山奥の土地を買って自分ひとりで小屋を作る話   作:軽石

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第32話 開拓22日目 壁起こし③

◇  ◇  ◇

 

 ゆっくりと手掌を開き、閉じる。大丈夫だ、痛いが動く。

 

 次に肩を上下させ、腕を何度か屈伸する。大丈夫、力は入らないが動く。

 

 "大丈夫、まだやれる。もう一度、壁パネルを立てる"

 

 失敗は、不思議と私の意思を強くした。

 

◇  ◇  ◇

 

 骨折は負っていない様だった。安静時の疼痛は徐々に治っていった。出血も無かった。壁パネルの下敷きになった時にぶつかった部分はあとで青痣になることだろうが、作業を続けることに支障はない。

 

 次に、倒れた壁パネルの方を確認すると目に見える破損は無かった。壁パネルと地面の間に私の身体が挟まることで衝撃が緩和されたのかもしれない。

 

 唯一の固定点だった仮筋交いのコーススレッドは壁パネルを緩く留めていた側がほぼ抜けて酷く曲がっていた。このコーススレッドは75mm長の太いネジだが、さすがに60kg近くある壁パネルの重量には敵わなかった様だ。

 

◇  ◇  ◇

 

 不思議と次に行うべきこと、"一人で行う壁起こしの解"は分かった。思考がクリアになっているのを感じた。

 

 最初の壁パネルは合板を外して軽量化し、壁枠だけの状態にして立てる。壁枠だけの状態であれば、風が抜けていくので強風に煽られることはない。そして壁枠同士、壁枠と床・土台をがっちりとコーススレッドで固定してから合板を貼る。

 

 一つ一つ、順番に行っていけば問題なく出来るはずだ。

 

◇  ◇  ◇

 

 壁パネルの分解から作業を再開した。まず角材をてこに用いて、底辺だけ床に乗っている壁パネルをひっくり返し、合板が貼ってある側を表にする。

 

 次にインパクトドライバーを逆回転させて、合板を留めているコーススレッドを外していく。外す作業は留める作業の何倍も早くできる。

 

 合板を外した後の壁枠を床の上に引きずり上げ、もう一度、壁起こしにチャレンジする。壁枠だけの状態でも決して軽くはないが、制御しきれない重さというわけではなくなっていた。

 

◇  ◇  ◇

 

 壁枠を立て、素早くかつ慎重に左右の仮筋交いを複数のコーススレッドで固定する。

 

 次に、壁枠の位置を土台のストッパーに合わせて微調整し、コーススレッドを何本も打ち込んでいく。一本打ち込むごとに壁枠と床が"ギュッ"と締まり、密着するのが分かった。

 

 同じ様に、合板を外した角に相当する2枚目の壁枠を立ち上げ、壁枠同士と壁枠・床・土台をガチガチに固定していった。

 

◇  ◇  ◇

 

 壁枠を立てて安定させて仕舞えば、あとは順に合板を貼っていくだけの作業である。時間はかかるが、順番に行っていけばそれほど危険な作業ではない。ただ切断していないそのままのサイズの合板は1枚あたり10kg以上の重量があるので、そのまま壁枠に押し当てて貼り付けるのは難しかった。

 

 そのため端材を用いて合板を下から支える用のストッパーを作成して土台に固定し、合板の重量を下から支えながら、再度合板を貼り付けて行った。

 

 合板を貼らずに壁枠を立てることで壁枠が歪んでしまうことを心配していたが、既に開いているビス穴を合わせせながら作業することで、時間は掛かったが壁パネルを歪めることなく元の形に戻すことが出来た。

 

◇  ◇  ◇

 

 結局この日は、下部の壁パネルのうち、三辺を立ち上げて作業を終了とした。できれば最後の一辺も立ち上げて四辺が安定して組み合う形にしたかったが、壁パネルのサイズをそれぞれ隙間が出来ない様、余裕なく設計していたため、壁を起こす前の段階で最後のパネルがスッポリとハマらないこと確認したからである。

 

 明日はこれらを微調整しつつ、引き続き壁起こしを行っていく。

 

◇  ◇  ◇

 

 夕暮れ時、

 

 少し遠くから建築エリア全体をもう一度見た。

 

 建設途中の小屋は、まだ小屋とは呼べない不恰好な形である。しかし1週間後、ここに立派な小屋が立っている風景がはっきりと想像できた。

 

 "私は、きっと小屋を作ることが出来る"

 

 それを証明する。

 

 必ず証明出来る。

 

◇  ◇  ◇

 

--経過--

進入路の工事       完了

資材の購入(基礎・土台) 完了

資材置場(仮)の建設   完了

基礎工事         完了

資材の購入(床材・壁材) 完了

土台           完了

床の施工         完了

資材の購入(屋根材)   完了

壁の施工         完了

 壁パネルの作成     完了

 壁起こし        進行中

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