山奥の土地を買って自分ひとりで小屋を作る話   作:軽石

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第35話 開拓24日目 屋根の施工 垂木の設置

◇  ◇  ◇

 

 生活に最低限必要なものを表す言葉として『衣食住』というものがあるが、そのうちで最も自作難易度が高いのは『住』だろう。

 

 現代の日本人にとって基本的に住居は"買うもの"であり"自分で作るもの"ではないのだ。建物を立てるというのは時間も費用も凄く掛かる。

 

 しかしそんな中でも、敢えてそれを行おうとしている人々がいる。

 

 それはなぜだろうかと考えると、その根底には"自分の身近にあるものをより理解したい"という欲求があるのではないだろうか。

 

 この"自分の身近にあるものをより理解したい"という欲求はベクトルは違えど誰しも生まれ持っているものではないかと思う。

 

 例えば自分で料理を作る事によってその料理に対する理解は深まる。料理を作るためには食材の選択や調理の工程、その中で凝らされる様々な工夫などの知識が必要となるが、実際に料理をするという体験を経ることでそれらに対する理解を得ることができるのである。

 

 そうして得た理解は、他人の作った料理を食べる側になった時に新たな視点をもたらす。以前はただ"美味しい" "不味い"としか表現できなかった料理に対する感想も、自分が持っている理解が広ければ広いほど、より深く、より多面的な視点から評価することが出来る様になるのである。

 

 理解があるからこそ表現出来ることの快感。

 

 この小屋づくりを終えたあと、私の世界を見る視点も変わっているだろう。以前は登山の途中に山小屋を見つけても、ただ不思議なものだと思って通り過ぎるだけの自分だったが、これからは違う。

 

 基礎の置き方、土台の組み方、壁パネル、そして屋根。知っているからこそ見える世界がそこにはあるはずだ。

 

 今回の小家づくりで得た数々の理解は、これから先の人生をより味わい深いものにしてくれることだろう。

 

◇  ◇  ◇

 

[ 開拓24日目 ]

 

 基礎の設置から始まった小屋作りの作業はいよいよ最後の主要構造部である『屋根』の施工段階まで進めることができた。

 

 今回の小屋は極力シンプルな設計としているため、屋根は傾斜の付いた一面で構成する『片流れ屋根』としている。

 

 また屋根の建築方法は壁パネルと異なり、あらかじめ枠を組んで上に乗せるのではなく、木材を1本ずつ上部壁パネルの上に持ち上げてから順番に固定し、設置していく。

 

◇  ◇  ◇

 

[ 垂木の加工 ]

 

 屋根の骨組みには垂木《たるき》と呼ばれる木材を合計十本用いる。この垂木の上に屋根板を貼ることで屋根が完成するのである。

 

 この垂木は加工していない状態では、壁パネルの上辺に対して斜めに()で接する形となってしまうので、あらかじめ欠き込みを作り、()で接する様に加工する。

 

 まず一本目の垂木に指矩《さしがね》を使って直角の墨線を引いていく。

 

 次に実際に一度、垂木を壁パネルの上に乗せてみて、欠き込みを作る位置が正しいかどうかを念のため確認する。

 

◇  ◇  ◇

 

 試しに垂木を一本、壁パネルの上に持ち上げて設置してみるが、垂木の重量はやはり重かった。

 

 持ち上げる作業も壁パネルに立てかけた脚立に登って、片端ずつ上部壁パネルの上に乗せていくという作業では、ジリジリと疲労を強いられた。

 

 確認の結果、墨線の位置は計算通りで合っていた様なのでもう一度垂木を降ろしコンクリートブロックの作業場に持って行き、欠き込みを入れる刻みの作業に移る。

 

 この刻みの作業はそれなりの時間が掛かった。なぜなら、今までの木材の加工では電気丸ノコを用いることで大幅な時間短縮を図っていたが、今回はそれを使わずノミとノコギリだけで作業を行ったからである。

 

 なぜ電気丸ノコを使わなかったのかといえば、今回の欠き込みは木材に対して斜めにブレードを入れる形で、なおかつ切断しきらずに途中で引き返さなければならないという、今までとは違う高度なレベルの技術が必要とされそうだったからである。

 

 失敗するリスクがある方法をとるより、時間は掛かるが安全な作業の方法を選択したのだった。

 

 一本目の垂木を仕上げた後はそれをコピーする形で同様に他の垂木の加工を行っていた。

 

◇  ◇  ◇

 

[ 垂木の固定 ]

 

 加工の終わった垂木を再び上部壁パネルの上に乗せて具合をみると、ぴったりとは嵌らず、若干の隙間ができてしまっていた。

 

 これは自立している壁パネルが若干歪んでいることが原因でもあるだろう。垂木の方は精確にサイズを測って欠き込みを入れているので、それに合わせる様にビス留めする際に締め上げて調整していく。

 

◇  ◇  ◇

 

 今回、垂木の接合には垂木専用の15cmもある極太のビスを使った。

 

 垂木を固定する方法には『ひねり金具』と呼ばれる金具を側面から固定する方法もあるが、今回使う専用ビスを上から打ち込む方法は、よりシンプルで施工の難易度も低いのである。

 

 垂木の上から斜めに押し込む様にドリルビットで下穴を開け、インパクトドライバーで専用ビスを打ち込んでいく。

 

 この作業は脚立に登りながらさらに手を伸ばし、インパクトドライバーを自分の方に引き寄せる様な不安定な姿勢での作業となるため、これまでのビス打ち作業と違って、力も入れづらく難しかった。

 

◇  ◇  ◇

 

 垂木の欠き込みに時間が掛かってしまったこともあって、今日は垂木の設置までで作業終了とした。

 

 明日は垂木同士を横から固定する転び止め(ころびどめ)を設置し、その上に屋根板の貼り付けていく作業まで行えることだろう。

 

 天気は良かったが念のため未完成な屋根部分にブルーシートで覆いをかけ、明日の作業に備えた。

 

◇  ◇  ◇

 

--経過--

進入路の工事       完了

資材の購入(基礎・土台) 完了

資材置場(仮)の建設   完了

基礎工事         完了

資材の購入(床材・壁材) 完了

土台           完了

床の施工         完了

資材の購入(屋根材)   完了

壁の施工         完了

屋根の施工        進行中

 垂木の加工       完了

 垂木の固定       完了

 転び止めの設置     NEXT

 屋根板の貼り付け    NEXT

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