風情だったからだ。
今回の犯人であった筈の井沢研太郎はもう犯行を及ばない、聞くことはまだあるがそれは確定で良いだろう。
そうなるとやはり注意をすべきなのは、来るとして前提を、存在しない筈なのに存在する可能性の前提をして動いた方がいい黒瓜鬼門。
もし、もしもその名で来たとしたら。
「ではご紹介しましょう、今回新しくお招きした黒魔術の先生―――」
(私は、一度約束したことは良くも悪くも守るのでね。警察官になると言ったからには私の前での事件は無しにしてもらいましょうか)
「黒瓜鬼門先生です」
(黒瓜鬼門、その挑戦、受けましょう)
次回で黒魔術回最後です