山奥の土地を買って自分ひとりで小屋を作る話   作:軽石

7 / 38
第08・09話 開拓5日目 水盛り、貫板の取り付け

◇   ◇   ◇

 

[ 開拓4日目 ]

 

 今日は朝から小雨が降っていた。開拓をはじめて以来の雨天である。

 

 一応レインウェアは用意してあり、雨が降る中での作業も可能ではあるが、このところ連日の作業で疲労感はピーク達していたので今日は休養日に当てる事にした。

 

 昼頃までテント内でネット検索をしながらダラダラと過ごす。私の土地は山奥にあるが携帯の電波は届いておりネットは使えるのが利点なのである。

 

 これからの各種作業については、書籍、ブログ、YouTubeの動画などから情報収集しており、細かい注意点なども予習済みではあるが、それらをもう一度見返し作業をイメージトレーニングする。

 

 今回の小屋作りは5月の31日間に短期集中的に行う計画を立てているが、その中で何日かは雨が降る事は想定済みであり、雨の日に行うことも考えてはあった。記録の作成、計画の見直し、道具のメンテナンスや買い物などである。

 

◇   ◇   ◇

 

 12時頃になるとさすがに退屈になってきたので、テントを出て行動を開始する。

 

 一度大阪の自宅アパートに帰るという選択肢もあるが、便利な自宅環境に帰ってしまうとまた土地まで来るのが億劫になりそうなのでやめておく。

 

 車で山をおりて、大きめの町で食料を買ったり、コインランドリーで貯まった衣類を洗濯したりする。

 

 あとワークマンに行って作業用の手袋を買った。これまで使っていたホームセンターで買った安価なフリーサイズの軍手はブカブカで、小柄な女性である私の手には大きすぎたのである。手袋に関しては大は小を兼ねるとは言えない様だ。

 

 少し奮発して1500円ぐらいの自分の手にフィットした手袋を買った。手袋の重要性は実際に土木作業をしてみなければ分からないことであった。

 

 コインランドリーの洗濯物を回収したあとはちょっと遠くの温泉に入りに行ったりして休養日を過ごした。

 

◇   ◇   ◇

 

 私がなぜ小屋を作るのか?

 

 理由は複数あるが、もっとも大きい理由は『私が小屋を作れることを実証したい』からである。

 

 小屋作りそのものが目的なのである。

 

 私は幼い頃からいわゆる"開拓モノ"が大好きだった。

 

 小学生の時に学校の図書室で読んだジュール・ヴェルヌの『神秘の島』は特に印象に残っている。南北戦争時代に気球に乗った5人のアメリカ人達が太平洋上の無人島に漂着し、その無人島を開拓していく小説であるが、科学知識を駆使してあらゆる課題を解決していく描写が凄い。

 

 アザラシの油脂からグリセリンを抽出してニトログリセリンを作り、発破によって地形すら変えてしまう描写などいま読み返してもシビれる。

 

 自分もいつかその様な開拓に身を投じてみたいと心躍らせたものである。

 

 しかし大人になったいまなら分かることだが、その様な開拓に参加する機会は残念ながら無い。

 

 もちろん某アイドルグループが無人島を開拓しているテレビ番組の存在は知っているし、毎週欠かさず視聴しているが、現代の一般人にとって無人島開拓などハードルが高すぎて手が出せないのが現実なのである。

 

 しかし山奥に土地を買って小屋を作ることはギリギリできることである。

 

 もちろんそれは容易なことではなく、かなりの知識、計画性、体力、精神力が必要となることは予想されるが、私は自身がそれを成し遂げられる存在であると思うし、そうでありたいと思う。そしてそれを確かめたいとも思う。

 

 小屋を作ることは私が私自身に課したチャレンジなのである。

 

◇   ◇   ◇

 

[ 開拓5日目 ]

 

 雨は昨晩早くに止んだらしい。

 

 テントを出て雨の影響を確認するが幸いなことに何処にも悪影響は無さそうだった。

 

 表土を掘り返したことで凹地になっていた建築エリアは雨水が貯まる心配があったので、事前に溝を掘って排水処置を講じておいたこともあってか水溜りにはなっていなかった。

 

 今日も引き続き基礎工事に取り組む。

 

◇   ◇   ◇

 

[ 水盛り ]

 

 小屋の建築エリアは緩い傾斜地となっているため、単純に地面からの高さだけを測って四方を繋いだ場合、建物が傾いてしまう。そのため『水盛り』という水平面を測って高さ合わせする作業が必要となるのである。

 

 今回道具としては水を入れたペットボトルに透明なビニールホースを繋いだ自作の水盛り器を使う。

 

 この自作水盛り器の仕組み単純で、ペットボトルのキャップに穴を空けてビニールホースを繋ぎ、ペットボトルに水を入れてひっくり返すことで、ペットボトルの水面とビニールホース内の水面の高さが同じになるという物理学における『サイフォンの原理』を利用したものである。

 

 バケツに入れた水を使う方法やレーザー式の水準器を使う方法も検討したが、価格と簡便性を重視して今回の方法を採用した。

 

 まず敷地中心にコンクリートブロックを置いて、自作水盛り器をひっくり返し、更にその両側をコンクリートブロックで挟み込んで固定する。

 

 ホース内に入ってしまった気泡を追い出してホース内の水面とペットボトル内の水面の高さが同じになっていることを確認してから木杭に印を付ける作業を行う。

 

 実際に印を付けてみると最も高い所と最も低い所では約50センチほどの高低差があることが分かった。

 

 斜面の高低差は基礎の沓石を置く穴の深さで微調整できると考えていたが、思った以上に高低差があり、微調整で対応できる範囲ではないため誤算と言える。計画の修正を検討しなければならない。

 

◇   ◇   ◇

 

[ 貫板の取り付け ]

 

 高低差の問題はさておき、次は水盛りした水平線に従って木杭間を「貫板」で繋いで固定していく。

 

 木ネジで貫板を仮固定したあと水平器を当てて、水平器の中の気泡を凝視して貫板が水平になってことを確認しながら1つ1つ慎重に作業していくのである。

 

 トルクの強いインパクトドライバーを用いた貫板の取り付け作業は楽しかったが、やたらと時間が掛かってしまった。

 

 作業が終わって一息つきたいところではあるがなるべく早く基礎工事を終わらせたいため、手早く昼食の菓子パンを食べて次の『水糸張り』の作業に移るのである。

 

◇   ◇   ◇

 

--経過--

進入路の工事       完了

資材の購入(基礎・土台) 完了

資材置場(仮)の建設   完了

基礎工事         進行中

 木杭・貫板の取り付け  完了

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。